「君たちの文明は、我々の世界に足を踏み入れた。我々はもう一つの太陽を探していた。そして、君たちを見つけた」
Netflixで配信が開始されるやいなや、その壮大で難解、そして圧倒的なスケールの物語で世界中を席巻したドラマ『三体』。劉慈欣による世界的ベストセラーSF小説を原作としながらも、舞台を現代のロンドンに移し、国境を越えたキャラクターたちが織りなす新たな物語として再構築された本作は、多くの視聴者に衝撃と深い問いを投げかけました。物理法則が根底から覆され、人類の存亡が宇宙の冷徹な眼差しに晒される。そんな息を呑むような展開を、あなたはどこで目撃したでしょうか。
物語の重要な鍵を握る若き科学者グループ「オックスフォード・ファイブ」。彼らが集い、学び、そして宇宙からの脅威と対峙した場所の多くは、イギリスに実在します。歴史の重みを感じさせる古都の大学から、最先端科学の粋を集めた研究施設、そしてVRゲーム『三体』の幻想的な世界が具現化された美しい庭園まで。ドラマで描かれたあの印象的なシーンの数々は、私たちの手が届く場所で撮影されていたのです。
この旅は、単なる観光ではありません。画面越しに見ていた世界に自らの足で立ち、物語の登場人物たちが感じたであろう畏怖や希望、絶望を追体験する、知的な冒険です。この記事では、世界中を飛び回るビジネスの合間に、物語の深淵を追い求めてきた私が、Netflixドラマ『三体』の英国ロケ地を巡るための完全ガイドをお届けします。チケットの予約方法から、現地での注意点、そして旅をさらに豊かにするためのヒントまで。さあ、人類の未来を賭けた戦いの痕跡を辿る、特別な聖地巡礼へと出発しましょう。まずは、これから巡る壮大な舞台の位置関係を地図で確かめてみてください。
このような物語の世界を追体験する旅は、近未来SFドラマ『ブラック・ミラー』のロケ地巡りでも新たな発見があることでしょう。
なぜ『三体』の聖地巡礼は英国なのか?

原作小説を読んだ読者なら、ドラマ版の舞台設定に少なからず驚きを覚えたかもしれません。原作では主に現代の中国を舞台とし、文化大革命の悲劇から物語が始まります。しかしNetflix版では、物語の中心を現代のイギリス、とりわけロンドンとオックスフォードに移し、国際色豊かなキャストで物語を新たに構築しました。この大胆な翻案こそが、『三体』の聖地巡礼においてイギリスを特別な場所にしている理由となっています。
その中核をなすのが、ドラマオリジナルの設定である「オックスフォード・ファイブ」です。オックスフォード大学で物理学を学ぶ5人の若き天才(ジン・チェン、ソウル・デュランド、オギー・サラザール、ジャック・ルーニー、ウィル・ダウニング)を物語の中心人物としたことで、イギリスの地が自然と主要な舞台になりました。彼らが青春を謳歌し、知性を磨き、そしてやがて三体文明の脅威に立ち向かう場所として、オックスフォードの歴史深い学問の街はこれ以上ないほど説得力のある舞台となっています。
加えて、イギリスが持つ多彩な景観もドラマの世界観を描く上で理想的な背景となりました。何世紀にもわたって築かれたゴシック建築群は、VRゲーム『三体』に登場する過去文明の荘厳さを象徴し、一方で最先端の科学研究機関は、人類が未知の脅威に挑む近未来の拠点として登場します。広々とした田園風景に広がる美しい庭園は仮想現実の幻想的な世界を演出し、ロンドンの洗練された都市風景は現代社会の生活と、その裏に潜む静かな侵略との対比を鮮明にしています。
つまり、Netflix版『三体』の聖地巡礼は、単に撮影地を訪れるだけの旅にとどまらず、このドラマがなぜイギリスを舞台に選んだのか、その理由や意図を肌で感じ取る旅でもあります。原作の精神を受け継ぎつつ、新たな解釈で物語を紡ぎ出したクリエイターたちの視点をイギリスの風景から探し出すことこそ、この旅の最大の魅力と言えるでしょう。
物語の核心へ:主要キャラクターたちの拠点と科学の殿堂
物語の冒頭で、科学者たちが次々と不可解な死を遂げる中、オックスフォード・ファイブのメンバーは宇宙規模の巨大な陰謀に巻き込まれていきます。彼らの知性が開花し、友情が深まり、そして運命が交差したのは、実在する学術的な空間でした。
オックスフォード大学 – 若き天才たちが集う知の拠点
