壮大なアルプスの山々、中世の面影を残す美しい街並み、そして澄み切った空気。スイスと聞けば、誰もがそんな清らかな風景を思い浮かべることでしょう。世界中を飛び回る私も、その類稀なる美しさにはいつも心を奪われます。しかし、愛煙家にとって旅の快適さを左右する重要な要素、それが現地の「喫煙事情」です。特に、これほどまでに自然環境の保護に力を入れている国となれば、喫煙に関するルールはさぞ厳しいのではないか、と不安に思う方も少なくないはずです。
「レストランのテラスで一服はできるのか?」「電子タバコはどこまで許される?」「うっかりルールを破って高額な罰金を科されたら…」そんな懸念を抱えながらでは、せっかくの旅行も心から楽しむことはできません。かく言う私も、クライアントとの会食後の一服や、移動の合間のコーヒーブレイクは、思考を整理するための大切な時間。だからこそ、現地のルールを正確に把握し、スマートに振る舞うことが、上質な旅の鍵となると考えています。
この記事では、外資系コンサルタントとして世界各国を訪れてきた私が、スイスの最新の喫煙事情を徹底的にリサーチし、愛煙家の皆様が安心して旅を満喫できるよう、網羅的なガイドをお届けします。基本的な法律から、罰金のリアルな相場、タバコの購入方法、日本からの持ち込み制限、そしてIQOSのような加熱式タバコの扱いまで。これさえ読めば、スイスのどこへ行っても戸惑うことなく、マナーを守りながら喫煙を楽しむことができるはずです。さあ、アルプスの絶景を眺めながら至福の一服を味わう、そんな完璧なスイス旅行の準備を始めましょう。
スイスの美しい風景と喫煙ルールを理解したら、次はデカルトの足跡を辿るヨーロッパの知的な旅で思索にふける旅の計画もいかがでしょうか。
スイス喫煙ルールの基本|連邦法とカントン法の二重構造

スイスの喫煙規制を理解するうえで、最初に押さえておきたい最も重要なポイントは、この国が「連邦法」と「カントン法(州法)」という二層構造の法体系で成り立っているという事実です。この仕組みが、スイスの喫煙ルールをやや複雑に見せる原因となっています。
連邦法:スイス全土に適用される基本ルール
まず、スイス全土で適用されるのが「受動喫煙からの保護に関する連邦法(Loi fédérale sur la protection contre le tabagisme passif)」です。この法律は2010年に施行され、スイスの喫煙規制に大きな転機をもたらしました。主な目的は、名前の通りタバコを吸わない人々を受動喫煙の健康被害から守ることにあります。
連邦法で定められた基本的なルールは、「複数の人が利用する閉鎖空間では、原則として禁煙とする」というものです。具体的には、公共交通機関、レストラン、オフィス、学校、病院、ショッピングモールなどがこれに該当します。この法律のおかげで、スイスのどのカントンを訪れても、屋内の公共の場では基本的に禁煙という共通認識が確立されました。これは、旅行者がまず覚えておくべき大切な原則です。
カントン法:地域ごとに異なる追加規制
しかし、ここで話が終わるわけではありません。スイスは26のカントン(州)から成る連邦国家で、各カントンは連邦法で定められた最低基準よりさらに厳しい独自の規制を設ける権限を持っています。つまり、「連邦法は問題ないが、カントン法で禁止されている」という場合が存在します。
例えば、連邦法では換気の良い独立した喫煙室の設置を認めていますが、いくつかのカントンではこれを禁止したり、より厳しい基準を設けているところもあります。また、学校の敷地内や病院入口周辺など特定の屋外場所での喫煙を禁止する条例も、複数のカントンで制定されています。
実際に、ジュネーブ州、ヴォー州、フリブール州、ヌーシャテル州、ヴァレー州などは、他のカントンに比べて特に厳しい規制を敷いていることで知られています。とりわけビジネスや国際会議などで訪問機会の多いジュネーブでは、この差を意識しておくべきでしょう。
旅行者が全てのカントンの細かい規制を覚えるのは現実的ではありません。そこで重要なのは、「最も厳しい規制を基準に行動する」という心構えと、「迷った際には必ず標識を確認するか、現地の人に尋ねる」という習慣を身につけることです。これにより、ルール違反のリスクを大幅に減らせます。
このように、スイスの喫煙規則は「国全体の基本規則」と「地域ごとの追加規制」が組み合わさって成り立っています。この仕組みを理解することが、スイスで安心して喫煙を楽しむための第一歩となるでしょう。
