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    野生の鼓動がすぐそこに。オーストラリア「Bredl’s Wildlife Sanctuary」で魂が震える究極の動物体験

    ざわめくユーカリの森、乾いた赤土の匂い、そしてどこからか聞こえてくる、聴き慣れない生き物の鳴き声。日常の喧騒から遠く離れたオーストラリア、クイーンズランド州の奥地に、旅人の常識を覆す場所があります。そこは、動物たちが「展示」されるのではなく、ありのままの姿で「共生」している聖域。その名も「Bredl’s Wildlife Sanctuary(ブレドルズ・ワイルドライフ・サンクチュアリ)」。

    アパレルの仕事で世界中を旅する中で、たくさんの美術館や美しい街並みに出会ってきましたが、ここで得られた感動は、どんなアートにも勝る、原始的で、力強いものでした。それは、巨大なクロコダイルに自分の手で餌をあげ、ふわふわのコアラを腕に抱き、大蛇を首に巻くという、まさに五感を揺さぶる体験。

    この記事では、単なる観光スポット紹介ではありません。あなたが実際にこのサンクチュアリを訪れ、私と同じように、あるいはそれ以上に深い感動を味わうための、具体的なステップや準備、そして心構えまでを、私の体験と共にお伝えします。画面越しでは決して伝わらない、生命の温もりと野生の鼓動。さあ、一緒にオーストラリアの大地へと旅立ちましょう。

    目次

    Bredl’s Wildlife Sanctuaryとは? – ただの動物園じゃない、魂の触れ合いが待つ場所

    このサンクチュアリの話題を語る際、創設者であるブレドル・ファミリー、特に「The Barefoot Bushman(裸足のブッシュマン)」として名高い故ロブ・ブレドル氏の存在なしには語れません。彼は幼少期からオーストラリアの荒野で育ち、特に爬虫類をはじめとした動物たちと深いつながりを築いてきました。彼の信念は非常にシンプルかつ力強く、「動物を真に理解するためには、彼らの世界に入り込み、敬意をもって接することが不可欠だ」というものでした。

    この信念はサンクチュアリの隅々にまで根付いています。一般的な動物園のようにガラス越しや柵の間から動物を「観察」するのではなく、こちらでは経験豊富なガイド(多くがブレドル・ファミリーのメンバーです)の監督のもと、訪問者自身が動物たちの生活圏に入り込み、直接触れ合うことが認められています。これは、動物保護、教育、そして忘れられない体験の提供という三つの主要な柱に支えられて実現しています。

    ブレドル・ファミリーの情熱が息づく場所

    訪問してまず感じたのは、商業的な雰囲気がまったく漂っていないことでした。洗練されたカフェや土産店が立ち並ぶわけではなく、むしろ手作りの温かみあふれる素朴な空間が広がっています。これは、この場所が利益追求の目的ではなく、動物への純粋な愛情と、その素晴らしさを訪れる人々と共有したいという強い情熱から生まれたことを物語っています。

    案内役を務めてくれたのはロブの息子、ゼブ・ブレドル氏でした。彼の動物たちを見つめる眼差しは、まるで家族を見るかのように優しく、また深い知識に裏打ちされています。ひとつひとつの動物の性格や好み、嫌いなことまでも熟知しており、その語り口からは動物たちへの揺るぎない敬意がひしひしと伝わってきました。このファミリーの存在こそが、サンクチュアリ最大の魅力と言っても過言ではないでしょう。

    アクセスについて — 冒険の始まり

    Bredl’s Wildlife Sanctuaryは、クイーンズランド州の主要観光地であるグレートバリアリーフの玄関口、エアリービーチから車で約1時間半以内の内陸に位置しています。公共交通機関でのアクセスは非常に困難なため、訪問にはレンタカーがほぼ必須です。

    私たちはマッカイ空港でレンタカーを借りて向かいました。主要な高速道路から脇道にそれると、舗装されていない赤土のダートロードが続きます。対向車がほとんどない一本道を進むその様子は、まさに冒険の始まりを思わせます。都会の喧騒が徐々に遠のき、広大なオーストラリアの自然に包まれていく感覚が、期待感を一層高めてくれました。

