欧州連合(EU)が、セルビアやアルバニアなど西バルカン諸国に対し、シェンゲン圏へのビザなし渡航制度を見直す可能性を警告しました。これは、一部の国がEUとは異なる緩いビザ政策を維持していることが原因です。この問題は、私たちの旅行にどのような影響を与える可能性があるのでしょうか。背景と今後の見通しを詳しく解説します。
なぜEUは警告しているのか?
ビザ政策の「ズレ」が問題に
現在、セルビア、アルバニア、モンテネグロ、北マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴビナの市民は、最長90日間、ビザなしでシェンゲン圏に渡航できます。これは、これらの国々のEU加盟に向けたプロセスの一環として認められてきた特例措置です。
しかし、問題となっているのは、これらの国々がEUとは足並みを揃えず、独自のビザ政策を維持している点です。例えば、EUがビザを必要とするロシア、中国、トルコ、インド、キューバなどの国民に対し、一部のバルカン諸国はビザなしでの入国を許可しています。
EUは、この制度が「裏口」として利用され、ビザなしでバルカン諸国に入国した人々が、そこから陸路でEU域内へ不正規に入国するルートになっていると強く懸念しています。
データが示す「西バルカンルート」の現実
この懸念は具体的な数字にも表れています。欧州国境沿岸警備機関(Frontex)によると、西バルカンルートを経由する不正規の越境者数は近年急増しています。2022年にはこのルートで約14万5600件の不正規越境が検出され、これは前年比で136%増という驚異的な増加率でした。
こうした状況を受け、EUは西バルカン諸国に対し、EUのビザ政策と自国の政策を一致させるよう強く要求。改善が見られない場合は、国民のシェンゲン圏へのビザなし渡航資格を一時的に停止するという、厳しい措置も辞さない構えを見せています。
旅行者への影響と今後の見通し
日本人旅行者への直接的な影響は?
現時点で、この問題が日本のパスポートを持つ旅行者に直接的な影響を与える可能性は低いでしょう。日本はシェンゲン協定に基づき、EU加盟国へのビザなし渡航が認められており、この権利が変更されるわけではありません。
しかし、バルカン半島を周遊する旅行者は、現地の情勢に注意を払う必要があります。国境での審査が以前より厳格化されたり、地域の政治的な緊張が高まったりする可能性は否定できません。
予測される今後の展開
EU加盟を目指す西バルカン諸国にとって、EUとの良好な関係は不可欠です。そのため、多くの専門家は、これらの国々が最終的にEUの要求に応じ、ビザ政策を厳格化する可能性が高いと見ています。
実際に、セルビアは過去にEUからの圧力に応じて、チュニジアやブルンジ国民へのビザなし渡航を停止した経緯があります。今後も同様に、ロシアや中国など他の国々に対してもビザ要件を課す動きが進むと予測されます。
もしビザなし渡航制度が一時停止される事態となれば、影響を受けるのはあくまで対象となるバルカン諸国のパスポートを持つ人々です。彼らが観光やビジネスでシェンゲン圏を訪れる際には、新たにビザの取得が必要となります。
旅行者が心に留めておくべきこと
- 最新情報の確認: バルカン半島への渡航を計画している方は、現地の情勢が変化する可能性があるため、出発前に外務省の海外安全情報や、経由地の入国要件などを必ず確認してください。
- 周遊計画: 複数の国を巡る場合は、国境管理の状況に変化がないか、最新のニュースをチェックすることをおすすめします。
この問題は、EUの安全保障と西バルカン諸国の経済・外交が複雑に絡み合っています。私たち旅行者にとっても、ヨーロッパの自由な移動が当たり前ではないことを再認識させられるニュースと言えるでしょう。simvoyageでは、今後も国際的な渡航に関する重要な情報をお届けしていきます。

