こんにちは、沙耶です!いつもの週末は推し活のためにソウルへひとっ飛び!なんてことが多い私ですが、今回は休暇をがっつり取って、ずっと心の片隅で気になっていたコーカサスの地へ。目指すは、ロシア連邦の南、カスピ海に面したダゲスタン共和国にある都市「デルベント」。
「ロシア最古の都市」…その響きだけで、なんだか胸がときめきませんか?まるで壮大な歴史映画のセットに迷い込んだかのような、圧倒的な存在感を放つ城壁。東洋と西洋、イスラムとキリスト、様々な文化が幾重にも重なり合って生まれた独特の空気感。正直、行く前は少しだけ緊張していました。でも、一歩足を踏み入れた瞬間、その心配は好奇心へと変わっていったんです。
そこは、石畳の路地を曲がるたびに新しい発見があり、悠久の歴史がすぐそこに息づいている、まさに「時の迷宮」。今回は、そんなミステリアスで美しい古代都市デルベントの魅力を、私の目線でたっぷりとお届けしたいと思います。いつもの旅とはちょっと違う、ディープで忘れられない体験を探しているあなたへ。さあ、一緒に時を超える旅に出かけましょう!
なぜ今、デルベント?旅心をくすぐる3つの理由

数ある旅行先の中で、なぜ私がデルベントにこれほど心惹かれたのか。それは、この地が他のどこにもない独特で唯一無二の魅力を秘めていると感じたからです。おなじみの観光地も素敵ですが、ときには未知の世界へ飛び込んでみたくなるもの。そんな冒険心をかき立てるデルベントの魅力を、3つのポイントに分けてご紹介します。
圧倒的な歴史の重み!世界遺産に登録された城塞都市
デルベントの最大の魅力は、やはりその奥深い歴史にあります。5,000年以上の歴史を有すると言われ、ロシア最古の都市として知られるこの場所。その象徴ともいえるのが、2003年にユネスコ世界遺産に登録された「デルベントの城塞、古代都市、要塞建築物群」です。
街の西側の丘陵にそびえ立つ「ナリン・カラ要塞」からカスピ海へと伸びる2本の壮大な城壁は、山と海に挟まれた狭い通路を封じるように築かれ、古くから「カスピの門」と称されてきました。ヨーロッパと中東を結ぶシルクロードの要所として、多様な民族や帝国がこの地を巡って争った歴史が、今も重厚な石壁に記憶されているかのようです。
要塞に立ち、眼下に広がる旧市街と碧いカスピ海を見渡すと、自分がまるで歴史の証人になったかのように感じられます。ササン朝ペルシャ、アラブ、モンゴル、そしてロシア帝国…さまざまな支配者たちがこの風景を目にしてきたことを思うと、壮大な時の流れにただただ感嘆せざるを得ません。推しの壮大な世界観を表現したミュージックビデオをここで撮ったら、きっと素晴らしい作品になるだろうと、ついオタク的な妄想が膨らんでしまいました。
東洋と西洋が交錯する魅惑の異文化体験
デルベントは、地理的にも文化的にもまさに文明の交差点です。コーカサス山脈を背にカスピ海を望むこの地には、昔から多種多様な民族と宗教が共存してきました。イスラム教のモスク、アルメニア教会、そしてユダヤ教のシナゴーグが、迷路のような旧市街の路地に隣接して佇んでいます。
ロシア最古と言われる「ジュマ・モスク」の静謐な中庭を歩くと、敬虔な祈りの声が聞こえてきそうです。一方で少し歩けば美しい装飾が施されたアルメニア教会もあり、その多様性には感嘆させられます。人々はそれぞれの信仰を尊重し、穏やかに共存しているように見受けられました。
街を歩けば、出会う人々の顔立ちも多様です。コーカサス特有の彫りの深い顔立ちの人々、スラブ系の明るい髪色の人、ペルシャの面影を感じさせる風貌の人などが行き交います。聞こえてくる言葉もロシア語だけでなく、さまざまな現地語が飛び交っているのです。このエキゾチックな空気感はヨーロッパでもアジアでもない、まさにデルベントならではのもの。このカオスでありながら調和のとれた空気が、旅人を惹きつけてやまない大きな魅力だと感じました。