    ナビゲーションを利用していても、途中で電波が弱くなる可能性があります。事前に地図をダウンロードしたり、オフラインで使える地図アプリを準備しておくと安心です。また、道中にはほとんどガソリンスタンドやコンビニがありませんので、出発前に車の燃料を満タンにし、飲料水や軽食を十分に用意しておくことが強く推奨されます。この多少の不便ささえも、これから始まる特別な体験への序章と言えるでしょう。

    心臓が跳ねる!究極のアクティビティ体験記

    いよいよ、この旅のハイライトであるアクティビティについてご紹介します。ツアーは少人数制で、ガイドが参加者ひとりひとりに細やかに目を配りながら進行します。安全に関する説明をしっかりと聞いた後、私たちは未知の世界へと一歩踏み出しました。

    巨大クロコダイルとの対面 – 恐怖と感動の狭間で

    ツアー初めのクライマックスは、巨大なイリエワニとの遭遇でした。池のほとりに立っていると、ガイドが鶏肉の塊を長い棒の先に付けて水面を叩きます。すると、静かだった水面が波打ち、その下から巨大な影がゆっくりと姿を現しました。体長5メートルはあろうかという巨大なクロコダイル。彼の目は古代から変わらぬ冷静で鋭い光を宿し、厚い皮膚はまるで硬い鎧のごとくでした。

    「さあ、君の番だよ」とガイドに促され、震える手で餌のついた棒を受け取ります。クロコダイルはゆっくりと、しかし確実に私たちの方へ近づいてきます。数十センチの距離まで接近すると、その巨大な顎を天に向けて大きく開きました。そこへ鶏肉を投げ入れると、次の瞬間、「バチン!」と乾いた音が響き渡り、顎が閉じられました。その鋭い音は骨を砕くような力強さを感じさせ、背筋が凍る思いがしました。

    恐怖と興奮が混ざり合い、言葉では表現しきれない感覚。ですが、ガイドのゼブは冷静にクロコダイルの生態を解説してくれました。「彼らは単なる獰猛な生き物ではなく、この生態系の頂点に立つ重要な存在です」と。彼の話を聞きながら目の前の巨大な生命体を見つめると、恐怖は次第に畏敬の念へと変わっていきました。柵もガラスもない、ありのままの対峙。これほど強烈に生命の力強さを感じた瞬間は、これまでにありませんでした。この体験はクイーンズランド州政府観光局の公式サイトでも特別なアクティビティとして紹介されており、その貴重さが伺えます。

    コアラを抱きしめる – ふわふわのぬくもりに癒やされるひととき

    クロコダイルとのスリリングな体験の後は、心が和む触れ合いが待っていました。オーストラリアのシンボルともいえるコアラです。

    多くの動物園では、コアラを抱っこできる時間は短かったり、触れるだけのことが多いのですが、ここでは事情が異なりました。ガイドが眠そうにしているコアラをそっと木から降ろし、私の腕に優しく乗せてくれます。ずっしりとした重みと予想以上にしっかりとした爪が服に食い込む感触。そして、ユーカリの爽やかな香りと動物特有の匂いが混ざり合い、生命の香りがふんわりと鼻をくすぐりました。

    腕の中でコアラはもぞもぞと心地よい場所を探し、やがて私の胸に顔をうずめて落ち着きました。温かい体温と穏やかな寝息が伝わってきます。その愛らしい姿に、先ほどの興奮がすっと解けていくのを感じました。時間も忘れてただそのぬくもりを感じていると、ガイドがコアラの生態について教えてくれました。一日の大半を寝て過ごすこと、特定のユーカリの葉しか食べない偏食家であること、そして現在、生息地の減少により危機に直面している現状も。

    私はコアラの爪が服に引っかかることを考慮し、少し厚手のデニムシャツを着ていましたが、これは正解でした。繊細な素材やレースなど引っかかりやすいデザインの服は避けるのが賢明です。丈夫なコットンやデニム素材のトップスなら、動物も自分も安心して触れ合えます。ファッション好きとしては、機能性とおしゃれを両立させたいところ。アースカラーのサファリシャツにチノパンといった冒険家風のスタイルは、この環境にもよく似合いますよ。

