世界中の都市を巡る中で、これほどまでに奇妙で、同時に心を惹きつけられる場所に私は出会ったことがありません。アラスカの厳しい大自然に抱かれた、人口わずか300人ほどの小さな港町、ウィッティア。この町の特異性は、その成り立ちや風光明媚な景色だけにあるのではありません。驚くべきことに、住民のほとんどが「ベーギッチ・タワー」と呼ばれるたった一つの建物の中で生活を完結させているのです。
郵便局、警察署、食料品店、病院、学校、そして人々の住まい。そのすべてが、14階建ての巨大な建物に凝縮されていると聞けば、一体どのような場所なのか、想像力を掻き立てられるのではないでしょうか。それはまるで、SF映画に登場する孤立したコロニーのようでもあり、厳しい環境を生き抜くための人間の知恵が生んだ、究極のコミュニティの形とも言えます。
私、健司は、世界を股にかける仕事柄、効率性と機能性を突き詰めた建築や都市計画に数多く触れてきました。しかし、ウィッティアのそれは、単なる合理性の追求だけでは語れない、人間味と大自然との共存が生んだ、唯一無二の物語を秘めていました。今回は、謎に包まれた町ウィッティアへのアクセス方法から、その魅力の核心に迫る過ごし方、そして実際に訪れるための具体的なガイドまで、私の体験を交えながら余すところなくお伝えしていきたいと思います。日常から遠く離れた、この不思議な町への扉を、一緒に開いてみましょう。
アラスカの秘境を訪れる際には、万が一に備えてアメリカ旅行での医療事情や病院のかかり方を事前に確認しておくと安心です。
ウィッティアとは?一つの建物に凝縮された街の肖像

ウィッティアという町を理解するためには、まずその成り立ちを知ることが欠かせません。この町の歴史は、平和な開拓の物語ではなく、戦争という緊迫した時代背景から生まれたものです。その独特な構造は、すべて歴史の影響を色濃く反映しています。
街の成り立ち – 軍事基地としての起源
ウィッティアの歴史は、第二次世界大戦中に始まります。1940年代の初め、日本軍によるアリューシャン列島侵攻を受け、アメリカ軍はアラスカの戦略的重要性を再確認しました。その結果、悪天候に強く、敵に発見されにくい不凍港として、内陸部にあるこの場所が選ばれました。
険しい山々に囲まれ、一年を通じて厚い雲に覆われることが多いこの地は、まさに天然の要塞とも言える環境でした。アメリカ軍は、アンカレッジとウィッティアを結ぶためにマヤード山の岩盤を穿ち、鉄道トンネルを建設しました。こうして外部から隔絶された軍事拠点「キャンプ・サリバン」が生まれたのです。今日ウィッティアにある大規模な建物群は、この軍事基地時代の名残りに他なりません。
戦後や冷戦期を通じて、この基地は戦略的な役割を担い続けましたが、技術の進歩と時代の変化によりその重要性は次第に薄れ、1960年代に軍は撤退しました。その後、残された大規模なインフラや建物を活用しながら、現在のウィッティアという民間の町が形成されていきました。つまりこの町は、計画的に「生活の場」として造られたのではなく、「駐留のため」に作られた場所が、結果的に人々の暮らしの場へと転用された、非常に珍しいケースなのです。
ベーギッチ・タワー – 街の中心核
ウィッティアの象徴であり、住民の暮らしが凝縮されていると言っても過言ではないのが、14階建ての巨大建築「ベーギッチ・タワー(Begich Towers)」です。正式名称は「Begich Towers Condominium」で、1972年にアラスカで飛行機事故に巻き込まれ行方不明となったアラスカ州選出の下院議員ニック・ベーギッチ氏にちなんで名付けられました。
この建物はもともと、1957年にアメリカ陸軍工兵隊が「ホッジ・ビルディング」として建設した兵舎でした。独身兵士たちが生活するための施設であり、多数の人員を効率よく収容できる設計となっていました。軍の撤退後、この建物は民間用のコンドミニアムへと改装され、現在ではウィッティアの主要な住居となっています。
