シチリア島東部に位置するカターニア。活火山エトナ山の麓に広がるこの街は、バロック様式の荘厳な建築群と、地元の人々の活気あふれる市場が混在する、生命力に満ちた場所です。黒い溶岩で造られた建物が並ぶ街並みは独特の陰影を帯び、一歩路地裏に入れば、シチリアの濃厚な日常が顔を覗かせます。そんな喧騒と歴史の渦の中心で、まるで都会のオアシスのように静かに息づいているのが、今回ご紹介する「ベッリーニ庭園(Villa Bellini)」です。
カターニア市民にとって、ここは単なる公園ではありません。待ち合わせの場所であり、午後の休息をとる木陰であり、子どもたちの笑い声が響く遊び場であり、そして街の歴史そのものを見つめてきた証人でもあります。食品商社に勤める傍ら、世界の食と文化を追い求めて旅をする私にとって、この庭園はカターニアという街の素顔に触れるための、最高の入り口でした。壮大な自然、偉人たちの記憶、そして地元の人々の穏やかな時間。そのすべてが、ここベッリーニ庭園には凝縮されています。さあ、一緒にカターニアの緑の心臓部へと足を踏み入れてみましょう。エトネア通りの喧騒を抜け、荘厳な門をくぐれば、そこには忘れられないシチリアの時間が待っています。
ベッリーニ庭園の魂に触れる – 歴史と名前の由来

ベッリーニ庭園を単なる美しい公園として見過ごしてしまうのは、とても惜しいことです。この庭園の成り立ちを理解すれば、目の前に広がる風景がより深みと豊かな物語を持つように感じられます。元々この場所は、18世紀にビシャーリの王子イニャツィオ・パテルノ・カステッロの所有する広大な私有庭園でした。当時「ラビリント(迷宮)」と呼ばれていたこの庭は、複雑に入り組んだ小径や噴水、彫像が配されたバロック様式の絶妙な作品だったと伝えられています。貴族たちが優雅に楽しんだであろうその空気は、今も庭園のあらゆる設計に息づいています。
1854年、カターニア市がこの土地を購入し、建築家イグナツィオ・ランドリーナの指揮のもと、市民のための公共庭園へと生まれ変わらせる大規模な改修工事が始まりました。そして1883年にはついに一般に公開され、カターニアの新たなシンボルとなりました。この庭園が「ベッリーニ庭園」と名付けられたのは、カターニア出身の偉大なオペラ作曲家ヴィンチェンツォ・ベッリーニ(1801-1835)への敬意を示すためです。『ノルマ』や『清教徒』、『夢遊病の女』といった名作で知られるベッリーニは、その甘美で叙情的な旋律から「カターニアの白鳥」と称され、今なお地元の誇りとして愛されています。彼の栄誉を讃え、その名を庭園に冠したのです。彼の音楽同様、この庭園も訪れる人々に安らぎと感動を提供し続けています。
庭園の中を歩くと、ただ植物が植えられているだけでないことが実感できます。およそ7ヘクタール(東京ドーム約1.5個分)の広大な敷地は巧みに高低差を活かして設計されており、一歩一歩景色が変わるため、訪れる者に飽きることがありません。南の太陽の光を浴びて健やかに育つ巨大な樹木、季節ごとにさまざまな色を見せる花壇、そしてカターニアの歴史を物語る彫像の数々。これらが一体となって、ベッリーニ庭園独特の雰囲気を生み出しています。この場所は19世紀の貴族の夢と近代都市カターニアの発展、そして偉大な芸術家への敬愛が見事に交差する、まさに歴史の舞台と呼ぶにふさわしい場所と言えるでしょう。
五感を研ぎ澄ませて歩く – 庭園散策のハイライト

ベッリーニ庭園の魅力は、その豊かな多様性にあります。単に緑の中を歩くだけでなく、視覚や聴覚、嗅覚を駆使してこの場所を存分に味わうことができるのです。そんな五感を使った散策の楽しみ方をご紹介しましょう。
