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    荒野にそびえる神々の指先、モニュメントバレーへ。ナバホの聖地を巡る旅

    乾いた風が頬を撫で、どこまでも続く赤い大地と青い空のコントラストに、思わず息をのむ。目の前には、まるで神々が創り出した彫刻のように、巨大な岩の塔が天に向かってそびえ立っている。ここは、アメリカの原風景。西部劇の舞台として、そして数々の映画のロケ地として、世界中の人々を魅了し続ける場所、モニュメントバレーです。

    こんにちは、世界30カ国を旅してきたライターのさくら えみです。これまで多くの絶景をこの目で見てきましたが、モニュメントバレーの景色は、ただ「美しい」という言葉だけでは表現できない、魂を揺さぶるような力を持っていました。それはきっと、この地が単なる観光地ではなく、先住民族ナバホ族の魂が宿る、神聖な場所だからなのでしょう。

    この記事では、初めてモニュメントバレーを訪れる方が安心して旅の計画を立てられるよう、アクセス方法やベストシーズンといった基本情報から、公園内の巡り方、ナバホの文化に触れるヒント、そして聖地を訪れる者としての心構えまで、私の経験を交えながら徹底的に解説していきます。準備から現地での過ごし方まで、この記事一本で完璧にわかるようにご案内しますね。

    さあ、時を超えた大地の物語を紐解く旅へ、一緒に出かけましょう。

    アメリカの雄大な自然を巡る旅は尽きることがありませんが、アメリカ・ルート66のリアルな大陸横断記も、また違った感動を与えてくれるでしょう。

    目次

    モニュメントバレーとは? ―ただの岩ではない、大地の物語―

    アリゾナ州とユタ州の境界にまたがる広大な地域、モニュメントバレー。その独特の風景は、多くの人々を惹きつけてやみません。しかし、真の魅力を味わうためには、目に映る景色だけでなく、その背後にある物語を理解することが重要です。

    地球が織りなす芸術、ビュートとメサ

    モニュメントバレーの象徴といえば、空に向かってそびえ立つ赤い砂岩の巨大な岩盤です。これらは「ビュート」や「メサ」と呼ばれています。

    遥か昔、この地域は広大な盆地であり、ロッキー山脈から運ばれた土砂が何層にも堆積していました。その後の地殻変動によって土地が隆起し、大規模な台地が形成されます。そして数百万年、数千万年に及ぶ途方もない時間をかけて、風や雨、雪解け水が柔らかな地層を削り取り、硬い岩盤だけが残されていきました。その結果、頂上が平らで広がったものは「メサ」、さらに侵食が進んで孤立した塔状のものが「ビュート」と呼ばれる、現在の特徴的な地形が姿を現したのです。

    私たちが目にするこの風景は、地球が気の遠くなるような年月をかけて彫り上げた壮大な芸術作品。一つひとつの岩には大地の記憶が刻まれているかのようです。

    ナバホ族の魂が宿る聖地「Tse’Bii’Ndzisgaii」

    モニュメントバレーはアメリカの国立公園ではありません。ここはアメリカ最大の先住民族であるナバホ族の保留地、「ナバホ・ネイション」の内部にあり、彼ら自身が管理・運営しているトライバル・パーク(部族公園)です。

    彼らの言葉、ナバホ語ではこの地を「Tse’Bii’Ndzisgaii」と呼び、その意味は「谷間の岩」。ナバホ族にとって、ここは単なる観光地ではなく、祖先から受け継がれた神聖な土地であり、精霊が宿る場所です。岩の一つひとつに物語があり、大地そのものが彼らの歴史と文化、そして信仰の対象なのです。

    訪れる私たちは、美しい風景に心を奪われるだけでなく、ここが彼らの生活の場であり、魂のふるさとであることに深い敬意を示す必要があります。その思いを持つことで、旅はより深く意味のあるものとなるでしょう。

