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スローフードの故郷へ。ピエモンテの宝石、サン・ダミアーノ・ダスティで心を満たす美食とサステナブルな旅

イタリア北西部に広がるピエモンテ州。アルプスに抱かれ、豊かな大地が育むワインと美食で世界中の食通を魅了するこの土地に、まだあまり知られていない宝石のような町があります。その名は、サン・ダミアーノ・ダスティ。

トリノやミラノといった大都市の喧騒から少し離れた、なだらかな丘陵地帯に佇むこの小さな町は、訪れる者に本物のイタリアと、心豊かな時間の過ごし方を教えてくれます。ここは、ただ美しい景色を眺め、美味しいものを食べるだけの場所ではありません。スローフードの精神が深く根付き、大地と人との繋がりを肌で感じられる場所。そして、私たちの旅が、未来の地球にとって少しでも優しいものになるためのヒントが、あちこちに散りばめられている場所なのです。

今回の旅のテーマは、「心と地球を満たす、サステナブルな美食旅」。ただ消費するだけの観光から一歩踏み出し、その土地の文化や自然に敬意を払いながら、五感のすべてで深く味わう旅をご提案します。ワイン畑を吹き抜ける風の香り、朝霧に包まれる丘の静寂、マンマの笑顔とともに供される温かい手料理。サン・ダミアーノ・ダスティでの体験は、きっとあなたの旅の価値観を豊かに変えてくれるはずです。

さあ、地図を片手に、スローな時間の流れるピエモンテの心臓部へ、一緒に旅立ちましょう。

そして、ピエモンテに息づくサステナブルな美食文化をさらに深めたい方は、ガチョウとサラミの都として知られるイタリア・モルタラでの美食とサステナブルな旅もおすすめです。

目次

なぜサン・ダミアーノ・ダスティが旅人を魅了するのか?

多くの観光客がローマやフィレンツェ、ヴェネツィアを目指す一方で、なぜ私たちはこの小さな町に強く惹かれるのでしょうか。それは、現代社会で失われつつある大切な価値がここに息づいているからにほかなりません。

ピエモンテの美麗な丘陵地帯に抱かれて

サン・ダミアーノ・ダスティは、2014年にユネスコ世界遺産に登録された「ピエモンテのブドウ畑の景観:ランゲ=ロエロとモンフェッラート」の一部を成す地域に位置しています。果てしなく広がるブドウ畑の畝は幾何学的な模様を描き、一幅の絵画のような風景を作り出します。春には生命力に満ちた若葉が丘を覆い、夏は太陽の光を浴びて豊かに実ったブドウが彩りを添え、秋になると葉が黄金色に染まり幻想的な景観を演出します。そして冬、霧に包まれ浮かび上がる丘の輪郭は、水墨画のような静謐で美しい風情をたたえています。

この景観は単なる美しさを超えています。何世紀にもわたり人と自然が協働し、この土地に最も適したブドウ栽培の技術を追求してきた歴史そのものなのです。丘の上に残る小さな教会や城塞の遺構は、その長い営みの証拠。この風景を見つめていると、時間という概念すら溶けてしまうかのような不思議な感覚に包まれます。写真撮影には、朝日が昇る頃や、夕陽が丘を茜色に染めるマジックアワーがおすすめです。刻々と変化する光と影が織り成す芸術に、思わず息を呑むことでしょう。

スローフードの理念が息づく美食の地

ピエモンテ州は1980年代に「スローフード」運動が誕生した場所として知られています。ファストフードが世界を席巻する中で、「消えゆく恐れのある伝統的な食材や食文化を守り、質の高い食を適正な価格で楽しむ権利を訴える」というこの思想は、サン・ダミアーノ・ダスティを含むアスティ県全域に深く根付いています。

この地での食事は単なる栄養補給ではありません。家族や友人と共に食卓を囲み、会話を楽しみながらゆっくり味わう時間であり、その食材がどのように、誰によって育まれたのかを想うことも大切な要素とされています。これらすべてが、豊かな人生を形づくる大切な一部なのです。