【場所別】喫煙できる場所・できない場所を徹底解説
スイスの法的枠組みを理解したところで、次は具体的にどの場所で喫煙が認められ、どこで禁止されているのかを詳しく見ていきましょう。旅行者が訪れることが多い代表的なシーンごとに説明しますので、旅の計画と照らし合わせながら読み進めてください。
原則は屋内公共スペースでの禁煙
先に述べた連邦法の規定により、封鎖された屋内の公共スペースはスイス全国で例外なく禁煙となっています。これは愛煙家が最も留意すべき基本的なルールです。具体的には以下の場所が該当します。
- 空港や駅の建物内: チューリッヒ空港やジュネーブ空港、主要鉄道駅のコンコース、待合室、チケットカウンター等は完全に禁煙です。長旅の疲れで一服したくなる気持ちは理解できますが、建物外に出るまで控えましょう。
- 公共交通機関: 電車、バス、トラム、ロープウェイ、湖上の遊覧船など、あらゆる公共交通機関内部での喫煙は禁止されています。SBB(スイス連邦鉄道)の長距離列車にも喫煙車両はありません。移動中に喫煙することはできないと心得ておきましょう。
- 飲食店(レストラン・カフェ・バー): 基本的に店内は禁煙です。ただし、後述する「喫煙室(Fumoir)」が設置されている店舗や、一部テラス席では喫煙が許可される場合があります。
- ホテル: ロビー、廊下、レストラン、朝食会場などの共用部分はすべて禁煙です。客室では喫煙可能な部屋(Smoking Room)が用意されていることもありますが、非常に数が少ないため予約時に必ず確認が必要です。
- 商業施設・文化施設: ショッピングモール、デパート、スーパーマーケット、美術館、博物館、映画館、劇場なども、屋内は全面禁煙となっています。
これらの場での喫煙は、周囲の冷たい視線を浴びるだけでなく、スタッフから注意を受けたり罰金の対象になる恐れがあります。スイスでは「屋内では吸わない」ということを徹底しましょう。
愛煙家のための例外的な喫煙可能場所
屋内原則禁煙の一方で、スイスには愛煙家に配慮した「例外的な喫煙スポット」も用意されています。これらを把握しておくことが快適な旅を過ごすコツです。
喫煙室(Fumoir / Raucherraum)
一部のレストランやバー、空港などには、連邦法の換気基準などをクリアした独立したガラス張りの喫煙室「Fumoir(フモワール)」や「Raucherraum(ラオハーラオム)」が設置されていることがあります。
- サービス付き喫煙室: 高級バーやホテルの喫煙室では、室内でドリンクや食事のオーダーが可能な場合があります。葉巻を楽しめるシガーラウンジもこのカテゴリーに含まれ、まさに愛煙家のための特別な空間です。
- サービスなし喫煙室: 空港や一部飲食店にあるものは、単に喫煙のためのスペースで、飲食はできません。天候を気にせずに一服できる貴重な場所です。
喫煙室の入口には必ず「Fumoir」やタバコのシンボルが掲示されています。店に入る際はこうした表示をチェックする習慣をつけるとよいでしょう。
飲食店のテラス席
スイスの美しい街並みや湖畔の景観を楽しみながら喫煙できるのが、レストランやカフェのテラス席です。屋外スペースであるため、多くの場合テラスでは喫煙が許されています。テーブルに灰皿が置かれていれば、「ここは喫煙可」のサインといえます。
しかし、これも絶対ではなく店舗によってはテラス席でも禁煙、あるいは特定のエリアのみ喫煙可能とする場合もあります。隣のテーブルが近かったり、子連れの客が多い店では特に注意が必要です。確信が持てない時は、灰皿の有無に関わらず店員に一言確認するのがスマートです。「Entschuldigung, darf ich hier rauchen?(すみません、ここで吸ってもいいですか?)」と尋ねれば、快く教えてくれます。
屋外喫煙のルールと注意事項
では、路上や公園といった屋外空間での喫煙はどうかというと、基本的にスイスの路上、公園、広場など開放された屋外空間での喫煙は法律上禁止されていません。ただし、守るべきマナーや注意すべき特定の場所があります。
- 駅のプラットフォーム: 最も注意が必要な場所の一つです。スイスの駅プラットフォームは自由に喫煙できるエリアではありません。必ず「喫煙ゾーン(Rauchzone / Zone fumeur)」が設けられており、黄色い線で区切られたその範囲内のみ喫煙が許されています。灰皿もそのエリアに設置されているため、電車を待つ際は必ず指定区域内で喫煙しましょう。指定エリア外での喫煙は罰金の対象です。