    ヘビを首に巻くスリル – 冷たい生命の感触

    次に案内されたのは、爬虫類の展示エリアでした。正直なところ、私はヘビがあまり得意ではありません。しかし、「The Barefoot Bushman」のサンクチュアリに来たからには、この体験を避けて通るわけにはいきません。

    ガイドが運んできたのは、人の腕ほどの太さがある、美しい模様のカーペットパイソン(ニシキヘビの一種)でした。恐る恐る触れてみると、鱗は驚くほど滑らかでひんやりとしています。ぬるぬるした感触があるという先入観はあっさりと覆されました。

    「首に巻いてみる?」とガイドに誘われ、勇気を振り絞って頷きます。ゆっくりと首筋にかけられると、ずっしりとした重みと共にヘビの筋肉の動きが直に伝わってきます。彼は私の体温を感じ取りながら、心地よい場所を探すかのように、ゆっくりと首に巻きついてきました。そのしっかりとしつつも優しい締め付けは、不思議な安心感すら与えてくれました。

    冷たく滑らかな感触と、自分の脈とは異なるゆったりとした生命の鼓動。最初は緊張していた体も、次第にほぐれていくのが分かりました。ヘビの澄んだ瞳を間近で眺めると、彼らがただ怖い存在ではなく、この地球上で私たちと共生する美しい隣人であることが実感できます。写真で見るのとは全く違う、圧倒的な生き物としての存在感。この体験は私の価値観に少し変化をもたらしてくれました。

    カンガルーやワラビーと過ごす自由な時間 – オーストラリアの大地をともに感じて

    ツアーの合間には、広大な敷地内を自由に歩き回るカンガルーやワラビー、エミューたちと触れ合う時間も設けられています。餌の入った袋を渡され、自由に彼らの間を歩くことができます。

    人に慣れたカンガルーたちは、近づくと興味深そうに寄ってきます。手のひらに餌を載せて差し出すと、柔らかな唇で優しくついばんでくれる。その仕草がなんとも愛おしく感じられました。母親の腹袋から顔をのぞかせる小さな赤ちゃんカンガルー(ジョーイ)を見つけたときには、思わず歓声をあげてしまいました。

    彼らは檻の中にいるわけではありません。ユーカリの木陰で昼寝したり、仲間とじゃれ合ったりと、自分のペースで過ごしています。そんな彼らのテリトリーに招き入れてもらっている、そんな感覚がありました。人間も動物も、同じ大地の上で対等な存在なのだと自然に実感させてくれる空間です。ここでのんびりと動物たちと過ごす時間は、オーストラリアの雄大な自然に溶け込むような、穏やかな瞑想のひとときとなりました。

    旅の準備は完璧に!Bredl’s Wildlife Sanctuary攻略ガイド

    さて、私の興奮冷めやらぬ体験記をお読みいただき、「ぜひ自分も訪れてみたい!」と思われた方のために、ここからは具体的な準備や手続きについて詳しくご案内いたします。このサンクチュアリでの体験を最高のものにするには、何よりも事前の準備が重要です。

    チケット予約から当日までの流れ

    Bredl’s Wildlife Sanctuaryは、大きなテーマパークとは異なり、家族経営のプライベート施設です。そのため、訪問には必ず事前予約が必要です。予約なしのウォークインでの入場は基本的に認められていませんので、計画段階で必ず予約を済ませておきましょう。

    • 予約方法:

    予約は、公式サイトから行うのが最も確実です。サイトには予約用の電話番号が掲載されています。国際電話となりますが、電話で直接予約するのが一般的な方法です。英語のやり取りが不安でも、訪問希望日時、人数、代表者名を伝えれば問題ありません。ゆっくりとシンプルな英語で対応してくれますので、落ち着いて話しましょう。メールの問い合わせフォームもありますが、返信に時間がかかることもあるため、電話予約がスムーズで確実です。