    映像を彩った、永遠の原風景

    多くの人にとって、モニュメントバレーは「どこかで見覚えのある風景」かもしれません。実際、この地は数え切れないほどの映画やCMのロケ地として利用されてきました。

    特に有名なのは、西部劇の巨匠ジョン・フォード監督です。彼は『駅馬車』や『捜索者』など数々の名作をこの地で撮影し、モニュメントバレーを「アメリカ西部」の象徴的なイメージとして世界に知らしめました。公園内には、彼のお気に入りの撮影場所「ジョン・フォード・ポイント」もあり、今なお多くの映画ファンが訪れています。

    近年では、『フォレスト・ガンプ/一期一会』で主人公フォレストが走るのを止めるシーンや、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』の西部時代の場面など、ジャンルを問わずさまざまな作品に登場しています。多くの人の心に描かれる「アメリカの広大な荒野」のイメージは、モニュメントバレーによって形作られたと言っても過言ではないでしょう。

    旅の計画を立てよう!モニュメントバレー完全ガイド

    モニュメントバレーの魅力を理解したところで、次は具体的な旅プランを立ててみましょう。いつ訪れるのが最適か?移動手段は?宿泊先はどこがいい?こうした疑問に順を追ってお答えしていきます。

    いつがベストシーズン?気候と服装のポイント

    モニュメントバレーは標高約1,600mの高原砂漠地帯に位置するため、一日の気温差が大きく、季節によって気候が大きく変わるのが特徴です。

    • 春(3月~5月)と秋(9月~11月): 最も過ごしやすいシーズンです。昼間は快適な気温で、空気も澄んでいるため美しい景観を心ゆくまで楽しめます。ただし、朝晩は冷え込むため、フリースや薄手のダウンジャケットなど羽織れるものを必ず用意しましょう。
    • 夏(6月~8月): 日中の気温は35℃を超えることもあり非常に暑く、強い日差しが降り注ぎます。熱中症対策が欠かせません。また、7月下旬から8月にかけては「モンスーン」と呼ばれる雨季に入り、激しい雷雨(サンダーストーム)が起きやすく、鉄砲水のリスクもあるため注意が必要です。
    • 冬(12月~2月): 日中でも氷点下になる日があり、厳しい寒さとなります。雪が積もることも珍しくなく、雪に覆われたビュートの幻想的な風景が見られることもあります。ただし、雪の影響で公園内の道路が閉鎖される場合もあるため、事前に最新情報を確認しておきましょう。

    服装と持ち物のポイント

    どの季節でも準備しておきたい服装や持ち物のポイントをご紹介します。

    • 服装について

    モニュメントバレーには特別なドレスコードはありませんが、ここはナバホ族の聖地です。文化への敬意を示し、過度に肌を露出する服装(水着のような格好や上半身裸など)は避けましょう。基本的には、動きやすく体温調整しやすい服を選んでください。

    • 必須の服装アイテム
    • 重ね着ができる服: Tシャツの上に長袖シャツ、フリース、ウインドブレーカーなどを重ねて調整できることで、朝晩の冷え込みから日中の暑さまで柔軟に対応できます。
    • 歩きやすい靴: 未舗装の場所も多いため、スニーカーやハイキングシューズなど履き慣れた丈夫な靴が良いでしょう。サンダルは怪我の原因となるため避けるのがおすすめです。
    • 帽子: 日差しを防ぐため、つばの広い帽子は必携です。
    • サングラス: 紫外線が強いため、目をしっかり守るものを持参しましょう。
    • 必携の持ち物リスト
    • 水: 何よりも重要なアイテムです。乾燥しているので、意識しなくても体内の水分がどんどん失われます。特に夏場は1人あたり最低2リットル以上の水を用意しましょう。ビジターセンターでも買えますが、スーパーマーケットで多めに購入すると安心です。
    • 日焼け止め: 標高が高く日差しが強烈なため、SPFの高いものをこまめに塗り直してください。
    • リップクリーム: 空気が非常に乾燥しているため、唇の荒れを防ぎます。
    • カメラ: 絶景が続くので忘れずに。予備のバッテリーやメモリーカードもあると安心です。
    • 現金: ナバホ族の露店ではクレジットカードが使えないことも。工芸品を購入したい場合はある程度の現金を準備しておきましょう。
    • 軽食: 公園内のレストランは1軒のみ。ドライブ中や観光の合間に小腹が空いたときのためにスナックやエナジーバーがあると便利です。

    アクセスはどうする?ラスベガス or フェニックスから?