ドラマの序盤では、故ヴェラ・葉教授の研究室を訪れるソウルとジンの姿や、彼らが若き日に物理学の難題について熱く議論を交わす回想シーンが描かれます。これらの場面の背後には常にオックスフォード大学の荘厳な景観が広がっていました。尖塔が空を突き刺すようにそびえる「夢見る尖塔の都市」として知られるこの地は、まさに若き頭脳たちの物語が始まるにふさわしい舞台です。
オックスフォード大学は単一のキャンパスではなく、39のカレッジと多様な学部施設が街中に散在しています。ドラマの撮影も特定のカレッジだけに限らず、複数のロケーションを組み合わせて「オックスフォード」の世界観を作り上げています。
- クライスト・チャーチ (Christ Church):
『ハリー・ポッター』の撮影地としても有名なこのカレッジは、美しい中庭(クワッド)や壮麗なダイニングホールが、学術の聖地としての重厚な雰囲気を漂わせています。ジンやソウルが歩いていてもまったく違和感のない、歴史と威厳に満ちた空間がここにあります。
- ボドリアン図書館 (Bodleian Library):
ヨーロッパで最も古い図書館の一つとされ、その内部はまさに知識の迷宮。特に重厚な木製書架が並ぶデューク・ハンフリー図書館は、優れた研究者ヴェラが膨大な情報の海に浸る様子を思い浮かべさせます。
聖地巡礼のための実践ガイド:オックスフォード大学
オックスフォードへの訪問は決して難しいものではありません。ロンドンから電車で約1時間と、日帰りでも十分に楽しめます。ただし、知の殿堂を十二分に堪能するにはいくつか押さえておくべきポイントがあります。
- 訪問手順(チケット購入や手続きについて):
多くのカレッジは観光客向けに見学時間を設けていますが、開放時間は季節や大学の行事によって変動します。訪問前には必ず各カレッジの公式ウェブサイトで最新情報を確認してください。入場料はカレッジごとに異なり、おおむね5ポンドから20ポンド程度です。特に人気の高いクライスト・チャーチは、オンラインでの事前予約が強く推奨されます。当日券も販売されていますが、長時間の待ち列や売り切れの可能性を考慮すべきです。 ボドリアン図書館の見学は、基本的にガイドツアーへの参加が必要です。ツアーコースによって見学範囲が異なり、こちらも事前予約が必須です。
- 準備と持ち物:
オックスフォードの街は石畳が多く、カレッジ間の移動は徒歩が基本となるため、歩きやすい靴が欠かせません。英国の天候は変わりやすいので、折りたたみ傘や防水ジャケットを持参すると安心です。さらに、歴史的建築のディテールを撮影するためのカメラも忘れずに携帯しましょう。
- ルールや禁止事項:
学生や研究者の日常の場に訪れていることを意識してください。学生寮や立ち入り禁止の表示がある場所には絶対に入らないこと。チャペル(礼拝堂)など神聖な場所では静かに行動し、必要に応じて帽子を脱ぐマナーを守りましょう。多くの場所でフラッシュ撮影は禁止されており、中庭(クワッド)の芝生はフェロー(研究員)のみが立ち入れるため、芝生には決して足を踏み入れないようにしてください。
“審判の日”号が裁かれた運河 – ベイシングストーク運河
シーズン1第5話の「古筝作戦」では、マイク・エヴァンズ率いる三体信奉者組織「ETO」の拠点船「審判の日」号を、ナノマテリアルの専門家オギーが開発したナノファイバーで切断するという衝撃的で過酷な場面が描かれました。この作戦の舞台となった運河のシーンは、視聴者に鮮烈な印象を与えました。
この緊迫した場面のロケ地は、ロンドン南西部ハンプシャー州に位置するベイシングストーク運河 (Basingstoke Canal)です。特にクルッカム・ヴィレッジ(Crookham Village)付近の、樹木が生い茂り穏やかな水面が広がるエリアが撮影地として選ばれました。普段はナロウボートがのんびり行き交う平穏な運河が、ドラマでは人類の未来をかけた壮絶な戦いの舞台へと変貌したのです。
聖地巡礼のための実践ガイド:ベイシングストーク運河
都会の喧騒を離れ、静かな自然の中でドラマの一場面に思いを馳せることができるこの場所は、独特の聖地巡礼体験を提供してくれます。
- アクセス方法:
ロンドンからのアクセスは、ウォータールー駅からサウス・ウェスタン鉄道でフリート(Fleet)駅またはウィンチフィールド(Winchfield)駅で下車し、そこからタクシーを利用するか徒歩(約30分から1時間)で運河へ向かうのが一般的です。体力に自信がある方は、駅からのハイキングも楽しめます。 より自由に散策したい場合、レンタカーでの訪問がおすすめです。運河沿いには複数の駐車場が点在しており、好きな地点から散策可能です。
- 楽しみ方:
運河沿いを整備された遊歩道「Canal Walk」でゆっくりと歩きながら、ドラマで「審判の日」号が進んだと思われる 水路を眺めてみてください。両岸から茂る木々が水面に影を落とし、静寂に包まれた空間はあの日のナノファイバーに満ちた緊張感を思い出させます。運河沿いのパブで休憩しながら、ドラマの話に花を咲かせるのも至福のひとときです。
- ルールと注意事項:
遊歩道は公共の場ですが、一部は私有地に隣接しているため、柵を超えたり私有地に侵入したりしないよう注意が必要です。カヌーやボートを楽しむ人々の妨げにならないよう配慮しましょう。また、このエリアは自然保護区にも指定されているため、ゴミは必ず持ち帰り、動植物を傷つけることのないよう心掛けてください。足元がぬかるむこともあるため、防水トレッキングシューズなどを用意しておくと安心です。
仮想と現実が交錯する場所:VRゲーム『三体』の舞台

ドラマ『三体』のもう一つの大きな魅力は、ジンやジャックが楽しむ超高性能VRゲーム『三体』そのものにあります。不安定な三つの太陽に振り回される異星文明を体験できるこのゲームは、時に幻想的であり、また時には恐怖を感じさせる世界を私たちに見せてくれました。驚くべきことに、あのまるでCGで描かれたかのような異世界の風景の多くが、イギリスに実際に存在する美しい庭園で撮影されていたのです。
ペインズヒル・パーク – 秦の始皇帝が軍を率いた庭園の舞台
VRゲームの第2レベルでは、ジンとジャックが古代中国・秦の時代にタイムスリップします。ここで彼らが見たのは、秦の始皇帝が3000万人もの兵士を動員して作り上げた巨大な「人列コンピューター」でした。兵士たちが持つ白と黒の旗の動きで複雑な論理演算を行い、三つの太陽の軌道を計算しようという、人間の知識を超えた壮大なスペクタクル。この圧巻のシーンは、サリー州にあるペインズヒル・パーク(Painshill Park)で撮影されました。
18世紀に造られたこの風景式庭園は、特定の様式に縛られず、世界各地の建築様式を取り入れた独創的なデザインで知られています。ドラマでは、中国風の橋(Chinese Bridge)やなだらかな丘、広大な湖などの景観が、古代中国の風景として効果的に使われました。秦の始皇帝が丘の上から軍を見下ろすシーン、そしてジンたちが橋を渡るシーンは、まさにこの場所で撮影されたものです。
聖地巡礼ガイド:ペインズヒル・パークを訪れるために
ロンドンからもアクセスが良く、一日かけてゆっくり楽しめるこの庭園は、『三体』ファン以外にも訪れる価値があります。
- 訪問の手順(チケット購入や入場の流れ):
入場にはチケットが必要です。ペインズヒル・パーク公式サイトから事前に購入することをお勧めします。特に週末や祝日は混雑が予想されるため、オンライン予約がスムーズです。サイト内の「Book Tickets」や「Plan Your Visit」などの項目から訪問日と時間を選択し、購入を完了させてください。購入後にメールで送られるEチケットは、スマートフォンの画面提示か印刷して持参するようにしましょう。
- 準備と持ち物について:
庭園は非常に広大で、すべての見どころを巡るには数時間を要します。履き慣れた歩きやすい靴が必須です。園内にはカフェもありますが、好きな場所で休憩できるように飲み物や軽食を持参するのもよいでしょう。ピクニックエリアも用意されています。日差しが強い日には帽子やサングラス、日焼け止めも忘れずに持っていってください。
- 見どころと楽しみ方:
『三体』のロケ地巡りはもちろん、ペインズヒル・パーク自体にも魅力的なスポットがたくさんあります。水晶が壁一面を覆う「クリスタルの洞窟(Crystal Grotto)」、古代ローマ遺跡を模した「モーソリアム」、そしてゴシック様式の寺院など、歩くたびに異なる景観が現れ、まるで世界旅行をしているかのような気分を味わえます。ドラマのシーンを思い出しながら、これらのユニークな建造物を巡ることで、仮想世界と現実が交錯するような不思議な体験ができるでしょう。