    • 支払いについて:

    重要なポイントとして、支払いは現地で現金(オーストラリアドル)のみの場合が多いことを覚えておいてください。クレジットカードが使用できない可能性がありますので、ツアー料金分の現金を必ず準備しておきましょう。最新の支払い方法は、予約の電話時に直接確認するのがおすすめです。英語で「Can I pay by credit card?」または「Is it cash only?」と尋ねると良いでしょう。

    • 当日の流れ:

    予約時間の15〜20分前には到着するように心がけてください。入口でスタッフに予約名を伝えると受付が行われます。その後、ツアー開始まで指定されたエリアで待機となります。時間になるとガイドが現れ、参加者全員が揃ったところで、安全面に関するブリーフィングが実施されます。非常に重要な説明なので、しっかり聞いてください。

    持ち物リスト&服装ガイド – 快適に一日を過ごすために

    サンクチュアリは自然の地形を活かした場所なので、快適かつ安全に過ごすために持ち物と服装を入念に準備しましょう。

    必須の持ち物リスト

    • 予約確認書類: 電話予約の際も、日時や担当者名などをメモしておくと受付がスムーズです。
    • 現金: ツアー料金の支払いに加え、売店があれば利用できるように十分なオーストラリアドルを持参しましょう。
    • 飲み水: サンクチュアリ内には自動販売機やカフェがありません。特に夏場は気温が非常に高くなるため、1人1リットル以上の水分は必須です。
    • 日焼け対策グッズ: オーストラリアの日差しは日本よりもかなり強烈です。帽子(あご紐付きで風で飛ばされにくいもの)、サングラス、高SPF値の日焼け止めを必ず用意してください。
    • 虫除けスプレー: 豊かな自然環境のため蚊や虫が多くいます。肌の露出部分には出発前にしっかりとスプレーを塗りましょう。

    あると便利な持ち物リスト

    • カメラと予備バッテリー: 貴重な瞬間を逃さないために、スマホカメラよりズーム機能のあるカメラがおすすめです。充電切れを防ぐために予備バッテリーやモバイルバッテリーも携帯すると安心です。
    • ウェットティッシュ・手指消毒ジェル: 動物とふれあった後や軽食時の手の衛生保持に役立ちます。
    • タオル: 汗や泥汚れを拭くのに便利です。
    • 軽食: ツアーは数時間続く場合もあるので、敷地内に食事施設がないことから、チョコバーやナッツなど軽くて携帯しやすいものを持参するとよいでしょう。ただし、動物への食べ物の提供は禁止されています。

    ベストな服装 – 機能性とおしゃれを両立するために

    ファッション業界に身を置く者として、旅先でも見た目と機能性のバランスを大切にしています。このサンクチュアリでの服装のポイントは、「動きやすさ」「汚れに強い素材」「安全性」です。

    • トップス: コアラの爪や鳥の足から肌を守るため、薄手の長袖シャツを羽織るのが理想的です。素材は、引っかかりに強いデニムやチノ、密度の高いコットンが適しています。色は虫が寄りにくいと言われているアースカラー(ベージュ、カーキ、ブラウン系)を選ぶと、自然に馴染み写真映えもします。
    • ボトムス: 長ズボンの着用を強くおすすめします。草むらによる虫刺されやすり傷、日焼けを防げます。ストレッチ性のあるカーゴパンツやトレッキングパンツが動きやすく便利です。ショートパンツは開放的ですが、安全面を考慮すると控えたほうが良いでしょう。
    • 靴: サンダルやヒールは不適切です。舗装されていない地面を歩くため、歩き慣れたスニーカーやウォーキングシューズ、トレッキングシューズを選んで足元をしっかり保護しましょう。
    • アクセサリー: 動物と触れあう際に引っかかったり怪我の原因となる大ぶりのイヤリングやネックレス、ブレスレットは外しておくことを推奨します。