    モニュメントバレーは主要都市から離れているため、アクセスには時間を要します。以下は主な都市からの距離と所要時間の目安です。

    • ラスベガス(ネバダ州)から: 約400マイル(640km)、車でおよそ6時間半から7時間
    • フェニックス(アリゾナ州)から: 約320マイル(515km)、車で約5時間から5時間半
    • ソルトレイクシティ(ユタ州)から: 約380マイル(610km)、車でおよそ6時間半から7時間

    いずれの都市からも移動はレンタカー利用が基本です。日本の国際運転免許証で運転可能ですが、長距離ドライブとなるため複数人で交代するのが理想的です。

    レンタカー利用時の注意点

    • ガソリン補給: 周辺にはガソリンスタンドが非常に少ないため、街を離れる前に必ず満タンにしてください。残量が半分を切ったら早めに給油する意識でいると安心です。
    • 道路状況: メインのハイウェイは整備されていますが、脇道は未舗装の箇所も多いです。夜間は街灯がほとんどなく真っ暗になるうえ、野生動物の飛び出しにも注意が必要です。昼間の運転を基本に、時間に余裕を持ったスケジューリングをおすすめします。
    • 通信環境: 都市部を離れると携帯の電波が届きにくいエリアが多くなります。オフラインでも使用可能な地図アプリ(Google Mapsのオフラインマップなど)を事前にダウンロードしておきましょう。

    長距離運転に不安がある方や運転に自信がない場合は、ラスベガス発などのガイド付き日帰りや宿泊ツアー参加もおすすめです。効率よく見どころを巡れます。

    宿泊はどこにする?公園内から周辺の町まで

    モニュメントバレーでの滞在を充実させるには、宿泊先選びも重要なポイントです。

    公園内の宿泊施設

    • ザ・ビュー・ホテル(The View Hotel):

    公園内唯一のホテルで抜群のロケーションが自慢です。全室にバルコニーがあり、モニュメントバレーの象徴的なミトン・ビュートの絶景が楽しめます。特に朝のバルコニーからの朝日は忘れがたい体験となるでしょう。ただし非常に人気が高く、予約は半年から一年以上前からチェックする必要があります。

    • ザ・ビュー・キャビンズ(The View Cabins):

    ホテルと同じ敷地内にある独立したキャビンタイプの宿泊施設で、こちらも絶景が望めます。

    • ザ・ビュー・キャンプグラウンド(The View Campground):

    テントサイトやRVサイトが用意されており、大自然の中で一夜を過ごせます。満天の星空を楽しみたい方に最適です。

    公園外の宿泊施設

    公園内のホテルが満室の場合でも周辺には選択肢があります。

    • グールディングス・ロッジ(Goulding’s Lodge):

    公園から車で約10分の歴史あるロッジ。ジョン・フォード監督が映画撮影時に利用したことでも有名で、敷地内には当時の生活を紹介する博物館もあります。レストランやスーパーマーケットも併設されているため便利です。

    • カエンタ(Kayenta)の町:

    公園から南へ車で約30分の最寄りの町。ハンプトン・インやホリデイ・インなどのチェーン系ホテルが数軒あり、比較的リーズナブルに宿泊可能です。スーパーやファストフード店も充実しています。