内部の構造はまさに「垂直都市(Vertical City)」と呼ぶにふさわしいものです。居住スペースだけでなく、建物の1階には町の中枢機能が集中しています。警察署、郵便局、食品を扱う小規模なスーパーマーケット、住民の健康を支えるクリニックなどが配されているのです。さらに、子どもたちが通う学校へは地下通路で直結しており、吹雪や豪雨の際にも濡れずに通学できるよう配慮されています。教会やコインランドリー、小さなホテルも併設されており、住人たちはほとんど外に出ることなく日常生活を送ることが可能です。
このように、すべてが一つの建物に集約されたライフスタイルは、都会で暮らす私たちには非現実的に感じられるかもしれません。しかし、年間6メートルを超える降雪量や時速100キロを超える強風が吹き荒れる厳しい自然環境を考慮すれば、この上なく合理的で安全な暮らし方と言えるでしょう。ベーギッチ・タワーは単なる集合住宅ではなく、過酷な自然条件の中で生きる人々の知恵と工夫が詰まった巨大な避難所なのです。
ウィッティアへのアクセス – 冒険の始まりは一本のトンネルから
ウィッティアの孤立性を象徴する最たる特徴は、そのユニークなアクセス手段にあります。この町に到着すること自体が、旅の重要な見どころの一つと言えるでしょう。主要なアクセス方法は陸路と海路の二つで、選ぶルートによって旅の印象は大きく異なります。
唯一の陸路「アントン・アンダーソン記念トンネル」
ウィッティアとアラスカの他地域を結ぶ唯一の陸路が、「アントン・アンダーソン記念トンネル」です。ここは多数の訪問者が最初に経験する、ウィッティアならではの特別な体験と言えます。
全長およそ4キロメートルのこのトンネルは、鉄道と自動車が同じ車線を共有するという、北米最長の複合用途トンネルです。つまり線路が通るトンネル内を車も走行しており、列車と車が同時走行することはできません。そのためトンネルは一方向通行となり、通行時間は厳密に管理されています。
【読者が実際にできること】トンネル通行のポイント
ウィッティアまで車で向かう際は、このトンネルの通行ルールをしっかり理解しておくことが必須です。無計画に訪れると、トンネル前で長時間待たされる恐れがあります。
手順1:通行スケジュールの確認
トンネルの運行時間は季節や曜日によって変動します。必ず事前に公式ウェブサイトで最新情報を確認しましょう。通常は、アンカレッジ方面からウィッティアへ向かう車は毎時30分から(例:10:30、11:30)、逆方向は毎時00分から(例:11:00、12:00)の15分間が通行可能時間です。詳細はアラスカ州運輸省の公式ページアントン・アンダーソン記念トンネル公式サイトで、夏季・冬季の最新スケジュールPDFが入手できます。必ず旅行前にチェックしましょう。
手順2:通行料金の支払い
トンネル入口の料金所で支払います。乗用車1台の往復料金は約13ドル(2024年現在)ですが、変動の可能性もあるので公式サイトで確認するのが安心です。現金かクレジットカードで支払え、往復料金のため一度支払えば帰りは不要です。レシートの保存は不要で、システムで管理されています。
トラブル対処:時間を逃した場合
指定された通行時間に遅れた場合、次の時間まで待つしかありません。トンネルの前の待機エリアで約1時間待つことになります。特に帰路の時間を逃すと、ウィッティアでの予期せぬ宿泊が必要になることもあります。フェリーや飛行機のタイムテーブルがある場合は、十分余裕をもった計画を立てることが非常に重要です。待機エリアにはトイレがありますが売店はないため、飲み物や軽食は事前に用意するとよいでしょう。
トンネル内は岩肌がむき出しの箇所も多く、薄暗い照明が地底を冒険しているかのような独特な雰囲気を醸し出します。約10分のトンネル通過後に光の中に飛び出すと、眼前に広がるプリンス・ウィリアム湾とウィッティアの街並みの絶景に感動が増します。
海路からのアクセス – アラスカ・マリン・ハイウェイ
