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古代ペルシャの煌めきを巡る旅!イランの主要5都市完全ガイド【テヘラン・イスファハン・シーラーズ・ヤズド・タブリーズ】

「イラン」と聞いて、あなたはどんな景色を思い浮かべますか?広大な砂漠、きらびやかなモスク、それとも少し謎めいた歴史の物語でしょうか。ニュースで耳にするイメージが先行し、どこか遠い国のようにも感じられるかもしれません。しかし、その扉を開けてみれば、そこには想像を絶するほど美しく、温かい人々が暮らす、古代ペルシャの栄光を今に伝える魅力的な世界が広がっています。

世界30か国を旅した私も、イランで出会った風景と人々のホスピタリティには特別な感動を覚えました。緻密なタイルワークが施されたモスクの青、活気あふれるバザールの喧騒、砂漠の街に沈む夕日の赤、そして何よりも外国人旅行者を心から歓迎してくれるイランの人々の笑顔。そのすべてが、私の旅の記憶に深く刻まれています。

この記事では、そんなイランの魅力を存分に味わえる主要な5つの都市、首都「テヘラン」、美の都「イスファハン」、詩と庭園の街「シーラーズ」、ゾロアスター教の聖地「ヤズド」、そしてアゼリ文化が薫る「タブリーズ」を徹底的にご紹介します。それぞれの都市が持つ独自の歴史や文化、必見の観光スポットはもちろん、ビザの取得方法から服装のルール、現地の移動手段まで、旅の準備から実践までを網羅した「行動できる」情報も詰め込みました。この記事を読み終える頃には、きっとあなたもペルシャの魔法にかかり、次の旅先リストにイランを加えたくなっているはずです。

イランの旅をさらに深めたい方には、奇岩と生きる人々が暮らすイランの洞窟村カンダヴァンを訪れる旅もおすすめです。

目次

イラン旅行の基本情報:旅の前に知っておきたいこと

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壮大なペルシャの旅に出発する前に、まずは基本的な情報をしっかりと把握しておきましょう。少しの準備と知識が、旅行の快適さや安全性に大きく影響します。ここでは、ビザの取得方法から服装の注意点、現地のお金事情まで、イラン旅行をスムーズに楽しむために欠かせない準備について詳しく解説します。

ビザ(査証)の取得方法:旅のはじめの一歩

イランへ入国するには、日本のパスポート保持者でもビザの取得が必要です。ビザの取得方法には主に2種類あり、「アライバルビザ」と「事前申請」があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の旅行スタイルに合った方法を選びましょう。

アライバルビザ

テヘランのイマーム・ホメイニ国際空港などの空港到着時に取得できるビザです。手続きが比較的簡単で、急な渡航にも対応しやすいのが利点です。ただし、入国審査時に却下される可能性もゼロではありません。特に、過去にイスラエルを訪れた渡航履歴がパスポートにある場合は注意が必要です(スタンプがなくても陸路の国境スタンプなどから推測されることもあります)。申請にはパスポート、証明写真、英文の海外旅行保険証明書、そしてビザ料金(ユーロまたは米ドルの現金)が必要です。空港のカウンターで申請用紙に記入し、支払いを済ませて発給を待ちます。

事前申請(e-Visa)

もっとも確実でおすすめなのが、オンラインによるe-Visaの事前申請です。渡航前にイラン外務省の公式ウェブサイトから申請し、承認コードを取得した後に、在日イラン大使館でビザを受け取るか、空港でのアライバルビザ発給を選ぶことが可能です。事前申請のメリットは、入国拒否のリスクを大幅に減らせる点にあります。余裕をもって計画的に準備を進めましょう。

e-Visa申請の流れ

  • 公式サイトアクセス: イラン外務省の電子ビザ申請ページへアクセスします。
  • 情報入力: パスポート情報、個人情報、イランでの滞在先(最初の宿泊先のホテル情報で充分)をフォームに沿って記入します。
  • 書類のアップロード: パスポートの顔写真ページのカラースキャンデータおよび規定サイズの顔写真データをアップロードします。
  • 申請と承認コードの受領: 申請後、数日から2週間ほどで登録したメールアドレスに「承認コード(Authorization Code)」が届きます。
  • ビザの受け取り: 承認コードを持って、指定した場所(在日イラン大使館または到着空港)でビザシールをパスポートに貼ってもらいます。大使館での受け取りの場合は別途ビザ代金の支払いが必要です。