- 人混みや子供の近く: 法律で禁止されていなくても、混雑した場所や公園の遊具付近など子供が多い場所での喫煙は避けるのがマナーです。これは世界共通の思いやりであり、周囲への配慮がトラブル防止につながります。
- 吸い殻のポイ捨て厳禁: これこそがスイスで喫煙者が最も厳しく取り締まられる行為です。美しく整った風景を何より大切にするスイスでは、吸殻の投げ捨てに対して非常に厳しい罰則を設けています。発覚すると100フランから300フラン(約17,000円〜51,000円)という高額な罰金が科されることも珍しくありません。単なるマナー違反を超えた明確な違法行為と認識しましょう。後ほど詳述しますが、携帯灰皿の携帯はスイスを旅する愛煙家にとって必須のアイテムです。
これらのルールとマナーを守れば、屋外での喫煙は充分に可能です。雄大なアルプスの山々を眺めたり、歴史的建造物を背景にしながら、周囲への配慮を忘れず、心地よい一服をお楽しみください。
スイスでのタバコ購入ガイド

日本から持参したタバコがなくなった場合や、現地の銘柄を試してみたい場合に備えて、スイスでのタバコの購入方法について詳しくご紹介します。
タバコはどこで買える?
スイスでは、多様な場所でタバコが入手可能です。旅行者にとって利用しやすいのは、主に以下のスポットです。
- スーパーマーケット: Coop(コープ)やMigros(ミグロ)といった大手スーパーのレジカウンターやカスタマーサービスカウンターで販売されています。ただし、小規模の店舗では取り扱いがない場合もあります。
- キオスク (Kiosk): 駅構内や街角にある小規模な売店「Kiosk」は、タバコ購入の最も一般的な場所です。新聞や雑誌、飲み物とともに、さまざまな銘柄が並んでいます。
- タバコ専門店 (Tabakladen / Magasin de tabac): 都市の中心部には、紙巻きタバコに加え、葉巻やパイプタバコ、喫煙用品を専門に扱う店舗もあります。品揃えが豊富なため、特定のブランドを探す際におすすめです。
- 自動販売機: 街中やバーの外壁などに設置されています。ただし、ほとんどの機械は年齢確認のためにIDカード(身分証明書)のスキャンが必要です。日本のパスポートや運転免許証では認証できない場合が多く、旅行者にはやや利用が難しいかもしれません。
- ガソリンスタンド: 高速道路のサービスエリアや郊外のスタンドでもタバコが販売されており、レンタカーでの移動時に便利です。
知っておきたい年齢制限
スイスでは若者の喫煙防止に力を入れています。以前はカントンごとに年齢制限が異なっていましたが、2022年の国民投票を経て、連邦レベルで規制が統一されました。2024年時点で、スイス全土で18歳未満へのタバコ製品(電子タバコ含む)の販売は禁止されています。購入時には年齢確認のためパスポートなどの身分証明書の提示が求められることが多いため、特に若く見られる方は携帯しておくとスムーズです。
タバコの価格について
スイスを訪れる喫煙者が驚くことの一つに、タバコの価格の高さがあります。物価の高さで知られるスイスでは、タバコも例外ではありません。
2024年現在、マルボロやキャメルなどの主要な国際ブランドは、1箱(20本入り)あたり9.00〜9.80スイス・フラン程度で購入できます。日本円に換算すると、およそ1,500円から1,700円前後(為替レートによる変動あり)となり、日本の約3倍近い価格です。現地での購入を続けると、滞在中かなりの費用がかかることが予想されます。
この高価格には健康促進を目的とした高いタバコ税が含まれており、多くの旅行者は次に紹介する日本からのタバコの持ち込みを選ぶ傾向にあります。
【節約の鍵】日本からのタバコ持ち込みルール(免税範囲)
スイスのタバコ価格を考慮すると、喫煙者にとって日本からタバコを持ち込むことは、非常に現実的かつ経済的な選択肢と言えます。ただし、持ち込みには無制限の自由はなく、定められた免税枠を守る必要があります。これを怠ると、高額な関税や罰金が科されるため、正確に理解しておくことが重要です。
免税で持ち込めるタバコの量
スイスの税関当局が設定する、旅行者が免税で持ち込めるタバコ製品の上限は以下の通りで、これは17歳以上の旅行者に適用されます。
- 紙巻きタバコ(Cigarettes):250本
または
- 葉巻(Cigars):250本
または
- その他のタバコ製品(刻みタバコなど):250グラム
