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永遠の都の心臓部へ!ローマの市場(メルカート)を巡る、五感が目覚める美食の旅

いつもの私なら、週末のフライトで向かう先は決まってソウル。空港に降り立った瞬間の、あの甘くてスパイシーな空気と、街に溢れるK-POPのビート、そして推しの笑顔を追いかける高揚感。それが私の日常であり、最高のリフレッシュでした。

でも、今回は違う。パスポートに押されたスタンプは、初めてのイタリア。目的地は、永遠の都、ローマ。

きっかけは、本当に些細なこと。推しのアイドルが、ふとインタビューで「もし長期休暇が取れたら、ローマの街をのんびり歩いてみたい。地元の人が行くような市場で、美味しいものをたくさん食べたいな」と話していたこと。その一言が、私の心に小さな火を灯したのです。「推しが見たい景色を、私が先に見に行こう!」なんて、ファンならではの突拍子もない情熱で航空券を予約していました。

正直、ヨーロッパの歴史や芸術にはあまり詳しくないし、イタリア語なんて「チャオ」と「グラッツィエ」くらいしか知らない。でも、旅の目的はハッキリしています。それは「ローマのローカル市場(メルカート)を巡ること」。観光客向けのきらびやかなレストランもいいけれど、私が知りたいのは、この街に暮らす人々のリアルな日常。彼らがどんな食材を買い、どんな会話を交わし、どんなものを食べて笑っているのか。その中心にあるのが、きっと市場のはずだから。

ソウルの広蔵市場(クァンジャンシジャン)や望遠市場(マンウォンシジャン)で、アジュンマ(おばちゃん)たちの活気と美味しい匂いに包まれるのが大好きな私にとって、ローマの市場はどんな景色を見せてくれるのでしょうか。期待と少しの不安を胸に、石畳の道を歩き出します。

この旅で私が巡った、とっておきの市場たち。この記事を読んでいるあなたが、次の旅で「地元っ子気分」を味わえるように、その魅力と歩き方をたっぷりお伝えしますね。

目次

なぜローマで「市場(メルカート)」なのか?

ローマと聞いて多くの人が思い浮かべるのは、コロッセオやトレビの泉、ヴァチカン市国といった壮大な歴史遺産かもしれません。もちろん、それらはローマが誇るべき宝であり、訪れる価値のある素晴らしい場所です。でも、私がこの旅で何よりも心惹かれたのは、人々の生活の匂いが色濃く残る「市場(メルカート)」でした。

市場は、その土地の文化がぎゅっと凝縮された小宇宙。ショーケースに並ぶチーズの種類や、山積みにされた野菜の色つや、飛び交う威勢のいい声。そのすべてが、ローマという街の食文化、ひいては生活文化そのものを物語っています。教科書には載っていない、リアルなローマがそこにはありました。

私が大好きなソウルの市場も、いつも活気に満ちています。トッポッキやキンパ、ピンデトッ(緑豆チヂミ)の美味しそうな匂いが漂い、人々の熱気が渦巻いている。あのエネルギーも最高なのですが、ローマの市場にはまた違った種類の、太陽みたいに陽気なエネルギーが満ちているのを感じました。店主たちは歌うように野菜を売り、お客さんは冗談を言い合いながら買い物をしていく。それは単なる「売る・買う」という行為を超えた、一種のコミュニケーションであり、エンターテイメントなんです。

市場を歩けば、その季節に何が旬なのかが一目でわかります。春にはアーティチョークやそら豆が山と積まれ、夏には真っ赤なトマトや甘い香りのメロンが主役になる。秋はポルチーニ茸、冬はオレンジやブロッコリー。スーパーマーケットの均一化された棚とは違う、大地のサイクルを肌で感じられる場所。それは、私たちの食生活がいかに自然と密接に結びついているかを思い出させてくれる、貴重な体験でした。