ビザに関する最新の情報は変わりやすいため、渡航前には必ず在イラン日本国大使館の公式サイトで最新情報を確認しましょう。

服装のルールと持ち物リスト:郷に入れば郷に従え

イランはイスラム共和国であり、旅行者にも現地の文化や慣習を尊重した服装が求められます。とくに女性に関しては「ヘジャブ」と呼ばれる服装規定があります。決して窮屈なものではなく、ルールを把握すればファッションも楽しめます。

女性の服装ルール(ヘジャブ)

  • スカーフ(ルーサリー): 髪を覆うためのスカーフは必須で、空港到着直後から着用が求められます。現地では色鮮やかなスカーフが多く販売されているため、そこで購入しても楽しめます。きっちり巻く必要はなく、後ろ髪が少し見える程度にゆるく巻いている女性も多数います。
  • 上着: 体のラインが出ないゆったりした長袖の服を着用し、ヒップが隠れる丈が望ましいです。特に「マンツー」と呼ばれるコートのような上着が現地でよく見られますが、チュニックやロングカーディガンでも代用可能です。
  • 下衣: 足首まで隠れる長めのパンツやスカートを着用します。ジーンズも問題ありませんが、レギンスやスキニーパンツのように体のラインが強調されるものは避けましょう。
  • 色彩: 服の色に厳しい制約はありません。黒いチャードルを着る女性もいますが、旅行者がそこまで徹底する必要はなく、むしろ明るい色のスカーフやマンツーでファッションを楽しむことができます。

男性の服装ルール

男性の服装は女性ほど厳しくありませんが、注意点があります。ショートパンツやタンクトップなど肌の露出が多い格好は避けるべきです。基本的に長ズボンとTシャツやシャツであれば問題ありません。

持ち物リストを確認

  • 貴重品: パスポート(有効期限6ヶ月以上)、ビザ関連書類、航空券(eチケットの控え)、現金(米ドル/ユーロ)、クレジットカード(緊急用)、海外旅行保険証
  • 服装: スカーフ(女性用)、長袖の上着(マンツーやカーディガン)、長ズボン、着替え、羽織るもの(朝夕の気温差対策)
  • 日用品: 常備薬、化粧品、日焼け止め、サングラス、帽子、ウェットティッシュ、生理用品(現地購入も可能ですが使い慣れたものが安心です)
  • 電子機器: スマートフォン、カメラ、モバイルバッテリー、変換プラグ(CタイプまたはFタイプ)、VPNアプリ(日本出発前にインストールしておくこと)

通貨・両替・インターネットの事情

イランの経済環境や通信状況には独特な点があります。事前に理解しておくことで現地で困ることが減ります。

通貨について:リアルとトマンの違いに注意

イランの公式通貨は「イラン・リアル(IRR)」ですが、日常生活では「トマン」という単位が一般に使われています。1トマン = 10リアルと覚えておきましょう。価格表示や店員の口頭での金額提示はほとんどがトマン単位です。たとえば「10,000」と言われた場合は10,000トマン、つまり100,000リアルの意味です。初めは戸惑いますが、ゼロを一つ足す計算と意識すると間違いが減ります。高額紙幣が多く数字も大きくなるため、支払い時には必ず確認しましょう。

両替と支払いの注意

国際的な経済制裁の影響で、イランでは日本発行のクレジットカードやデビットカード、国際キャッシュカードはほとんど使えません。したがって、旅行費用は基本的に現金(米ドルまたはユーロ)で持参し、現地でリアルに両替する必要があります。両替は空港、市内の両替所、ホテルで可能ですが、市内の両替所が一般的に最もレートが良いとされています。偽札に注意し、銀行や公認両替所で両替することをおすすめします。高額品を購入しない限り、100ドルや50ドル札よりも20ドルや10ドルの小額紙幣を多めに持っていくと、小分けの両替で便利です。

インターネット環境とVPNの利用

空港や主要都市のホテル、カフェではWi-Fiが利用できる場所が増えていますが、日本ほど高速ではないことが多いです。より快適にネットを使いたい場合は、空港で現地のSIMカードを購入するのがおすすめです。MTN IrancellやHamrahe Avalなどの通信会社カウンターで、パスポート提示により旅行者向けのSIMを簡単に購入できます。