未知の絶景と美食を求めて
歴史や文化ももちろん魅力的ですが、旅の醍醐味は何と言っても美しい景観と美味しい食事ですよね。デルベントはその両方を満たしてくれる場所でした。
ナリン・カラ要塞から見下ろす景色はまさに圧巻です。茶色の屋根が連なる旧市街、その奥に広がる果てしなく青いカスピ海、そして空の青さが織りなすコントラストは、いつまで見ていても飽きることがありません。特に夕暮れ時、街がオレンジ色に染まる光景は息を呑むほど美しく、旅の疲れを一瞬で吹き飛ばしてくれる感動的な瞬間でした。
そして忘れてはならないのがダゲスタン料理。豊かな自然の恵みを活かした新鮮な肉や野菜、香り高いハーブをふんだんに使った料理は、どれも素朴ながら味わい深く、日本人の口にも非常に合います。羊肉のシャシリク(串焼き)やヒンカルと呼ばれるダゲスタン風水餃子、チュドゥというチーズとハーブ入りの薄焼きパンなど、どれも初めて食べるのにどこか懐かしさを感じさせる温かい味わいばかり。地元の人々が集う食堂で、アツアツのチュドゥをほおばるひとときは、かけがえのない思い出となりました。まだ世界的にはあまり知られていない隠れた美食の宝庫であり、グルメなあなたならきっとこの魅力に夢中になることでしょう。
デルベントへのアクセス完全ガイド

「デルベント、気になるけどどうやって行くの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。率直に言って、日本から簡単にアクセスできる場所ではありません。しかし、だからこそ到達したときの感動は格別です。ここでは、私自身の旅の経験をもとに、デルベントへの行き方を詳しくご紹介します。
日本からマハチカラへのアクセス
デルベントへの玄関口となるのは、ダゲスタン共和国の首都マハチカラにある「ウイタシュ空港(MCX)」です。残念ながら日本からの直行便は存在しないため、必ず他国を経由しなければなりません。
一般的なルートは、トルコのイスタンブールやUAEのドバイを経由するものです。特にイスタンブールは多くの航空会社が集まるハブ空港で、乗り継ぎ便を見つけやすいのが特徴です。私も今回はイスタンブールを経由するルートを選びました。
フライト時間は乗り継ぎの待ち時間にもよりますが、合計で15時間以上は見積もっておくほうが無難です。長時間の移動ですが、機内で映画を楽しんだり、旅程を再確認したりしていると、思いのほか時間は早く過ぎます。お気に入りのアーティストのライブ映像を見て気分を盛り上げるのもおすすめです。
また、ロシア渡航にはビザが必要です。申請には時間と手間がかかるため、旅行計画が決まり次第、速やかに準備を始めることを強く推奨します。最新のビザ情報は、在日ロシア連邦大使館の公式サイトなどで必ず確認してください。
マハチカラ空港からデルベント市街への移動
ウイタシュ空港に着いたら、デルベントまでは約100km、車でおよそ2時間の距離です。移動方法は主に3つあります。
- タクシー:
最も快適かつ手軽な手段です。空港の到着ロビーにはタクシーの客引きがいますが、料金交渉が必要で少し不安に感じる場合もあります。安全を重視するなら、ロシアで広く使われている配車アプリ「Yandex.Go(ヤンデックス・ゴー)」を利用するのがおすすめです。事前にアプリをダウンロードし、空港のWi-Fiを使って呼べば料金も明瞭で安心です。目安としては大体2000〜3000ルーブル(約3500円〜5300円)程度です。
