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    太陽と騎士団の島、ロドスへ。エーゲ海に輝く宝石を巡る究極の旅ガイド

    紺碧のエーゲ海に浮かぶ、エメラルドのような島、ロドス。その名は、ギリシャ神話の太陽神ヘリオスが愛したニンフの名に由来すると言われています。年間300日以上が晴天という太陽の祝福を受け、古代の遺跡、中世の騎士団が築いた堅牢な城壁、そして息をのむほど美しいビーチが共存するこの島は、訪れる者すべてを魅了する魔法の力を持っています。

    迷宮のような旧市街の石畳を歩けば、騎士たちの蹄の音が聞こえてくるかのよう。丘の上のアクロポリスに立てば、遥か昔の神々の息吹を感じるでしょう。そして、透明な海に身を委ねれば、日々の喧騒などエーゲ海の彼方へと消え去ってしまいます。

    この記事は、単なる観光ガイドではありません。ロドス島が持つ幾重にも重なった歴史の層を一枚一枚めくり、その魂に触れるための招待状です。さあ、時を超え、神話と歴史が交差する光の島へ、忘れられない旅に出かけましょう。

    目次

    ロドス島とは? – 太陽神ヘリオスに愛された島

    エーゲ海の南東部、トルコ沿岸からわずか18キロメートルの位置に浮かぶロドス島。ドデカニサ諸島最大のこの島は、ヨーロッパ、アジア、アフリカの三大陸を結ぶ十字路として、古来より文明の交差点であり続けてきました。その戦略的な重要性から、歴史の荒波に何度も揉まれ、多様な文化が刻み込まれてきたのです。

    神話が息づく太陽の島

    ロドス島の物語は、神々の時代にまで遡ります。大神ゼウスが世界を神々に分け与えた時、太陽神ヘリオスは天で世界を照らす役目をしていたため、その場に居合わせることができませんでした。分け前にあずかれなかったヘリオスに対し、ゼウスは「明日、海から最初に現れる土地をお前に与えよう」と約束します。翌朝、ヘリオスが東の空から昇ると、エーゲ海の底からバラ色に輝く美しい島が姿を現しました。それがロドス島だったのです。ヘリオスはこの島に深く心を奪われ、海のニンフ、ロドスと結ばれました。島の名は、この愛するニンフの名にちなんで付けられたと伝えられています。

    この神話は、単なるおとぎ話ではありません。ロドス島がどれほど太陽に愛されているかを象徴しています。年間を通じて降り注ぐ眩い光は、オリーブの木を銀色に輝かせ、ブーゲンビリアの花を燃えるように咲かせ、海を宝石のようにきらめかせます。この光こそが、ロドスの生命力の源泉なのです。

    歴史の地層を巡る旅

    ロドス島の魅力は、その歴史の重層性にあります。一つの島を旅するだけで、まるでヨーロッパ史の教科書を何冊も読み解くような体験ができるのです。

    古代ギリシャ・ローマ時代

    紀元前5世紀、ロドス島にはリンドス、イアリソス、カミロスという強力な3つの都市国家(ポリス)がありました。これらが連合し、紀元前408年に島の北端にロドス市を建設。瞬く間に地中海貿易の拠点として繁栄を極めます。この時代、港の入り口には世界の七不思議の一つに数えられる「ロドス島の巨像」が建造されたとされています。高さ30メートルを超えるヘリオス神のブロンズ像は、島の栄華の象徴でしたが、残念ながら地震によって崩壊し、今ではその姿を見ることはできません。しかし、その伝説は今なお、人々の想像力をかき立てます。

    その後、ローマ帝国の支配下に入っても、ロド-スは文化と学問の中心地としてその地位を保ち続けました。カエサルやキケロといったローマの偉人たちも、この地で学んだと言われています。

    聖ヨハネ騎士団の時代

    ロドス島の歴史を語る上で最も重要なのが、1309年から1522年までの213年間にわたる聖ヨハネ騎士団の統治時代です。聖地エルサレムを追われた騎士団は、ロドス島を新たな本拠地と定め、イスラム勢力に対するキリスト教世界の防波堤として、島全体を巨大な要塞へと変貌させました。

    今日、私たちが目にする荘厳な旧市街の城壁や宮殿、騎士団通りなどは、すべてこの時代に築かれたものです。彼らはラングと呼ばれる出身言語別の部隊(フランス、プロヴァンス、オーヴェルニュ、アラゴン、イタリア、ドイツ、イングランド)に分かれ、それぞれが担当区域の防衛を担っていました。旧市街を歩くことは、まさにこの騎士たちの歴史の舞台を歩くことに他なりません。

