アカデミー賞を席巻した映画『ノマドランド』。現代社会の片隅で、家を捨て、車で移動しながら生きる「現代のノマド」たちの姿を静かに、しかし力強く描いたこの作品は、多くの人々の心に深い余韻を残しました。主人公ファーンが辿った道、彼女が見た風景は、単なる映画の背景ではありません。それは、自由と孤独、そしてアメリカという国の広大さを体現する、もう一人の主人公とも言える存在です。私、健司もまた、仕事柄世界中を飛び回る中で、移動し続ける生活にどこか共感を覚えていました。だからこそ、ファーンの魂の軌跡を自らのハンドルで追体験したいという想いに駆られたのです。
この記事では、映画の感動を胸に、実際に『ノマドランド』のロケ地を巡るための、徹底的に実践的なガイドをお届けします。壮大な自然、ノマドたちが集う場所、そして失われた町の記憶。そこには、スクリーン越しでは感じることのできない、生の感動が待っています。さあ、シートベルトを締めて、魂を解き放つ旅に出かけましょう。まずは、この旅がどれほど広大な土地を舞台にしているか、地図で確かめてみてください。
この旅の一部であるデスバレーの灼熱の絶景も、映画の世界観を体感する上で欠かせない体験となるでしょう。
旅のプロローグ:ネバダ州エンパイア – 失われた町の記憶

物語は、すべてを失った場所から始まります。ファーンが長年暮らしていたネバダ州エンパイアという町。ここは、特定企業のために築かれ、その企業の撤退により郵便番号ごと地図から消えた、いわば「企業城下町」のゴーストタウンです。映画の冒頭では、空虚な住宅や閉鎖された工場が静かにその事実を伝えていました。
ゴーストタウンに刻まれた生きた足跡
エンパイアは、石膏の採掘や製造を手がけていたUSジプサム社によって栄えた町でした。多くの従業員とその家族が生活し、学校やコミュニティも存在しました。しかし2011年、工場の閉鎖に伴い町の機能は停止し、住民たちは散り散りになりました。ファーンが荷物を整理していた倉庫は、かつて確かに人々の暮らしがあった場所の象徴です。彼女が車に詰め込んだのは、単なる持ち物ではなく、エンパイアでの生きてきた記憶そのものであったに違いありません。
現在、エンパイアを訪れても、映画に登場したような町並みがそのまま残っているわけではありません。多くが私有地になっており、無断での立ち入りは厳禁です。しかし、町の周辺を車で走るだけでも、広大な砂漠の中にぽつんと取り残された風景から、作品に流れる喪失感を肌で感じ取ることができるでしょう。朽ちかけた看板、風に揺れる雑草、終わりの見えない一本道。これらのすべてが、ファーンの旅立ちの心情を追体験させてくれます。
エンパイア周辺を訪れるための実用的ガイド
エンパイアへの訪問を予定する際は、いくつかの準備が必要です。ここは観光地化されていないありのままの場所だという点を念頭に置いてください。
アクセスと拠点
最寄りの主要空港はネバダ州リノにあるリノ・タホ国際空港(RNO)です。ここでレンタカーを借り、北へ約2時間ドライブするとエンパイア近辺に到着します。この旅に四輪駆動車が必須というわけではありませんが、未舗装路を走る可能性を考慮すると、SUVなど車高の高い車が安心です。宿泊は、エンパイアよりさらに北にある小さな町、ガーラック(Gerlach)が拠点になります。ここは有名なアートイベント「バーニングマン」が開催されるブラックロック砂漠の玄関口としても知られています。
服装と持ち物
ネバダの砂漠地帯は、一日の寒暖差が非常に大きいのが特徴です。昼間はTシャツ一枚で過ごせても、朝晩にはフリースやライトダウンが必要なこともあります。服装は脱ぎ着しやすいレイヤースタイルを推奨します。
- 丈夫な靴: 舗装されていない道を歩く場面を想定し、スニーカーよりもトレッキングシューズやワークブーツが望ましいです。
- 帽子とサングラス: 強い日差し対策として、広めのつばの帽子とUVカット機能のあるサングラスは必携です。
- 水と食料: 周囲に商店はほとんどありません。最低でも一人あたり1ガロン(約3.8リットル)の飲料水を車に備え、非常食も持参すると安心です。
- 日焼け止め: 標高が高いため、紫外線対策は十分に行いましょう。
訪問時のルールとマナー