    知っておくべきルールと禁止事項

    サンクチュアリで皆が安全かつ楽しく過ごすために、守るべき重要なルールがあります。これらは動物たちを守るだけでなく、私たち自身の安全確保にも繋がります。

    • ガイドの指示を必ず守ること: もっとも重要なルールです。ガイドは動物の専門家であり、安全確保のために最善の判断を下します。指示されたエリアから外れないことや、決められた触り方以外はしないことを徹底してください。
    • 動物にストレスを与えない: 大きな声を出したり突然走ったりすると、動物が驚きストレスを感じます。落ち着いて行動し、穏やかな態度を心がけましょう。
    • 写真撮影について: 撮影はほとんどの場所で許可されていますが、動物の目に悪影響があるためフラッシュの使用は禁止です。ガイドから撮影に関する指示があれば必ず従ってください。
    • 持ち込み禁止物: ペットの同伴やアルコール飲料の持ち込みは禁止されています。
    • 喫煙について: 敷地内は原則禁煙です。乾燥した環境のため火気の管理が特に厳しくなっています。指定の喫煙場所がある場合は、そちらを利用してください。

    いざという時のトラブル対応

    旅の途中では思わぬトラブルが起きることもあります。事前に対処方法を知っておくことで、落ち着いて対応できます。

    • 悪天候によるキャンセル: 強い雨や嵐などでツアーがキャンセルされることがあります。その際の返金や日程変更の対応は事前に確認しておくのが望ましいです。例えば「What is your cancellation policy in case of bad weather?」と尋ねましょう。多くの場合、施設側の判断で中止された場合は返金や振替が可能です。
    • 道に迷った時: サンクチュアリへの道はわかりづらいことがあります。もし迷ったら慌てず安全な場所に車を停め、サンクチュアリの連絡先へ電話してください。予約前に必ず電話番号を控えておきましょう。
    • 体調不良時: ツアー中に具合が悪くなった場合は我慢せずにすぐガイドに伝えてください。ガイドは応急処置の知識があり、適切な対応を行います。

    これらのポイントをしっかり頭に入れておけば、不安なく思いきりこの素晴らしい体験を楽しむことができるでしょう。

    ブレドル・ファミリーの哲学 – 動物たちとの共生が教えてくれること

    Bredl’s Wildlife Sanctuaryを訪れて最も印象に残ったのは、単なるスリリングな体験だけではありませんでした。それよりも、この場所全体に息づくブレドル・ファミリーの動物たちへの深い愛情と哲学に触れたことでした。

    故ロブ・ブレドル氏は、オーストラリアのテレビ番組やドキュメンタリーを通じて、多くの人々に野生動物の魅力や彼らと共存する意義を伝えてきました。オーストラリア放送協会(ABC)の番組でもその活躍が紹介されており、彼は単なるエンターテイナーにとどまらず、本物のナチュラリストであり教育者でもありました。彼の亡き後も、その情熱は確かに子どもたちに受け継がれています。

    ツアー中、ガイドのゼブは何度も「リスペクト(敬意)」という言葉を繰り返しました。「このクロコダイルは何千万年もの間、地球上で完璧な捕食者として存在し続けている。私たちは彼らの世界にお邪魔しているのだから、敬意を払わなければならない」と。彼の言葉からは、動物を人間に従属させるのではなく、対等な存在として尊重し、その生き様を大切にする強い意思が伝わってきました。

    彼らはまた、傷ついた野生動物の保護や自然への復帰を目指した活動にも取り組んでいます。サンクチュアリにいる動物たちの中には、怪我や病気により野生で生き延びることが難しい個体も含まれています。ここでの収益は、そのような動物たちの餌や治療、施設の維持管理費に充てられています。つまり、私たちがツアー代を支払うことは、間接的にオーストラリアの野生動物保護活動を支援することに繋がっているのです。

    この場所は、私たち人間に大切な教えを与えてくれます。それは自然への畏敬の念と、ほかの生命と共に生きることの価値です。コアラの温かなぬくもりやクロコダイルの逞しさを直に感じることで、私たちは書物や映像からは決して得られない、深い学びを得ることができるのです。

