中東のリーディングエアラインであるエミレーツ航空が、旅行者の機内での過ごし方に大きな影響を与える新たな方針を発表しました。2025年10月1日より、同社のすべてのフライトにおいて、パワーバンク(モバイルバッテリー)の機内での使用および充電が全面的に禁止されます。
この決定は、長距離フライトでスマートフォンやタブレットなどの電子機器を多用する現代の旅行者にとって、大きな驚きとなるでしょう。なぜエミレーツ航空はこの決定を下したのか、その背景と今後の旅行で私たちが取るべき対策について詳しく解説します。
安全性確保が最優先:パワーバンク禁止の背景
今回の決定の核心にあるのは、乗客と乗務員の安全確保です。パワーバンクに内蔵されているリチウムイオンバッテリーは、過充電や外部からの衝撃、製造上の欠陥などによって、発熱・発火するリスクを抱えています。
増加するリチウムイオンバッテリー関連のインシデント
実際に、航空機内でのリチウムイオンバッテリーに関連するインシデントは年々増加傾向にあります。米国連邦航空局(FAA)の報告によると、2006年3月から2024年1月までの間に、航空貨物や手荷物に含まれるリチウムバッテリーが原因となったインシデントは466件にものぼります。
これらの事案は、発煙から火災に至るまで様々で、一歩間違えれば大惨事につながりかねません。上空で発生した場合、消火活動は極めて困難であり、航空会社がこうしたリスクを最小限に抑えようとするのは当然の流れと言えます。
エミレーツ航空は、業界の安全基準をリードする立場として、予防的な措置を講じることを選択しました。なお、パワーバンクの機内持ち込み自体は引き続き可能ですが、預け入れ手荷物に入れることは固く禁じられています。機内では電源をオフにし、使用しない状態で保管する必要があります。
旅行者への影響と航空業界の未来
この新ルールは、特にエミレーツ航空を利用する長距離路線の旅行者に直接的な影響を与えます。
デジタルデバイス時代の新たな課題
ドバイを経由してヨーロッパやアフリカへ向かうフライトでは、10時間以上を機内で過ごすことも珍しくありません。その間、スマートフォンで映画を観たり、音楽を聴いたり、仕事をしたりする旅行者にとって、パワーバンクは必需品でした。
今後は、デバイスのバッテリー残量を気にしながらフライト時間を過ごすことになります。特に、到着後すぐに連絡を取ったり、地図アプリを使ったりする必要がある場合、バッテリー切れは深刻な問題となり得ます。
他の航空会社も追随する可能性
エミレーツ航空は、サービスと安全性の両面で世界の航空業界に大きな影響力を持つ会社です。今回の決定が、他の航空会社のポリシー見直しのきっかけとなる可能性は十分に考えられます。
もし、パワーバンクの機内使用禁止が業界のスタンダードとなれば、私たちの空の旅のスタイルは大きく変わるかもしれません。各航空会社の今後の動向を注視していく必要があります。
旅行者が今からできる準備と対策
2025年10月1日以降にエミレーツ航空を利用する予定の方は、以下の対策を心掛けることで、不便を最小限に抑えることができます。
出発前のフル充電と省エネ設定の徹底
最も基本的で重要な対策は、搭乗前にすべての電子機器を100%まで充電しておくことです。空港のラウンジや搭乗ゲート付近にある充電ステーションを最大限に活用しましょう。
また、機内ではバッテリー消費を抑える工夫も有効です。
- スマートフォンを「機内モード」に設定する
- 画面の明るさを下げる
- 使用しないアプリは完全に終了させる
- 「低電力モード」や「バッテリーセーバー」を活用する
機内設備とオフラインコンテンツの活用
幸いなことに、エミレーツ航空の多くの機材には、各座席にUSBポートや電源コンセントが設置されています。パワーバンクを介さずに、デバイスを直接コンセントに接続して充電することは引き続き可能です。お手持ちの充電ケーブルとアダプターを忘れずに機内持ち込み手荷物に入れましょう。
また、これを機に、エミレーツ航空が誇る機内エンターテイメントシステム「ice」を存分に楽しむのも良いでしょう。最新の映画や音楽、ゲームなど、数千のチャンネルが用意されており、手持ちのデバイスを使わなくても十分に楽しめます。読書やオフラインで楽しめるコンテンツを事前にダウンロードしておくのも賢い方法です。
安全な空の旅のための新たな常識へ
エミレーツ航空によるパワーバンクの機内使用禁止は、一見すると不便に感じるかもしれません。しかし、これは全ての乗客の安全を守るための重要な一歩です。
私たち旅行者は、この変化を理解し、準備を整えることで、これまでと変わらず快適で安全な空の旅を続けることができます。simvoyageでは、今後もこうした重要な航空ニュースをいち早くお伝えし、皆様の旅をサポートしてまいります。