そして何より、市場は最高のグルメスポット!レストランで食べる洗練された一皿も素敵ですが、市場のフードスタンドで食べる、できたてのストリートフードには敵いません。地元の食材を知り尽くしたマンマたちが作る、シンプルで力強い味わい。それは、ローマの家庭の味そのもの。気取らない美味しさが、旅で少し疲れた胃と心を優しく満たしてくれます。

壮大な遺跡巡りの合間に、少しだけルートを変えて市場に立ち寄ってみる。それだけで、あなたのローマ旅行はぐっと深みを増し、忘れられない思い出が生まれるはず。さあ、ここからは私が実際に巡った、個性的で魅力あふれる4つの市場を、その熱気とともにお届けします。

まずはここから!ローマ市場の王道「カンポ・デ・フィオーリ市場」

ローマ市場巡りの旅を始めるなら、まずはここ「カンポ・デ・フィオーリ市場」を訪れないわけにはいきません。その名はイタリア語で「花の広場」。かつてこの場所が美しい花畑だったことに由来するなんて、ロマンティックですよね。ローマの中心部に位置し、アクセスも抜群。観光客にも地元の人にも愛される、まさにローマ市場の王道と呼ぶにふさわしい場所です。

歴史と活気が交差する「花の広場」

朝、ホテルを出て石畳の路地を抜けると、どこからともなく人々の賑やかな声が聞こえてきます。その声に導かれるように広場へ足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできたのは、まるで絵の具のパレットをひっくり返したような、鮮やかな色彩の世界でした。

広場の中央には、火あぶりの刑に処された哲学者ジョルダーノ・ブルーノの像が静かに街を見下ろしています。そんな少しダークな歴史を持つ広場が、今ではローマで最も陽気な場所の一つになっているというのも、この街の奥深さを感じさせます。

テントの下には、色とりどりの野菜や果物が宝石のように並べられています。太陽の光をたっぷり浴びて育った真っ赤なトマト、艶やかな紫色のナス、日本ではあまり見かけないアーティチョークやズッキーニの花。店先にはカラフルな香辛料が美しくディスプレイされ、そのスパイシーな香りが鼻をくすぐります。ドライポルチーニや乾燥トマト、様々な形のパスタが袋詰めになっていて、見ているだけでもワクワクが止まりません。

「ボンジョールノ!」

威勢のいい声に振り向くと、日焼けした顔に満面の笑みを浮かべたおじさんが、カットしたメロンを差し出してくれました。イタリア語はわからなくても、その笑顔だけで心が通じる気がします。一口食べると、驚くほど濃厚な甘みが口いっぱいに広がりました。これぞ、太陽の恵み。こんな風に、店主との何気ないやりとりが楽しめるのも、カンポ・デ・フィオーリの大きな魅力です。

市場の名前の通り、もちろん花屋さんもたくさんあります。色鮮やかなブーケが、市場の活気の中に優しい彩りを添えていて、なんだか心が和みます。もしアパートメントタイプの宿に泊まっているなら、小さな花束を買って部屋に飾るのも素敵ですよね。旅先の日常が、ぐっと豊かになる気がします。

カンポ・デ・フィオーリで味わうべき絶品グルメ

見て歩くだけでも楽しいカンポ・デ・フィオーリですが、ここはやっぱり「食」を楽しまなくちゃ!市場には、その場で味わえる美味しいものが溢れています。

まず試してほしいのが、フレッシュジュース。特にザクロのジュースは、美容に敏感な女性なら見逃せません。韓国の女の子たちも美容のためにザクロをよく摂るけれど、ここのは格別。注文すると、専用の機械でおじさんが目の前でギューッと絞ってくれます。濃厚な甘酸っぱさが体に染み渡って、歩き疲れた体に元気をチャージしてくれるよう。見た目もルビーみたいに綺麗で、写真映えもばっちりです。

そして、ローマの春の味覚といえば「フィオーリ・ディ・ズッカ・フリッティ(Fiori di Zucca Fritti)」。ズッキーニの花のフリットです。花の中にモッツァレラチーズとアンチョビを詰めて揚げた、シンプルながらも絶品の一品。サクッとした衣の中から、とろりとしたチーズとアンチョビの塩気が溢れ出します。これはもう、ビールが欲しくなる味!熱々のうちにハフハフしながら食べるのが最高です。