- マルシュルートカ(乗り合いバス):
地元の人々の足として活躍しているのがマルシュルートカです。空港から直接デルベント行きの便はないため、一度マハチカラ市内の南バスターミナルまで移動し、そこでデルベント行きに乗り換える必要があります。料金は非常に安価ですが、荷物が多い場合は不便に感じるかもしれません。またロシア語が話せないと少し敷居が高いかもしれません。時間に余裕があり、現地の雰囲気を味わいたい冒険心のある方には良い選択肢です。
- 鉄道:
マハチカラ市内からデルベントへは鉄道も運行しています。いわゆる「エレクトリーチカ」と呼ばれる近郊列車です。こちらも空港から市内の鉄道駅へ移動する必要があります。所要時間は長めですが、車窓からカスピ海沿岸の風景をゆったり楽しめるのが魅力です。ただし本数が限られているため、事前に時刻表を調べておくことが大切です。
私の場合は、夜遅くの到着だったため、安全かつ快適さを優先してYandex.Goでタクシーを予約しました。ドライバーは無口ながらも安全運転で、夜の道を慎重に走り抜け、無事にデルベントのホテルまで送り届けてくれました。
デルベントで絶対外せない!必訪スポット巡り

さあ、いよいよデルベントの街歩きを始めましょう!この街の魅力は、何と言っても旧市街にぎゅっと凝縮されています。歩けば歩くほど、歴史の重なりを肌で感じ取れるはず。私が特に感動した、必訪のスポットをご案内します。
天空の要塞「ナリン・カラ」
デルベント観光のハイライトであり、街の歴史の出発点とも言える存在。それが、西側の丘の上にそびえ立つナリン・カラ要塞です。アラビア語で「太陽の要塞」を意味する名称の通り、圧倒的な存在感で街を見下ろしています。
歴史と威厳をたたえる城壁
麓から目にするその壮大さには、まず驚かされます。6世紀にササン朝ペルシャのホスロー1世が築き始めたこの要塞は、その後も各時代の支配者によって拡張・修復が繰り返されてきました。厚さ3メートルを超え、高さ10メートル以上に達する堅牢な城壁は今なお、その威厳を伝え続けています。
城門をくぐり、急な坂道を上ると、まるで時を遡ったかのような感覚に襲われました。石一つひとつに歴史の重みが宿っているようで、自然と背筋が伸びる思いです。要塞内は広大な敷地で、かつての宮殿跡や貯水槽、浴場、さらにはキリスト教の教会跡までもが残されています。
城壁からの息をのむ眺め
ナリン・カラに訪れたなら、ぜひ城壁の上に登ってみてください。そこで広がる景観は、言葉を失うほど壮観です。
眼下には、迷路のように入り組んだ旧市街「マガル」の茶褐色の屋根がびっしりと連なり、その先には果てしなく広がる青いカスピ海が広がっています。要塞から海へと真っすぐに伸びる二本の城壁は、この街が「門」として重要な役割を果たしていたことを雄弁に物語っています。この風景を眺めながら、かつてシルクロードを往来した隊商や、この地を守ってきた兵士たちに思いを馳せると、どこかロマンチックな気分に浸れます。
私が訪れたのは晴れた日の午後で、太陽に輝くカスピ海の美しさがひときわ印象的でした。心地よい風が吹き抜け、何時間でもここにいたくなるほどの居心地の良さ。SNS映え間違いなしの、デルベントを代表する絶景スポットです。
要塞内部も見どころ豊富
要塞内部には見逃せないスポットが点在しています。特に興味深かったのは「ハンの浴場」と呼ばれる半地下のハマム(蒸し風呂)跡。ドーム型の天井から差し込む光が幻想的な空間を作り出しており、かつて支配者たちがこの場所で疲れを癒したのかと思うと歴史のロマンを感じます。