    オスマン帝国とイタリア統治時代

    1522年、スレイマン1世率いるオスマン帝国軍の猛攻の末、騎士団はマルタ島へ退去。ロドスはその後約400年間、オスマン帝国の支配下に置かれます。この時代に、スレイマン・モスクやトルコ式浴場(ハマム)が建設され、旧市街にはイスラム文化の彩りが加わりました。ギリシャ人住民は城壁の外へ追いやられ、城内はトルコ人街(ホラ)として発展。この文化の融合と分離が、今日の旧市街の複雑で魅力的な街並みを形成しています。

    20世紀に入り、伊土戦争の結果、ロドスはイタリア領となります。イタリアは古代ローマ帝国の栄光を再現するかのように、大規模なインフラ整備や遺跡の発掘、そして騎士団時代の建物の修復・再建を行いました。騎士団長の宮殿が現在の壮麗な姿を取り戻したのも、このイタリア統治時代のことです。建築様式にファシズム時代の影響が見られるのも、この島の数奇な歴史を物語っています。

    第二次世界大戦を経て、1948年、ロドス島はついにギリシャに復帰。神話の時代から幾多の支配者が通り過ぎていったこの島は、ようやく母なる国へと還ったのです。ロドス島を旅することは、この壮大な歴史の地層を、自らの足で歩き、肌で感じることなのです。

    時を越える迷宮 – ロドス旧市街を歩く

    ロドス島の旅は、ユネスコ世界遺産に登録されている旧市街から始まります。ヨーロッパ最大級にして、最も保存状態の良い中世の城塞都市。厚い城壁にぐるりと囲まれたその内部は、まるで時が止まったかのような別世界です。一歩足を踏み入れれば、そこは石畳が張り巡らされた迷宮。曲がりくねった路地の先々で、騎士団の時代、オスマン帝国の時代、そして現代の活気がモザイクのように交錯します。

    旧市街は、大きく分けて北部の騎士団地区(コラキオ)と、南部のトルコ人街・ユダヤ人街(ホラ)に分かれています。かつて騎士たちが暮らし、統治の拠点とした厳格な雰囲気のコラキオと、一般市民の生活の匂いが色濃く残る活気あふれるホラ。この二つのエリアを巡ることで、ロドス旧市街の多層的な魅力を深く理解することができるでしょう。

    騎士団長の宮殿 – 権威と歴史のシンボル

    旧市街の最高地点に、威風堂々とそびえ立つのが「騎士団長の宮殿(Palace of the Grand Master)」です。その姿は、まさにロドスの歴史と権威の象徴。もともとは7世紀にビザンツ帝国の要塞として建てられ、その基礎の上に聖ヨハネ騎士団が総長(グランド・マスター)の公邸兼司令部として、14世紀に堅固な宮殿を築き上げました。

    しかし、その後のオスマン帝国時代、1856年の火薬庫の爆発事故によって宮殿は甚大な被害を受け、廃墟と化してしまいます。現在の壮麗な姿は、20世紀のイタリア統治時代に、ムッソリーニの夏の別荘としても利用する目的で再建されたものです。そのため、中世の要塞建築の重厚さと、イタリアらしい洗練された装飾が見事に融合した、独特の雰囲気を持っています。

    宮殿の内部は、まさに圧巻の一言。広大な中庭を囲むように配置された数々の部屋は、贅を尽くした装飾で彩られています。特に床面を飾るモザイク画は必見です。これらは、近隣のコス島などから移設された古代ギリシャ・ローマ時代のもので、メドゥーサの首やムーサ(女神)たちなど、神話の世界が色鮮やかに描かれています。何千年もの時を超えた芸術品の上を歩くという、なんとも不思議で贅沢な体験ができます。

    また、各部屋には中世の甲冑や家具、東洋の壺などが展示されており、騎士団の暮らしぶりや、当時の国際的な交流の様子を垣間見ることができます。巨大な暖炉、ゴシック様式のアーチ天井、そして窓から差し込む光が作り出す陰影。すべてが、訪れる者を中世の物語の中へと誘います。宮殿の見学には、少なくとも1時間半から2時間は確保することをおすすめします。歴史の重みに浸りながら、ゆっくりと時間をかけて巡りたい場所です。

