中国は一部の国へのビザ免除措置でインバウンド観光が回復傾向にあるものの、パンデミック前の水準には遠い。国際線フライトの回復遅れや、モバイル決済が主流のキャッシュレス社会への対応が課題となっている。しかし、決済アプリの国際カード連携強化など改善が進んでおり、今後、ビザ免除対象国の拡大やフライト増便が期待される。旅行を計画する際は、フライトの早期予約や決済アプリの準備が推奨される。
中国が一部の国を対象に導入したビザ(査証)免除措置が、同国のインバウンド観光市場に明るい兆しを見せています。しかし、パンデミック以前の賑わいを取り戻すには、まだいくつかの課題が横たわっているのが現状です。今回は、中国の観光回復の現在地と、旅行者が知っておくべきポイント、そして今後の展望について掘り下げていきます。
ビザ免除措置の効果と回復の現状
2023年12月、中国政府はフランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6カ国を対象に、最大15日間の滞在が可能なビザなし渡航を試験的に開始しました。この政策は即座に効果を発揮し、中国国家移民管理局によると、措置開始後の12月には、これら6カ国からの入国者数は前月比で28.5%増となる約21万4,000人を記録しました。
この動きは、停滞していた人的交流を再活性化させる大きな一歩として歓迎されています。その後、スイスやアイルランドなど対象国が追加され、中国が国際観光の門戸をさらに広げようとする姿勢がうかがえます。
しかし、これらのポジティブな動きにもかかわらず、中国全体のインバウンド観光客数は、パンデミック前の2019年の水準には遠く及んでいません。観光客が本格的に戻るには、いくつかの「壁」が存在しているのが実情です。
完全回復への「壁」:旅行者が直面する2つの課題
なぜ観光客の回復ペースは緩やかなのでしょうか。主な要因として、航空便と決済インフラの問題が指摘されています。
国際線フライトの回復の遅れ
現在、中国と世界各国を結ぶ国際線のフライト数は、パンデミック以前の水準まで回復していません。中国民用航空局のデータを見ても、2023年末時点での国際旅客便数は2019年同期比で6割程度にとどまっています。
フライト数が少ないことは、航空券価格の高騰や、希望する日程での予約の難しさに直結します。特に欧米からの長距離路線ではその影響が大きく、旅行の計画を立てる上での心理的・経済的なハードルとなっています。
キャッシュレス社会の壁
もう一つの大きな課題が、中国で急速に普及したモバイル決済システムです。都市部では、Alipay(支付宝)やWeChat Pay(微信支付)が決済の主流となっており、現金やクレジットカードが使えない店舗も少なくありません。
これまで、これらのアプリを利用するには中国国内の銀行口座や電話番号が必要な場合が多く、外国人旅行者にとっては非常に高いハードルでした。しかし、この問題には改善の動きが見られます。近年、AlipayとWeChat PayはVisaやMastercardといった国際的なクレジットカードとの連携を強化し、外国人旅行者でもアプリにカードを登録すれば簡単に決済できるようになりました。旅行前にアプリをダウンロードし、自身のクレジットカードを登録しておくことで、現地での支払いが格段にスムーズになります。
今後の展望と旅行者への影響
中国政府は、観光客誘致に向けてさらなる施策を講じると考えられます。ビザ免除対象国のさらなる拡大や、国際線の増便に向けた航空会社への働きかけ、そして外国人旅行者向けの決済環境の継続的な改善などが期待されます。
これから中国への旅行を計画する方は、以下の点を準備しておくと良いでしょう。
- フライトの早期予約: 選択肢が限られる可能性があるため、早めに航空券を確保することをお勧めします。
- 決済アプリの準備: 出発前にAlipayまたはWeChat Payをスマートフォンにインストールし、クレジットカードを連携させておきましょう。
- 少額の現金の用意: 万が一に備え、交通機関や小規模な店舗で使えるよう、少額の人民元を携帯しておくと安心です。
中国のインバウンド市場の回復は、アジア太平洋地域全体の観光業にも大きな影響を与えます。フライト数の回復やインフラの整備が進めば、かつてのような賑わいが戻る日も遠くないでしょう。ビザ免除という追い風を受け、壮大な歴史と最先端の文化が融合する中国への旅は、今後ますます身近なものになっていくことが期待されます。