    ご予算や旅行スタイルに合わせて、ベストな宿泊地を選んでくださいね。

    いざ、聖地へ!モニュメントバレーの歩き方

    準備が整ったら、いよいよモニュメントバレーの中心地へ足を踏み入れましょう。ここでは、園内の具体的な巡り方や規則について詳しくご説明します。

    入園手続きと料金 ―押さえておきたい基本情報―

    モニュメントバレーに到着したら、まずはビジターセンターへ向かい、そこで入園料を支払います。

    • チケット購入手順:

    ゲートの入口では、車1台分の料金ではなく、訪れる人1人につき料金が発生します。支払いは米ドルの現金またはクレジットカードが対応可能です。 料金は時期によって変動することがあるため、訪問前に公式サイトでの確認をおすすめします。 重要なポイントとして、モニュメントバレーはナバホ・ネイションが管理する公園であるため、アメリカの国立公園年間パス(America the Beautiful Pass)は利用できません。必ず入園料を別途用意してください。

    • 公式情報の確認先:

    最新の入園料や開園時間、公園内の規則などは、必ずナバホ・ネイション公園・レクリエーション局の公式サイトで確認しましょう。季節や天候の影響で営業時間が変わることもあるため、訪問前に必ずチェックしてください。

    ビジターセンター内にはギフトショップやレストラン、そして絶景が楽しめる展望デッキがあります。まずはここで景色をゆっくり楽しんでから、奥へと進みましょう。

    絶景を巡るバレードライブ(Valley Drive)

    公園の見どころのひとつが、ビジターセンターを出発点とする「バレードライブ(Valley Drive)」です。約17マイル(約27km)の未舗装ループコースを、自家用車でビュートのふもとまで巡ることができます。

    • バレードライブのルールと留意点
    • 走行可能な車両: 普通乗用車で走行可能ですが、未舗装のため凹凸が激しい箇所もあります。車高の低い車やスポーツカーの走行は避けたほうが安全です。キャンピングカー(RV)、オートバイ、自転車での進入は禁じられています。
    • 禁止事項: ルート外のオフロード走行は厳禁で、これは聖なる土地を守るための重要な措置です。また、ドローンの飛行も全面的に禁止されており、ナバホ族のプライバシーと聖地の静寂を尊重してください。さらに、ナバホ・ネイション全域でのアルコールの所持・飲酒は法律で禁止されています。絶対に持ち込まないようご注意ください。
    • 準備と持ち物

    バレードライブに入る前に、車の燃料が十分かどうか確かめてください。所要時間は写真撮影をしながらゆっくり巡ると約2~3時間です。トイレはビジターセンターにしかないため、出発前に済ませておきましょう。水分補給用の十分な水と軽食を持参することをおすすめします。未舗装路なので、パンクに備えてスペアタイヤの状態確認も忘れずに行いましょう。

    • 主な見どころ

    バレードライブ沿いには11カ所の公式ビューポイントがあります。

    • ザ・ミトンズ&メリック・ビュート(The Mittens and Merrick Butte): ビジターセンター前に広がるシンボル的な風景。左がウエスト・ミトン、右がイースト・ミトンで、それぞれ手袋の形に似ています。
    • エレファント・ビュート(Elephant Butte): 巨大な象が鎮座しているかのような岩。
    • スリー・シスターズ(Three Sisters): 3つの細長い岩の塔が並び、3人の修道女のように見えます。
    • ジョン・フォード・ポイント(John Ford’s Point): 映画監督ジョン・フォードが好んで撮影したスポット。ナバホ族の男性が馬に乗ってポーズをとってくれることもあり(有料)、まるで西部劇の世界に入り込んだかのような写真が撮れます。ナバホ族が運営する露店もあり、手作りのジュエリーや軽食の購入が可能です。
    • アーティスト・ポイント(Artist’s Point): バレー全体を一望できる、まるで絵画のような眺めが広がっています。