ここで特に重要なのは、「または(or)」の部分です。つまり、紙巻きタバコ250本(12.5箱)と葉巻を数本など、複数の種類を組み合わせて持ち込むことはできません。いずれか一つのカテゴリで上限まで持ち込む必要があります。例えば、紙巻きタバコを200本持ち込む場合、そのほかのタバコ製品を免税枠内で持ち込むことはできません。最も一般的な紙巻きタバコの場合、「1カートン(200本)+端数2箱(40本)と半分」までが免税範囲と覚えておくと分かりやすいでしょう。
免税枠を超えた場合の手続きと課税
もし免税枠を超えてタバコを持ち込む際は、必ず税関で申告する必要があります。スイスの空港に到着した際、荷物受け取り後は緑のゲート(申告不要)ではなく、赤のゲート(申告必要)を通り、税関職員に超過分を申告します。
超過分には関税とタバコ税が課せられ、その額は決して安くありません。例えば紙巻きタバコの場合、1本あたり0.25フランの関税に加え、さらにタバコ税が加算されるため、超えた分に対してかなりの負担が生じます。
申告を怠り、税関検査で発覚した場合は、本来納めるべき税金に加え、高額な罰金が科されます。「見つからなければ大丈夫」といった軽い考えは非常に危険です。特にスイスの税関は非常に厳格なので、必ず規則を守りましょう。詳細や公式情報については、スイス連邦税関国境警備局(FOCBS)の公式サイトで確認することをおすすめします。
加熱式・電子タバコ(IQOS・Vape)の最新事情

近年、利用者が急増しているIQOS(アイコス)などの加熱式タバコや、Vape(ベイプ)と呼ばれる電子タバコ。これらの新しいタイプのタバコはスイスでどのように扱われているのでしょうか。特にIQOSは、開発元のフィリップ・モリスがスイスの企業であることから、普及率が非常に高いのが特徴です。
スイスにおける法的な位置づけ
スイスでは、加熱式タバコも電子タバコも合法であり、広く普及しています。かつては、ニコチン入りの電子タバコ用リキッドの国内販売が禁止されていた時期もありましたが、2018年の法改正以降は販売が認められ、現在では専門店やキオスクなどで多様なフレーバーのリキッドが手に入ります。
IQOSに関しては、まさに「お膝元」とも言える地域であり、チューリッヒやジュネーブなどの主要都市にはIQOS専門店も展開しています。現地の喫煙者の間では、紙巻きタバコからIQOSへの切り替えが進む光景がよく見られます。
使用できる場所は紙巻きタバコと同じか?
では、これらの製品はどこでも自由に使用できるのでしょうか。答えは「いいえ」です。基本的に、加熱式タバコや電子タバコの使用ルールは、紙巻きタバコの規制に準じています。
つまり、これまで説明した屋内の公共スペース(レストラン、公共交通機関、空港施設内など)での使用は禁止されており、屋外や飲食店のテラス席、喫煙室(Fumoir)など、紙巻きタバコが許可されている場所での利用が原則となります。
ただし、一部の施設や店舗では、独自ルールとして「電子タバコや加熱式タバコを含むすべての喫煙を禁止」と掲示している場合があります。煙や臭いは少ないものの、非喫煙者にとって不快に感じることもあるためです。使用前には、紙巻きタバコの場合と同様に周囲の標識を確認したり、スタッフに問い合わせたりする配慮が必要です。IQOSだから問題ないと安易に考えるのは避けましょう。
持ち込みと現地での購入について
日本から愛用のデバイスを持ち込むことに問題はありませんが、航空機での運搬には注意が必要です。
- デバイス本体と予備バッテリー: 発火リスクのあるリチウムイオン電池を含むため、必ず機内持ち込み手荷物として扱う必要があります。スーツケースなどの預け入れ荷物に入れることは厳禁です。
- リキッド: 電子タバコ用リキッドは液体物として扱われるため、100ml以下の容器に入れ、ジッパー付き透明袋に収納するなど、国際線の液体持ち込みルールに従う必要があります。
- タバコスティック・リキッドの免税範囲: これらはタバコ製品として扱われるため、持ち込み量は紙巻きたばこと同様に免税範囲(250gまで)に収める必要があります。IQOSのヒートスティック(TEREAなど)は1箱約50g程度のため、5箱(100本)までが目安ですが、正確な重量を確認すると安心です。
もし現地でスティックやリキッドが不足しても心配はありません。スイス国内のIQOSストア、タバコ専門店、キオスクなどで簡単に購入可能です。ただし、日本より価格は高めに設定されています。
もしルールを破ってしまったら?罰金とトラブル対処法