ストウ・スクール – 商王朝の紂王と向き合う神殿
VRゲームの最初のステージで、ジンとジャックは古代中国の商王朝に足を踏み入れます。そこに現れた暴君・紂王は、三つの太陽の複雑な動きによって文明が滅びと再生を繰り返す「恒紀」と「乱紀」の謎を解くことを彼らに強いました。このシーンの背景に荘厳に佇んでいた神殿は、バッキンガムシャー州にある名門パブリックスクール、ストウ・スクール(Stowe School)の敷地内にある「ゴシック・テンプル(Gothic Temple)」です。
ストウの庭園は、イギリスでも屈指の美しい風景式庭園として知られ、現在はナショナル・トラストによって管理されています。広大な敷地内にはギリシャ神殿やローマの凱旋門を模したフォリーが点在し、その一つであるゴシック・テンプルは、三角形の個性的な形状と中世の城を思わせる尖塔を持つ建物で、古代文明の神秘的かつ威圧的な雰囲気を醸し出すのに最適なロケーションでした。
聖地巡礼ガイド:ストウ・スクール(ストウ・ガーデン)
現役の学校の敷地内にあるため、訪問時には特別な配慮が必要ですが、規則を守れば誰でも美しい庭園を楽しむことができます。
- 訪問の手順(チケット購入や入場方法):
庭園エリアはナショナル・トラストが管理しており、一般公開されています。入場料が必要で、ナショナル・トラストの公式サイトで開園時間や料金を確認し、事前に予約をすることを推奨します。イギリスで複数のナショナル・トラスト管理地を訪れる予定がある場合は、旅行者向けの短期会員チケットや年間パスの購入も検討するとお得です。これにより入場料無料で英国各地の歴史的建造物や自然保護区を巡ることが可能です。
- 禁止事項と注意点:
ここは教育機関であるため、庭園は公開されているものの、校舎や指定外のエリアへの立ち入りは禁止されています。生徒のプライバシーを尊重し、無断での撮影も厳禁です。訪問可能なエリアやルールは現地の案内表示やスタッフの指示を必ず守ってください。
- トラブル時の対応方法:
万が一、予約した日に学校行事等により臨時で閉館される場合は、基本的にナショナル・トラストの規定に従います。オンライン予約をしている場合は、公式サイトで日程変更やキャンセル手続きが可能なことが多いので、返金ポリシーを事前に確認しておくと安心です。問題があれば、まずは公式サイトの問い合わせフォームか現地のチケットオフィスに相談するのが確実です。
物語の裏側で糸を引く者たち:秘密と陰謀の舞台
『三体』の物語は、若き科学者たちだけでなく、彼らを取り巻く多様な組織の思惑にも大きく影響されています。人類を守るためには容赦ない手段も辞さない秘密組織や、地球を三体文明に明け渡そうと企むETO。彼らが暗躍する舞台となった場所も、実は英国に存在する興味深いスポットでした。
ハーウェル・キャンパス — 「階段計画」が始まった宇宙開発の拠点
物語の後半で、人類は三体艦隊への対抗策として多くの計画を練り上げます。そのなかでも特に野心的かつ非人道的だったのが、ウェイドが推進した「階段計画」です。これは、人間の脳を冷凍保存して探査機に搭載し、核爆弾の連続爆発によって光速に迫る速度まで加速し、三体艦隊へ送り込むというもの。この計画の拠点として描かれたのが、オックスフォードシャーにあるハーウェル・キャンパス (Harwell Campus) 内のシンクロトロン放射光施設「ダイヤモンド・ライトソース (Diamond Light Source)」です。
巨大な銀色のドーナツ型建物は、最先端科学の象徴といえます。内部には電子を光速に近い速度まで加速させる巨大リングがあり、その光(放射光)を利用して物質を原子レベルで解析する研究が行われています。劇中で描かれた、科学のもつ希望と危うさを象徴するロケーションとして、まさにふさわしい場所と言えるでしょう。
聖地巡礼に役立つ実用ガイド:ハーウェル・キャンパス
現役の先端研究施設であるため、一般客が自由に見学できる場所ではありません。しかし、その未来的な施設の姿を一部でも見る方法はいくつかあります。
- 見学の方法:
一般向けの見学は、年に数回開かれる「オープンデー」や、事前予約制の少人数パブリックツアーに限られています。これらの機会は大変人気が高く、すぐに予約が埋まってしまうことが多いので、興味がある方はDiamond Light Source公式サイトをこまめにチェックし、メールマガジンへの登録をおすすめします。
- 代替案としての楽しみ方:
たとえ内部見学が叶わなくても諦める必要はありません。ハーウェル・キャンパスは広大な敷地に複数の研究施設が点在しており、その未来的な建物群を外から眺めるだけでも十分に楽しめます。公共の道路からは、あの特徴的な銀色のドーナツ状建造物を確認可能です。またキャンパス周辺には科学技術関連の施設も点在しており、「英国科学の中心地」としての雰囲気を味わうことができます。
ウェイドの秘密基地とETOの集会所
物語において強烈な存在感を放つトーマス・ウェイド。彼のオフィスとして使用された重厚かつクラシカルな建物や、三体信奉者たちが集った豪華な邸宅も、ロンドン近郊に実際に存在します。
- トゥー・テンプル・プレイス (Two Temple Place):
ウェイドがソウルを呼び出して面壁者(ウォールフェイサー)の任務を伝えるシーンで登場した、木彫りの内装が豪華な部屋は、ロンドンのテムズ川沿いに建つヴィクトリアン・ゴシック様式の館「トゥー・テンプル・プレイス」で撮影されました。普段は閉鎖されていますが、年に数回の美術展やイベント時に内部が公開されます。訪問を考える際は、公式サイトのイベントカレンダーのチェックを忘れずに。
- ブロケット・ホール (Brocket Hall):
第4話でマイク・エヴァンズの死後にETO新指導者を決定するサミットが開催された場所。美しい湖畔に佇む壮麗なカントリーハウスで、ハートフォードシャーに位置する「ブロケット・ホール」です。現在は高級ホテルやゴルフコース、イベント会場として運営されており、内部を見学する最も確実な方法は、レストランでの食事やアフタヌーンティーの予約、または宿泊です。少しハードルは高いですが、物語の世界観に浸る忘れがたい体験となるでしょう。
聖地巡礼を成功させるための実践的アドバイス

ここまでご紹介したロケ地は、イギリス各地に点在しています。これらの場所を効率よく、かつ快適に巡るためには、事前の計画が何より重要となります。
モデルプラン:ロンドンを拠点にした3日間の聖地巡礼プラン
ここでは、ロンドンを拠点にして主要なロケ地を巡る、やや駆け足ながらも充実した3日間のモデルコースをご提案します。
- 1日目:知の街オックスフォードを散策
午前:ロンドン・パディントン駅から電車でオックスフォードへ移動(約1時間)。 到着後は、まずクライスト・チャーチを訪問。事前に予約したチケットを使い、スムーズに入場します。 午後:ボドリアン図書館のガイドツアーに参加し、その後はラドクリフ・カメラや溜息の橋など、大学町ならではの美しい景観を散策します。 夕方:ロンドンへ戻ります。
- 2日目:現実と空想を巡るレンタカーの旅
午前:ロンドン市内でレンタカーを借り、サリー州のペインズヒル・パークへ(約1時間半)。広大な庭園を3~4時間かけてゆったりと楽しみます。 午後:ハンプシャー州のベイシングストーク運河へ移動(約1時間)。クルッカム・ヴィレッジ周辺の運河沿いを歩き、「古筝作戦」の舞台の風情を堪能します。 夕方:ロンドンに戻ります。 *この日は公共交通機関での移動が難しいため、レンタカーの利用を強くお勧めします。
- 3日目:英国の田園風景と壮麗な邸宅を巡る
午前:ロンドン・ユーストン駅から電車でミルトン・キーンズ・セントラル駅へ(約1時間半)。さらにタクシーでストウ・ガーデンへ向かいます。 午後:ナショナル・トラストが管理する美しい庭園を散策。ゴシック・テンプルを探しながら、VRゲームの世界観に浸ってください。 夕方:再びロンドンへ戻ります。時間が許せば、トゥー・テンプル・プレイスの外観見学や、ブロケット・ホールでのディナー予約も検討してください。
準備と持ち物リスト:快適な旅のためのポイント
旅の満足度は準備次第。特に変わりやすいイギリスの天候に対応できることが重要です。
- 必携アイテム:
- パスポートおよび各種予約確認書(電子チケットなど): スマートフォンに保存するだけでなく、紙に印刷したものも携帯すると安心です。