エンパイアの跡地の多くは私有地で、「No Trespassing」(立ち入り禁止)の看板が設置されています。これらを見たら絶対に立ち入らないでください。法的な問題だけでなく、安全面でも危険が伴うためです。廃墟には思わぬ危険が潜んでいることを忘れず、敬意をもって遠くから風景を眺めましょう。ドローンによる撮影も、土地の所有権や地域の規制を事前に確認してください。わからない場合は飛ばさないのが賢明です。
ノマドたちの交差点:サウスダコタ州バッドランズ国立公園
ファーンが新しい暮らしの第一歩を踏み出したのは、サウスダコタ州にあるバッドランズ国立公園でした。彼女はここでキャンプ場のホストとして働くうちに、旅を続けるノマドたちと出会い、コミュニティとの繋がりを見つけていきます。荒涼としながらも神聖な美しさをたたえるこの土地は、『ノマドランド』の世界観を象徴する重要な舞台です。
太古の地層が織りなす壮観な風景
「悪い土地」を意味するバッドランズ。その名の通り、古代の地層が長い年月の雨風により浸食され、不思議な形状の岩山や峡谷が果てしなく広がっています。夕日に照らされたピンクやオレンジの縞模様は、まるで異星に降り立ったような独特の感覚を与えます。映画の中では、ファーンがこの壮大な景色の中を歩き、日の出を眺めるシーンが印象的に描かれていました。ビッグホーンシープやプレーリードッグなどの野生動物が姿を見せるのも、この公園ならではの魅力の一つです。
ファーンが勤務していたのは、公園内に位置するシダー・パス・キャンプグラウンド(Cedar Pass Campground)です。ここでノマド仲間たちと語り合い、星空を見上げるシーンは、彼女の孤独が徐々に癒されていく様子を映し出していました。このキャンプ場に訪れれば、映画の世界に入り込んだかのような没入感を体験できるでしょう。
バッドランズ国立公園を満喫するための完全ガイド
この壮大な国立公園を訪れる際は、しっかりと計画を練ることが成功のポイントです。以下に具体的な手順や注意点をまとめました。
行動の流れ:入園からキャンプまで
- 入園料の支払い: 公園入口の料金所で入園料を支払います。料金は車両1台ごと、または個人単位で設定されています。支払い方法は現金またはクレジットカードが利用可能です。複数の国立公園を巡る予定がある場合は、「America the Beautiful」パス(全米の国立公園で1年間有効)を購入すると非常にお得です。このパスは料金所のほか、USGS(アメリカ地質調査所)のオンラインストアでも事前に購入できます。
- ビジターセンターを活用する: まずはベン・リイフェル・ビジターセンター(Ben Reifel Visitor Center)に立ち寄りましょう。ここで公園の地図や最新のトレイル情報、レンジャープログラムのスケジュールを入手できます。道路の閉鎖状況など、天候に関する情報もここで確認可能です。
- キャンプ場の予約: ファーンが滞在していたシダー・パス・キャンプグラウンドは、予約が強く推奨されています。特に夏の繁忙期は数ヶ月前から満員になることもあるため、公式運営サイトから早めに予約を行いましょう。予約が取れなかった場合は、先着順で利用可能なセージ・クリーク・キャンプグラウンド(Sage Creek Campground)がありますが、設備は簡素で、RV(キャンピングカー)のサイズ制限もあるため注意が必要です。
必要な準備と持ち物リスト
バッドランズの環境は厳しいので、十分な準備が求められます。
- 充分な水分: 公園内での給水場所は限られているため、ハイキングに出る際は1人あたり最低2リットル以上の水を携帯しましょう。車にも余分な水を備えておくことをおすすめします。
- 適切な服装: 夏は非常に高温となり、冬には積雪があることも珍しくありません。訪れる時期に合わせた服装に加え、急な天候変化に対応できるレインウェアや防寒着も用意すると安心です。トレイル散策には足首をしっかり保護するハイキングシューズが最適です。
- 食料: 公園内にあるレストランは1軒のみで、提供される品数は限られます。周辺の町(ウォールやインテリアなど)で事前に食料を調達しておくことをお勧めします。
- 虫除けスプレーと救急セット: 特に夏場は虫が多くなります。軽度の切り傷やマメに対応できる救急セットも忘れずに携帯してください。
禁止事項および安全ルール
自然環境を守り、安全に楽しむためにはルール遵守が不可欠です。
- 野生動物との適切な距離の確保: バイソンやビッグホーンシープなど野生動物には近づかず、決して餌を与えないでください。推奨される距離(バイソンは25ヤード=約23メートル以上)を保ち、基本的には車内から観察しましょう。