    各地点には案内板が設置されているため、配布される地図と照らし合わせながら、ご自身のお気に入りの景色を見つけてみてください。

    ガイドツアーで訪れる特別な場所へ

    バレードライブはモニュメントバレーの魅力の一端に過ぎません。本当の姿に触れたい方は、ナバホ族のガイドが案内するツアーへの参加を強くおすすめします。

    • ツアーの魅力

    一般車では進入禁止のエリアまで案内してもらえ、風で削り取られた巨大なアーチや、古代アナサジ族が残したペトログリフ(岩絵)、住居跡など、多くの歴史的スポットを巡ることができます。 ガイドはこの土地で育ち、先祖伝来の物語を知っています。岩の形にまつわる伝承や動植物の意味、ナバホ族の宇宙観を聞きながら歩くことで、景色がより深く、立体的に感じられるでしょう。

    • ツアーの種類
    • ジープツアー: オープンエアの4WD車でオフロードを走る一般的なツアー。1時間半の短時間から半日、一日かけて巡るものまで多様です。
    • ハイキングツアー: ガイドと一緒に徒歩で聖地をめぐり、自然と一体化する体験ができます。
    • 乗馬ツアー: 馬に乗り、西部劇の主人公気分でバレーを散策。初心者でも参加しやすいツアーが多数あります。
    • サンライズ/サンセットツアー、星空観賞ツアー: 最も美しい時間帯に、特別なスポットへ案内してもらえます。
    • 予約とトラブル時の注意点

    ツアーはビジターセンターの駐車場にある会社のブースで当日申し込みも可能ですが、人気のあるツアーはすぐに満席となるため、特にベストシーズンは事前にオンラインで信頼できるツアー会社を予約しておくのが安心です。 天候不良などでツアーがキャンセルになった場合の返金や日程変更の可否は、予約時に必ず各社の規定を確認してください。信頼できる会社ならば、代替案の提案など柔軟に対応してくれます。

    モニュメントバレーを120%楽しむためのヒント

    せっかくモニュメントバレーまで訪れたのなら、その魅力を余すことなく堪能したいものですよね。ここでは、旅をより一層特別なものにするためのポイントをいくつかご紹介します。

    感動の絶景 ―日の出と日の入り―

    モニュメントバレーが最も劇的な表情を見せるのは、太陽が地平線に近づく日の出と日の入りの時間帯です。

    • サンライズ(日の出):

    東の空が徐々に明るくなり、やがてオレンジ色に染まっていきます。太陽が顔をのぞかせる瞬間、その光がビュートの先端を照らし、巨大な岩のシルエットが朝日に赤々と輝き出します。静けさの中で大地が目覚めるこのひとときは、まさに神秘的な美しさに満ちています。ビジターセンターの展望デッキやザ・ビュー・ホテルのバルコニーは、このサンライズを楽しむのに最適なスポットです。

    • サンセット(日の入り):

    太陽が西の空に沈み始めると、ビュートが長い影を東へと伸ばし始めます。昼間は赤茶けていた岩肌が、夕日の光を浴びて鮮やかなオレンジ色から深い紫色へと徐々に変化していきます。空と大地が織りなす壮大な光景は、見つめる者の心を強く惹きつけます。

    この幻想的な時間を目に焼き付けるには、早朝の起床や日没までの滞在が欠かせません。三脚を用意すれば、光の微妙な変化を写真に美しく残すこともできるでしょう。

    星空と静寂に包まれる夜

    モニュメントバレーの魅力は昼間だけではありません。夜空を見上げると、信じられないほどの満天の星が広がっています。

    近隣に大きな街がなく人工の光も少ないため、ここはアメリカでもトップクラスの星空観賞スポットとして知られています。新月の晴れた夜には、無数の星々がまるでダイヤモンドのように輝き、肉眼でも天の川がはっきりと見えます。その光景は、まるで宇宙に浮かんでいるかのような感覚をもたらしてくれます。

    ザ・ビュー・ホテルやキャビンに宿泊すれば、部屋のバルコニーから暖かく過ごしながらこの壮麗な夜空を満喫できます。キャンプサイトを利用すれば、寝袋に包まれて満天の星空を眺めるという贅沢な時間が味わえます。

