EUはシェンゲン協定加盟国への渡航に、新しいデジタル出入国管理システム「EES」を導入しました。これにより、パスポートへのスタンプ押印が廃止され、生体認証(顔・指紋)による登録が必須となります。初回は登録に時間がかかりますが、データは3年間有効です。セキュリティ強化と滞在管理の自動化が目的で、日本を含む非EU短期滞在者が対象。導入初期は国境での混雑が予想されるため、余裕を持った旅行計画が重要です。
欧州連合(EU)は、シェンゲン協定加盟国への渡航における新しいデジタル出入国管理システム「EES(Entry/Exit System)」を完全に施行しました。これにより、長年慣れ親しんだパスポートへのスタンプ押印が廃止され、生体認証による登録が必須となります。ヨーロッパへの旅行を計画している方は、この大きな変更点とそれに伴う影響を理解し、十分な準備をしておく必要があります。
EESとは?- 新しい出入国管理システムの全貌
EESは、日本を含むEU域外(非EU)からシェンゲン協定加盟国へ渡航する短期滞在者のための、自動化されたITシステムです。これまで入国審査官が手作業で行っていたパスポートへのスタンプ押印に代わり、旅行者の出入国記録をデジタルで管理します。
パスポートへのスタンプ廃止と生体認証の導入
最も大きな変更点は、パスポートへの出入国スタンプが完全になくなることです。代わりに、シェンゲン域内に初めて入国する際に、国境の自動キオスク端末などで以下の生体認証情報を登録する必要があります。
- 顔画像のスキャン
- 指紋のスキャン(4本指)
一度登録すれば、この生体認証データは3年間有効です。2回目以降の渡航では、よりスムーズな出入国手続きが期待されますが、初回登録時には手続きに時間がかかる可能性があるため注意が必要です。
EESの目的:セキュリティ強化と滞在管理の自動化
このシステムの主な目的は、国境管理の強化と効率化です。EESは旅行者の出入国日時と場所を自動的に記録し、「あらゆる180日の期間内で最大90日間」というシェンゲン協定の短期滞在ルールを正確に追跡します。
これにより、滞在期間を超過した旅行者(オーバーステイ)を迅速かつ確実に特定できるようになります。また、収集されたデータは、テロ対策や国境を越える重大犯罪の防止・捜査にも活用され、シェンゲン域内全体のセキュリティ向上に貢献します。
旅行者への具体的な影響と準備すべきこと
この新システムの導入は、私たち旅行者に直接的な影響を及ぼします。特に以下の点に注意し、余裕を持った旅行計画を立てることが重要です。
国境での混雑と待ち時間の増加に注意
システムの導入初期は、旅行者や空港職員が新しい手続きに慣れていないため、空港、港、陸路の国境検問所で通常以上の混雑と待ち時間の発生が予測されます。特に、初めてEESで登録を行う旅行者が多い便が到着する時間帯は、入国審査に時間がかかることが考えられます。
ヨーロッパでの乗り継ぎを予定している場合は、乗り継ぎ時間を十分に確保するなど、これまで以上にゆとりのあるスケジュールを組むことを強くお勧めします。
対象となる旅行者と国
EESの対象となるのは、観光や短期商用など、短期滞在ビザでシェンゲン協定加盟国を訪れる、日本を含むEU市民以外のすべての渡航者です。
対象となる国は、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどを含むシェンゲン協定加盟国27カ国です。(一部EU加盟国でもシェンゲン協定非加盟の国や、EU非加盟でも協定に加盟している国があります。)
EES導入の背景と今後の展望
EESの導入は、単なる手続きのデジタル化にとどまらず、ヨーロッパ全体の安全保障と人の移動を管理する大きな枠組みの一環です。
なぜ今、EESが導入されるのか?
近年の世界的な安全保障上の脅威の増大や、移民問題への対応、そしてテクノロジーの進化を背景に、EUはより近代的で堅牢な国境管理システムを構築する必要に迫られていました。EESは、正確なデータに基づいた国境管理を実現し、潜在的なリスクを低減するための重要なステップです。
ETIASとの連携とヨーロッパ渡航の未来
EESは、2025年半ばに導入が予定されているETIAS(エティアス:欧州渡航情報認証制度)と密接に連携して機能します。
ETIASは、シェンゲン協定加盟国にビザなしで渡航する際に必要となる、事前の電子渡航認証です。アメリカのESTAやカナダのeTAに似た制度で、渡航前にオンラインで申請し、認証を受ける必要があります。
将来的には、「ETIASで事前認証」→「EESで国境での出入国を記録」という二段構えのシステムが確立されます。これにより、ヨーロッパへの渡航はより安全性が高まる一方で、渡航前の準備と国境での手続きがこれまでとは大きく異なる形になります。
長期的には、これらのデジタルシステムが安定稼働すれば、自動化ゲートの普及などにより、出入国手続きは現在よりも迅速化される可能性があります。しかし、当面の間は、旅行者一人ひとりが新しいルールを理解し、時間に余裕を持って行動することが、快適なヨーロッパ旅行の鍵となるでしょう。
simvoyageでは、今後もEESやETIASに関する最新情報をお届けしていきます。渡航前には必ず公式サイトなどで最新の情報を確認するようにしてください。