また、イランではFacebook、Twitter、YouTubeといった一部のウェブサイトやSNSへのアクセスが制限されています。LINEやInstagramは利用できることも多いですが、状況によって変わることがあります。これらのサービスを利用するには、VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用が必要です。VPNアプリはイラン国内でのダウンロードが難しい場合があるため、必ず出発前にスマートフォンにインストールし、設定を済ませておきましょう。

首都テヘラン:活気と歴史が交差する現代ペルシャの中心

イランの旅は、多くの場合、首都テヘランからスタートします。人口が1,500万人を超えるこの大都市は、現代的で活気に満ちた一面と、カージャール朝やパフラヴィー朝の栄華を物語る歴史的な側面を併せ持っています。まずはここでイランの空気に触れ、ペルシャの奥深さへの入口を開いてみましょう。

ゴレスターン宮殿:鏡と色彩が織り成すカージャール朝の宝珠

テヘラン観光の目玉の一つであり、ユネスコの世界遺産に登録されているのがゴレスターン宮殿です。カージャール朝に築かれたこの宮殿は、「薔薇の宮殿」という名のとおり、美しい庭園と豪華絢爛な建築が特徴です。一歩足を踏み入れれば、その華麗さに圧倒されることでしょう。

最大の見どころは「鏡の間」です。壁から天井にかけて無数の鏡の断片がモザイク状に配され、光を乱反射させて夢のような空間を演出しています。まるで万華鏡の中に迷い込んだかのような感覚は、一生忘れられない体験となるでしょう。その他にも、カージャール朝の王が戴冠式に用いた「大理石の玉座」や、ヨーロッパから贈られた品々を展示したホールなど、見どころは豊富です。

チケットは、敷地への入場券と、各宮殿や博物館ごとの個別チケットを入口で購入する方式です。すべてを見て回るには時間がかかるため、訪れたい建物を事前に絞っておくと効率的です。窓口で英語のパンフレットを受け取り、地図を確認しながら回ると良いでしょう。

旧アメリカ大使館:歴史的転換点を語る壁画の数々

テヘラン中心部には、1979年のイラン・イスラム革命時に起きたアメリカ大使館人質事件の舞台となった旧アメリカ大使館が現存しています。現在は「スパイの巣」と呼ばれる博物館の一部が公開されており、外壁を覆う反米プロパガンダの壁画が強い印象を与えます。自由の女神が骸骨の姿に描かれているなど、衝撃的なアートはイランの現代史とアメリカとの複雑な関係を象徴的に表しています。歴史の転換期を肌で感じられる、貴重な場所です。

グランド・バザール:テヘランの胃袋と魂が息づく迷宮

都市の活気を体感できる場所、それがバザールです。テヘランのグランド・バザールは、世界でも有数の規模を誇る巨大市場。屋根付きのアーケードが迷路のように広がり、一歩足を踏み入れれば方向感覚を失うほどです。スパイスの芳香、鮮やかな絨毯の色彩、人々の呼び声やカートの音が五感を刺激し、圧倒的な活力を放っています。

ここではペルシャ絨毯、サフランやピスタチオ、ドライフルーツ、美しいミニアチュール(細密画)、チャイグラスなどが取り揃えられています。値段交渉はバザールでの買い物の醍醐味です。最初は言い値の半分程度から交渉を始めるのが一般的ですが、何より大切なのは売り手との会話を楽しむこと。笑顔で、少しだけペルシャ語の挨拶「サラーム!」を添えれば、ぐっと親しみやすい雰囲気になります。もし迷子になっても焦らず、人の流れに沿って歩けば大通りに辿り着けますし、地元の人に尋ねれば親切に道を教えてくれるでしょう。

テヘランでの賢い移動術

交通渋滞が激しいテヘランですが、その一方で交通網は比較的整っています。上手に利用して、快適な移動を心がけましょう。

地下鉄(メトロ): 市内全域をカバーする地下鉄は、渋滞を避けて安価に移動できる最も便利な手段です。切符は券売機か窓口で購入します。特徴的なのは、車両の先頭と最後尾が女性専用車両となっている点です。女性旅行者は安心して利用でき、男性も必要に応じて離れて乗ることができます。ラッシュアワーは非常に混雑するため、大きな荷物がある際は注意が必要です。