もう一つの主要なアクセス手段はフェリーを利用する海路です。アラスカ州が運営する「アラスカ・マリン・ハイウェイ・システム」は、道路が発達していない沿岸地域の各港町をつなぐ重要な交通手段です。ウィッティアはバルディーズやコルドバなどの港町とフェリー路線でつながっており、車両もそのまま乗船可能です。
ドライブとはまったく異なる旅の魅力として、フェリーでは雄大なアラスカ自然を海上から存分に楽しめます。晴れた日にはデッキから氷河が流れ込むフィヨルドの壮大な眺めや、ラッコ、アザラシ、運が良ければクジラなどの海洋生物を見る機会もあります。時間をかけてゆったり旅を満喫したい方におすすめのルートです。
【読者が実際にできること】フェリー利用のポイント
手順1:予約とスケジュールの確認
フェリーの運行は季節で大きく変わります。特に夏の繁忙期は混み合うため、早めの予約が賢明です。アラスカ・マリン・ハイウェイ公式サイトで航路やスケジュール、料金の確認およびオンライン予約が可能です。車両をフェリーに積む場合は、車種とサイズを正確に伝える必要があります。
手順2:持ち物の準備
乗船時間は航路により数時間に及ぶこともあります。船内には簡単なカフェテリアがある場合も多いですが品揃えには限りがあります。お好みの飲み物や軽食、酔い止め薬を持参すると安心です。また海上は夏でも涼しい場合があるため、羽織りもののジャケットやフリースは必須。デッキでの景観を楽しむなら双眼鏡やカメラもお忘れなく。
空路を利用する場合は?
ウィッティアに定期便のある空港は存在しません。しかし、水上飛行機やヘリコプターのチャーター便を利用すれば空からのアクセスも可能です。アンカレッジなどからチャーターし、氷河や山々を上空から眺めつつウィッティア港へ着水する体験は、一生の思い出となるでしょう。ただし非常に高額なため一般的な観光客向けではなく、特別な旅を演出したい方に限り検討する価値があります。
ウィッティアでの過ごし方 – 限られた空間で無限に広がる体験

人口およそ300人、そのほとんどが一つの建物に暮らす町。初めて聞くと、訪れてもすぐに飽きてしまうのではと感じるかもしれません。しかし、ウィッティアはその小規模さからは想像もできないほど、多彩で奥深い魅力にあふれています。この町での体験は大きく「内」と「外」、二つの側面に分けられます。
ベーギッチ・タワーの内部を探る
まずはウィッティアの「内」、すなわち町の中心であるベーギッチ・タワーの見学です。ここは住民の皆さんが実際に生活しているプライベート空間であるため、最大限の敬意をもって接することが求められます。ただし、観光客が利用できる公共スペースだけでも、この町のユニークな暮らしぶりを垣間見ることができます。
建物の1階ロビーは、まるで小さな村の広場のような雰囲気です。壁には掲示板が設置されており、町の案内やイベント情報が掲示されています。ここから郵便局や食料品店「Ko-op」へアクセスでき、住民たちが立ち話をする姿も見られます。この食料品店は品数こそ限られているものの、生活に必要な最低限のアイテムは揃っており、コミュニティの心臓部であることが窺えます。アラスカ特有のスナックのお土産探しも楽しめるでしょう。
【実際にできること】タワー訪問時のマナーとルール
禁止事項・ルール:プライバシーの尊重
最も重要なルールです。観光客が立ち入れるのは基本的に1階のロビーや店舗などの共有スペースに限られます。居住階への立ち入りやアパートのドアのぞき見は絶対に避けてください。住民の方は好奇の視線に慣れているかもしれませんが、日常生活を邪魔しない配慮が不可欠です。写真撮影時も個人が特定される形での撮影は控え、人物を撮影する場合は必ず許可を取るようにしましょう。
行動の指針:住民との交流
すれ違う住民には笑顔で「Hello」と声をかけてみましょう。閉鎖的に見えるコミュニティかもしれませんが、多くの方は旅行者に対して親切です。彼らの生活に敬意を持って接すると、興味深い話を聞かせてくれるかもしれません。
プリンス・ウィリアム湾の壮大な景色とアクティビティ