秋には世界屈指の白トリュフが森の中で静かに育ち、タヤリン(卵黄たっぷりの手打ちパスタ)の上で芳醇な香りを放ちます。ピエモンテIGPヘーゼルナッツは、濃厚なジャンドゥーヤや風味豊かな菓子の主役となり、多種多様なチーズやサラミ、なによりこの土地のテロワール(土壌や気候などの生育環境)を写し出すワインが揃います。この町を訪れることは、まさにスローフードの哲学を五感で体感する旅と言えるでしょう。

歴史を刻む、趣深い落ち着いた町並み

サン・ダミアーノ・ダスティの中心部は、中世の面影が色濃く残る旧市街地です。迷路のように入り組む石畳の小径、歴史を語るアーチ、静かに佇む教会。この町に派手な観光スポットはありませんが、気の向くまま散歩するだけで時間を遡るような感覚に浸れます。

カフェのテラスでエスプレッソを片手に通りゆく人々を眺めたり、パン屋(Panetteria)から漂う焼きたての香ばしい匂いに誘われたり。ここには、観光客向けに作られた演出ではない、地元の人々の日常が穏やかに流れています。すれ違う人と「Buongiorno(こんにちは)」、「Buonasera(こんばんは)」と挨拶を交わせば、心温まる交流が生まれることでしょう。この静かで落ち着いた空気こそ、大都市の観光地では味わえないサン・ダミアーノ・ダスティ最大の魅力なのです。

サン・ダミアーノ・ダスティへのサステナブルなアクセス方法

旅のスタートは移動から始まります。せっかくの旅なら、その移動時間も楽しみつつ、環境への負荷を少しでも軽減できる方法を選んでみませんか?

CO2排出を抑えつつ、イタリアの風景を満喫する

飛行機利用が避けられない長距離の旅の場合、現地での移動手段を工夫することがCO2削減のポイントとなります。幸い、イタリアは公共交通機関が充実しているため、賢く利用すれば快適で環境にやさしい旅が実現可能です。

  • 鉄道でのアクセス方法

日本からの主要空港としては、ミラノ・マルペンサ空港(MXP)またはトリノ・カゼッレ空港(TRN)が最寄りとなります。どちらの空港からも、まずは鉄道のハブ駅であるトリノのポルタ・ヌオーヴァ(Porta Nuova)駅を目指しましょう。

トリノ・ポルタ・ヌオーヴァ駅からは、イタリア国鉄Trenitalia(トレニタリア)の列車でアスティ(Asti)駅へ向かいます。所要時間は約30分から1時間ほど。窓の外にはピエモンテ地方の田園風景が広がり、旅の期待が高まることでしょう。

チケットの購入方法と手順

チケットは駅の窓口(Biglietteria)や券売機でも買えますが、オンラインでの事前購入がおすすめです。

  • オンライン予約: Trenitaliaの公式サイトやアプリで手続きします。出発日が近づくにつれて運賃が上がることが多いため、早めに予約すると「Super Economy」などの割引価格で購入できる可能性があります。また、夏のバカンス時期や週末は混雑するため、確実に席を確保する意味でも事前予約が賢明です。
  • 手続きの流れ: サイトやアプリで出発駅(Torino Porta Nuova)、到着駅(Asti)、日時、人数を入力し検索。希望の列車とクラス(1等車または2等車)を選択し、乗客情報を入力後にクレジットカードで決済します。購入完了後にはQRコード付きのEチケットがメールで届くので、スマートフォンに保存しておけばOKです。検札時に車掌に提示するだけで済みます。

注意点: 駅の券売機で購入した紙の切符は、必ず乗車前にホームにある緑色または黄色の刻印機(Convalidatrice)で打刻してください。これを忘れると、有効な切符を持っていても高額な罰金を科される場合があります。一方、オンラインで購入したEチケットは刻印不要です。

アスティ駅に着いたら、駅前のバス停からサン・ダミアーノ・ダスティ行きのバスに乗り換えます。バスはARFEAなどの会社が運行しており、所要時間は約30分です。バスの時刻表は事前にバス会社の公式サイトで確認するか、駅のタバッキ(Tabacchi)やバスチケット売り場で問い合わせてみましょう。チケットはタバッキで購入可能です。