また、「ジンダン」と称される地下牢も見逃せません。深さ11メートルにも及ぶ円筒形の牢獄で、一度落ちれば二度と出られなかったと言われます。上から覗き込むと、その深さと暗さに足がすくみそうになりました。華やかな宮殿の陰に隠れた歴史の暗部を垣間見ることができます。
敷地内の小さな博物館には、この地域から出土した陶器やコインなどが展示されており、デルベントの歴史をより深く知る手助けとなります。ぜひ立ち寄ってみてください。
迷宮の旧市街「マガル」を散策
ナリン・カラのふもとからカスピ海に向けて広がる旧市街「マガル」。こここそがデルベントの中心地であり、最も魅力的なエリアです。車がやっと通れるほど狭い石畳の路地が迷路のように複雑に絡み合い、地図を見ずに気の向くまま歩くのがマガル散策の楽しみの一つです。
石畳の小路と独特な建物
マガルの家々は、地元産の貝殻石灰岩で作られており、街全体が温かみのあるベージュ色で統一されています。ところどころに見られる鮮やかな青い扉や窓枠がアクセントとなり、思わず写真を撮りたくなります。
曲がりくねった路地を歩いていると、地元の人々の暮らしが肌で感じられます。窓辺でおしゃべりする女性たちや路地で遊ぶ子どもたちの笑い声、どこからともなく漂うスパイスの香り…。観光地でありながら、人々の日常が息づく空気感は格別です。家の壁に埋め込まれた古い石彫やアラビア文字の刻まれた石板もちらほら見つかり、この街の深い歴史を実感させてくれます。
どの角を曲がっても絵になる風景が広がり、散策中はカメラが手放せませんでした。お気に入りの人がこんな路地裏でふと佇んでいたら…なんて妄想が尽きません。非日常的な雰囲気が、マガルには確かにあります。
ジュマ・モスク – ロシア最古の礼拝所
旧市街の中心に立つのが、8世紀にアラブ人が建てたジュマ・モスク。ロシアの観光情報サイトにも紹介されている通り、ロシアそして旧ソ連圏内に現存する最古のモスクと言われています。
外観は質素ながらも、中庭に足を踏み入れると静謐で神聖な空気が心を洗い清めてくれるようです。中庭には樹齢数百年の巨大なプラタナスの木が4本あり、木陰で静かに祈る人々や談笑する姿が見られます。これらの木は地元の人々にとって神聖な象徴とされています。
イスラム教徒でなくても、女性はスカーフで髪を覆い、露出の少ない服装であれば内部見学が可能です(入口で貸し出し用のガウンも用意されています)。内部はシンプルな造りですが、広い空間に絨毯が敷かれ、多くの祈りを捧げた歴史の重みが感じられました。異文化、異宗教に触れる貴重な体験となるでしょう。
多文化共生の証し – 古代のシナゴーグとアルメニア教会
ジュマ・モスクからほど近い場所には、多様な文化を象徴する施設が点在しています。
旧市街南側には19世紀建造のシナゴーグ(ユダヤ教会堂)があり、古くからコーカサス地方に暮らす「山岳ユダヤ人」コミュニティの中心地の一つとして機能してきました。現在も信仰の拠り所として活発に使われています。
また少し歩けば、1871年に建てられた美しいアルメニア教会もあります。現在は美術館として利用されており、その優雅な石造建築は訪れる価値があります。
モスク、シナゴーグ、教会がこれほど近接して共存する街は世界的にも稀有です。多民族・多宗教が争うことなく、「カスピの門」の内側で共存してきた歴史。それがデルベントという街の、深くて寛容な魅力の源なのだと強く感じました。
カスピ海の風に身を任せて
デルベントは歴史の街であると同時に、カスピ海に面した港町でもあります。旧市街散策に疲れたら、ぜひ少し足を伸ばして海辺へ出てみましょう。
新たに整備された海辺のプロムナード
近年、デルベントの海岸線は整備され、広々とした公園や遊歩道(プロムナード)が整い、地元の人々が散歩やジョギングを楽しむ場所となっています。子どもたちは遊具で遊び、穏やかで平和な空気が漂っています。