どんなに注意を払っていても、慣れない海外の環境ではうっかりルールを破ってしまうリスクが完全になくなることはありません。もし禁煙区域での喫煙やポイ捨てを警察官などに発見された場合、どのような対応になるのでしょうか。冷静に対処するためにも、あらかじめ基本的な知識を身につけておきましょう。
罰金の現状と目安
スイスにおける喫煙違反に関する罰金額は、カントンごとや具体的な違反内容によって異なりますが、高額になるケースが多いため、軽い気持ちでルールを無視することは避けたほうが賢明です。旅行中の予算にも大きく影響を与えかねません。
- 禁煙区域での喫煙: 鉄道のプラットフォーム内の禁煙エリアやバス停の屋根の下などで喫煙した場合、一般的に40フランから100フラン(約7,000円〜17,000円)程度の罰金が科せられます。これらは現場で警察官や鉄道警察(SBB Transportpolizei)より請求されることがほとんどです。
- 吸い殻のポイ捨て: これも非常に重い違反とされ、カントンによって金額の幅は大きいものの、100フランから300フラン(約17,000円〜51,000円)に達することも珍しくありません。特にチューリッヒやジュネーブの都市部では厳格に取り締まられており、美観を損ねる行為には相応の罰則が科せられることを忘れないでください。
罰金を課された際の手続きの流れ
違反を指摘された場合、おおむねその場で身分証明書(パスポートなど)の提示を求められ、罰金の支払いを求められます。
多くの場合は、現金またはクレジットカードで即時に支払うことが求められ、鉄道警察はカード決済用端末を持ち歩いていることもあります。もし現金を持ち合わせていないときには、後日支払うための振込用紙(請求書)が手渡されるケースもあります。この請求を無視して帰国すると、将来的に再入国時に問題が生じる可能性があるため、必ず支払うよう注意しましょう。
トラブル回避のポイント
- 感情的に反応しないこと: 言語が通じにくい状況で罰金を請求されると、驚いたり不公平だと感じて反論したくなるかもしれません。しかし、制服を着た職員に対して感情的に対応すると、事態が悪化する恐れがあります。まずは冷静に指示に従うことが大切です。
- 翻訳アプリを活用する: なぜ罰金を課せられたのかが分からない場合は、スマートフォンの翻訳アプリを見せて、状況をテキスト入力で説明してもらうよう依頼するのも有効です。
- 大使館の連絡先を控えておく: 万一、不当な扱いや過剰な金額を請求されるなど、深刻なトラブルに発展した場合には、在スイス日本国大使館に連絡することも選択肢の一つです。緊急連絡先をあらかじめ控えておくと安心です。
何よりも重要なのは、そもそも違反を犯さないことです。少しでも「ここで吸って大丈夫だろうか?」と迷ったときは、吸わないという選択をする勇気が結果的に自分の身を守ることにつながります。
愛煙家がスイス旅行を120%楽しむための実践的TIPS

ここまでスイスの厳しい面についてもお伝えしてきましたが、ルールとマナーを守れば、喫煙者も快適に過ごせるのがスイスの懐の深さと言えます。最後に、あなたのスイス旅行をより充実させるための実用的なヒントをいくつかご紹介します。
ぜひ準備しておきたい持ち物リスト
- 携帯灰皿: 何度も強調しますが、これは必須アイテムです。ポイ捨てによる高額な罰金を避けるためだけでなく、美しいスイスの環境を大切にする旅行者としてのマナーでもあります。バッグに一つ入れておくだけで、安心してどこでも喫煙できます。
- ライター/マッチ: 慣れ親しんだものを持参しましょう。ただし、航空機への持ち込みには制限があります。使い捨てライターや安全マッチは1人1個まで機内持ち込みが可能というのが一般的なルールです。オイルライター(Zippo等)は燃料を抜く必要があったり、持ち込み禁止の場合もあるため、必ず搭乗する航空会社の規定を確認してください。
- 日本からのタバコ: 現地での高い出費を抑えるため、免税範囲内(250本)で持ち込むことを強くおすすめします。お気に入りの銘柄を安心して楽しめる喜びは何にも代えられません。
覚えておくと便利な現地の言葉
スイスではドイツ語、フランス語、イタリア語が公用語となっており、訪れる地域によって使われる言語が異なります。簡単な喫煙関連のフレーズを覚えておくと、現地でのやり取りが格段にスムーズになります。
- 「ここでタバコを吸ってもよろしいですか?」
- (独)Darf ich hier rauchen?(ダルフ イッヒ ヒア ラオヘン?)