    騎士団通り – 中世へタイムスリップ

    騎士団長の宮殿から港へと続く、約200メートルの石畳の道。それが「騎士団通り(Street of the Knights / Ippoton)」です。ここは旧市街で最も中世の面影を色濃く残す場所であり、一歩踏み入れるだけで、まるで映画のセットに迷い込んだかのような錯覚に陥ります。

    この通りの両脇には、「イン(Inn)」と呼ばれる騎士団の宿舎兼支部が整然と並んでいます。聖ヨハネ騎士団は、出身地や言語によって7つの「ラング(Tongue)」に分かれていました。フランス、イタリア、スペイン、イングランド、ドイツ、プロヴァンス、オーヴェルニュ。それぞれのラングが独自のインを持ち、騎士たちはここで生活し、訓練に励んでいたのです。

    通りを歩きながら、建物のファサードに刻まれた各国の紋章を探してみてください。フランス・ラングのインはゴシック様式の優雅な装飾が施され、スペイン・ラングのインはアーチ型の窓が印象的です。それぞれの建物の様式の違いから、当時のヨーロッパ各国の建築文化を感じ取ることができます。

    この通りは、不思議なほど静寂に包まれています。商業的な看板や喧騒は一切なく、聞こえるのは自分の足音と、時折吹き抜ける風の音だけ。滑らかにすり減った石畳を踏みしめ、重厚な石造りの建物の壁に触れていると、鎧をまとった騎士たちが馬を駆り、この坂道を駆け上がっていく姿が目に浮かぶようです。昼間の明るい光の下で見るのも素晴らしいですが、夕暮れ時、ガス灯風の街灯が灯り始めると、その雰囲気はさらに幻想的になります。ロドスを訪れたなら、必ずこの通りを、できれば時間帯を変えて二度、三度と歩いてみてください。その度に新しい発見と感動があるはずです。

    スレイマン・モスクとトルコ人街(ホラ) – 異文化の交差点

    騎士団地区の荘厳な雰囲気から一転、南側のホラ地区へ足を踏み入れると、街の空気はがらりと変わります。そこは、オスマン帝国時代の面影が色濃く残る、活気に満ちたエキゾチックな空間です。

    その中心にそびえるのが、ピンク色のドームと天に伸びるミナレット(尖塔)が印象的な「スレイマン・モスク」。1522年にロドス島を征服したスレイマン大帝を記念して建てられた、島で最も重要なモスクです。現在の建物は19世紀に再建されたものですが、オスマン建築の優美な特徴を今に伝えています。礼拝の時間になると、ミナレットからアザーン(礼拝への呼びかけ)が流れ、旧市街にイスラムの響きを添えます。

    モスクの周辺には、迷路のように入り組んだ狭い路地が広がっています。ここがトルコ人街。木製のバルコニーが張り出した家々、小さな中庭から聞こえる人々の話し声、スパイスや革製品の匂い。まるでイスタンブールのバザールに迷い込んだかのような気分になります。古いハマム(トルコ式公衆浴場)や、オスマン帝国時代の図書館なども点在し、探検気分で散策するのが楽しいエリアです。

    このホラ地区の喧騒と、騎士団地区の静寂。この二つの対照的な顔を持つことこそが、ロドス旧市街の最大の魅力と言えるでしょう。異なる文化が時に反発し、時に融合しながら築き上げてきた、他に類を見ないユニークな都市の姿がここにあります。

    ソクラトゥス通りとイポクラトゥス広場 – 喧騒と活気あふれる中心地

    トルコ人街を抜け、さらに南へ進むと、旧市街で最も賑やかなメインストリート「ソクラトゥス通り」に出ます。ここは、観光客向けの土産物店、革製品店、宝飾店、カフェ、レストランが所狭しと軒を連ねる、活気あふれるショッピングストリートです。

    ロドス名産の革サンダルやバッグ、色鮮やかなセラミックの食器、オリーブオイルやハチミツ、天然スポンジなど、お土産探しには事欠きません。店先で陽気な店主と値段交渉をしてみるのも、旅の醍醐味の一つ。通りの喧騒に身を任せ、ウィンドウショッピングをしながらぶらぶら歩くだけでも心が躍ります。