  • レンタカー利用時の環境への配慮

ワイナリー巡りなどで郊外に出かける際にはレンタカーも便利ですが、その場合は環境意識を重視した車選びを心がけてください。

  • 車種選び: コンパクトカーや可能であればハイブリッド車(Ibrida)、電気自動車(Elettrica)を選択しましょう。ヨーロッパではEVの普及が進み、充電スタンドも増加しています。
  • 運転のポイント: 急発進や急ブレーキを避け、穏やかな運転を心掛けるだけで燃費が向上します。高速道路(Autostrada)では速度制限を遵守し、効率的なルートを選びましょう。

現地での移動手段

サン・ダミアーノ・ダスティの町自体は非常にコンパクトなので、中心部の散策は徒歩で十分に楽しめます。石畳の通りを自分の足で歩くことで、町の細やかな魅力を発見できるでしょう。

周囲の丘陵地帯やワイナリーを訪れるなら、E-bike(電動アシスト自転車)のレンタルが最適です。アップダウンの多いピエモンテの丘も、E-bikeなら体力に自信がなくても問題ありません。心地よい風を感じながらブドウ畑の中を走る爽快感は格別です。排気ガスや騒音を出さないE-bikeは、この地域の静かな自然環境を大切にする移動手段として理想的です。現地のホテルや観光案内所でレンタル情報を入手できます。

心に残るサン・ダミアーノ・ダスティの見どころ

この町には華やかさはないものの、訪れる人の心に静かに深く響くような、趣のある魅力的な場所が点在しています。

歴史の息吹を感じる旧市街の散策

まずは町の中心にそびえる教会を訪れてみましょう。

  • サンティ・コズマ・エ・ダミアーノ教区教会(Chiesa Parrocchiale dei Santi Cosma e Damiano)

守護聖人である聖コスマスと聖ダミアンに捧げられたこちらの教会は、17世紀末から18世紀初頭にかけて現在のバロック様式で再建されました。荘厳なファサード(正面外観)や内部の緻密な装飾、祭壇画が見応えがあります。教会は地域コミュニティの要であり祈りの場ですので、訪問時には敬意を払うことが大切です。

訪問時のマナーと服装について

イタリアの教会を訪れる際に注意すべき点は以下の通りです。

  • 服装: 肩や膝が露出するノースリーブやショートパンツは避けましょう。特に夏季は、薄手のストールやカーディガンを一枚持ち歩き、さっと羽織れるようにすると便利です。
  • 行動: 教会内では静かにし、大声での会話は控えます。ミサ開催中は信者の邪魔にならないよう、後方で静かに見学しましょう。写真撮影は許可されている場合が多いものの、フラッシュ使用は控えてください。
  • サン・ジュゼッペ教会(Chiesa di San Giuseppe)

こちらも美しいバロック建築で、内部のフレスコ画や彫刻が訪問者を魅了します。規模は小さめですが、その芸術性の高さから町の重要な文化財とされています。

  • ボルゴ門(Porta del Borgo)と中世の城壁跡

旧市街を歩いていると、かつて町を守っていた城壁の一部や中世の門を見ることができます。これらの建造物は、サン・ダミアーノ・ダスティの長い歴史の証人です。特にボルゴ門のアーチ越しに望む町並みは写真スポットとして人気です。歴史の重みを感じながら、ゆったりと散策を楽しんでみてください。

毎週開かれるメルカート(市場)で味わう地元の恵み

もし日程が合えば、ぜひメルカート(Mercato)が開催される日に訪れてみましょう。サン・ダミアーノ・ダスティでは週に一度、町の広場に市場が立ちます。開催曜日は観光案内所などで事前に確認してください。

新鮮な色とりどりの野菜や果物、地元の酪農家によるチーズ、熟成サラミやプロシュート、瓶詰のハチミツやジャムなど、市場はその土地の食文化を象徴しています。生産者たちは自信を持って商品を並べています。

サステナブルな買い物のコツ

メルカートでは環境に配慮したお買い物も心がけましょう。

  • マイバッグの持参: 大きめのエコバッグを持参し、プラスチック袋の使用を控えましょう。これは世界的にも広まりつつあるマナーです。
  • 一言伝えてみる: イタリア語が話せなくても大丈夫です。「Senza busta, per favore(袋は要りません)」と伝えれば喜んで対応してくれます。
  • 生産者との交流: 指差しや簡単な単語でも通じます。「Questo, da dove?(これはどこから来たの?)」と尋ねてみると、畑や農場の話を聞かせてくれることもあります。生産者の顔が見える買い物は、スローフードの第一歩と言えます。