お土産探しもカンポ・デ・フィオーリの楽しみの一つ。ここでぜひチェックしたいのが、トリュフ製品やバルサミコ酢の専門店です。様々な種類のトリュフ塩、トリュフオイル、トリュフペーストがずらりと並び、試食もさせてくれます。トリュフの芳醇な香りに包まれて、どれにしようか悩む時間もまた至福。小瓶に入ったトリュフ塩は、お土産にもかさばらず、パスタや卵料理にかけるだけで一気に本格的な味になるのでおすすめです。「あ、この香り、推しが料理Vlogで使ってた高級トリュフオイルに似てるかも…!」なんて、ついついファン目線で選んでしまいます。

熟成年数の違うバルサミコ酢も圧巻の品揃え。ヨーグルトやアイスクリームにかけるだけでデザートがワンランクアップする甘いものから、サラダにぴったりのキリッとした酸味のものまで。店員さんに相談すれば、好みに合わせて選んでくれますよ。

市場散策の小さなヒント

カンポ・デ・フィオーリ市場を最大限に楽しむなら、午前中に訪れるのが鉄則です。特に午前10時頃は、地元のマンマたちと観光客で最も活気づく時間帯。その熱気を肌で感じるのが醍醐味です。市場は14時頃には店じまいを始めてしまうので、寝坊は禁物ですよ。

多くの人で賑わう場所なので、スリには十分注意してくださいね。バッグは体の前に抱えるように持つのが基本。これはソウルの人混みでも同じですね。楽しい気分が台無しにならないように、貴重品の管理はしっかりと。

市場で美味しいものをたくさん買い込んだら、すぐ近くのバール(カフェ兼バー)で一休みするのもおすすめです。ローマっ子に倣って、カウンターでエスプレッソをクイッと一杯。あるいは、市場で買ったばかりのフルーツやパンを、カプチーノと一緒に味わうのも贅沢な時間です。広場に面したカフェのテラス席に座れば、市場の賑わいと人々の往来を眺めながら、ゆったりとしたローマの朝を満喫できます。

カンポ・デ・フィオーリは、ローマの市場文化への入り口として最高の場所。歴史と活気、そして美味しいものが詰まったこの広場で、あなたのローマの旅をスタートさせてみてはいかがでしょうか。

ローマっ子の胃袋を掴む!食の宝庫「テスタッチョ市場」

カンポ・デ・フィオーリが王道の観光地だとしたら、次にご紹介する「テスタッチョ市場」は、よりディープで、食に貪欲なローマっ子たちの聖地。ここは、単なる食材売り場ではありません。ローマの最先端ストリートフードが集結する、食のテーマパークなのです!

モダンと伝統が融合した新世代メルカート

テスタッチョ地区は、古代ローマ時代にテヴェレ川を通じて運ばれてきた壺(アンフォラ)の破片が積み重なってできた丘があることから、その名が付けられました。かつてはヨーロッパ最大級の屠殺場があった場所で、今でもその名残から、美味しいモツ料理(内臓料理)のレストランが多いことで知られています。

そんな歴史ある労働者の街に、2012年に誕生したのが、新「テスタッチョ市場」です。古い市場から移転し、明るくモダンな建物に生まれ変わりました。ガラス張りの天井から太陽の光がたっぷりと降り注ぎ、広々とした通路はベビーカーでも楽々通れるほど。カンポ・デ・フィオーリの雑多な魅力とは対照的な、クリーンで機能的な空間です。

でも、モダンなのは見た目だけ。市場に一歩足を踏み入れれば、そこには昔ながらの八百屋や肉屋、魚屋がずらりと軒を連ね、威勢のいい声が響き渡っています。新鮮な食材を売る伝統的なお店と、革新的なアイデアが光るフードスタンドが見事に共存している。この新旧の融合こそが、テスタッチョ市場の最大の魅力かもしれません。