ウィッティアのもう一つの魅力、それは「外」の自然、まさにアラスカの雄大さです。ウィッティアは全米屈指の美しいプリンス・ウィリアム湾の入り口で、多彩な氷河クルーズや海洋アクティビティの拠点として知られています。
町の背後にそびえる山々からはいくつもの滝が海に流れ込み、静かな湾には巨大な氷河がその姿を映しています。手つかずの自然こそ、ウィッティアが世界中の旅人を惹きつける最大の理由です。
【実際にできること】自然を存分に楽しむための準備
行動のポイント:ツアー予約
氷河クルーズはウィッティア観光の大きな見どころです。複数の会社が様々なコースを企画しており、数時間から丸一日のツアーまで幅があります。人気のツアーはすぐに満席になるため、特に夏季に訪れる場合は事前のオンライン予約を強く推奨します。Phillips Cruises & Tours や Major Marine Tours などが評価の高い大手です。公式サイトでコースや料金、空き状況を確認し予約を済ませましょう。
持ち物・服装のポイント
アラスカの天気は変わりやすいため、晴れていても氷河に近づくと気温が急低下します。以下の点を参考に、しっかりと準備してください。
- 服装(推奨): 防水・防風ジャケットは必須です。その下にフリースやセーターなど体温調節しやすい重ね着が基本。撥水パンツや滑りにくい防水シューズも望ましいです。
- 小物類: 帽子、手袋、サングラス、日焼け止めは夏でも必携。氷河や海面の反射はかなり強いためです。双眼鏡があると遠くの野生動物や氷河の細部観察が楽しめます。もちろんカメラや予備バッテリー、メモリーカードも忘れずに。
氷河クルーズの見どころ
港を発つとすぐ、360度に広がる絶景が目に入ります。切り立ったフィヨルドの岸壁、緑濃い森、点在する氷山などが臨めます。最大の見ものは、海に直接流れ落ちる潮間氷河との接近です。
船がサプライズ氷河やブラックストーン氷河といった巨大な氷壁に近づくと、その圧倒的なスケールに息を呑むでしょう。氷河特有の神秘的な青色「グレイシャー・ブルー」はまさに絶景です。クライマックスは「カービング」と呼ばれる氷河の崩落。地鳴りのような轟音とともに、ビルのように巨大な氷塊が海に落ちる瞬間は、地球の壮大な営みを全身で感じる忘れがたい体験となります。
この海域は野生動物の楽園でもあり、海面で浮かぶ愛らしいラッコの群れや岩場で日向ぼっこをするゴマフアザラシ、運がよければ潮を吹くザトウクジラやシャチにも出会えるかもしれません。
シーカヤックで静寂の海へ
さらに自然と一体化するなら、シーカヤックもおすすめです。ガイドツアーに参加すれば初心者でも安心して、氷山が浮かぶ静かな入り江を巡ることができます。エンジン音のない静かな環境で、パドルが水をかく音や遠くで響く氷河のきしむ音だけを耳にしながら進む体験は、クルーズとはまた違った深い感動をもたらしてくれます。
ウィッティアの味覚 – 港町ならではのグルメ
辺境の地であるゆえに、食の選択肢は少ないと思われるかもしれませんが、ウィッティアは港町であり、新鮮な海の幸は大いに期待できます。
町には数軒のレストランやカフェがあり、多くは夏場を中心に営業しています。名物は、近海で獲れるハリバット(オヒョウ)やサーモン。フィッシュ・アンド・チップスとしてシンプルに楽しむのもよし、グリルやソテーで魚本来の味わいを堪能するのもおすすめです。クルーズから戻った後、港のレストランで冷たいアラスカ産ビールとともに揚げたてのハリバットを味わうひとときは格別です。
選択肢は多くはないものの、心温まる小さな食堂のクラムチャウダーや、地元の人たちが集うパブでの一杯も、この町ならではの貴重なグルメ体験となるでしょう。
ウィッティア訪問のための実践ガイド
ここまででウィッティアの魅力をご紹介しましたが、実際に旅行を計画する段階になると、より具体的な情報が必要になるでしょう。ベストシーズンの時期から宿泊施設の選び方、持ち物の最終確認に至るまで、あなたの旅がスムーズに進むための実用的な情報をお届けします。
ベストシーズンはいつ?