周辺のワイナリー巡り — 大地の恵みを味わう

サン・ダミアーノ・ダスティ周辺は質の高いワインの産地として有名です。特にこの地を代表する赤ワイン「バルベーラ・ダスティ(Barbera d’Asti DOCG)」や、甘口で微発泡の白ワイン「モスカート・ダスティ(Moscato d’Asti DOCG)」はぜひ味わいたい逸品です。

多くのワイナリー(Cantina / Azienda Agricola)では見学やテイスティングが可能です。ブドウ畑を歩きながら醸造施設を見学し、生産者からワイン造りへの熱意を直接聞きつつ味わう一杯は、レストランでの体験とは異なる特別なものとなるでしょう。

ワイナリー訪問の予約と流れ

多くのワイナリー、特に小規模な家族経営の場合、事前予約が必要です。

  • 予約方法: 希望のワイナリーの公式ウェブサイトからメールや問い合わせフォームで予約をします。件名に「Winery tour and tasting reservation」と記し、希望日時や人数、簡単な自己紹介(日本からのワイン愛好者ですなど)を英語か簡単なイタリア語で送るのが一般的です。
  • 返信を待つ: 返信が遅れることもあるため、数日待っても連絡がない場合は再度連絡するか、宿泊先のホテルに代行予約を依頼するのも良い方法です。
  • 当日の流れ: 約束の時間にワイナリーを訪れ挨拶をした後、見学ツアーに参加します。その後、テイスティングルームで数種類のワインを試飲。気に入ったものがあれば購入も可能です。生産者を応援する意味でもお気に入りの一本を見つけてみてください。

訪問時の注意事項

  • 香りの管理: ワインの繊細な香りを楽しむため、強い香水や匂いのあるハンドクリームの使用は控えましょう。
  • 運転者の確保: 試飲をする場合は絶対に運転しないこと。公共交通機関の利用、または運転しない者をグループ内で決める、タクシーを利用するなどの対策が必要です。
  • 感謝の気持ちを忘れずに: 見学やテイスティングは彼らの貴重な時間を割いて対応してくれています。礼儀をわきまえ、感謝の気持ちを持って楽しみましょう。

ここでしか味わえない!サン・ダミアーノ・ダスティの美食体験

旅の醍醐味のひとつはやはり食事です。サン・ダミアーノ・ダスティは、その期待を見事に裏切らず、むしろそれ以上の素晴らしい食体験を約束してくれます。

絶対に味わいたい郷土料理

ピエモンテ料理は、フランス料理の影響を受けた洗練された味わいが魅力で、バターや肉、卵をたっぷり使ったコクのある料理が豊富です。

  • ヴィテッロ・トンナート (Vitello Tonnato)

薄くスライスした冷製の子牛肉に、ツナやアンチョビ、ケッパーを混ぜたクリーミーなソースをかけるピエモンテを代表する前菜。意外な組み合わせに驚くものの、その絶妙な調和にきっと感動するでしょう。

  • アニョロッティ・デル・プリン (Agnolotti del Plin)

「プリン」とはピエモンテの方言で「つまむ」を意味します。指で軽くつまんで閉じた、小さなラヴィオリのような詰め物パスタで、ローストした肉や野菜が中に詰まっています。セージとバターのソースや肉の出汁でシンプルにいただくのが伝統的な味わいです。

  • タヤリン (Tajarin)

卵黄をふんだんに使用した、鮮やかな黄色の細い手打ちパスタ。風味豊かで食感も心地よく、濃厚なラグーソースによく合います。特に秋に訪れるなら、白トリュフを削りかけた一皿をぜひ。目の前でトリュフが削られる瞬間に漂う官能的な香りは、忘れられない思い出になるでしょう。

  • バーニャ・カウダ (Bagna Càuda)

日本でも知られていますが、本場の味は格別です。ニンニクとアンチョビをオリーブオイルで温めた熱々のソースを、アザミ(カルド)やピーマン、カブなどの旬の生野菜に絡めていただきます。寒い冬に人々が集まり楽しむ、郷土ならではの温かな味わいです。