ここは観光客の姿もまばらで、聞こえてくるのはほとんどがイタリア語。カートを押しながら店主と談笑するおじいさん、今日の夕食の献立を相談するマンマ。まさに、ローマの日常がここにあります。「推しがもしプライベートでローマに来たら、きっとこういうローカルな場所を歩きたがるだろうな…」なんて妄想しながら、私もローマっ子に混じって市場探検をスタートしました。

ここでしか食べられない!テスタッチョのストリートフード天国

テスタッチョ市場が「食の宝庫」と呼ばれる所以は、その圧倒的なフードスタンドのクオリティの高さにあります。ランチタイムになると、周辺で働く人たちが続々と集まってきて、あっという間に行列ができる人気店も。ここでは、私が実際に食べて心を鷲掴みにされた、必食のグルメをご紹介します!

Mordi e Vai の絶品パニーノ

テスタッチョ市場に来たら、絶対に外せないのがこの「Mordi e Vai(モルディ・エ・ヴァイ)」。ローマの伝統的な煮込み料理を、焼きたてのパンに挟んでくれるパニーノの専門店です。ショーケースには、大鍋でコトコト煮込まれたお肉料理がずらり。もう、このビジュアルだけで食欲が爆発しそう!

一番人気は「Allesso di Scottona(アレッソ・ディ・スコットーナ)」。長時間煮込まれてホロホロになった牛肉のパニーノです。注文すると、店主のおじさんが煮込み鍋から熱々の牛肉を取り出し、手際よくパンに挟んでくれます。お好みでチコリア(苦味のある野菜)をトッピングするのがローマ流。

一口かぶりつくと、まずパンの美味しさに驚きます。外はカリッと、中はもちもち。そして、じっくり煮込まれた牛肉が、口の中でとろけるようにほどけていく…。肉の旨みが凝縮された、滋味深い味わい。余計なソースや味付けは一切なく、良質な肉とパン、そしてシンプルな塩味だけで勝負している潔さ。これぞローマのマンマの味!そのあまりの美味しさに、思わず天を仰いでしまいました。「推しに食べさせたい…!これを食べたら、きっと感動してくれるはず!」と、謎の使命感に燃えてしまうほど。トリッパ(牛の胃袋)のトマト煮込みサンドも絶品なので、胃袋に余裕があればぜひ。

CasaManco の宝石箱みたいな切り売りピザ

次なるお目当ては、行列必至の切り売りピザ(Pizza al Taglio)の店、「CasaManco(カーザ・マンコ)」。ここのピザは、もはや芸術作品です。カウンターには、色とりどりの具材が乗った四角いピザが何種類も並んでいて、まるで宝石箱のよう。

定番のマルゲリータから、カボチャのクリームとパンチェッタ、イチジクと生ハムといった、独創的で季節感あふれる組み合わせまで。どれも美味しそうで、選ぶのに本気で悩みます。優柔不断な私は、カウンターの前で10分くらいウロウロしてしまいました。

ここのピザの魅力は、見た目の美しさだけではありません。生地がとにかく素晴らしい。外はサクッとクリスピーなのに、中は驚くほどフワフワ、もちもち。この食感のコントラストがたまりません。私は、ズッキーニの花とアンチョビのピザ、そしてポテトとローズマリーのピザをチョイス。素材の味が生きた優しい味わいで、何枚でも食べられてしまいそう。

「このピザ、見た目もすごく可愛いから、絶対にインスタにアップしなきゃ!」と、夢中でシャッターを切りました。最近の韓国カフェも、味はもちろん見た目のおしゃれさがすごく重要視されているけれど、CasaMancoのピザはまさにそれ。美味しさと美しさを両立した、新世代のピザでした。

Le Mani in Pasta のフレッシュパスタ

お腹がいっぱいになったら、お土産探しも忘れずに。テスタッチョ市場には、素晴らしい生パスタのお店「Le Mani in Pasta(レ・マーニ・イン・パスタ)」があります。