    Bredl’s Wildlife Sanctuary周辺のおすすめスポット

    せっかくこのエリアまで足を運ぶなら、サンクチュアリ訪問に加えて、周辺の魅力的なスポットも巡ることをおすすめします。サンクチュアリでの体験を軸に、充実した旅行プランを考えてみましょう。

    エーアリービーチ (Airlie Beach) – グレートバリアリーフの玄関口

    サンクチュアリから車で約1時間半東へ進むと、世界最大のサンゴ礁エリアであるグレートバリアリーフの観光拠点、エーアリービーチに到着します。サンクチュアリの野趣あふれる雰囲気とは対照的に、明るく開放的なリゾートタウンです。

    • ウィットサンデー諸島ツアー: エーアリービーチからは、世界有数の美しさを誇るホワイトヘブンビーチを含むウィットサンデー諸島へのセーリングツアーが多数催行されています。真っ白なシリカサンドと透き通るターコイズブルーの海のコントラストは、まさに天国の風景です。
    • ハートリーフの遊覧飛行: 空から見ると完璧なハート形に見えるサンゴ礁、ハートリーフ。セスナ機やヘリコプターによる遊覧飛行は、記憶に残るロマンチックなひと時となるでしょう。
    • 洗練されたカフェやレストラン: ビーチ沿いには、おしゃれなカフェやシーフード自慢のレストラン、賑やかなバーが並んでいます。サンクチュアリでの冒険後に、美しい海を眺めながらゆったり過ごす時間は最高の贅沢です。

    ユーインゲラ国立公園 (Eungella National Park)

    サンクチュアリから車で南へ約2時間のところにあるユーインゲラ国立公園は、手つかずの熱帯雨林が広がる自然好きにはたまらないスポットです。

    • カモノハシ観察: この公園最大の魅力は、高確率で野生のカモノハシを見られること。ブロークン・リバー沿いの展望台から静かに水面を見守っていると、愛らしいカモノハシが顔を出すことがあります。その独特で魅力的な姿は必見です。
    • ハイキング: 初心者から上級者まで楽しめる多彩なハイキングコースが公園内にあります。古代から続くシダの森を歩くと、心身ともにリフレッシュできるでしょう。鳥のさえずりや滝のせせらぎに包まれ、マイナスイオンを浴びるひとときは格別です。

    サンクチュアリでの「動」の体験と国立公園での「静」の体験を組み合わせることで、オーストラリアの豊かな自然の多様性と奥深さをより深く感じられる旅になるはずです。

    野生の鼓動を感じる旅へ

    Bredl’s Wildlife Sanctuaryで過ごした一日は、私の旅の記憶の中でもひときわ鮮やかに輝いています。それは単に珍しい動物に出会えたという喜びだけではありません。実際に自分の手で触れ、匂いを感じ、息遣いを間近に感じることで、これまで画面の向こう側にいた彼らが、同じ地球に暮らす「隣人」として鮮明に心に刻まれたのです。

    クロコダイルが顎を閉じる音、コアラのぬくもり、ヘビの滑らかな鱗の感触。これらの感覚は言葉を尽くしても、その本質を完全に伝えるのは難しいかもしれません。だからこそ、私はあなたにもぜひ、自分自身の五感でこの野生の息吹を感じてほしいと願っています。

    旅の準備は少し手間がかかるかもしれません。都心から遠く不便な場所にあり、事前予約や現金の用意も必要です。しかしそのひと手間を乗り越えた先には、あなたの人生観を少し変えてしまうかもしれない、力強くかけがえのない出会いが待っているのです。

    日常を一歩離れ、オーストラリアの大地で生命の根源に触れる旅へ。きっとそこには、あなたがまだ知らない新しい世界への扉が開かれていることでしょう。安全に十分配慮しつつ、好奇心を胸いっぱいに抱えて、最高の冒険を楽しんでください。

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    この記事を書いたトラベルライター

    アパレル企業で培ったセンスを活かして、ヨーロッパの街角を歩き回っています。初めての海外旅行でも安心できるよう、ちょっとお洒落で実用的な旅のヒントをお届け。アートとファッション好きな方、一緒に旅しましょう!

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