  • ボネ (Bunet)

ピエモンテの伝統的なスイーツ。チョコレートやアマレットリキュール、アマレッティ(アーモンド風味のメレンゲ菓子)を使ったやや固めのプリンに似たお菓子で、ココアのほろ苦さとアマレットの香りが食後のコーヒーと絶妙にマッチします。

イチオシのレストラン&トラットリア

サン・ダミアーノ・ダスティには、素晴らしい食事処が数多く点在しています。

  • リストランテ (Ristorante)

多少フォーマルな空気感で、シェフの創意工夫あふれる料理や豊富なワインリストを楽しむのにぴったり。特別な日のディナーにおすすめで、人気店は予約を忘れずに。

  • トラットリア (Trattoria) / オステリア (Osteria)

よりカジュアルで家庭的な雰囲気の中、地元のマンマの味を受け継ぐ伝統的な郷土料理が味わえます。地元の人々で賑わう店は、間違いなく美味しい証。気さくなサービスも魅力的です。

  • アグリツーリズモ (Agriturismo)

農家が経営する宿泊施設を兼ねたレストランは、まさにサステナブルな食体験の真骨頂。自家菜園の野菜や育てた家畜の肉、自家製ワインやチーズを使った料理は新鮮そのもので、食材の輸送距離がほぼゼロの「Km 0(キロメートル・ゼロ)」を体現しています。宿泊しなくても食事だけ利用可能な場合が多いので、ぜひ訪れてみてください。

レストラン予約のポイント

  • 電話予約が確実: 小規模な個人店ではオンライン予約がないことも多いです。簡単なイタリア語や英語で電話をするか、宿泊先のスタッフに依頼するとスムーズです。
  • アレルギーの伝達: アレルギーや食べられない食材があれば、予約時に必ず伝えましょう。役立つフレーズは「Sono allergico/a a…(〜にアレルギーがあります)」や「Non posso mangiare…(〜は食べられません)」です。

スローフードを体感できる料理教室

時間に余裕があれば、現地のクッキングクラスに参加してみるのもおすすめです。地元のマンマやシェフから、タヤリンの手打ちや郷土料理のレシピを直接教わる体験は、お土産話としても価値があるだけでなく、日本に帰ってからも旅の味を再現できる素晴らしいギフトになります。アグリツーリズモなどで開催されることが多く、観光案内所やオンラインの体験予約サイトで見つけることができます。自分で打ったパスタを、その土地のワインとともに味わう時間はかけがえのない喜びをもたらしてくれるでしょう。

旅の準備と知っておきたいこと

快適で安全な旅を楽しむためには、事前の準備が欠かせません。

ベストシーズンと適した服装

サン・ダミアーノ・ダスティは四季それぞれに美しい景観を楽しめますが、訪れる目的によって最適なシーズンは異なります。

  • 春(4月〜6月): 新緑が鮮やかで、気候も穏やか。花が咲き誇る中でのハイキングやサイクリングに最適な時期です。
  • 秋(9月〜11月): 美食を楽しむには最適の季節。ワイン用のブドウの収穫祭(ヴェンデッミア)が始まり、アルバでは国際白トリュフ祭りが開催されるなど、活気にあふれた町の風景が広がります。
  • 夏(7月〜8月): 日中は非常に暑くなる一方で、夜は涼しくなることもあります。緑豊かなブドウ畑が最も鮮やかになる季節です。帽子やサングラス、日焼け止めなどの日差し対策は必需品です。
  • 冬(12月〜2月): オフシーズンで観光客が少なく、静かな町の雰囲気を堪能できます。霧(ネッビア)が立ち込める幻想的な景色も魅力のひとつ。バーニャ・カウダなど、冬ならではの温かい料理が一層美味しく感じられます。

服装のポイント

  • 歩きやすい靴: 石畳や坂道の多い地形のため、スニーカーやウォーキングシューズなど、足に慣れた靴を準備しましょう。
  • 重ね着できる服装: 朝晩の気温差が大きいことが多いため、Tシャツの上にシャツ、さらにジャケットやカーディガンなど調節しやすい服装が便利です。
  • 羽織りもの: 教会訪問時のマナーとして、また朝晩の冷えや冷房対策として、ストールや薄手のカーディガンをバッグに忍ばせておくと役立ちます。
  • スマートカジュアル: 少し格式のあるリストランテでのディナー予定がある場合は、襟付きシャツやワンピースなど、品の良い服装を一着持参すると安心です。