私も散策の途中で立ち寄り、ベンチに腰掛けてしばらく静かに海を眺めて過ごしました。カスピ海は内海のため波が穏やかで、潮風が心地よく感じられます。旧市街の密集した雰囲気とは違い、広々として開放的な気分を味わえました。プロムナード沿いにはおしゃれなカフェやレストランが点在し、海を見ながらくつろぐのもおすすめです。
地元の人々が集うビーチの風景
夏になると、この海岸は海水浴を楽しむ地元民で賑わいます。私が訪れたのは初秋だったため泳いでいる人はいませんでしたが、砂浜を歩いたり釣りを楽しむ人たちがいました。観光客向けの整備されたリゾートビーチというより、地元の人たちの憩いの場という雰囲気が漂っています。
夕暮れ時、太陽がコーカサスの山々に沈んでいくのを海辺から眺める時間は格別です。歴史的な街並みのみならず、こんな風に穏やかな自然に触れられるのもデルベントの大きな魅力の一つと言えるでしょう。
沙耶’s SELECT!デルベントのおしゃれ&グルメスポット

歴史散策でお腹が空いたら、待望のグルメタイムがやってきます!また、旅の合間にはカフェでのひと息も欠かせませんよね。ここでは、私がデルベントで見つけたおすすめのグルメ&カフェスポットをご紹介します。伝統的な味わいから今風のおしゃれな場所まで、ぜひチェックしてみてください!
コーカサスの風を感じるカフェタイム
デルベントには、昔ながらのチャイハナ(茶屋)と、洗練されたモダンなカフェが共存しています。気分に合わせて選んでみてください。
- 旧市街の隠れ家チャイハナ
マガル地区の細い路地を歩いていると、ふと「ЧАЙХАНА(チャイハナ)」という小さな看板を見かけることがあります。これらの茶屋は観光客向けというより、地元男性が集まってお茶を楽しみながら語り合う憩いの場です。少し入るのに勇気がいるかもしれませんが、思い切って中に入れば温かく迎えてもらえます。 メニューはシンプルで、主に紅茶(チャイ)と地元のお菓子やジャムが並びます。サモワールと呼ばれるロシア式の給湯器で淹れられる熱々の紅茶は香り豊かで格別。ベリー系のジャムを少しずつ味わいながら飲むのがダゲスタン流です。言葉が通じなくても、ジェスチャーでコミュニケーションを取る体験がまた楽しいですよ。
- 海沿いのモダンカフェ「Coffee bar №1」
カスピ海沿いのプロムナードには新しいカフェがいくつかオープンしています。その中でも特に若者に人気なのが「Coffee bar №1」です。ガラス張りの店内からは海が一望でき、インテリアも洗練されていて、まるでソウルの延南洞(ヨンナムドン)にあるカフェのような雰囲気。 こちらでは本格エスプレッソマシンで淹れたカフェラテやカプチーノが楽しめます。ラテアートも可愛らしくて、つい写真を撮りたくなります。旅先で美味しいコーヒーが飲みたくなったら、ぜひ訪れてみてください。晴れた日にはテラス席で潮風を感じながらのんびり過ごすのが最高です。まるで推しがふらっとプライベートで訪れそうなおしゃれな空間でした。
絶品!ダゲスタン料理を楽しむ
デルベントを訪れたらぜひ味わってほしいのが、ダゲスタン共和国の郷土料理です。羊肉やハーブをふんだんに使った、深い味わいでスパイシーな料理は、一度食べたら忘れられないおいしさです。
- チュドゥ(Чуду)
