アメリカ西海岸を代表する航空会社の一つ、アラスカ航空が国際線ネットワークの拡大に大きく舵を切りました。同社のハブ空港であるシアトル・タコマ国際空港(SEA)を起点に、ロンドンおよびレイキャビクへのアクセスを大幅に強化。これにより、太平洋岸からヨーロッパへの旅行がより便利になる一方、航空会社間の競争は新たな局面を迎えています。
背景:西海岸の雄、国際線へ本格進出
これまでアラスка航空は、米国内線、特にアラスカ州とアメリカ西海岸を結ぶ路線に強みを持つ航空会社として知られていました。しかし、2021年3月31日に航空アライアンス「ワンワールド」に正式加盟したことを機に、その戦略は大きく転換します。
ワンワールドには、日本航空(JAL)、ブリティッシュ・エアウェイズ、アメリカン航空、カタール航空といった世界の名だたる航空会社が加盟しており、このグローバルネットワークへの参加が、アラスカ航空の国際線展開を加速させる原動力となりました。加盟から数年を経て、その効果が具体的な路線拡充として現れ始めたのです。
新戦略の目玉:ロンドンとレイキャビクへのアクセス強化
今回の国際線強化の核となるのが、ヨーロッパの主要都市であるロンドンと、近年トランジット拠点として注目を集めるアイスランドの首都レイキャビクへの路線です。
欧州の玄関口、ロンドンへ
アラスカ航空は、同じワンワールド加盟社であるブリティッシュ・エアウェイズとの提携を強化し、シアトルからロンドン・ヒースロー空港(LHR)へのアクセスを向上させています。これにより、利用者はアラスカ航空で予約・発券を行い、スムーズにブリティッシュ・エアウェイズ運航便で大西洋を渡ることが可能になりました。ロンドンはヨーロッパ最大のハブ空港の一つであり、ここを経由して大陸各地へ向かう旅行者にとって、乗り継ぎの利便性が格段に高まります。
北欧への新たな翼、レイキャビク線
さらに注目すべきは、アイスランド航空との新たなパートナーシップによるシアトル-レイキャビク(ケプラヴィーク国際空港、KEF)線の開設です。2024年5月より、両社はコードシェア(共同運航)を開始。これにより、アラスカ航空の利用者は、同社のネットワークを通じてアイスランド、さらにはアイスランド航空が持つスカンジナビア半島やヨーロッパ主要都市への路線網を手軽に利用できるようになりました。地理的に北米とヨーロッパの中間に位置するアイスランドは、乗り継ぎ時間を有効活用して観光を楽しむ「ストップオーバー」の目的地としても人気が高く、新たな旅のスタイルを提案しています。
旅行者へのメリットと予測される影響
この戦略的な路線拡大は、旅行者と航空業界全体に大きな影響を与えると予測されます。
旅行者の選択肢と利便性の向上
シアトルを拠点とする旅行者や、アメリカ西海岸の各都市からシアトル経由でヨーロッパを目指す旅行者にとって、選択肢は飛躍的に増加しました。特に、アラスカ航空が誇る顧客満足度の高いサービスと、評判の高いマイレージプログラム「Mileage Plan」を、ヨーロッパへの長距離路線でも活用できる点は大きな魅力です。提携航空会社のフライトでもマイルを貯めたり使ったりできるため、旅のコストパフォーマンス向上にも繋がります。
激化するシアトルのハブ空港競争
シアトル・タコマ国際空港は、デルタ航空もハブ空港として重要視しており、長年アジア路線を中心に激しい競争が繰り広げられてきました。今回アラスカ航空がヨーロッパ路線を強化したことで、この競争の舞台は大西洋路線にも拡大します。事実、シアトル・タコマ国際空港の2023年の国際線旅客数は約550万人に達し、前年から25%以上増加するなど、国際的なゲートウェイとしての重要性は増すばかりです。航空会社間の競争がサービス向上や運賃価格の安定に繋がる可能性があり、利用者にとっては歓迎すべき状況と言えるでしょう。
まとめ:アラスカ航空の次なる一手と旅行の未来
アラスカ航空によるヨーロッパ路線の強化は、同社が国内線中心のキャリアから、グローバルなネットワークを持つ航空会社へと進化を遂げるための重要な一歩です。ワンワールド・アライアンスという強力な基盤を活かし、今後も新たな国際線の開設が期待されます。
私たち旅行者は、こうした航空業界のダイナミックな動きを追いかけることで、これまで以上に多様で魅力的な旅を計画することができます。シアトルの空から広がる新たな翼が、次のヨーロッパ旅行の選択肢をより豊かにしてくれることは間違いありません。