- ドローンの使用禁止: 国立公園内でのドローン飛行は、特別な許可がない限り全面的に禁止されています。
- 化石や岩石の持ち出し禁止: バッドランズは世界的に有名な化石発掘地ですが、化石や岩石、植物の採取や持ち出しは法律で禁じられています。見つけた場合は写真に収めるか、レンジャーに報告してください。
公式情報の活用
旅行計画を立てる際、最も信頼できる情報源は公式サイトです。天候の警報や施設の閉鎖情報など、最新の状況は必ずアメリカ国立公園局(NPS)バッドランズ国立公園公式サイトで確認してください。特に訪問直前には、「Alerts & Conditions」のセクションを必ずチェックしましょう。
労働の現実と広大な大地:ネブラスカ州の風景

映画の中でファーンは、旅の資金を確保するために季節労働に従事しています。そのうちのひとつが、ネブラスカ州西部でのテンサイ(ビート)の収穫作業でした。夜を徹して続く過酷な労働と、地平線の彼方まで広がる広大な農地。このシーンは、ノマドライフのロマンチックな側面のみならず、その厳しい現実も浮き彫りにしています。
地平線の彼方に広がるテンサイ畑
具体的な撮影地は明らかにされていませんが、この場面はネブラスカ州西部のスコッツブラフ周辺で撮影されたと伝えられています。果てしなく続く平坦な大地、規則正しく並ぶ作物、そして巨大な収穫機械。これこそがアメリカ中西部の農業地帯の典型的な風景です。ファーンが黙々と働き、疲れ切った体で愛車のバンへ戻る姿からは、生きるために働くことの尊厳と厳しさが伝わってきます。
この地域を車で走ると、映画で見たあの風景に何度も巡り合うでしょう。特別な観光地ではありませんが、アメリカの広大なスケールを肌で感じることができる、忘れがたい体験になるはずです。地元のダイナーに立ち寄ってコーヒーを味わい、窓の外を眺めれば、この土地で暮らす人々の息づかいが聞こえてくる気がするかもしれません。
中西部ドライブのポイント
ネブラスカ州を含む中西部地方を車で走る際には、いくつかの注意点があります。
- 給油は頻繁に行う: 町と町の間隔が非常に長いため、ガソリンスタンドを見つけた際には、燃料が半分以下でなくても給油する習慣をつけましょう。特に高速道路から外れて地方道を走る場合は、燃料切れに十分注意が必要です。
- 急激な天候変化に警戒: 「トルネード・アレイ(竜巻街道)」と呼ばれる地域の一部であり、特に春から夏にかけては天候が急には変わりやすく、激しい雷雨や竜巻が起きることがあります。天気予報をこまめに確認し、危険を感じたら頑丈な建物に避難してください。
- 野生動物の飛び出しに注意: 鹿などの大型動物が道路に飛び出すことがあります。特に早朝や夕方は視界が悪くなるため、スピードを落として常に前方をよく見て運転しましょう。
- 立ち寄りスポットの活用: スコッツブラフには、開拓時代の重要な歴史的ランドマークであるスコッツブラフ国定公園があります。頂上からの展望は格別で、この地の歴史を肌で感じることができます。ただ通り過ぎるだけでなく、こうした場所に足を運ぶことで旅がより深みを増すでしょう。
再会とコミュニティ:アリゾナ州クォーツサイト
冬の時期になると、全米各地からノマドたちが太陽を求めて南へ移動します。その代表的な目的地の一つが、アリゾナ州に位置する砂漠の町、クォーツサイトです。映画では、主人公のファーンがここで「RTR(Rubber Tramp Rendezvous)」という実在のノマド集会に参加し、多くの仲間と再会しながら生きる術を学びます。この町は、「ノマドランド」の精神が息づく場所と言っても過言ではありません。
砂漠に現れるノマドのコミュニティ
通常は数千人ほどの静かな町ですが、冬季になると何十万台ものRVやバンが集まり、一大コミュニティが形成されます。RTRは、このライフスタイルの提唱者であるボブ・ウェルズ氏が主宰するイベントであり、映画に登場する多くの人物も実際のノマドです。彼らが自身の体験を語り合い、物々交換や助け合いを行う様子は、作品に圧倒的なリアリティをもたらしています。
クォーツサイトを訪れれば、映画で描かれた光景が目の前に広がります。様々な改造を施された車両、ソーラーパネル、持ち寄りの食事会。ここには物質的な豊かさを超えた、人とのつながりや分かち合いの精神が満ち溢れています。
クォーツサイト滞在ガイド 完全版
