米国の超低コスト航空会社（ULCC）であるフロンティア航空と、世界的なオンライン旅行会社（OTA）であるEtraveli Groupは、新たな技術連携を通じて航空券の流通を拡大し、旅行者の予約体験を向上させるためのパートナーシップを発表しました。この提携の鍵となるのが「NDC（New Distribution Capability）」と呼ばれる次世代のデータ通信規格です。これにより、旅行者はよりシームレスで豊富な選択肢の中から、自分に合ったフライトを予約できるようになります。
提携の背景にある「NDC」とは何か
今回の提携を理解する上で欠かせないのが、IATA（国際航空運送協会）が推進する「NDC」という技術規格です。
これまで、多くの旅行会社はGDS（Global Distribution System）という伝統的なシステムを通じて航空券を予約していました。しかし、このGDS経由では、座席指定、追加手荷物、機内食といった航空会社が提供する多様な付帯サービス（アンシラリーサービス）の情報を十分に扱うことが難しいという課題がありました。
NDCは、航空会社と旅行会社を直接結びつけることで、航空会社のウェブサイトで予約するのと同じように、豊富な情報やパーソナライズされたサービスを旅行会社経由でも提供できるようにするものです。特に、基本運賃を低く抑え、付帯サービスで収益を上げるビジネスモデルのLCCにとって、自社のサービスを魅力的に直接顧客に提示できるNDCは極めて重要な技術となっています。
グローバルOTAとの提携がもたらすもの
フロンティア航空は、主に米国内および近距離国際線に強みを持つ航空会社です。一方、Etraveli Groupは、Booking Holdings傘下で「Gotogate」や「Mytrip」などのブランドを世界70カ国以上で展開する、グローバルな販売網を持つ大手OTAです。
この提携により、フロンティア航空はEtraveli Groupの広範な顧客基盤にアクセスできるようになります。これにより、これまでフロンティア航空の存在を知らなかった、あるいは予約しづらかった世界中の旅行者に対して、自社の航空券やサービスを直接的にアピールすることが可能になります。
旅行者にとっては、使い慣れたEtraveli Groupの予約サイト上で、フロンティア航空の最もお得な運賃だけでなく、「The WORKS®」や「The PERKS®」といった人気のセットプランを含め、手荷物の追加や座席の選択といったオプションを簡単かつ明確に選択できるようになります。これにより、予約プロセスが簡素化され、価格の透明性も向上し、より満足度の高い予約体験が期待できます。
予測される未来と旅行業界への影響
今回のフロンティア航空とEtraveli GroupのNDC連携は、単なる一企業の提携に留まりません。今後の航空・旅行業界のトレンドを占う上で、いくつかの重要な示唆を与えています。
LCCのグローバル化と競争激化
NDCの普及は、LCCがグローバル市場で競争するための強力な武器となります。大手OTAとの連携を通じて、これまでリーチできなかった顧客層にアプローチできるようになるため、LCC間の競争だけでなく、フルサービスキャリアとの競争も新たな局面を迎える可能性があります。
予約体験のパーソナライゼーション
航空会社はNDCを通じて、顧客のニーズに合わせた柔軟な価格設定や、パーソナライズされたパッケージ商品を旅行会社に提供できるようになります。将来的には、AI技術と組み合わせることで、個々の旅行者の嗜好や過去の旅行履歴に基づいた、最適なフライトとサービスの組み合わせが自動で提案される時代が来るかもしれません。
旅行予約のシームレス化
今回の提携は、航空券予約における「分断」をなくす動きの一環です。航空券を予約した後、別のページで座席を指定し、さらに別のプロセスで手荷物を追加するといった煩雑な手続きは過去のものとなり、すべての選択が予約時に一括で完結するシームレスな体験が標準となるでしょう。
フロンティア航空のような革新的なLCCと、Etraveli Groupのようなグローバルな販売力を持つOTAの連携は、旅行者にとってより良い選択肢と利便性をもたらす大きな一歩です。今後、航空業界全体でNDC導入の動きがさらに加速し、私たちの旅行計画はよりスマートで快適なものへと進化していくことが期待されます。