ダゲスタン料理の代表格がこのチュドゥ。小麦粉で作った薄い生地に、ひき肉やチーズ、カッテージチーズ、かぼちゃ、ハーブなどさまざまな具材を包み込んで焼いた、薄焼きパンのような料理です。お店によって生地の厚さや具材が異なり、食べ比べも楽しいです。 私が特に気に入ったのは、数種類のハーブをたっぷり使った「ゼリェニ(зелень)」というチュドゥ。焼きたては生地がパリッと香ばしく、中からはハーブの香りがふんわりと広がります。シンプルながら素材の味が際立ち、軽食にもメインの付け合わせにもぴったりです。
- ヒンカル(Хинкал)
ジョージア料理のヒンカリと名前が似ていますが、全く別の料理なのでご注意を。ダゲスタン風の水餃子と訳されることもありますが、スープ、生地(餃子の皮のようなもの)、肉を別々に味わうのが特徴です。 まずは茹でた肉(主に羊肉や牛肉)が入ったスープが出てきて、それを飲みながら、茹でたてのもちもちした生地にサワークリームやニンニクソースをつけていただきます。そして合間に大きな肉の塊を味わうというスタイルです。生地の形は地域によって異なりますが、南ダゲスタンのデルベントでは薄い四角形が主流。素朴ながらクセになる美味しさで、身体の芯から温まる優しい味わいでした。
- シャシリク(Шашлык)
コーカサス地方全体で親しまれている串焼き料理であるシャシリク。デルベントで味わうシャシリクは、特に羊肉(バラニナ)が絶品です。新鮮な羊肉をスパイスや玉ねぎでじっくりマリネし、炭火で香ばしく焼き上げます。 炭火の香りが食欲を刺激し、一口頬張ればやわらかくジューシーな肉の旨味が広がります。臭みは一切なく、羊肉が苦手な方でも美味しくいただけるでしょう。焼き立てのシャシリクを薄いパン(ラヴァシュ)に包み、生の玉ねぎと一緒に食べると格別。ビールとの相性も抜群です。
- おすすめレストラン「Rancho」
ナリン・カラ要塞の近くにある「Rancho」は観光客にも地元の人にも人気のレストランです。伝統的なダゲスタン料理からコーカサス料理全般まで豊富なメニューをそろえています。テラス席からは要塞の眺望も楽しめ、ロケーションは抜群。ここでいただいた羊肉のシャシリクは、旅の中でも特に記憶に残る美味しさでした。
お土産探しはバザールで決まり!
旅の思い出に欠かせないお土産探し。デルベントならではの品を手に入れるなら、旧市街近くの中央バザール(市場)がオススメです。
活気に満ちた市場には、地元農家が持ち寄った新鮮な野菜や果物、ナッツやドライフルーツ、さまざまな種類のチーズ、色鮮やかなスパイスが山積みにされています。見ているだけでも楽しく、時間を忘れてしまうほどです。
- 伝統工芸品
ダゲスタンは銀細工や絨毯などの伝統工芸でも有名です。市場の一角や旧市街のお土産屋さんでは、繊細な装飾が施された短剣、美しい模様の銀製アクセサリー、手織りの小さな絨毯などを見つけられます。少々値は張りますが、職人の技が光る逸品は一生の記念になるはずです。
- コーカサスの恵み
手軽なお土産としておすすめなのがウルベチ(Урбеч)というペースト。亜麻仁や杏の種、ナッツなどを石臼で挽いて作られたスーパーフードで、栄養価が非常に高いのだとか。パンに塗ったりお菓子作りに使ったりします。独特の風味がありますが、健康志向の方に喜ばれることでしょう。 また、コーカサス山脈産の蜂蜜も種類豊富で、お土産にぴったりです。
- 沙耶’s セレクト:ローカルコスメ探し
コスメ好きとしては現地の美容アイテムも気になるところ。バザールの一角で見つけたのは、ハーブやローズウォーターを使った手作り石鹸やオイルを扱うお店。パッケージは素朴ながら、自然の恵みがぎゅっと詰まっていそうです。私が購入したダマスクローズの香りのハンドクリームは、しっとりするのにべたつかず、使い心地がとても良かったです。思いがけない場所でのコスメハントは、旅の楽しみを一層豊かにしてくれます。
デルベント滞在をもっと楽しむためのTIPS