ノマドの聖地での滞在は特別な体験ですが、同時に入念な準備も必要です。インフラが整っていない砂漠での生活に備えた心構えが求められます。
RTR参加とキャンプの流れ
- RTRの情報収集: RTRは毎年1月に開催され、その日程や開催場所は主催者であるボブ・ウェルズ氏のウェブサイト「CheapRVliving」などで告知されます。参加費は無料で誰でも参加可能ですが、事前に理念やルールを理解しておくことが重要です。
- キャンプ地の選択: クォーツサイト周辺には、BLM(土地管理局)が管理する広大な公有地が広がっており、多くのノマドがここで「分散キャンプ(Dispersed Camping)」や「ブーンドッキング(Boondocking)」と呼ばれる設備のない場所でキャンプを行います。有料のLTVA(Long-Term Visitor Areas)では、ゴミ捨て場や給水所など最低限の施設も利用可能です。どこに滞在するかをしっかり計画しましょう。
持ち物と準備(砂漠キャンプ仕様)
- 自給自足の装備: 電気や水道、下水設備がないことを前提に装備を整えましょう。ソーラーパネルとバッテリーによる電力供給、十分な容量の水タンク、ポータブルトイレは必須です。
- 水の確保: 砂漠では水が命綱となります。町の給水ステーションでタンクを満タンにし、残量を常に把握してください。飲料用とは別に、手洗いや食器洗い用の水も準備しておくことが大切です。
- 寒さ対策: 砂漠の冬は昼間は暖かくても、夜間は氷点下に冷え込むことがあります。質の良い寝袋や、一酸化炭素警報機を必ず併用した安全な暖房器具がなければ、命の危険も伴います。
- 通信手段: 砂漠の奥地では携帯電話が圏外になる場所も多いため、緊急連絡用に衛星通信デバイスや電波増幅器(ブースター)を持つと安心です。
トラブル時の対応策
- 車両トラブル: 最も頻発するトラブルは車両の故障です。出発前には入念な点検を行い、AAA(アメリカ自動車協会)などのロードサービスに加入しておくことを強くおすすめします。砂漠での立ち往生は非常に危険です。
- 健康トラブル: 環境の変化や慣れない生活により体調を崩すこともあります。基本的な医薬品や応急処置セットを用意し、特に脱水症状には十分注意してください。最寄りの病院やクリニックの場所も事前に調べておきましょう。
- 代替案の検討: キャンプ装備に自信がない場合は、クォーツサイトにあるRVパークを利用する手もあります。費用はかかりますが、電気や水道などの設備が整っており、初心者でも安心して滞在できます。
公式情報の確認
BLMの管理する土地でのキャンプには滞在期間や環境保護に関する規則があります。出発前に、アメリカ合衆国土地管理局(BLM)の公式サイトでクォーツサイト周辺エリアの規定を確認してください。「Leave No Trace(痕跡を残さない)」の原則を守ることがすべてのキャンパーに求められています。
旅の終着点へ:カリフォルニア州の海岸線

ファーンの旅はアメリカ大陸を西へ進み、ついに太平洋にたどり着きます。彼女が裸身で荒れた海に身を投じるシーンは、すべてを受け入れ、自然と一体になるひとつの到達点を象徴しているように感じられました。この感動的なエンディングの舞台となったのは、北カリフォルニアのメンドシーノ郡周辺の海岸線です。
荒々しくも美しい太平洋の景観
映画のラストシーンは、ポイント・アリーナ灯台付近の断崖絶壁で撮影されたと伝えられています。南カリフォルニアの明るい陽射しが降り注ぐビーチとは対照的に、この地域の海岸は濃霧に包まれ、強風が吹き荒れ、どこか神秘的な空気を漂わせています。岩肌に激しく打ち寄せる白波、海鳥のさえずり、そして水平線の彼方に沈む夕日。ファーンがこの地で味わったであろう自然への畏怖と、自身の存在の小ささ、そしてそのことから生まれる自由を、訪れる者もまた感じ取ることができるでしょう。
この地域を訪れる際は、有名な国道1号線(Pacific Coast Highway)をドライブするのが特におすすめです。曲がりくねった道の連続で注意は必要ですが、一つひとつのカーブを曲がるたびに息を呑む絶景が次々と現れます。車を停めて潮風に吹かれながら、静かに海を見つめる時間――まさにこの旅のクライマックスにふさわしい過ごし方かもしれません。
北カリフォルニア海岸線を訪れる際のポイント
- 服装の準備: 海岸沿いは夏でも冷たい海風が吹くため、フリースやウィンドブレーカーの携行がおすすめです。霧雨が降ることもしばしばあるので、防水機能のあるアウターがあると便利です。