    夜は非常に冷え込むため、ダウンジャケットなど十分な防寒対策が必要です。また、足元を照らす懐中電灯もお忘れなく。星空鑑賞の際は、他の鑑賞者の迷惑にならないようライトは最小限にし、光が拡散しにくい赤色ライトの使用がマナーとされています。

    ナバホ文化に触れる ―お土産とグルメ―

    モニュメントバレーはナバホ文化を肌で感じられる貴重な場所でもあります。

    • お土産探し

    ビジターセンター内のギフトショップやバレードライブ沿いのジョン・フォード・ポイントには、ナバホ族の職人たちが手作りした工芸品を扱う露店が軒を連ねています。 彼らの代表的な工芸品としては、ターコイズをあしらった美しいシルバージュエリーが非常に人気で、一つ一つ異なるデザインには作り手の思いが込められています。ほかにも、繊細な幾何学模様が特徴のナバホラグや、独特の模様が施された陶器も魅力的です。 露店では制作者であるナバホの方々と直接話をしながら、作品に込められた意味や背景を聞けることもあり、それが旅の貴重な思い出となることでしょう。

    • ナバホの味覚

    せっかくならナバホの伝統料理にも挑戦してみませんか。ビジターセンターに併設されたザ・ビュー・レストランでは、モニュメントバレーの絶景を楽しみながらゆったりと食事をいただけます。 ここでの人気メニューは「ナバホタコ」。揚げパン(フライブレッド)に、豆の煮込みやひき肉、レタス、トマト、チーズなどの具材をたっぷりのせたボリューム満点の一皿です。揚げパンは外はカリッと、中はもちっとした食感で、具との相性は抜群。ぜひ味わってみてください。

    聖地を訪れる者としての心構え

    最後に、モニュメントバレーを訪れる際に最も重要なこと、それはこの土地に対する敬意を持つことです。私たちはナバホ族の聖地にお邪魔する「訪問者」であるという自覚をいつも忘れてはなりません。

    敬意を示すとは

    壮大な景色を目の前にするとつい感動で高ぶるかもしれませんが、常に節度ある行動を心掛けることが大切です。

    • 立ち入らない: 指定されたトレイルや道路を外れて歩き回ったり、岩の上に登ったりすることは絶対に避けましょう。聖なる土地を踏み荒らす行為となります。
    • 触らない: 特に古代の遺跡やペトログリフ(岩絵)は非常に繊細です。決して触れないでください。私たちの皮脂や汗が付着するだけで劣化を促進してしまいます。
    • 撮影時のマナー: ナバホ族の方々や彼らの住居であるホーガンの写真を撮る際は、必ず事前に「写真を撮ってもよろしいですか?」と許可を求めましょう。無断撮影はプライバシーの侵害につながり、非常に失礼です。笑顔で声をかければ快く応じてくれることが多いです。

    自然と共生する ―Leave No Trace―

    アウトドア活動における国際的な倫理規範である「Leave No Trace(痕跡を残さない)」の理念は、モニュメントバレー訪問時にも欠かせません。

    • ゴミは必ず持ち帰る: これは基本中の基本です。お菓子の包装紙一枚さえも、この美しい景観を損なうだけでなく、野生動物にも悪影響を与えます。自分が持ち込んだものは、必ず持ち帰ってください。
    • 見つけたものはそのままに: 美しい石や植物を見かけても、持ち帰ってはいけません。そこにあるべきものはその場に残しましょう。「写真だけを撮り、足跡以外は何も残さない」意識がとても重要です。
    • 野生動物との距離を保つ: コヨーテやウサギなどの野生生物を見ることがありますが、愛らしいからといって餌を与えたり近づいたりするのは控えましょう。彼らの生態系を守るため、適切な距離を保ち静かに見守ることが求められます。