タクシー配車アプリ「Snapp!」: イラン版Uberともいえる「Snapp!(スナップ)」は、旅行者にとって画期的なツールです。アプリを使い目的地を入力すると料金が先に確定し、煩わしい値段交渉が不要で、言葉の壁も気にせず利用できます。通常のタクシーより料金が安く、安全性も高いため、イラン旅行には必携のアプリと言えるでしょう。利用には現地の電話番号が必要なので、空港でSIMカードを購入したらすぐに登録を済ませることを強くおすすめします。

イスファハン:「世界の半分」と謳われた美の都

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「イスファハン・ネスフェ・ジャハーン(イスファハンは世界の半分)」。この古くから伝わるペルシャのことわざが示す通り、かつてサファヴィー朝の首都として栄えたこの都市は、世界中の富と文化が集結する場所でした。その輝きはいまだに衰えることなく、訪れる人々を惹きつけ続けています。緻密に施されたイスラム建築の青い輝きは、まさに圧巻の光景です。

イマーム広場:世界の中心にそびえる壮麗な舞台

イスファハンの中心部に位置し、訪れる全ての人が息を呑む場所がイマーム広場(正式名称:世界の図の広場)です。南北560メートル、東西160メートルという広大な敷地は、かつて王の謁見やポロ競技が催された壮大な舞台でした。広場を囲むのは、イスラム建築の最高傑作と称される「イマーム・モスク」、繊細で優美な「シェイク・ロトフォッラー・モスク」、華やかな宮殿「アリー・カープー」、そして大規模な「ゲイサリーイェ・バーザール」の入口です。昼間は噴水や緑が美しい市民の憩いの場となり、夜にはライトアップで幻想的な雰囲気を醸し出します。馬車に乗って広場を一周するのもおすすめです。

イマーム・モスク:青の交響曲に魅せられる

イマーム広場の南側に壮麗にそびえるのがイマーム・モスクです。総面積が1万2000平方メートルを超えるこの巨大なモスクは、その内外を覆う青を基調とした彩釉タイルの美しさで名高いです。太陽の光を浴びて輝くドームや尖塔は「イスファハン・ブルー」と呼ばれ、見る角度や時間帯によって異なる表情を見せてくれます。内部に足を踏み入れると、その建築の壮大さと音響効果に感嘆します。中央のドームの真下で手を叩くと、音が7回も反響すると言われており、ぜひ体験してみてください。入場時には服装のチェックがあるため、特に女性はスカーフをきちんと着用し、肌の露出がないかしっかり確認しましょう。

ハージュ橋とスィー・オ・セ橋:川辺に広がる人々の営み

イスファハンの中心を流れるザヤンデ川には、歴史深い橋がいくつもかかっています。中でも特に美しいのが、二層構造のアーチが特徴の「ハージュ橋」と、33のアーチを持つ「スィー・オ・セ橋(33の橋)」です。これらの橋は単なる通行路ではなく、市民が集い語らい、涼を取る大切な場となっています。夕暮れ時には、橋のアーチの下に若者たちが集まり歌を歌ったり、チャイ(紅茶)を楽しんだりする光景が見られます。近年は水不足で川が干上がることも多いものの、橋そのものの美しい建築と、そこに流れる穏やかな時間は、イスファハンの別の顔を教えてくれます。

イスファハンのグルメと宿泊

イスファハンでは、ぜひ伝統的なホテルに滞在してみてください。古い邸宅やキャラバンサライ(隊商宿)を改装したホテルは、中庭に噴水があり、ペルシャ独特の雰囲気を堪能できます。また、グルメも楽しみのひとつです。羊肉を細かく叩いてペースト状にし、鉄の器で焼き上げた「ビリアニ」は、イスファハンの名物料理として親しまれています。バザール内の食堂などで気軽に味わうことができます。

シーラーズ:詩と庭園、そしてペルセポリスへの玄関口

イスファハンが「美の都」と称されるなら、シーラーズは「詩と文化の都」と表現されます。イランで最も愛される詩人、ハーフェズとサアディーの二人がこの地で生まれ、その精神は今なお街のあらゆる場所に息づいています。温暖な気候に恵まれ、美しいペルシャ式庭園が点在するこの町は、訪れる旅人の心を穏やかにしてくれます。さらに、古代アケメネス朝ペルシャ帝国の偉大な遺跡であるペルセポリスへの拠点としても欠かせない都市です。