- (仏)Est-ce que je peux fumer ici?(エスク ジュ プ フュメ イシ?)
- (伊)Posso fumare qui?(ポッソ フマーレ クイ?)
- 「灰皿はありますか?」
- (独)Haben Sie einen Aschenbecher?(ハーベン ズィー アイネン アッシェンベッヒャー?)
- (仏)Vous avez un cendrier?(ヴザヴェ アン サンドリエ?)
- (伊)Avete un portacenere?(アヴェーテ ウン ポルタチェーネレ?)
片言でも現地語で尋ねる姿勢は相手に好印象を与えます。ぜひ活用してみてください。
失敗しないホテルの選び方
ホテルでゆったりと一服したい方は、予約時に少し注意が必要です。
- 「喫煙可の客室」を狙う: Booking.comやExpediaなどの予約サイトには「喫煙ルーム」という絞り込み条件がある場合があります。ただし、前述の通り、スイスで喫煙可能な部屋は非常に稀少です。
- 「バルコニー付き」が狙い目: より現実的なのは「バルコニー付き(Balcony/Terrace)」の部屋を予約することです。室内は禁煙でも、専用のバルコニーでの喫煙を認めているホテルが多くあります。予約前にホテルへ直接メールなどで「部屋のバルコニーで喫煙は可能か(Is smoking permitted on the balcony of the room?)」と問い合わせておくと安心です。
喫煙可能なレストラン・バーを見つける方法
- テラス席の確認: 暖かい季節なら、多くのレストランやカフェがテラス席を設けています。通りかかった際にテラス席に灰皿があるかどうかをチェックするのが手っ取り早い方法です。
- Fumoir(喫煙室)の有無を確認: 少し高級なレストランやバー、葉巻を楽しみたい方は、店のウェブサイトに「Fumoir」や「Smoker’s Lounge」などの記載がないか探してみましょう。Googleマップで「bar with smoking area」と検索するのも効果的です。
変化するスイスの喫煙文化と未来
この記事の締めくくりとして、現在スイスの喫煙文化が大きな変遷の真っ只中にあることを触れたいと思います。2010年に連邦法が施行されて以来、国内では禁煙化が着実に進展してきました。特に若年層への影響を考慮して、2022年の国民投票で、若者が目にする可能性のあるメディアでのタバコ広告を完全に禁止する法案が成立しました。
これは、スイス社会が国民の健康を重視し、喫煙に対して一層厳しい姿勢を取ろうとしていることを示しています。今後もカントンごとに新たな規制が導入されたり、屋外の公共空間での喫煙がさらに制限されたりする可能性は十分にあります。
したがって、訪れる私たち旅行者は、常に最新の情報を確認することが求められます。旅行前には、スイス政府観光局の公式サイトなどを参照し、大きな規則改正がないかチェックしておくと安心です。
スイスには個人の自由を尊重する文化が根づいていますが、それは他者の健康や快適な環境を損なわないという責任のもとに成り立っています。この基本的な考えを理解し尊重することこそが、この美しい国で歓迎される訪問者であるための最低限の条件なのです。
ルールとマナーを携え、最高の景色と一服を

スイスの喫煙事情は、連邦法とカントン法が絡み合う複雑な面がありつつも、その基本的な方針は「屋内禁煙、屋外はマナーを守る」という非常にわかりやすいルールです。今回ご紹介したポイントを理解しておけば、不必要に気まずい思いをせず、旅の合間に心地よいひとときを楽しめるでしょう。
携帯灰皿を常に持ち歩き、吸い殻のポイ捨ては絶対に避けること。駅のホームでは指定の喫煙エリアをしっかり守ること。そして、少しでも迷った場合は周囲の人に確認すること。このわずかな気配りがトラブルを防ぎ、スイスという国への敬意を表すことにもつながります。
澄んだ空気の中、雄大なアイガーの北壁を見上げたり、レマン湖畔のカフェのテラスで過ごしたり。ルールを守ったうえでの一服は、あなたのスイス旅行を忘れがたい素晴らしい思い出へと変えてくれるはずです。しっかり準備を整え、美しいスイスで上質な時間をお楽しみください。