ウィッティアに訪れるのに最も適している時期は間違いなく夏、特に6月から8月です。この期間はアラスカの「白夜」に該当し、一日中太陽が沈まないか、沈んでもほのかな明るさが続くため、観光やアクティビティを長時間楽しめます。気候も穏やかで、日中の気温はだいたい15度前後になることが多く、快適に過ごせるでしょう。
氷河クルーズやハイキングといったツアーも、この時期に最も多く催行されます。加えて、野生動物も活発になり、ラッコやクジラなどに遭遇できる可能性が高まります。
一方で、冬(およそ10月から4月)は訪れるのが非常に難しい時期です。気温は氷点下まで下がり、豪雪や強風が頻発します。多くの観光スポットや飲食店は閉鎖され、クルーズツアーも運休します。トンネルの通行スケジュールも大幅に制限され、静寂に包まれる期間となります。観光目的なら、夏の訪問を計画するのが賢明です。
宿泊施設の選択肢
ウィッティアは非常に小さな町で宿泊施設の数が限られているため、滞在を予定する場合はできるだけ早めに予約を行うことが不可欠です。
代表的な宿泊先は以下の通りです。
- The Inn at Whittier: 町で最大規模のホテルで、港のすぐそばに位置します。客室からはプリンス・ウィリアム湾の美しい眺望が楽しめ、併設のレストランもあります。快適な滞在を望むなら、まずこちらの検討をおすすめします。
- ベーギッチ・タワー内の宿泊施設: タワーの中にはコンドミニアムの一部を旅行者用に貸し出すB&Bやバケーションレンタルが数多くあります。ウィッティアの日常生活に近い体験ができる貴重な選択肢ですが、部屋数は限られるため、予約サイトでこまめに空室状況を確認しましょう。
- その他のロッジやB&B: 小規模ながら町には他にも宿泊施設があります。
【読者のための宿泊予約のポイント】
行動の手順:早めの予約がカギ
夏のピーク時には数カ月前から予約が埋まり始めます。旅行の日程が決まったら、航空券やレンタカーの手配と並行して、まず宿を押さえるようにしましょう。オンライン予約サイトや施設の公式ホームページから直予約も可能です。
満室時の対策
万が一ウィッティアの宿がすべて満室の場合は、アンカレッジやガードウッドなど近隣の町に宿泊し、日帰りでウィッティアを訪れる方法もあります。ただし、トンネルの最終通行時間には十分注意し、時間管理を徹底してください。
旅行準備と持ち物の最終チェックリスト
快適で安全なウィッティア旅行に向けて、持ち物は漏れなく準備しましょう。以下が最終確認リストです。
- 服装関連
- 防水・防風性のジャケット(ゴアテックスなど推奨)
- フリースや軽量ダウンなどの中間着(重ね着用)
- 速乾性の長袖・半袖シャツ
- 撥水性のあるトレッキングパンツ
- 防水ハイキングシューズやブーツ
- 保温性の高い靴下(ウール素材がおすすめ)
- ニット帽や手袋
- 小物・装備
- 日帰りツアー用のバックパック
- 偏光レンズのサングラス
- 日焼け止めクリーム
- 虫よけスプレー(特に夏期)
- 双眼鏡
- カメラ、予備バッテリー、メモリーカード
- 携帯充電用バッテリー
- 飲料用ボトル
- その他
- 現金:ATMは設置されていますが、一時的に使えない場合や現金不足の可能性があります。一定額の現金を携行すると安心です。
- 常備薬:必要に応じ、必ず持参してください。町の診療所は規模が小さいためです。
- アレルギー対応食や特別食:町の食品店は品揃えが限られるため、必要な方は持参を推奨します。
- 酔い止め薬:船酔いしやすい方はクルーズ前に服用しましょう。
事前に知っておきたいルールとマナー
ウィッティアは特別な場所であり、旅人として地域の環境や住民コミュニティを尊重する責任があります。
野生動物との距離を守ること