エントランスから始まる異世界への誘い
庭園の主な出入口は、カターニアの中心街を走るエトネア通り(Via Etnea)沿いにあります。黒い溶岩と白い石灰岩が美しいコントラストを描く壮麗なファサードが目印です。この門をくぐり、ゆるやかなスロープと広々とした階段を登っていくと、まず目に飛び込んでくるのは、庭園の象徴ともいえる「花時計(Orologio Floreale)」です。
円形の花壇に巧みに植えられた花々が、時計の文字盤と針を形作っています。驚くべきことに、この時計は実際に時間を刻んでおり、日付表示は庭師たちの手で毎日植え替えられているのです。その日に訪れた日付が花で表されているのを目にすると、旅の思い出が一層特別なものに感じられます。この丁寧な手作業から、カターニアの人々がどれほどこの庭園を大切にしているかが伝わってきます。花時計の前は絶好の記念撮影スポット。旅のスタートにぜひ一枚写真を撮っておきましょう。
植物が織り成す異国情緒あふれる風景
ベッリーニ庭園は、植物学的にも非常に価値の高い場所です。シチリアの温暖な気候を生かして、世界各地から集められた多種多様な植物が育てられています。高くそびえるワシントンヤシの並木道は、まるで南国のリゾートに迷い込んだかのような雰囲気を醸し出しています。木々の間から差し込む木漏れ日が地面に揺れる光景は、思わず時間を忘れて見入ってしまうほど美しいものです。
特に目を引くのは、園内に点在する巨大なガジュマル(Ficus macrophylla)の木々。生き物のように絡み合い、大地に深く根を張るその姿は、生命力の強さを感じさせます。地面まで垂れ下がった気根が作り出す不思議な空間は、子どもたちにとって最高の隠れ家となり、大人もその神秘的な光景で童心を取り戻すことでしょう。
春にはブーゲンビリアやハイビスカスが鮮やかに咲き誇り、夏は豊かな木陰が強い太陽光から訪れる人々を守ります。秋には木々が穏やかに色づき、冬でも柑橘類が実を結ぶなど、一年を通じて庭園はさまざまな表情を見せてくれます。植物の名前が書かれたプレートを探しながら歩くのも楽しみのひとつです。普段なじみのない熱帯植物や珍しい花々との出会いが、散策の喜びをより一層深めてくれるでしょう。
偉人たちの小径 — カターニアの歴史を辿る道
庭園の中央に位置し、丘の上へと続くゆるやかな坂道は「偉人たちの小径(Viale degli Uomini Illustri)」と呼ばれています。その名の通り、道の両側にはカターニアやシチリアに縁のある作家や科学者、政治家など、歴史に名を残す偉人たちの胸像がずらりと並んでいます。
その中心には、ベッリーニ庭園の名の由来でもあるヴィンチェンツォ・ベッリーニの像が堂々と立っています。ほかにも、『カヴァレリア・ルスティカーナ』の作者として知られる文豪ジョヴァンニ・ヴェルガや、ノーベル文学賞を受賞したルイージ・ピランデッロ(アグリジェント出身ながらシチリアを代表する文豪としても知られる)など、イタリア文化に関心を持つ人なら馴染みのある名前も見つかるかもしれません。
一体一体の胸像の前に立ち、彼らが生きた時代やカターニアの地で成し遂げた業績に思いを馳せる時間は、知的好奇心を満たしてくれます。名前を知らない人物であっても、表情豊かな彫刻がその人生の証を静かに、しかし力強く伝えてくれるようです。この小径を歩くことは、単なる散歩以上の、カターニアの精神史を辿る旅とも言えるでしょう。
旅のプランを具体的に – ベッリーニ庭園訪問ガイド

ベッリーニ庭園を存分に楽しむためには、少しの準備と計画が不可欠です。ここでは、実際に訪れる際に役立つ具体的な「Do情報」をご紹介します。
訪れるのに最適な時期は?
