2025年9月22日、ヨーロッパの主要都市を結ぶ高速鉄道ユーロスターは、パリとブリュッセルを発着する複数の列車において、技術的な問題により運休および大幅な遅延が発生していると発表しました。この突然のトラブルにより、ビジネスや観光で同路線を利用する多くの旅行者の足に大きな影響が出ており、主要駅では混乱が広がっています。
パリ北駅とブリュッセル南駅で混乱、原因は調査中
ユーロスターの公式サイトに掲載された情報によると、問題は22日の早朝に発生。特に影響が大きいのは、ヨーロッパのハブ駅であるパリ北駅とブリュッセル南駅を結ぶ路線です。発表では少なくとも10本以上の列車が運休となり、その他の列車にも最大で3時間以上の遅れが生じていると報告されています。
運休の具体的な原因は「技術的な問題」と発表されているのみで、現時点では詳細は明らかにされていません。しかし、信号システムや線路のポイント故障などが原因ではないかとの見方が出ています。
この影響で、パリ北駅やブリュッセル南駅のユーロスター乗り場では、多くの乗客が足止めされ、代替便や払い戻しの情報を求めてカウンターに長蛇の列を作っています。駅構内は大きなスーツケースを持った旅行者で溢れ、電光掲示板に表示される「Cancelled」や「Delayed」の文字を不安そうに見つめる姿が見られました。
ヨーロッパ大動脈を襲った突然のトラブル:その背景
年間2,000万人近くが利用する重要インフラ
ユーロスターは、ロンドン、パリ、ブリュッセル、アムステルダムといったヨーロッパの主要都市を高速で結ぶ、まさに国際的な大動脈です。コロナ禍からの回復も著しく、2024年には利用者数が年間1,900万人を超えるなど、ビジネス客から観光客まで、幅広い層に利用されています。
特にパリ-ブリュッセル間は、EUの主要機関が集中するブリュッセルと、ヨーロッパ随一の観光都市パリを結ぶ最重要区間の一つです。航空機と比較して、都市中心部へ直接アクセスできる利便性や環境負荷の低さから、多くの旅行者に選ばれてきました。今回の運休は、この重要インフラの脆弱性を改めて浮き彫りにした形です。
過去の運休事例とインフラの課題
ユーロスターが大規模な運休に見舞われるのは、今回が初めてではありません。記憶に新しいところでは、2023年12月に英仏海峡トンネル内での浸水により全41本が運休し、約3万人の足に影響が出た事例があります。また、過去にはストライキや悪天候による運休もたびたび発生してきました。
高速鉄道網は開業から年月が経過し、インフラの老朽化やメンテナンスが常に課題となっています。今回の「技術的な問題」がインフラに起因するものだった場合、今後の安定運行に向けた大規模な投資や点検体制の見直しが急務となるでしょう。
今後の見通しと旅行者への影響
振替・払い戻しの対応と代替手段
ユーロスターは、影響を受けた乗客に対し、手数料なしでの予約変更や全額払い戻しに応じるとしています。しかし、当日の振替便は満席が多く、多くの旅行者が代替交通手段の確保を迫られています。
この影響で、パリ-ブリュッセル間の航空便やタリス、TGVといった他の高速鉄道、さらには長距離バスの予約が急増している模様です。急な旅程変更を強いられる旅行者は、高騰した運賃や限られた選択肢の中から代替ルートを探さなければならない厳しい状況に置かれています。
信頼性への懸念と将来への課題
ユーロスターは、2030年までに年間3,000万人の乗客を輸送するという野心的な目標を掲げています。この目標達成には、サービスの安定性と信頼性が不可欠です。しかし、今回のような大規模な運休が頻発すれば、乗客の信頼は揺らぎ、より確実性の高い航空機へと顧客が流出する可能性も否定できません。
今回のインシデントを教訓に、原因の徹底究明と実効性のある再発防止策を打ち出せるかどうかが、ユーロスターの将来を左右することになりそうです。
ヨーロッパ旅行を計画中の方は、引き続きユーロスターの公式サイトなどで最新の運行情報を確認することをお勧めします。simvoyageでは、今後も本件に関する最新情報をお伝えしていきます。