ショーケースには、ラビオリ、トルテッリーニ、フェットチーネなど、様々な種類の生パスタがずらり。色鮮やかなほうれん草やトマトを練り込んだパスタもあって、見ているだけで幸せな気分になります。パスタソースも手作りのものが何種類も売られているので、パスタとソースをセットで買えば、ホテルやアパートメントのキッチンで簡単に本格的なローマの味を再現できます。

乾燥パスタとは全く違う、もちもちとした食感と小麦の豊かな香り。これを一度味わってしまったら、もう後戻りはできません。私も、カチョ・エ・ペペ(チーズと胡椒のソース)と、シンプルな卵のタリオリーニをお土産に購入。日本に帰ってから、ローマの思い出に浸りながら食べるのが楽しみです。

テスタッチョ市場を120%楽しむための作戦会議

テスタッチョ市場を訪れるなら、平日のランチタイムがおすすめです。活気があって、ローマっ子たちのエネルギーを一番感じられる時間帯。ただし、人気店はかなり混み合うので、12時前の少し早い時間に行くか、13時半過ぎの遅めの時間に行くと、少し落ち着いて楽しめるかもしれません。

ここでの楽しみ方は、ズバリ「はしご食い」。中央にテーブルと椅子が設置されたフードコートのようなスペースがあるので、色々なお店で少しずつ買ってきて、仲間とシェアするのが最高です。一人旅でも、パニーノとピザ、そしてワインを少し、なんていう贅沢なランチが気軽に楽しめます。

市場を堪能した後は、ぜひテスタッチョ地区を散策してみてください。かつての屠殺場をリノベーションした現代アートの美術館があったり、壁に描かれたクールなストリートアートを探して歩いたりするのも楽しいですよ。夜には、美味しいトラットリア(大衆食堂)がオープンし、地元の若者たちで賑わいます。

テスタッチョ市場は、胃袋でローマを感じる場所。伝統の味と新しい感性が交差するこの場所で、本物のローマの食文化にどっぷりと浸かってみてください。

個性派が集うおしゃれエリアの心臓部「トラステヴェレ市場」

ローマの旅で、もし「おしゃれで絵になる街並みを散策したい」と思ったら、迷わず向かうべきなのがトラステヴェレ地区です。テヴェレ川の西岸に位置するこのエリアは、石畳の細い路地、ツタが絡まるオレンジ色の壁、窓辺に飾られたゼラニウムの鉢植え…と、歩いているだけできゅんとする風景が広がっています。

そんな、まるでおとぎ話の世界に迷い込んだような地区の心臓部にあるのが、「トラステヴェレ市場(サン・コジマート市場)」です。

サン・コジマート広場の小さな宝石

トラステヴェレ市場は、サン・コジマート広場(Piazza di San Cosimato)で毎朝開かれる、比較的小規模な青空市場です。カンポ・デ・フィオーリやテスタッチョのような大きな建物はなく、広場にいくつものテントが並ぶ、とてもアットホームな雰囲気。

その規模の小ささゆえに、観光客の姿はぐっと少なくなります。買い物客のほとんどは、近所に住むおじいちゃんやおばあちゃん、ベビーカーを押した若いカップルといった地元の人々。店主たちも、客の顔と名前を覚えていて、「チャオ、マリア!今日のトマトは最高だよ!」なんていう会話が日常的に交わされています。その光景を見ているだけで、なんだか心が温かくなるのを感じました。

まるで、長年通い慣れたお店のように、自然に会話が生まれる場所。ソウルにも、常連さんで賑わう昔ながらの食堂がたくさんあるけれど、それに通じる温かさがここにはありました。言葉が通じなくても、ジェスチャーと笑顔で「これが欲しい」と伝えれば、お店の人は親切に応対してくれます。大規模な市場にはない、この人と人との距離の近さこそが、トラステヴェレ市場の一番の魅力です。