シチリアの気候を踏まえると、庭園散策に最も適しているのは春(4月〜6月)および秋(9月〜10月)です。気温が穏やかで快適なうえに、花々が最も美しく咲き誇る時期だからです。
夏(7月〜8月)に訪れる場合は、日中の厳しい暑さを避ける工夫が必要です。おすすめは涼しい早朝か、夕方の太陽が傾き始める時間帯。特に夕暮れ時は、西の空がオレンジ色に染まり、庭園全体が幻想的な光に包まれます。地元の人々も涼を求めて集まり、穏やかで活気ある雰囲気を楽しめるでしょう。夜にはライトアップが行われ、昼間とは異なるロマンチックな風景が広がります。
庭園の開園時間は季節によって異なることがあります。基本的には日の出から日没までと考えられますが、正確な時間を知りたい場合は、訪問前にカターニア市の公式サイトを確認することをおすすめします。このひと手間が、快適で円滑な観光につながります。
快適な散策のための準備と持ち物
ベッリーニ庭園は入場無料で、チケットの購入手続きも不要なので、誰でも気軽に訪れることが可能です。ただし、快適に過ごすためにはいくつかの準備をしておくと安心です。
- 歩きやすい靴: 園内は広く、坂道や階段も多いため、スニーカーやウォーキングシューズが最適です。石畳がある場所もあるので、おしゃれなサンダルやヒールは避けたほうが無難です。
- 日差し対策: シチリアの日差しは強烈です。季節を問わず、帽子、サングラス、日焼け止めは必須アイテム。特に夏場は日傘を持参するとより快適に過ごせます。
- 水分補給: 園内には水飲み場や売店がありますが、特に暑い日にはマイボトルに水を入れて持参すると安心です。熱中症対策を万全にしましょう。
- 軽食: ベンチでのんびりピクニックを楽しむのもおすすめです。近隣のパン屋(Panificio)でパンを買ったり、市場でフルーツを調達したりして持ち込むのも良いでしょう。
- カメラ: 絵になるスポットが多い庭園です。スマートフォンでも十分ですが、写真が趣味の方はお気に入りのカメラを持っていくとより楽しめます。
- 虫よけスプレー: 夏や緑が多い場所では蚊などの虫が気になることがあります。肌の露出が多い服装の際は持参すると安心です。
- ウェットティッシュ: ベンチで軽食をとるときや、ジェラートを食べる時などに便利です。
知っておきたい庭園のルールとマナー
すべての人が気持ちよく過ごせるよう、基本的なルールとマナーを守りましょう。
- 入場料: 先述の通り、入場は無料です。
- 開園・閉園時間: 季節によって変わるため、公式サイトなどで事前に確認してください。閉園時間が近づくと、警備員が閉門の合図を行います。
- ゴミについて: ゴミは必ず指定のゴミ箱に捨てるか、設置がない場合は持ち帰りましょう。美しい景観を保つための基本的なマナーです。
- 植物の保護: 園内の植物や花を折ったり持ち帰ったりすることは厳禁です。美しい自然は目で楽しみましょう。
- 火気厳禁: 公園内でのバーベキューや指定場所以外での喫煙は禁止されています。
- ペットの同伴: 犬の散歩は可能ですが、必ずリードを着用し、フンの後始末は飼い主の責任で行いましょう。
- 服装: 特に厳しい服装規定はありません。Tシャツやショートパンツといったカジュアルな服装で問題ありませんが、散策を快適に楽しむために動きやすい服装をおすすめします。
これらのルールは特別なものではなく、公共の場所を利用するうえでの基本的なエチケットです。美しい庭園を未来へと残していくために、一人ひとりの心がけがとても重要です。
庭園から広がるカターニアの魅力

ベッリーニ庭園の魅力は園内にとどまらず、その高台から望む景観や周辺地域に広がる文化や食の探訪も、この場所を訪れる大きな楽しみのひとつです。
丘の上からの壮大な眺め – エトナ山とイオニア海
庭園は緩やかな丘の上に整備されているため、高い場所まで登ると、カターニアの街並みとその向こうに広がる壮麗なパノラマを一望できます。北側を見上げると、ヨーロッパ最大の活火山であるエトナ山の迫力ある姿が目に入ります。季節によっては山頂に雪を抱くその姿は、まさに神秘的な美しさを放ちます。噴煙を上げるエトナ山と眼下の緑豊かな庭園との対比は、カターニアに訪れた者だけが味わえる特別な光景です。