    ナバホ・タイムの理解

    最後に実用的な注意点として、「時間」の問題があります。アリゾナ州の多くの地域では年間を通して標準時を採用し、サマータイム(デイライト・セービング・タイム)は実施されていません。しかし、ナバホ・ネイションだけは夏時間を導入しています。

    そのため、夏季(3月第2日曜日から11月第1日曜日)にアリゾナ州内の他の場所(例:グランドキャニオン)からモニュメントバレーへ訪れると、1時間の時差が生じます。ナバホ・ネイションは1時間進んでいるため、ツアーの集合時間などで遅れないよう、この差を必ず考慮してください。

    • 公式情報での確認を:

    時間差がやややこしいため、訪問前にナバホ・ネイション観光公式サイトなどで現地の現在時刻を確認することをおすすめします。

    また、ナバホの人々の間にはいわゆる「ナバホ・タイム」と呼ばれる、時間に対しゆったりとした考え方もあると言われます。時間に厳格すぎず、予期しない出来事も含めて旅を楽しむような心持ちで臨むことも、この地を味わうコツかもしれません。

    モニュメントバレー周辺のおすすめ立ち寄りスポット

    もし旅の日程に余裕があるなら、モニュメントバレー周辺にも魅力的なスポットがたくさんあります。ぜひ足を伸ばして訪れてみてください。

    フォレスト・ガンプ・ポイント

    モニュメントバレーから北東へ向かう国道163号線を約15分走った場所に、非常に有名な絶景スポットがあります。映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』の中で、主人公フォレストが「なんだか疲れた。家に帰ろう」と言い、走るのをやめる感動的なシーンが撮影された場所です。

    道路の中央に立つと、まっすぐに伸びる道の先にモニュメントバレーのビュート群が美しく浮かび上がって見えます。多くの観光客がここで記念写真を撮っていますが、この道は現役の交通量の多いハイウェイです。撮影の際は左右の車の状況をよく確認し、安全に十分注意してから行ってください。

    グースネック州立公園

    モニュメントバレーから北へ車で約30分、ユタ州に位置する州立公園です。ここでは、サンワン川が約300メートルもの深い谷を巨大なガチョウの首(グースネック)のように大きく蛇行しながら流れている壮大な景観が楽しめます。

    展望台から見下ろすと、地球の地質活動のダイナミズムを強く実感できます。川は直線距離でわずか2.4キロ進むために、約8キロ以上も曲がりくねっているのです。その規模感は写真ではなかなか伝わりづらいので、ぜひご自身の目でその迫力を味わってみてください。

    フォーコーナーズ国定公園

    アメリカで唯一、4つの州(アリゾナ州、ユタ州、コロラド州、ニューメキシコ州)の境界線が一点で交差する、特別でユニークな場所です。モニュメントバレーからは南東へ車で約2時間の距離にあります。

    地面に設置された記念碑の周囲には、4州の名前と紋章が描かれており、手足を広げれば一度に4つの州を跨いで立つことができます。旅の思い出として、ユニークなポーズで写真を撮るのもおすすめです。この公園もモニュメントバレーと同様、ナバホ・ネイションによって管理・運営されています。詳しい情報はフォーコーナーズ国定公園公式サイトをご覧ください。

    *

    モニュメントバレーへの旅は、単に美しい風景を楽しむだけでなく、地球の悠久の歴史と、その地で暮らし続けるナバホ族の文化や精神に触れる特別な体験です。

    荒野を吹き抜ける風の音に耳を澄まし、大地の色合いを感じ、星空に想いを馳せる。そんな時間の中で、私たちは日常の喧騒を離れ、自己と向き合うひとときを持てることでしょう。

    この記事が、あなたの素晴らしい旅の計画に少しでも役立てば幸いです。どうぞ敬意を胸に、この聖地で一生心に残る体験をしてください。

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    この記事を書いたトラベルライター

    旅行代理店で数千人の旅をお手伝いしてきました!今はライターとして、初めての海外に挑戦する方に向けたわかりやすい旅ガイドを発信しています。

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