    ソクラトゥス通りを東に下っていくと、旧市街のへそとも言える「イポクラトゥス広場」にたどり着きます。広場の中央には、フクロウの彫刻が施された可愛らしい噴水があり、待ち合わせの場所としていつも多くの人々で賑わっています。広場を囲むようにカフェやジェラート店が並び、テラス席でひと休みするのに最適な場所です。

    夜になると、広場とその周辺はライトアップされ、昼間とはまた違ったロマンチックな雰囲気に包まれます。レストランでディナーを楽しんだり、バーで一杯傾けたりと、夜遅くまで活気が絶えません。騎士の歴史に思いを馳せた後は、この広場で現代のロドスのエネルギーを感じる。そんな新旧の体験ができるのも、旧市街の魅力なのです。

    エーゲ海の絶景を求めて – ロドス島必見のスポット

    ロドス島の魅力は、世界遺産の旧市街だけにとどまりません。島の海岸線をドライブすれば、次から次へと息をのむような絶景が現れます。紺碧の海に映える白い村、古代遺跡が眠る静かな丘、そして幻想的な自然の奇跡。ここでは、旧市街から少し足を延ばしてでも訪れるべき、必見のスポットをご紹介します。

    白い村リンドスとアクロポリス – 天空の聖域

    ロドス旧市街から南へ約50キロ。島の東海岸に、ロドス島で最も美しいと称される村「リンドス」があります。紺碧の海を見下ろす丘の斜面に、砂糖菓子のような真っ白な家々が密集して立ち並ぶ光景は、まさに絵葉書の世界そのもの。車が入れない村の中は、迷路のように入り組んだ細い路地が続き、ブーゲンビリアの鮮やかなピンクが白い壁によく映えます。

    この美しい村を見下ろすように、岩山の上には古代から続く聖地「リンドスのアクロポリス」がそびえ立っています。アクロポリスへは、麓から続く坂道を自分の足で登るか、「リンドス・タクシー」の愛称で親しまれているロバの背に揺られて登ることもできます。

    急な石段を登りきった先で待っているのは、まさに天空の聖域。まず目に入るのは、聖ヨハネ騎士団が築いた堅固な城壁です。古代の聖地を守るように、中世の要塞が取り囲んでいる光景は、ロドスの重層的な歴史を象徴しています。城壁をくぐり、さらに階段を上ると、紀元前4世紀に建てられたドーリア式の列柱が美しい「アテナ・リンディア神殿」の遺跡が現れます。古代の人々が、海の守護神であるアテナに祈りを捧げたこの場所は、今もなお神聖な空気に満ちています。風化した柱の向こうに広がるのは、どこまでも青いエーゲ海。その絶景は、疲れも吹き飛ぶほどの感動を与えてくれます。

    アクロポリスから眼下を見下ろすと、ハートの形にも見える美しい入り江「セント・ポール湾」が望めます。使徒パウロが布教の際に上陸したと伝えられるこの湾は、波が穏やかで透明度も高く、海水浴に人気のスポットです。アクロポリスで歴史に浸った後、この美しいビーチでクールダウンする。これ以上ない贅沢な時間の過ごし方ではないでしょうか。

    カミロス遺跡 – 古代都市の静寂に触れる

    島の西海岸、ロドス市から約30キロの場所に、古代都市「カミロス」の遺跡が静かに広がっています。リンドス、イアリソスと共に古代ロドスを支えた三大ポリスの一つでありながら、他の二つと違って要塞化されず、農業を基盤とした平和な都市だったと言われています。

    カミロス遺跡は、地震によって放棄され、長い間土に埋もれていたため、「ギリシャのポンペイ」とも呼ばれています。松の木々が生い茂る緩やかな丘の斜面に、アゴラ(広場)、神殿、住居跡、公衆浴場、貯水槽などが、都市の設計図がわかるほど良好な状態で残されています。

    遺跡の中を歩いていると、まるで古代の住民たちの暮らしが聞こえてくるようです。人々が集い語らったであろうアゴラ、神々に祈りを捧げた神殿の土台、モザイク床が残る裕福な家の跡。派手さはありませんが、訪れる人はリンドスほど多くなく、静寂の中でゆっくりと古代のロマンに浸ることができます。特に夕暮れ時、西の海に沈む夕日が遺跡をオレンジ色に染め上げる光景は、忘れられない思い出になるでしょう。歴史の喧騒から離れ、穏やかな時の流れを感じたい方に、ぜひ訪れてほしい場所です。