東側には、きらめくイオニア海の広がりが見えます。歴史の中で多くの船が行き交ったと想像されるその海は、澄み渡る青と穏やかな波が印象的です。この丘から、ベッリーニやヴェルガも同じ景色を眺めていたかもしれないと思うと、時代を超えた繋がりを感じずにいられません。ここはカターニアの地理と歴史を同時に体感できる、最高の展望スポットなのです。写真を撮るのも良いですが、ベンチに腰かけて風を感じながら、この壮大な景色を心に刻む時間も、旅のかけがえのない思い出になるでしょう。
子どもたちの笑顔あふれる遊び場
ベッリーニ庭園は、地元の子どもたちにとっても大切な遊び場となっています。園内には複数のプレイグラウンド(エリア・ジョーキ / Area Giochi)が用意されており、滑り台やブランコ、シーソーなどの遊具が揃っています。シチリアの明るい太陽のもと、元気に遊ぶ子どもたちの姿は眺めているだけで心がほっこりします。
家族連れでカターニアを訪れた際は、ぜひこのプレイグラウンドを利用してみてください。言葉が通じなくても、子どもたちはすぐに仲良く遊び始めます。旅先でのそんな心温まる交流は、貴重な経験となることでしょう。また、季節や曜日によっては、レトロな趣のメリーゴーラウンドや小さな乗り物が営業していることもあります。観光を楽しむだけでなく、地元の子どもたちと一緒に遊ぶひとときが、お子さんにとっても忘れられない思い出になるはずです。
庭園のキオスクで味わうシチリアの暮らし
歩き疲れたら、園内に点在する「キオスコ(Chiosco)」でひと息つきましょう。キオスコとはイタリアの街角でよく見られる小さな売店で、飲み物や軽食を提供しています。ベッリーニ庭園にあるキオスコはアールヌーボー調の美しい装飾が施されており、それ自体が観覧の価値を持っています。
ぜひ味わっていただきたいのは、シチリア名物のドリンク「セルツ・リモーネ・エ・サーレ(Seltz, limone e sale)」。これは炭酸水(セルツ)に新鮮なレモン果汁とひとつまみの塩を加えた、シンプルながらも驚くほど爽やかな飲み物です。歩き疲れた体に染み入る酸味と塩気が心地よく、最高のリフレッシュになります。また、アーモンドミルク(Latte di mandorla)や季節のフルーツを使ったグラニータもおすすめです。木陰のテーブルに座り冷たい飲み物を片手に行き交う人々を眺める。それこそがシチリアの日常に溶け込む、最高の贅沢と言えるでしょう。
グルメライターが案内する、庭園周辺の食巡り

ベッリーニ庭園で心身をリフレッシュしたあとは、いよいよカターニアの美食の世界へ足を踏み入れましょう。庭園は街の中心に位置しているため、その周辺にはシチリアの味を楽しめる名店が数多く軒を連ねています。食の専門家として、私がおすすめするグルメ探索ルートをご案内します。
熱々をほおばる喜び、カターニアの魂を感じる「アランチーノ」
シチリアを代表するストリートフードといえば、やはり「アランチーノ(Arancino)」です。お米のコロッケと訳されることが多いですが、その魅力は言葉だけでは語り尽くせません。カターニア風のアランチーノは、一般的に円錐形で、これはエトナ山の姿を模していると伝えられています。
ベッリーニ庭園からエトネア通りを少し下った場所には、地元の人々で賑わうバールやロスティッチェリア(惣菜店)が点在しています。ショーケースに並ぶ揚げたてのアランチーノは、まさに黄金色の輝きです。定番は、ミートソースとチーズを詰めた「アル・ラグー(al Ragù)」と、ハムにベシャメルソース、モッツァレラチーズを包んだ「アル・ブッロ(al Burro)」です。カリッとした衣をかみしめれば、中から熱々の具材ととろけるチーズがあふれ出し、その幸福感は言葉にできないほどです。ピスタチオ入りやイカ墨を使ったものなど、店ごとに異なる独自のフレーバーを探す楽しみもあります。庭園散策後の小腹を満たすには、これ以上の選択肢はありません。
デザートの誘惑 — 伝統菓子「カンノーロ」と「カッサータ」
シチリアの食文化を語るうえで、デザートは欠かせません。特に「カンノーロ(Cannolo)」と「カッサータ(Cassata)」は、シチリアの代表的な菓子として知られています。
カンノーロは、筒状に揚げられたサクサクの生地にリコッタチーズのクリームを詰めたお菓子です。大切なのは、注文後にクリームを詰めてくれる店を選ぶこと。作り置きだと生地が湿気てしまい、その本来の食感が失われてしまいます。新鮮なリコッタチーズの優しい甘さと、生地の香ばしさ、さらには両端に添えられたピスタチオやオレンジピールが絶妙なハーモニーを奏でます。