広場の周りには子供たちの遊具もあって、学校が始まる前の時間には、元気に走り回る子供たちの声が響き渡ります。市場の活気と子供たちの笑い声が混じり合う、平和で穏やかな朝の風景。ローマの喧騒から少し離れて、ゆったりとした時間を過ごしたいときにぴったりの場所です。

丁寧な暮らしを感じる、こだわりの逸品たち

トラステヴェレ市場は小さいながらも、品揃えは侮れません。むしろ、おしゃれな地区柄を反映してか、質の高い、こだわりの食材を扱うお店が多い印象です。

特に目を引いたのは、新鮮な魚介類を扱うお店。氷の上にキラキラと輝く魚やエビ、ムール貝が並び、潮の香りが漂ってきます。店主が手際よく魚をさばく様子は、見ていて飽きません。アパートメントタイプの宿に泊まっているなら、ここで新鮮な魚介を買って、白ワイン蒸しやアクアパッツァを作るのも最高の贅沢ですよね。

八百屋さんに並ぶ野菜も、どこか瑞々しくて力強い。オーガニック(イタリア語ではBiologico/ビオロジコ)の野菜を専門に扱うスタンドもあり、健康や食の安全への意識の高さを感じさせます。「素材そのものが持つ力を大切にする」という考え方は、私が愛用している韓国の自然派コスメにも通じるものがあるな、なんて思ったり。

チーズ専門店の品揃えも素晴らしく、ペコリーノ・ロマーノやパルミジャーノ・レッジャーノはもちろん、作りたてのフレッシュなリコッタチーズや、珍しい地方のチーズまで、様々な種類が並びます。どれがいいか迷ったら、お店の人におすすめを聞いてみましょう。試食させてくれることも多いので、自分の好みにぴったりのチーズを見つけることができます。

市場には、日用雑貨や洋服を売るスタンドも少しだけ出ています。掘り出し物のキッチンクロスや、着心地の良さそうなリネンのシャツなど、思わぬお宝に出会えるかもしれません。宝探しのような気分で、ゆっくりと見て回るのが楽しいですよ。

トラステヴェレ散策とセットで楽しむ

トラステヴェレ市場の真価は、この地区全体の散策とセットで楽しむことで、さらに輝きを増します。午前中に市場でローマの日常に触れた後は、ぜひ時間をかけてこの美しいエリアを歩き回ってみてください。

細い路地裏には、個性的な個人経営のブティックや、手作りのアクセサリーを売る小さなお店、アンティークショップなどが隠れるように点在しています。まるで迷路のような道を、気の向くままに歩く。角を曲がるたびに新しい発見があって、探検気分を味わえます。ソウルの延南洞(ヨンナムドン)や聖水洞(ソンスドン)の路地裏カフェを探して歩く時の、あのワクワク感に似ています。

歩き疲れたら、美味しいジェラート屋さんで休憩。トラステヴェレには評判のジェラテリアがいくつもあるので、食べ比べも楽しいですね。ピスタチオやヘーゼルナッツといった定番のフレーバーはもちろん、季節のフルーツを使ったフレッシュなソルベも絶品です。

そして、トラステヴェレが最も魅力的な顔を見せるのが、夕暮れ時。太陽が傾き始め、石畳の道がオレンジ色に染まる頃、街中のバールやレストランが「アペリティーボ」の準備を始めます。アペリティーボとは、夕食前に軽くお酒とおつまみを楽しむイタリアの素敵な習慣。一杯のドリンクを頼むと、ビュッフェ形式で並べられたおつまみが食べ放題になるお店も多く、お得に美味しいものを楽しめます。

市場で見た活気ある朝の顔とは違う、ロマンティックで賑やかな夜の顔。トラステヴェレは、一日を通して様々な表情を見せてくれる、本当に魅力的な地区です。市場で感じた「暮らし」の空気と、散策で見つけた「美しさ」。その両方を味わうことで、あなたのローマの思い出は、より一層カラフルで豊かなものになるはずです。