最後に、デルベントへの旅を計画している方々に役立つ情報と注意点をお伝えします。準備を万全に整えて、安全かつ快適な旅をお楽しみください。
ベストシーズンと服装
デルベントを訪れるのに最適な時期は、気候が穏やかな春(4月から6月)と秋(9月から10月)です。夏(7月から8月)は強い日差しが照りつけ、非常に暑くなりますが、カスピ海での海水浴を楽しみたい方にはおすすめのシーズンです。冬(11月から3月)は気温が低くなり、雪が降ることもありますので注意が必要です。
服装については、季節に合わせて選ぶことが基本ですが、いくつかのポイントに気をつけると良いでしょう。デルベントはイスラム教徒が多く暮らす地域のため、特にモスクなどの宗教施設を訪れる際には、肌の露出を控えた服装が求められます。女性は肩や膝を隠す服(長袖やロングスカート、パンツなど)が適切で、念のために髪を覆うスカーフを一枚持っておくととても便利です。また、旧市街は石畳で坂道も多いため、歩きやすいスニーカーは必須のアイテムと言えます。
現地の言葉とコミュニケーション
デルベントの公用語はロシア語です。加えて、ダゲスタンには30を超える民族が暮らし、それぞれの言語が存在します。ホテルや新しいレストランでは英語が通じる場合もありますが、基本的にはロシア語が主に使われていると考えた方がよいでしょう。
言葉が通じなくても、地元の人々は非常に親切でフレンドリーです。挨拶だけでも覚えていくと、ぐっと距離が縮まるはずです。例えば、「こんにちは」はズドラーストヴィチェ、「ありがとう」はスパスィーバといいます。スマートフォンに翻訳アプリを入れておくと、いざという時に非常に役立ちます。私も市場での買い物や食堂での注文の際に大活躍しました。
安全に旅するための注意点
北コーカサス地域には過去に情勢不安が見られたことから、渡航をためらう方もいるかもしれません。デルベントの市街地は比較的安全で、日中の観光であれば特に危険を感じることはありませんでした。ただし、海外旅行であることを忘れてはいけません。
渡航前には必ず外務省の海外安全ホームページで最新の情報を確認しましょう。危険情報のレベルが引き上げられている場合もあるため、その指示に従うことが重要です。現地では、夜間の一人歩きを避ける、貴重品の管理を徹底するなど、基本的な安全対策を心がけてください。また、軍事施設や政府関連の建物の写真撮影は控えた方が賢明です。
常識的な行動を守っていれば、デルベントは温かく旅人を迎えてくれる魅力的な街です。
時の回廊を抜けて、心に刻む旅

デルベントで過ごす日々は、まるで長い歴史の物語を辿る旅のようでした。丘の上に立つ要塞から街並みを見渡し、迷路のような路地で地元の人と目が合い、互いに笑みを交わした瞬間、そしてカスピ海の穏やかな波音に耳を澄ませた時。それぞれの瞬間が、鮮明な記憶となって心に刻まれています。
ここは目を引く派手なエンターテイメントがある場所ではありません。しかし、悠久の時を越え、多様な文化が織り成す深い魅力に静かに心が動かされる場所です。古びた石壁にそっと触れると、何千年もの歳月の間にここで営まれてきた人々の営みの声が聴こえてくるような気持ちになります。
いつものソウル旅行で最新のトレンドを追いかけるのも好きですが、こうして未知の世界の扉を開く旅は、新しい視点をもたらし、日常を生きるための新たな活力を授けてくれます。
もし、誰とも同じではない自分だけの特別な旅を求めているなら、歴史の重みと異文化の香りが満ちるデルベントを次の旅行先の候補に加えてみてはいかがでしょう。きっと、あなたの心に深く残る、忘れがたい体験が待っていることでしょう。