一方、カッサータはリコッタチーズを使ったスポンジケーキをマジパンで覆い、砂糖漬けのフルーツで豪華に飾った見た目にも華やかなケーキです。起源は古く、アラブ支配時代にまでさかのぼるとされています。濃厚な甘さの中にリコッタチーズの爽やかさとフルーツの酸味が調和し、歴史の深さを感じさせる複雑で奥行きのある味わいです。ベッリーニ庭園の近くには老舗のパスティッチェリア(菓子店)もあり、エスプレッソとともにシチリアの甘美な誘惑に身をゆだねてみるのもおすすめです。
地元の人々に愛されるトラットリアで楽しむ「パスタ・アッラ・ノルマ」
カターニアを訪れたなら、ぜひ味わってほしい料理があります。それがこの地発祥のパスタ「パスタ・アッラ・ノルマ(Pasta alla Norma)」です。揚げナスとトマトソース、そして塩漬けリコッタチーズ(リコッタ・サラータ)が織りなす組み合わせが特徴のこのパスタは、作曲家ベッリーニの名作オペラ『ノルマ』にちなんで名づけられました。そのあまりの美味しさに、カターニアの劇作家ニーノ・マルトーリオが「これはまさに『ノルマ』だ!(=最高傑作だ!)」と叫んだという逸話も残っています。
この郷土料理の真髄を味わうなら、観光客向けのレストランではなく、路地裏にある地元の人たちが集うトラットリアが断然おすすめです。ベッリーニ庭園の周辺にも、そんな隠れた名店が点在します。自家製トマトソースの濃厚なコク、ジューシーなナスの旨味、そしてパスタに絶妙な塩気と風味を与えるリコッタ・サラータ。素材の良さが際立つシンプルな一皿は、カターニアの食文化を体現しています。また、シチリア産の赤ワイン、特にエトナ山麓で生まれる「エトナ・ロッソ」との組み合わせは格別です。
旅をスムーズにするための実用情報

安心してベッリーニ庭園やカターニアの街を満喫するために、役立つ実用情報と万が一の際の対処法をまとめました。
ベッリーニ庭園へのアクセスと基本情報
- 名称: ベッリーニ庭園(Villa Bellini / Giardino Bellini)
- 住所: Via Etnea, 292, 95131 Catania CT, イタリア
- アクセス方法:
- カターニア中央駅(Catania Centrale)から徒歩で: 約20〜25分ほど。エトネア通りを北へまっすぐ進みます。
- バス利用の場合: 市内バス(AMT)の多くの路線がエトネア通りを通ります。「Piazza Stesicoro」または「Villa Bellini」バス停での下車が便利です。バスチケットは駅の売店や街角のタバッキ(Tabacchi/タバコ屋の看板が目印)で購入可能です。乗車後は車内の打刻機で必ずチケットに刻印してください。
- 開園時間: 季節によって変わりますが、おおよそ朝6時頃から夜の10時〜11時頃まで開いています。正確な時間はカターニア市交通局(AMT)の公式サイトや現地の案内でご確認ください。(注:市の公式ホームページが最も信頼できますが、交通局のサイトもバス情報と合わせて便利です)
- 入場料金: 無料
トラブルに備えるためのポイント
楽しい旅も、思わぬトラブルが起こることがあります。事前に情報を把握しておくことで、慌てずに対応できます。
- 治安に関して: カターニアは見どころが多い街ですが、南イタリアの他都市と同様、スリや置き引きに注意が必要です。特に混雑した場所では、バッグは前に抱える、貴重品は内ポケットに入れるなどの防犯策をとりましょう。ベッリーニ庭園内は比較的安全ですが、夜間に一人で歩くのは避けるのが賢明です。
- 体調不良時: 旅の疲れや気候によって体調を崩すこともあります。軽度の不調であれば、緑の十字が目印の薬局「ファルマチーア(Farmacia)」で相談し、必要な薬を入手できます。症状が重い場合は、宿泊先のフロントに相談して病院(Ospedale)や観光客向けの医療機関を紹介してもらいましょう。海外旅行保険への加入は必ずおすすめします。
- 道に迷った際: スマートフォンの地図アプリは非常に有用ですが、バッテリー切れの可能性もあります。主要な通りの名称(Via Etneaなど)やランドマーク(ドゥオーモ、ベッリーニ庭園など)を覚えておくと安心です。通りすがりの人に尋ねる場合は、「Scusi(スクーズィ/すみません)」と声をかけ、「Dov’è la Villa Bellini?(ドヴェ・ラ・ヴィッラ・ベッリーニ?/ベッリーニ庭園はどこですか?)」と目的地をはっきり伝えましょう。親切に教えてくれる方が多いです。
- 緊急時の連絡先: 万一、事件や事故に遭遇した場合は、以下の番号へ連絡してください。
- 総合緊急番号: 112(警察、救急、消防すべて対応)