ローマ最大級!プロの料理人も通う「トリオンファーレ市場」

さて、これまでご紹介してきた市場が、それぞれ個性的な魅力を持つ「セレクトショップ」だとすれば、これからご案内する「トリオンファーレ市場」は、まさに食の「デパートメントストア」。ローマ最大級の屋内市場であり、プロの料理人たちも仕入れに訪れるという、食のプロフェッショナルたちが集う場所です。

ヴァチカン市国の隣に広がる食の迷宮

トリオンファーレ市場は、なんとヴァチカン市国の城壁のすぐそばに位置しています。サン・ピエトロ大聖堂の荘厳なクーポラを眺めながら、歩いて数分の場所にある巨大な建物。そのギャップがまた、ローマという街の面白さでもあります。

一歩中に足を踏み入れると、その規模の大きさに圧倒されるはず。どこまでも続くかのような通路の両脇に、200以上もの店(ボックス)がぎっしりと並んでいます。その熱気と物量!思わず「うわ、広い…!」と声が漏れてしまいました。ソウルで言えば、鷺梁津(ノリャンジン)水産市場のような、あの圧倒的なスケール感を彷彿とさせます。

ここは、観光客向けの華やかさとは無縁の世界。買い物客はほぼ100%地元の人々で、聞こえてくるのは威勢のいいイタリア語のやりとりのみ。少し気圧されてしまうかもしれませんが、これこそが最もリアルなローマの姿。ディープな食文化体験を求めるなら、ここは絶対に外せません。

市場内は、店ごとに番号が振られています。最初は戸惑うかもしれませんが、この番号が目印になるので、お目当てのお店を探したり、後で戻ってきたりするのに意外と便利。肉、魚、野菜、チーズ、パン、パスタ…と、食材のカテゴリーごとにある程度エリアが分かれているので、まずは全体をぐるっと一周して、市場の地図を頭に入れるのがおすすめです。

食材のワンダーランドを探検する

トリオンファーレ市場は、まさに「食材のワンダーランド」。ありとあらゆるものが、信じられないほどの種類と量で売られています。見ているだけでも、まるで食の博物館を探検しているような気分になります。

特に圧巻なのが、野菜売り場です。例えば、ローマ料理に欠かせないアーティチョーク。ここでは、ただ山積みにされているだけではありません。アーティチョークだけを専門に扱う店があり、産地や品種の違うものが何種類も並んでいます。店先では、おばちゃんたちが猛烈なスピードでアーティチョークの硬い葉を剥き、調理しやすいように下処理をしています。その見事な手さばきは、もはや職人芸。

肉屋のショーケースも壮観です。牛肉、豚肉、鶏肉はもちろん、ウサギや仔羊、様々な種類のサルシッチャ(生ソーセージ)、プロシュット(生ハム)やサラミ。部位の種類も豊富で、「このお肉はどんな料理に使うんだろう?」と想像力が掻き立てられます。

そして、イタリアの食卓に欠かせないチーズの種類の多さにも目を見張ります。巨大なパルミジャーノ・レッジャーノの塊がゴロンと置かれ、フレッシュなモッツァレラは水に浮かべられて売られています。青カビ、白カビ、ハード、ソフト…匂いも見た目も様々なチーズが並ぶ光景は、チーズ好きにはたまらないはず。

この市場の面白いところは、専門店性の高さです。例えば、「卵専門店」では、鶏だけでなく、ウズラやアヒルの卵まで売られています。また、「ハチミツ専門店」や「キノコ専門店」、「豆専門店」など、一つの食材を深く掘り下げたお店がたくさん。それぞれの店主が、自分の扱う商品に絶対的な誇りと愛情を持っているのが伝わってきます。

言葉がわからなくても、臆することはありません。気になるものがあれば、指を差して「クエロ・クエ(これください)」と笑顔で言ってみましょう。陽気な店主たちは、身振り手振りを交えて一生懸命説明してくれたり、「ほら、味見してみな!」と気前よく試食させてくれたりします。そんな温かいコミュニケーションも、トリオンファーレ市場の醍醐味の一つです。