- 宿泊施設: この地域には趣のある小さな町が点在し、B&Bやモーテル、キャンプ場など多様な宿泊施設が揃っています。特にメンドシーノやフォートブラッグは観光の拠点として人気があります。
- 周辺の観光スポット: 少し足を伸ばせば、レッドウッド国立・州立公園、通称「巨人たちの森」にも訪れることができます。天高くそびえるセコイアの巨木の間を歩くと、地球の悠久の歴史を肌で感じられるでしょう。旅の締めくくりにぜひ足を運んでみてください。
- 運転の注意点: 国道1号線は絶景で知られる一方、道幅が狭く、急なカーブやアップダウンが多い道です。対向車や自転車には十分注意し、時間に余裕をもったスケジュールを心がけましょう。霧が濃い日には視界が著しく悪くなるため、無理な運転は避けることが大切です。
あなた自身のノマドランドを旅するために
映画『ノマドランド』のロケ地を巡る旅は、単なるファンによる巡礼ではありません。それはファーンの生き様に思いを馳せ、アメリカの広大な自然と向き合い、自分自身を見つめ直すための壮大なロードトリップなのです。最後に、この旅を実現するための総合的な情報をお伝えします。
モデルルートと所要日数の目安
今回ご紹介した全ロケ地を訪れる場合、出発地点をネバダ州リノ、終点をカリフォルニア州サンフランシスコと設定すると、以下のようなルートが考えられます。
リノ → エンパイア → (ソルトレイクシティ経由)→ バッドランズ国立公園 → スコッツブラフ周辺 → (デンバー経由)→ クォーツサイト → (ロサンゼルス経由)→ ポイント・アリーナ → サンフランシスコ
このルートの総走行距離は寄り道を含めると約4000マイル(約6400km)を軽く超えます。各地での滞在時間を考慮すると、最低でも3週間、可能なら1ヶ月以上の期間確保が望ましいでしょう。急ぎ足の旅ではなく、予期せぬ出会いや発見を楽しむ余裕こそが何より大切です。
車両の準備:あなたの「ヴァンガード」を選ぶ
旅のパートナーとなる車選びは非常に重要なポイントです。ファーンの愛車「ヴァンガード」のように、あなたにぴったりの一台を選びましょう。
- キャンピングカー(RV)のレンタル: 快適さと利便性を重視するなら、RVのレンタルがおすすめです。キッチン、ベッド、トイレといった設備が整い、国立公園のキャンプ場やRVパークも快適に利用できます。Cruise AmericaやEl Monte RVなど大手レンタル会社があり、オンライン予約も簡単。レンタル時には保険内容をよく確認しましょう。
- バンやSUVのレンタル: 機動性を優先し、ブーンドッキング(設備のない場所での車中泊)に挑戦したい場合は、大型バンやSUVを借りて車内を寝泊まり仕様にカスタマイズする方法もあります。寝具や調理器具、クーラーボックスは自分で用意が必要ですが、自由度の高い旅が楽しめます。
- 自家用車での旅: 自分の車で出かける場合は、出発前に信頼できる整備工場で念入りな点検を受けてください。オイル交換、タイヤ(スペア含む)、バッテリー、ブレーキ、冷却水の状態を専門家にチェックしてもらい、長距離ドライブに万全を期しましょう。
旅の予算感と節約術
アメリカのロードトリップは決して安くはありませんが、工夫次第で費用を抑えることも可能です。
- 主な支出項目: ガソリン代、食費、宿泊費(キャンプ場やモーテル代)、国立公園の入場料、車両レンタル代、保険料などが主なコストとなります。
- 宿泊費を抑える工夫: BLM(連邦土地管理局)が管理する公有地での無料分散キャンプや、国立森林内にある比較的リーズナブルなキャンプ場を積極的に活用すると宿泊費を大幅に節約できます。
- 食費の節約方法: 外食は控えめにし、スーパーマーケットで食材を購入して自炊を基本にするのがおすすめです。費用の節減だけでなく、旅の楽しみが増えるでしょう。専門の予算計算サイトを利用して、事前にコストの見通しをつけることも計画に役立ちます。
映画『ノマドランド』は、私たちに問いかけます。家とは何か、幸せとは何か、そして人生において本当に大切なものとは何か。その答えは人それぞれ異なるでしょう。ファーンの歩んだ道を自分の車で辿り、彼女が見た景色を自身の目で確かめるとき、あなたにとっての答えが浮かび上がるかもしれません。このガイドが、あなたの忘れがたい旅の第一歩となることを心より願っています。
See you down the road.

