欧州への旅行者向けに、EU・シェンゲン協定加盟国で新たなデジタル国境管理システム「EES」が導入されます。これにより、パスポートへのスタンプ押印が廃止され、顔や指紋などの生体認証を含む出入国データがデジタルで一元管理されます。目的はセキュリティ強化と不法滞在防止で、滞在期間が厳格に追跡されます。
欧州への旅行を計画している方に、非常に重要なニュースです。欧州連合(EU)およびシェンゲン協定加盟国は、国境管理を大きく変える新しいデジタルシステム「エントリー/エグジット・システム(EES)」の導入を決定しました。これにより、長年親しまれてきたパスポートへの入国・出国スタンプが廃止され、より高度なデジタル管理へと移行します。今回は、このEESが旅行者にどのような影響を与えるのか、背景や今後の展望とあわせて詳しく解説します。
新システム「エントリー/エグジット・システム(EES)」とは?
EESは、EU域外(非EU)国籍の短期滞在者がシェンゲン協定加盟国の国境を越える際の情報を、自動で記録・管理するための電子システムです。これまで入国審査官が手作業で行っていたパスポートへのスタンプ押印に代わり、旅行者の出入国データをデジタルで一元管理します。
EESの目的と仕組み
このシステムの主な目的は、国境管理の近代化、セキュリティの強化、そして不法滞在の防止です。具体的には、以下の情報が収集・記録されます。
- 氏名、国籍、生年月日などの身分事項
- パスポート情報
- 顔画像データ
- 指紋データ(4本指)
- 出入国の日時と場所
収集されたデータは、最大3年間(滞在期間を超えた場合は最大5年間)安全に保管されます。これにより、「過去180日間のうち最大90日間」というシェンゲン協定の滞在ルールが、システムによって正確に自動計算されるようになります。
対象となる国と旅行者
EESは、アイルランドを除くEU加盟国と、アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタインといった非EUのシェンゲン協定加盟国、合計約30カ国で導入されます。
対象となるのは、これらの国々へ短期滞在(観光、商用など)で訪れる、ビザ免除対象国の国民(日本国民を含む)および短期滞在ビザが必要な国の国民です。
旅行者への具体的な変更点
では、実際に私たちの旅行はどのように変わるのでしょうか。
パスポートへのスタンプ押印が廃止
最も大きな変更点は、パスポートへのスタンプがなくなることです。旅の記念としてスタンプを集めていた方には少し寂しいニュースかもしれませんが、これにより手続きの自動化が進みます。
生体認証データ(顔・指紋)の登録が必須に
初めてEES対象国に入国する際、旅行者は国境に設置された自動化ゲート(キオスク端末)で、顔写真の撮影と指紋(4本指)のスキャンを行う必要があります。この初回登録さえ済ませてしまえば、次回以降の渡航ではよりスムーズな出入国が期待できます。一部の国では、渡航前にデータを登録できるモバイルアプリの提供も計画されています。
滞在期間の厳格な管理
EESは滞在期間を正確に追跡するため、オーバーステイ(不法滞在)の発見が容易になります。旅行者はこれまで以上に自身の滞在日数を正確に把握し、ルールを遵守することが求められます。
背景:なぜ今、EESが導入されるのか?
EES導入の背景には、近年の国際情勢の変化があります。EUは、増加し続ける渡航者に対応し、国境管理の効率化と時間短縮を図る必要に迫られていました。同時に、テロ対策や組織犯罪への対応として、域内に出入りする人物の情報をより正確に把握し、セキュリティレベルを向上させることが急務となっていました。
EESは、EUが推進する「スマートボーダー(賢い国境管理)」構想の中核をなすプロジェクトであり、国境管理を21世紀の基準へとアップデートするための重要な一歩と言えます。
予測される影響と今後の展望
旅行者のメリットと注意点
長期的には、EESによって国境での待ち時間が短縮され、よりスムーズな旅行が実現すると期待されています。滞在期間も明確に管理されるため、意図せずルールを破ってしまうリスクも減るでしょう。
一方で、導入初期にはシステムの不具合や、操作に不慣れな旅行者による混雑が発生する可能性があります。特に初回の生体認証登録には時間がかかることが予想されるため、当面の間は空港などでの手続きに余裕を持ったスケジュールを組むことをお勧めします。また、個人情報である生体認証データの管理については、プライバシー保護の観点から今後も議論が続くでしょう。
ETIAS(エティアス)との連携
EESは、今後導入が予定されている「欧州渡航情報認証制度(ETIAS)」と連携して機能します。ETIASは、ビザ免除国からの渡航者に対して、事前にオンラインで渡航認証の申請を義務付けるものです。
- EES: 誰が、いつ、どこから出入りしたかを「記録」するシステム
- ETIAS: 渡航前に、渡航者が安全上のリスクをもたらさないかを「審査・認証」するシステム
この二つのシステムが組み合わさることで、欧州の国境管理はより多層的で強固なものになります。ETIASは2025年半ばの導入が予定されており、日本のパスポートで渡航する際も事前の申請が必要となる見込みです。
まとめ:欧州へ渡航する前に知っておくべきこと
EESの導入は、欧州への渡航手続きにおける歴史的な転換点です。パスポートのスタンプという慣習が終わりを告げ、私たちのデータはデジタルで管理される時代が始まります。
これから欧州へ旅行される方は、以下の点を心に留めておくと良いでしょう。
- 最新情報の確認: EESの正確な開始時期や、渡航先の国の具体的な手続き方法について、航空会社や大使館の公式サイトで最新情報を常に確認しましょう。
- 時間に余裕を持つ: 特に導入初期の渡航では、空港での手続きに通常より時間がかかる可能性を考慮し、余裕を持った計画を立てましょう。
- ETIASへの備え: 今後の渡航に備え、ETIAS制度についても情報を収集し、導入された際には忘れずに申請するようにしましょう。
simvoyageでは、今後も皆様の快適で安全な旅行をサポートするため、最新の情報をお届けしてまいります。