持ち物チェックリスト - サステナブルな旅のために

基本的な持ち物に加え、環境に配慮した旅を心がけるためのアイテムも合わせてご紹介します。

  • 必携アイテム:
  • パスポート(有効期限を事前に必ず確認)
  • クレジットカード(予備も含めて複数枚)、現金(ユーロ)
  • 海外旅行保険証(万が一の病気や盗難時に備えて)
  • スマートフォンと充電器
  • eSIMまたは海外用Wi-Fiルーター
  • サステナブル旅におすすめのアイテム:
  • マイボトル/タンブラー: イタリアの水道水は飲用可能で、町の広場などにある飲料水の噴水(Fontanella)で給水すれば、ペットボトルごみを大幅に減らせます。
  • エコバッグ: メルカートや食料品店での買い物に役立ちます。折りたたみ可能なものを数枚持っていくと何かと便利です。
  • 携帯用カトラリーセット: ジェラートや市場で購入した果物を食べる際に、使い捨てのスプーンやフォークを使わずに済みます。
  • 固形シャンプー・コンディショナー・石鹸: 液体ボトルよりプラスチックごみを減らせ、軽量で携帯にも便利です。
  • モバイルバッテリー: 地図アプリや翻訳アプリはバッテリー消費が激しいため、特に公共交通機関での移動時に欠かせません。

トラブル発生時の対応方法

旅先でのトラブルは避けられません。慌てずに対応できるよう、事前に対処法を把握しておきましょう。

  • 盗難・紛失の場合:
  • 警察へ相談: まずは最寄りの警察署(CarabinieriまたはPolizia)へ行き、盗難・紛失証明書(Denuncia)を発行してもらいます。これは海外旅行保険の請求時に必要です。
  • カードの停止: クレジットカードを紛失した場合は、速やかにカード会社の緊急連絡先に連絡し、利用停止の手続きを行います。
  • パスポート紛失: ローマの日本大使館あるいはミラノの日本総領事館に連絡し、再発行手続きの指示を受けてください。
  • 体調不良時:
  • 保険会社へ連絡: 加入している海外旅行保険のサポートデスクに電話し、提携病院の紹介を受けます。キャッシュレス対応の医療機関もあります。
  • 薬局(Farmacia)の利用: 軽い症状なら緑の十字の看板が目印の薬局で薬剤師に相談可能です。
  • 緊急時: 救急車が必要な場合は、緊急番号「112」に電話してください。
  • 交通機関の遅延・運休の場合:
  • 情報収集: 鉄道の遅延や運休が生じた際は、駅の案内表示やViaggiaTreno(Trenitaliaの運行情報サイト)で最新の状況を確認しましょう。
  • 窓口で相談: 駅のカスタマーサービスにて、代替便への振り替えや払い戻し(Rimborso)が可能か問い合わせてください。遅延や運休の証明書を発行してもらうと、その後の手続きがスムーズです。

サン・ダミアーノ・ダスティでできるサステナブルなアクション

この美しい土地をこれからの世代に引き継ぐために、私たち旅行者ができることはたくさんあります。

地元産品の消費をサポートする

レストランのメニューに「Km 0(キロメートル・ゼロ)」や「a filiera corta(短い流通経路)」という表記を見かけたら、それは地元の食材を積極的に使用している証拠です。こうしたメニューを選ぶことは、地域の農業の活性化につながり、輸送によるCO2排出の削減にも貢献します。市場や農家の直売所(vendita diretta)で直接食材を購入することも、非常に効果的な支援となります。

ゴミを減らす工夫をする

先に挙げたマイボトルやエコバッグの利用に加え、ホテルでの滞在時も工夫をしてみましょう。長期滞在の場合、タオルやシーツの交換を毎日お願いする必要はありません。「タオル交換不要」の意思表示をするだけで、水や洗剤、エネルギーの節約に繋がります。アメニティも本当に必要なものだけを使うよう心がけましょう。