クマやムースなど大型の野生動物に出会う可能性がありますが、決して近づいたり餌を与えたりしないでください。安全な距離を保ち、彼らの生活圏を尊重しましょう。ラッコやアザラシなどの海洋生物にも、ボートやカヤックで過度に接近しないよう注意が必要です。
自然環境の保護
アラスカでの旅の基本である「Leave No Trace(痕跡を残さない)」を徹底してください。ゴミは必ず持ち帰り、ハイキングルートから外れて植物を踏み荒らさないよう気をつけましょう。
コミュニティへの配慮
繰り返しになりますが、ベーギッチ・タワーは観光施設ではなく人々の住まいです。住民のプライバシーを尊重し、迷惑行為は厳禁です。この小さなコミュニティの一員になったつもりで、思いやりと敬意を持って接することで、旅の体験がより豊かになるでしょう。
なぜ人々はウィッティアに住み続けるのか? – コミュニティの絆

過酷な自然環境、外界からの隔絶、そして一つの建物に集約された特異な生活環境。客観的に見れば決して快適とは言い難いこの地で、なぜ人々が暮らし続けるのか。その答えは、この町が育んできた他にはない強固な「コミュニティの絆」にあるように思われます。
冬季になると、豪雪と強風により町は完全に孤立します。そんな時に頼りになるのは隣人同士の助け合いです。ベーギッチ・タワーでは、誰もがお互いの顔と名前を把握しています。子どもたちは天候を気にせず、建物の廊下を遊び場にし、友達の家を自由に行き来します。それはまるで一つの大家族のような光景です。
ある住民はインタビューでこう話しています。「ここでは困りごとがあれば、すぐに誰かが助けに来てくれる。大雪でドアが開かなくなったときも、病気で買い物に行けない時も、電話一本で隣人が駆けつけてくれる。都市の匿名性の中では味わえない、本物の繋がりがここにはある」と。この言葉こそが、ウィッティアでの暮らしの核心を示しています。
さらに、窓の外に広がる手つかずの自然は、住民たちにとって何物にも代え難い価値をもたらしています。夏はカヤックや釣りを楽しみ、冬は静寂の中で読書に没頭する。物質的な豊かさではなく、自然との共生において精神的な充足を見出しているのです。
もちろん、小規模なコミュニティならではの窮屈さやプライバシーの不足といった課題も存在します。しかし、それらを乗り越える強い互助精神と、この地ならではの特別な体験が、人々をウィッティアに惹きつけ、留まらせ続けているのです。この町の物語は、現代社会で失われつつある「共同体」の価値を私たちに静かに問いかけているのかもしれません。 ウィッティア市の公式サイトでは、町の歴史や行政サービスについての情報が掲載されており、この独特なコミュニティの成り立ちをより深く理解する手助けとなるでしょう。
あなたの旅を特別なものにするために
ウィッティアへの旅は、ただ美しい景色を楽しんだり、珍しい町を訪れたりするだけの観光とは異なります。それは、歴史の偶然が生み出した独特なコミュニティの息吹を肌で感じ、厳しい自然環境の中で人々がどのように支え合いながら暮らしているのかを知る貴重な体験です。
一本のトンネルを抜けた先には、日常とはまったく異なる時間の流れや価値観の世界が広がっています。巨大な氷河が海へと崩れ落ちる轟音は、地球の鼓動を直接感じさせてくれるでしょう。また、ベーギッチ・タワーの廊下で交わされる住民たちの挨拶は、現代の都市生活で希薄になりがちな人と人との温かなつながりを思い出させるかもしれません。
この記事で紹介した情報を参考に、ぜひあなた自身のウィッティアへの冒険を計画してみてください。じっくりとした準備は旅の質を大きく高めますが、何よりも重要なのはこの地への敬意と未知への好奇心です。日常から切り離されたこの独特な垂直都市で、あなたはどんな感動を覚え、何を見つけ出すのでしょうか。その答えを求める旅に、ぜひ踏み出してみてください。きっとあなたの旅の記録に、忘れられない特別な一章が加わることでしょう。