ペルセポリス遺跡:古代帝国の輝きと崩壊を偲ぶ場所

シーラーズの北東約60キロに位置する荒涼とした地に、突然として巨大な石柱とレリーフの群れが現れます。これが紀元前6世紀、ダレイオス1世によって建設が始められたアケメネス朝ペルシャの都、ペルセポリスです。かつては帝国の威光を世界に示すための壮麗な儀式の都として栄えましたが、紀元前330年にアレクサンドロス大王の手によって破壊され、その輝かしい歴史に幕を閉じました。

広大な敷地内には、「万国の門」と呼ばれる巨大な門や、謁見のための「アパダナ(謁見の間)」、柱が100本も林立していた「百柱の間」などの遺構が残されています。特に目を引くのは、階段の壁に施された精巧なレリーフの数々です。そこには帝国に従属する各民族が、それぞれの民族衣装を身にまとい、貢物を携えて新年(ノウルーズ)の祝祭に集う姿が生き生きと描写されており、ペルシャ帝国がいかに広大で多様な文化を抱えていたかを雄弁に物語っています。シーラーズからはタクシーを利用するか、現地の旅行代理店で日帰りツアーに参加するのが一般的です。日差しを遮るものがほとんどないため、特に夏季は帽子やサングラス、十分な水分、日焼け止めの用意が欠かせません。

ピンクモスク(ナスィーロル・モルク・モスク):光が織り成す色彩の魔術

シーラーズで必ず訪れたいスポットが、通称「ピンクモスク」として知られるナスィーロル・モルク・モスクです。外観は他のモスクと大差ありませんが、一歩礼拝堂に足を踏み入れると別世界が広がります。壁一面にはめ込まれたステンドグラスを通した朝の光が、床に敷かれたペルシャ絨毯の上に赤、青、黄色、緑といった色とりどりの光の模様を映し出します。その光景はあまりにも幻想的で、思わず時を忘れて見とれてしまいます。この魔法のような色彩の光は、太陽が低い位置にある午前中にしか見ることができません。とりわけ冬の朝8時から9時頃が最も良い時間帯と言われています。世界中から多くの観光客が訪れる人気スポットのため、早めの訪問がおすすめです。また、三脚の使用が禁止されていることが多いため、ルールを守って撮影を楽しんでください。

エラム庭園:ペルシャ式庭園の美を凝縮した楽園

砂漠のイメージが強いイランですが、「ペルシャ式庭園」という独特の様式を持つ美しい庭園が各地に点在し、その中のいくつかは世界遺産にも登録されています。シーラーズにあるエラム庭園もその代表例の一つです。エラムとはペルシャ語で「楽園」を意味し、その名にふさわしく、緻密に計算された水路や噴水、世界各地から集められた多彩なバラや植物が咲き誇る、まさに地上の楽園と呼べる場所です。庭園の中心にはカージャール朝時代の美しい宮殿が建てられており、庭園の景観に華やかさを加えています。散策で疲れた際は、木陰のベンチに腰掛け、水のせせらぎと花の香りに包まれてゆったりと過ごすのもおすすめです。

ヤズド:砂漠に輝くゾロアスター教の聖地

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イラン中央部の砂漠地帯に位置するヤズドは、世界でも最も古い都市の一つと称されます。日干しレンガで築かれた迷路のような旧市街や、街のあちこちに点在する「バードギール(風採り塔)」が、この地独特の風景を形作っています。また、ここはイスラム教が広まる以前のペルシャで信仰されていた古代宗教、ゾロアスター教(拝火教)の中心地でもあり、その文化や信仰が今なお濃厚に息づく神秘的な場所でもあります。

旧市街散策とバードギール:自然の冷却装置の秘密

ヤズドの魅力のひとつは、日干しレンガ造りの建物が密集する旧市街の散策です。まるで中世に迷い込んだような迷路状の路地を歩き回ると、予期せぬ発見が待っています。もし屋上に上がれるチャイハネ(喫茶店)を見つけたら、ぜひ立ち寄ってみましょう。そこからは、砂色の家々の屋根を越えて、無数のバードギールが空にそびえ立つ様子を見渡せます。このバードギールは、過酷な砂漠の暑さをしのぐための古代の知恵そのもので、風を捕らえ地下に送り込み、地下水路(カナート)を通過させて冷却し、天然のクーラーとしての役割を果たしています。ヤズドのドーラトアーバード庭園にはイランで最も高いバードギールがあり、その仕組みを間近に観察することが可能です。

