欧州連合は、セキュリティ強化のため新たな出入国管理システム「EES」と渡航認証制度「ETIAS」を導入します。EESは2025年10月から生体認証によるデジタル管理に移行し、パスポートのスタンプが廃止されます。ETIASは2026年後半から日本人を含む非EU市民に事前のオンライン申請を義務付けます。これにより、渡航手続きが大きく変わり、導入当初は待ち時間が増える可能性がありますが、長期的には審査の効率化と安全性の向上が期待されます。旅行者は最新情報を確認し、ETIASの事前申請や余裕を持った計画が必要です。
欧州への旅行を計画している方に重要なお知らせです。欧州連合(EU)は、シェンゲン協定加盟国をはじめとする30カ国で、新たな出入国管理システム「EES」と渡航認証制度「ETIAS」の導入を決定しました。これにより、日本人旅行者を含む多くの非EU市民の渡航手続きが大きく変更されます。
この記事では、旅行サイト「simvoyage」として、これらの新制度がいつから始まり、具体的に何が変わるのか、そして旅行者は何を準備すべきかを、背景情報や今後の予測も交えながら詳しく解説します。
なぜ新しい制度が必要なのか?背景を解説
今回の制度変更の背景には、欧州全体のセキュリティ強化と国境管理のデジタル化という二つの大きな目的があります。
これまで、非EU市民の出入国管理はパスポートへのスタンプ押印によって行われてきました。しかし、この方法は偽造のリスクがあるほか、「あらゆる180日間において最大90日間」というシェンゲン協定の滞在ルールを正確に追跡することが困難でした。
近年の国際情勢の変化を受け、EUは域内の安全を確保するため、誰が、いつ、どこに出入国しているかをより正確に把握する必要があると判断しました。そこで、生体認証技術を活用したデジタルシステムを導入し、保安レベルの向上と出入国手続きの効率化を同時に実現することを目指しているのです。
2つの新制度:EESとETIASの詳細
今回の変更の柱となるのは「EES」と「ETIAS」という2つのシステムです。それぞれ役割が異なるため、分けて理解することが重要です。
EES(出入国管理システム):さよなら、パスポートのスタンプ
EES(Entry/Exit System)は、国境での出入国手続きを自動化する新しいシステムです。
- 導入時期:2025年10月から段階的に開始予定
- 対象国:シェンゲン協定加盟国を中心としたEU加盟25カ国と、非EU加盟国であるノルウェー、アイスランド、スイス、リヒテンシュタインを含む計30カ国。
- 対象者:日本人を含む、短期滞在(観光やビジネスなど)でこれらの国々を訪れる非EU市民。
何が変わるのか?
- 生体認証情報の登録:EES対象国に初めて入国する際、空港などの国境審査官の前で、指紋(4本指)と顔写真の登録が必要になります。一度登録した情報は3年間有効です。
- パスポートへのスタンプ廃止:EESの導入に伴い、パスポートへの出入国スタンプの押印が廃止されます。出入国記録はすべてデジタルデータとして管理されます。
- 審査の自動化:2回目以降の渡航では、自動化ゲート(e-gate)などを利用し、生体認証によってスムーズに出入国審査を通過できるようになります。
- 滞在期間の厳格な管理:「あらゆる180日間で最大90日間」の滞在ルールがシステムによって自動計算されるため、オーバーステイの管理がより厳密になります。
ETIAS(欧州渡航情報認証制度):渡航前のオンライン申請が必須に
ETIAS(European Travel Information and Authorisation System)は、これまでビザなしで渡航できた国の市民に対して、事前の渡航認証を義務付ける制度です。これは米国のESTAやカナダのeTAに類似しています。
- 導入時期:2026年後半に開始予定
- 対象者:日本、米国、英国、韓国、カナダなど、ビザ免除協定を結んでいる60以上の国・地域の市民。
何が変わるのか?
- 事前のオンライン申請:対象国の市民は、欧州へ渡航する前にETIASの公式ウェブサイトまたはモバイルアプリから渡航認証を申請する必要があります。
- 申請情報:申請には、氏名、生年月日、パスポート情報などの個人情報に加え、健康状態や犯罪歴に関するいくつかの質問に回答する必要があります。
- 費用と有効期間:申請には7ユーロの手数料がかかります(18歳未満および70歳以上は無料)。一度認証されると、有効期間は3年間、またはパスポートの有効期限が切れるまでとなります。
- 早めの申請を推奨:申請の承認は通常数分で完了しますが、追加の審査が必要な場合は最大で30日かかることもあります。そのため、航空券や宿泊先を予約する前に、余裕を持って申請することが強く推奨されます。
旅行者への影響と予測される未来
これらの新制度は、私たちの欧州旅行にどのような影響を与えるのでしょうか。
導入初期の注意点
EESの導入当初は、空港での生体認証情報の登録に時間がかかり、入国審査で通常より長い待ち時間が発生することが懸念されています。特に、初めてEES対象国を訪れる方は、乗り継ぎ時間などに十分な余裕を持たせたスケジュールを組むことが賢明です。
また、ETIASが開始されると、申請を忘れたために航空会社から搭乗を拒否されたり、現地で入国トラブルに発展したりするケースが出てくる可能性があります。渡航前には必ずETIASの申請を済ませるという新しい習慣を身につける必要があります。
制度定着後のメリット
一方で、これらの制度が定着すれば、長期的には多くのメリットが期待できます。 EESにより、出入国審査が自動化・迅速化され、国境での待ち時間が短縮されます。頻繁に欧州を訪れる旅行者にとっては、パスポートのスタンプでページが埋まってしまう心配がなくなるのも嬉しい点です。
ETIASによる事前審査は、欧州全体のセキュリティを向上させ、私たち旅行者がより安心して滞在できる環境に繋がります。
まとめ:これからの欧州旅行で準備すべきこと
最後に、今後の欧州旅行に向けて私たちが準備すべきことをまとめます。
- 最新情報の確認:導入時期は変更される可能性があるため、渡航前には必ずEUの公式サイトなどで最新情報を確認しましょう。
- ETIASの事前申請:2026年後半以降に渡航を計画する場合、出発のずっと前にETIASの申請を済ませておくことを忘れないでください。
- 時間に余裕を持った計画:EES導入後、初めて対象国を訪れる際は、空港での手続きに時間がかかることを想定し、余裕を持ったフライトスケジュールを組みましょう。
欧州の出入国ルールは、より安全で、よりスマートな形へと進化しようとしています。私たち旅行者もこの変化に適応し、事前の準備をしっかりと行うことで、これまでと変わらず素晴らしい欧州の旅を楽しむことができるでしょう。
simvoyageでは、今後もこれらの新制度に関する最新情報をお届けしていきます。