トリオンファーレ市場攻略の心得

広大なトリオンファーレ市場を効率よく楽しむためには、ちょっとした心得が必要です。

まず、あまりにも広くてお店の数が多いので、もし目的の食材があるなら、事前にどのあたりにあるのか見当をつけておくと良いでしょう。でも、私のおすすめは、あえて目的を決めずに「探検」を楽しむこと。思いがけない発見や出会いが、きっとあなたを待っています。

訪れる時間帯は、やはり活気のある午前中がベスト。プロの料理人たちは早朝に仕入れを済ませてしまうので、少し落ち着いた午前9時から11時くらいが、一般客には見て回りやすいかもしれません。

そして、この市場を訪れたなら、ぜひセットで立ち寄ってほしいのが、すぐ近くにある伝説的なピザ屋「Pizzarium Bonci(ピッツァリウム・ボンチ)」です。天才ピザ職人ガブリエーレ・ボンチ氏のお店で、世界中から食通が訪れるという超人気店。トリオンファーレ市場で仕入れたであろう、新鮮で独創的な具材が乗った切り売りピザは、まさに絶品。市場でローマの食の奥深さに触れた後でここのピザを食べると、その感動もひとしおです。

トリオンファーレ市場は、決してアクセスが良い場所ではありませんし、観光客向けの親切な案内もありません。でも、だからこそ、ここには本物のローマがあります。食への尽きることのない情熱と、人々の力強い生活のエネルギー。その渦の中に身を置く体験は、どんな有名な観光地よりも、あなたの心に深く刻まれる思い出となるでしょう。

ローマの市場巡りで感じた、旅のあたらしいカタチ

コロッセオの壮大さに息をのみ、トレビの泉の美しさに心を奪われる。それも素晴らしいローマの旅。でも、私がこの街で本当に恋に落ちたのは、太陽の匂いがするトマトを売るおじさんの笑顔であり、市場の喧騒の中で響き渡るマンマたちの力強い声であり、焼きたてのパニーノから立ちのぼる湯気の温かさでした。

市場(メルカート)を巡る旅は、私に「観光」ではない、「暮らし」の視点を教えてくれました。ショーケースに並ぶ食材は、ただの「商品」ではありません。その一つひとつに、生産者の想いがあり、旬という季節の物語があり、そしてそれを囲む家族の食卓があります。市場を歩くことは、その土地の文化の根っこに、そっと触れるような行為なのだと感じました。

いつも私が追いかけているソウルでの推し活。それは、ただコンサート会場に行ったり、事務所の前に行ったりするだけではありません。推しが食べたと言っていたチキン屋さんに行ってみたり、彼らが練習生時代に通ったであろう路地を歩いてみたり。そうやって、彼らが見ている景色や、吸っている空気を少しでも共有したいと思う。その感覚と、ローマの市場を巡る感覚は、どこか似ているのかもしれません。

憧れのスターの日常を想像するように、この街に暮らす名もなき人々の日常に、ほんの少しだけお邪魔させてもらう。そのささやかな体験が、旅を何倍も豊かで、愛おしいものにしてくれるのです。

カンポ・デ・フィオーリの陽気な活気、テスタッチョの食への探求心、トラステヴェレの穏やかな日常、そしてトリオンファーレの圧倒的なプロ意識。4つの市場はそれぞれ違う顔を持ちながら、どれもが「生きる」ことの喜びに満ち溢れていました。

この記事を読んでくれたあなたが、次の旅の計画を立てるとき。ガイドブックに載っている有名観光地のリストに、ぜひその街の「市場」を一つ、加えてみてください。きっとそこには、あなたの五感を呼び覚まし、旅の思い出を忘れられないものにする、素敵な出会いが待っているはずです。

あなたの次の旅が、市場という最高のステージで、美味しくて、温かくて、心躍る物語を紡ぎますように。チャオ!

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この記事を書いたトラベルライター

K-POPオタク歴10年の会社員。月イチで韓国に渡り、推しのMVロケ地や最新カフェを巡ってます!ソウルの裏スポットからおすすめコスメまで、全力で紹介中。

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