沈黙の塔:生と死を見つめる鳥葬の聖地

ヤズド郊外の小高い丘の上には、「ダフメ」あるいは「沈黙の塔」と呼ばれるゾロアスター教の鳥葬場が存在します。ゾロアスター教では、火・水・土・空気を神聖視し、死体でこれらを汚すことを禁じていたため、亡くなった遺体はこの塔の頂上に置かれ、禿鷲などの鳥により肉体を処理させ、自然に還すという方法を取っていました。この風習は20世紀半ばに法的に禁止されましたが、二つの静謐な塔は今も丘に佇み、生と死、そして自然との調和について静かに語りかけています。塔の頂上からはヤズドの街並みと広大な砂漠の景色が一望でき、その風景はどこかもの悲しくも美しさをたたえています。訪問の際は、この場所の宗教的な意味合いを尊重し、静粛に行動することが求められます。

ゾロアスター教寺院(アーテシュキャデ):千年以上燃え続ける聖火

ヤズドの中心部に位置するゾロアスター教の寺院には、西暦470年から絶え間なく燃え続けていると伝えられる聖火「アータシュ・バフラーム」が祀られています。ガラス越しに静かに燃えるこの炎を見つめると、時代を超えて信仰を守り抜いてきた人々の強い意志が感じられます。寺院の正面には、ゾロアスター教の象徴である翼を広げた神アフラ・マズダーのレリーフが飾られています。

タブリーズ:アゼリ文化が薫る交易の crossroads

イラン北西部に位置し、トルコやアゼルバイジャンとの国境にほど近いタブリーズは、古くからシルクロードの重要な中継地として栄えた交易都市です。そのため、住民の多くはペルシャ語ではなくアゼリー語(アゼルバイジャン語)を使い、食文化や音楽にも独特な伝統が色濃く残っています。他のペルシャの都市とは一線を画した、エキゾチックな魅力が感じられます。

タブリーズのバザール:世界遺産に登録された巨大迷宮

タブリーズを訪れるうえで外せないのが、世界遺産にも登録されているタブリーズの歴史的なバザール複合体です。屋根で覆われた通路は総延長5kmを超え、世界最大級の屋内市場として名高い場所です。レンガ造りの美しいドーム天井の下、迷路のように入り組んだ通路が続き、絨毯やスパイス、金物、織物など多種多様な商品を扱う店がひしめき合っています。特に絨毯市場は有名で、イラン各地から集められた高品質なペルシャ絨毯が山積みされている光景は圧巻です。バザール内にはモスクやキャラバンサライ、公衆浴場(ハンマーム)なども含まれており、まるで一つの都市のように機能してきた歴史を感じさせます。活気に溢れるバザールを散策し、疲れたら伝統的な食堂でケバブを楽しむのがタブリーズ流の過ごし方です。

ブルーモスク:災害を乗り越えた青の宝石

その名の通り、深い青色のタイルに包まれた美しいモスクです。15世紀に築かれましたが、18世紀の大地震で甚大な被害を受け、長い間廃墟となっていました。しかし20世紀に入ってから丹念な修復作業が行われ、かつての輝きの一部を取り戻しました。完全な復元には至っておらず、崩れたままの部分が残されているため、歴史の重みとともに、それでもなお訪れる人々を魅了するタイルの深い青色の美しさが一層際立っています。ほかの都市のモスクとは異なる、静謐で荘厳な空気が漂っています。

カンドヴァン村への日帰り旅行:イランのカッパドキア

タブリーズから日帰りでアクセス可能なユニークな村がカンドヴァンです。火山活動により形成された円錐形の奇岩が連なり、その岩を掘り抜いて住居として利用しています。その景観から「イランのカッパドキア」と称されますが、カッパドキアと異なる点は、この村が単なる観光地ではなく、現在も人々が生活する現役の集落であることです。煙突から立ち昇る煙や子どもたちの笑い声が岩窟住居の間に響き渡り、まるで物語の世界に迷い込んだような不思議な感覚を味わえます。村はハチミツの産地としても知られています。

イランの都市間移動をマスターしよう

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広大なイランを旅する際には、都市間の移動手段を把握しておくことが大切です。イランの公共交通機関は、非常にリーズナブルで快適なサービスが充実しています。