文化や自然に対する敬意を持つ

ブドウ畑は、農家の方々が丹精込めて手入れしている大切な仕事場です。美しいからといって勝手に畑の中に侵入したり、ブドウの実に触れたりすることは避けましょう。指定された道や農道(strada bianca)を歩き、彼らの労働に敬意を示すことが大切です。また、地元の人々の生活圏である町では、大声を出したり夜遅くに騒音を立てたりしないよう、常に配慮を忘れないようにしましょう。

環境に配慮した宿泊施設を選ぶ

サステナブルな旅の拠点として、アグリツーリズモは非常におすすめです。自然に囲まれた環境の中、太陽光発電や雨水再利用といった環境負荷軽減の工夫をしている施設が多く見受けられます。さらに、地元の生態系や伝統的な農業の保護にもつながります。予約サイトで宿を探す際には、「サステナブル」や「エコフレンドリー」といったフィルターを活用するのも効果的な方法です。

サン・ダミアーノ・ダスティから足を延ばして

この町を拠点にして、ピエモンテのほかの魅力あふれる町へ日帰りで足を伸ばすのもおすすめです。

ワインと歴史が息づく街、アスティ (Asti)

サン・ダミアーノ・ダスティからバスで約30分の距離にあるアスティは、スプマンテ(スパークリングワイン)の代表格「アスティ・スプマンテ」で世界的に知られる活気あふれる街です。赤レンガの美しい大聖堂(Cattedrale di Santa Maria Assunta)や、中世の貴族たちが権力を競い合って建てた塔が今なお並ぶ旧市街は見応えがあります。毎年9月には、中世の衣装に身を包んだ各地区が競い合う伝統の競馬祭り「パリオ(Palio di Asti)」が開かれ、町は熱気に包まれます。

白トリュフの聖地、アルバ (Alba)

秋のピエモンテ旅行の際には、ぜひアルバを訪れたいところです。10月から12月にかけて行われる「国際白トリュフ祭り(Fiera Internazionale del Tartufo Bianco d’Alba)」には、世界中から美食家が集います。会場に足を踏み入れると、一面に広がるトリュフの芳醇な香りに圧倒されます。また、高級チョコレート「フェレロ・ロシェ」で知られるフェレロ社の本社がこの街にあることも有名です。

バローロ、バルバレスコなどワイン銘醸地巡り

「ワインの王様」と称されるバローロ(Barolo)、「ワインの女王」と呼ばれるバルバレスコ(Barbaresco)。どちらもネッビオーロ種から生み出される偉大な赤ワインの産地で、車を少し走らせるだけで訪れることができます。ランゲ地方の丘陵地帯に点在するワイナリーを巡って、それぞれの土地ならではのテロワールの違いを体験するのは、ワイン愛好家にとって至福のひとときとなるでしょう。

旅の記憶を、未来への種に

サン・ダミアーノ・ダスティで過ごす時間は、きっと穏やかでありながらも深くあなたの心に刻み込まれるでしょう。ブドウ畑を吹き抜ける風の音や、トリュフの香りが漂うパスタの湯気、生産者の皺が刻まれた温かな手のぬくもり、そして長い歴史を通じて培われてきた大地への敬意がそこにあります。

ここで得られる体験は、単なる観光とは異なります。それは、私たちの食卓に並ぶ食材がどのような自然の恵みと人々の労働によって届けられているのかを改めて学ぶ旅です。そして、私たちの一つひとつの選択が、この美しい景色や文化を守る力になることを気づかせてくれる旅でもあります。

旅から戻り日常に戻ったとき、スーパーで野菜を手に取ったりレストランでワインを選んだりする瞬間に、ふとサン・ダミアーノ・ダスティの風景が心に蘇るかもしれません。その時、あなたはきっと少し違った視点を持って物を選んでいることでしょう。

旅の記憶は消費されて無くなるものではなく、未来の自分や未来の地球をより豊かにするための種となります。サン・ダミアーノ・ダスティは、そんな持続可能な旅の喜びを静かに、しかし力強く教えてくれる場所です。次の旅も、その次の旅も、あなたの心が真に満たされ、地球に優しいものとなりますように。

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この記事を書いたトラベルライター

サステナブルな旅がテーマ。地球に優しく、でも旅を諦めない。そんな旅先やホテル、エコな選び方をスタイリッシュに発信しています!

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