- クレジットカードと少額の現金(ポンド): 多くの場所でカードが使えますが、小規模店舗や交通機関では現金が必要な場合があります。
- スマートフォンと携帯用バッテリー: 地図アプリやチケット提示、写真撮影など、旅の必需品です。
- BFタイプの変換プラグ: 日本の電化製品を利用するには欠かせません。
- 歩きやすい靴: 石畳や公園、田舎道などを歩くので、防水機能があるものが理想的です。
- 防水・防風機能を備えたアウター: 「一日に四季がある」と言われる英国の気候に対応できる、軽量かつ機能的な1着が重宝します。
- あると便利なアイテム:
- ブリットレイルパス(BritRail Pass): 英国の鉄道を幅広く使う場合、乗り放題パスが割安になるケースがあります。
- ナショナル・トラスト会員証: ストウ・ガーデンなど複数のナショナル・トラスト管理施設を訪問するなら、会員登録を検討しましょう。
- 折りたたみ傘: 急な通り雨が頻繁にあります。
- ドラマのスクリーンショット: 現地で「ここだ!」と角度を合わせて見比べるのは、聖地巡礼の醍醐味です。
トラブル対策:万が一の際に備えて
どんなに綿密に計画しても、予期せぬトラブルは避けられません。冷静に対処するためのポイントをご紹介します。
- 交通機関の遅延やストライキ:
イギリスの鉄道は遅延やストライキが発生することがあります。移動前や途中で、ナショナル・レール(National Rail)公式サイトやアプリで最新の運行状況を必ず確認しましょう。大きな遅延や運休があれば、代替ルート(バス等)を迅速に検索することが大切です。
- 施設の臨時休館:
特に学校の施設や個人管理の場所は、イベント等の都合で急遽公開が中止になることがあります。訪問当日の朝に公式サイトを再度チェックするぐらいの慎重さを持つと安心です。
- チケットの返金・変更対応:
多くの施設はオンライン購入チケットにキャンセルポリシーを定めています。自己都合でのキャンセルは返金不可の場合が多いですが、施設側の事情による閉鎖であれば全額返金や日程変更が可能なこともあります。予約時に利用規約をよく確認してください。
- 緊急時の連絡先:
万一パスポートの紛失・盗難や大きな事故に遭った場合は、まず現地の警察(緊急時は999)に連絡し、速やかに在英国日本国総領事館へ連絡して指示を仰いでください。海外旅行保険の連絡先も合わせて常に取り出せる場所にメモしておきましょう。
『三体』の世界観をさらに深く味わう
聖地巡礼の旅は、単にロケ地を訪問するだけで終わるものではありません。その体験を通じて物語への理解を深めることで、旅の価値は何倍にも豊かになります。
ロケ地巡りの合間には、ぜひロンドンのサイエンス・ミュージアム(科学博物館)を訪れてみてください。物理学や宇宙開発に関わる多彩な展示は、『三体』に織り込まれた科学的テーマの理解を助けてくれるでしょう。粒子加速器の仕組みを学び、宇宙探査の歴史に触れることで、ジンやソウルたちが直面した問題の壮大さをより実感できるはずです。さらに、グリニッジ天文台で本初子午線をまたぎながら宇宙の時空の広がりに思いを馳せるのも、また格別な体験です。
また、この旅の前後には、ぜひ改めて原作小説『三体』を手に取ってみてください。ドラマ版との違いを見つけるのも興味深いですし、ドラマでは描ききれなかった緻密な科学的背景や登場人物の深い心理描写に触れることで、訪れた風景に新たな意味が加わるかもしれません。なぜクリエイターたちは、原作のあの一節を英国のあの場所で表現しようとしたのか――そんな思考を巡らせる時間は、かけがえのない知的な悦びをもたらしてくれます。
この聖地巡礼は、壮大な物語の断片を拾い集め、あなただけの物語地図を完成させていく旅そのものです。オックスフォードの石畳の上で若き天才たちの息づかいを感じ、静かな運河の水面に人類の過酷な選択を映し出し、美しい庭園の中に異星文明の幻影を見つめる。こうして英国の地を巡った後、きっとまた最初からドラマを見返したくなるでしょう。その時、旅立つ前とはまったく異なる、深みと鮮やかさを増した『三体』の世界があなたを包み込んでいるはずです。主よ、我々の文明を救いたまえ。いや、我々の文明は自らを救うのです。そのための知恵と勇気の痕跡を求める旅へ、ようこそ。