長距離バス:コストパフォーマンスと快適さの両立

イラン国内を広くカバーし、多くの旅行者に利用されている代表的な移動手段が長距離バスです。特に「VIPバス」と呼ばれるタイプは、3列のゆったりとした座席で、飛行機のビジネスクラスのように深くリクライニングが可能です。軽食やドリンクの提供もあり、長時間の移動でも快適に過ごせます。料金は非常にリーズナブルで、例えばテヘランからイスファハンまでの約6時間の旅でもおよそ1000円で利用できます。チケットは各都市のバスターミナル(ターミナル・エ・パサジェルバール)内の各バス会社の窓口で直接購入可能です。行先と「VIP」と書いたメモを見せれば、すぐに目的のバス会社カウンターを案内してもらえます。出発の30分前にはバスターミナルに到着しておくと安心です。

鉄道:ロマンティックな夜行列車の旅

主要都市間を結ぶ鉄道路線も整備されています。特にテヘランからヤズドやシーラーズへは寝台列車の利用が便利です。夜に出発し、朝に目的地へ到着するため、移動時間を睡眠にあてることができ、宿泊費も一泊分節約できます。コンパートメントは基本的に4人部屋または6人部屋で、清潔なシーツや毛布が用意されています。チケットは駅の窓口や市内の旅行代理店で購入可能ですが、人気の路線は売り切れが早いため、早めの予約をおすすめします。

国内線フライト:時間を有効に使う選択肢

日程に余裕がない場合は、国内線の航空便を活用することも有効です。イラン航空やマーハーン航空といった航空会社が主要都市間を結んでいます。料金は比較的手頃ですが、オンラインでの予約や決済にはイラン発行のカードが必要な場合が多く、旅行者が自力で手配するのはやや難しいかもしれません。そうした場合は、現地の旅行代理店に依頼して手配してもらうのが確実です。トラブルを避けるためにも、信頼のおける代理店を選ぶことが重要です。

イラン旅行で役立つペルシャ語フレーズ

イランでは、英語が通じるのは主にホテルや一部の観光スポットに限られています。それでも、少しでも現地の言葉を覚えて使うことで、現地の人との距離が一気に縮まります。イランの方々は、外国人がペルシャ語を話そうとする姿勢を非常に喜びます。

  • こんにちは: サラーム
  • ありがとう: メルスィー(フランス語が由来で広く使われる) / モテシャッケラム(より丁寧な表現)
  • さようなら: ホダーハーフェズ
  • はい / いいえ: バレ / ナ
  • お元気ですか?: ハーレ・ショマー・チェトレ?
  • 元気です: フーバム
  • これはいくらですか?: イン・チャンド・アスト?(または イン・チェンデ?)
  • すみません: ベバフシード
  • わかりません: ネミードゥーナム
  • 写真を撮ってもよいですか?: ミーシェ・アクス・ベギーラム?

安全に旅するための最終チェック

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イランは、報じられるイメージとは異なり、非常に治安が良く、人々も親切で旅行しやすい国です。しかし、どの国を訪れる場合でも、安全面への配慮は欠かせません。旅の終わりに、もう一度重要なポイントを確認しておきましょう。

渡航前には、必ず外務省の海外安全ホームページで最新の危険情報をチェックしてください。イラン国内にも国境付近など、一部の地域では高いレベルの危険情報が発信されている場所があります。旅行中はこれらの地域には決して近づかないように注意しましょう。

もしもパスポートを紛失したり盗難に遭ったり、何らかのトラブルに巻き込まれた際に備えて、在イラン日本国大使館の連絡先を控えておくことは大切です。また、海外旅行保険には必ず加入しましょう。保険は病気やケガの治療費だけでなく、盗難や航空機の遅延などにも対応してくれる心強い支えとなります。

そして最後に、イラン旅行で最も心に残るのは、壮大な遺跡や美しいモスクばかりではなく、そこで出会う人々の温かさかもしれません。バザールで「チャイでも飲んでいかないか?」と気さくに声をかけてくれるおじさん、道に迷っていると親身に手を貸してくれる学生、たどたどしいペルシャ語に笑顔で応じてくれる家族。こうした交流が、ペルシャの旅を忘れられないものにしてくれるのです。ルールやマナーを守り、敬意をもって接すれば、イランは最高の笑顔であなたを迎えてくれるでしょう。さあ、古代ペルシャの輝きを求める旅に、一歩踏み出してみませんか。

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この記事を書いたトラベルライター

旅行代理店で数千人の旅をお手伝いしてきました!今はライターとして、初めての海外に挑戦する方に向けたわかりやすい旅ガイドを発信しています。

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