- 警察(カラビニエリ): 112
- 救急車: 118
また、在イタリア日本国大使館の連絡先も事前に控えておくと安心です。
トラブルが起こることなく旅を楽しめるのが一番ですが、備えがあれば安心です。これらの情報を頭の片隅に置いて、より安全にカターニアの旅をお楽しみください。
カターニアの記憶を食卓へ – グルメライター推薦のお土産

旅の終わりには、その土地ならではの香りをお土産として持ち帰りたいものです。世界中の食材に精通する食品商社での経験を活かし、ベッリーニ庭園を散策した後にぜひ探していただきたい、カターニアならではのおすすめのお土産を厳選してご紹介します。
エトナ山の麓が育んだ“緑の宝石”と大地の恵みのワイン
カターニア周辺は、エトナ山の火山性土壌に恵まれた、世界的にも名高い食材の宝庫です。
- ブロンテ産ピスタチオ: エトナ山の麓に位置するブロンテの町は、「緑の金」と称される最高級のピスタチオの産地です。その濃密な風味と鮮やかな緑色は他に類を見ません。ペースト状の「ペスト・ディ・ピスタッキオ」はパスタソースやパンに使えますし、甘いクリーム状の「クレーマ・ディ・ピスタッキオ」はドルチェ好きにはたまらない逸品です。専門店や高品質な食材店でぜひ探してみてください。
- エトナ・ワイン: 火山性の土壌と標高による寒暖差が生み出す、ミネラル豊富でエレガントなワインは、近年ワイン愛好家の間で注目を集めています。地元品種のネレッロ・マスカレーゼから作られる赤ワイン「エトナ・ロッソ」や、カリカンテ種の白ワイン「エトナ・ビアンコ」は、カターニアの食卓の記憶を鮮やかに蘇らせてくれるでしょう。
シチリアの太陽を閉じ込めた伝統工芸品
色彩豊かなシチリア伝統の工芸品は、お部屋を一層明るく彩ります。
- カラタジローネの陶器(ケラミカ): カターニアから少し足を伸ばしたカラタジローネは陶器の名産地で、市内にも美しい陶器を扱うお店が多くあります。鮮やかな絵付けが施されたお皿やタイルのほか、シチリアの象徴である「テスタ・ディ・モーロ(ムーア人の頭)」を模した花瓶や置物は、独特で旅の記念品にぴったりです。
- マヨルカ焼きの小物: 繊細な装飾が魅力のマヨルカ焼き小物も人気があります。トリナクリア(三脚)の紋章やレモン、ウチワサボテンなどシチリアらしいモチーフが特におすすめです。
日々の食卓を豊かに彩る地元産食材
スーパーマーケット(Supermercato)や活気あふれる魚市場(La Pescheria)周辺の食材店を訪れると、まるで宝探しのような楽しみがあります。
- オリーブオイル: シチリア産のオリーブオイルはフルーティーでややスパイシーな味わいが特徴です。小瓶サイズなら持ち帰りも便利です。
- 乾燥トマトとケイパー: 太陽の恵みをぎゅっと凝縮した乾燥トマト(Pomodori secchi)や塩漬けのケイパー(Capperi sotto sale)は、パスタやサラダに加えるだけで、シチリアの風味を手軽に再現できます。
- マグロやイワシの加工品: シチリアは海産物も豊富で、質の良いツナのオリーブオイル漬けやアンチョビの瓶詰めは定番の人気お土産です。
これらの品々は、帰国後も旅の思い出に浸る最高のタイムカプセルとなるでしょう。詳しくはイタリア政府観光局のシチリア紹介ページなども参考にしながら、自分だけのお気に入りをぜひ見つけてみてください。
喧騒と静寂が溶け合う場所 – カターニアの魂が宿る庭園

ベッリーニ庭園を後にするとき、カターニアという街がいっそう深く愛おしい存在に感じられることでしょう。この庭園は単なる美しい緑地ではありません。背後にそびえるエトナ山の圧倒的な存在感と、庭園に流れる穏やかな時の流れ。バロック様式の街の賑わいと、木陰で交わされる静かな会話。そして、偉大な芸術家への誇りと、日々の暮らしを大切にする市民たちの思い。これら対照的な要素すべてをやさしく包み込み、調和させているのが、このベッリーニ庭園なのです。
園内を吹き抜ける風は、遠い昔の貴族たちのささやきや、ベッリーニのオペラの旋律、そして今日この場所を生きる人々の笑い声を運んできます。ここはカターニアの過去と現在が交わり、未来へとつながる場所です。シチリアの太陽のもとで、歴史と自然、文化に触れる豊かなひとときを過ごせるこの庭園は、あなたの旅に忘れがたい一章を添えてくれるでしょう。次にカターニアを訪れるときも、きっと私はまずこの庭園の門をくぐり、あの日と同じように花時計に迎えられるに違いありません。