    蝶の谷(ペタルデス) – 幻想的な自然のスペクタクル

    ロドス島の内陸部には、世にも珍しい幻想的な光景が見られる場所があります。それが「蝶の谷(Valley of the Butterflies / Petaloudes)」です。毎年6月下旬から9月上旬にかけての夏の時期、この緑豊かな渓谷には、何百万匹という「カドリマルクワガタ」という種類の蛾が集まってきます。一般に「蝶」と呼ばれていますが、厳密には蛾の一種。しかし、その光景は蝶と呼ぶにふさわしい美しさです。

    谷に一歩足を踏み入れると、ひんやりとした空気に包まれ、小川のせせらぎが心地よく響きます。木陰の道を歩いていくと、木の幹や岩肌が、まるで絨毯のように蝶(蛾)でびっしりと覆われているのに気づくでしょう。彼らはじっと羽を閉じて休んでいるため、一見すると木の模様か樹皮のようにしか見えません。

    しかし、何かの物音に驚いて一斉に飛び立つと、世界は一変します。羽の裏側の鮮やかなオレンジ色が姿を現し、まるでオレンジ色の吹雪が舞っているかのような、幻想的なスペクタクルが繰り広げられるのです。この光景には、誰もが息をのむはずです。

    散策路はよく整備されており、小さな滝や池を眺めながらハイキング気分で楽しめます。ただし、ここに集まる蝶たちは非常にデリケートです。彼らは谷の樹脂の香りに引かれて集まり、夏の間は何も食べずに静かに過ごし、秋に交尾のために飛び立っていきます。大きな音を立てたり、手を叩いたりして故意に蝶を驚かせることは、彼らの生命を縮める行為になるため、絶対にやめましょう。静寂の中で、自然が織りなす奇跡を、敬意をもって鑑賞したいものです。

    アンソニー・クイン湾 – 映画スターが愛した紺碧の入り江

    ロドス島の東海岸、ファリラキの南に、俳優アンソニー・クインの名を冠した美しい入り江があります。ここは、彼が主演した映画『ナバロンの要塞』(1961年)のロケ地となった場所。撮影中にこの入り江の美しさに魅せられたアンソニー・クインが土地を購入しようとしたことから、この名で呼ばれるようになりました(法的な問題で実現はしなかったそうですが)。

    松の緑とごつごつした岩場に囲まれた小さな入り江は、まるでプライベートビーチのような佇まい。そして何より、その海の色が格別です。光の加減によって、エメラルドグリーンからサファイアブルーへと刻々と色を変える水は、信じられないほどの透明度を誇ります。海底の石の一つ一つまでくっきりと見えるほどです。

    ここは、シュノーケリングの絶好のポイント。マスクをつけて水中に顔をつければ、色とりどりの小魚たちがすぐ側を泳いでいく、天然の水族館が広がっています。岩場からのんびりと海を眺めているだけでも、至福の時間を過ごせます。ビーチは小石なので、マリンシューズがあると便利です。夏場は多くの人で賑わいますが、それでも訪れる価値のある、ロドス島屈指の美しさを誇る入り江です。

    ロドス島の美食を味わい尽くす – 旅の醍醐味グルメ探訪

    旅の喜びは、景色や歴史だけでなく、その土地ならではの食にあります。ロドス島は、新鮮な海の幸、太陽の恵みをたっぷり受けた野菜、そして豊かな食文化が根付く美食の宝庫。旧市街のロマンチックなレストランから、港町の気さくなタベルナまで、あなたの胃袋と心を満たす美味しい出会いが待っています。

    伝統的なギリシャ料理とロドス島の郷土料理

    もちろん、ロドス島でもギリシャを代表する定番料理は存分に楽しめます。ナスとひき肉の重ね焼き「ムサカ」、串焼き肉の「スブラキ」、削ぎ切り肉をピタパンで包んだ「ギロピタ」などは、どこで食べても外れのない美味しさです。

    しかし、せっかくロドス島に来たのなら、この島ならではの郷土料理にもぜひ挑戦してみてください。

    • ピタルディア(Pitaroudia): ひよこ豆をすり潰し、ミントや玉ねぎなどを混ぜて揚げた、いわばロドス風のコロッケ。外はカリッと、中はフワフワで、前菜やおつまみにぴったりです。
    • ラカニ(Lakani): ヤギ肉(または牛肉)と粗挽き小麦(または米)を、トマトやハーブと共に土鍋に入れ、パン屋の薪窯で長時間じっくりと煮込んだ料理。肉は驚くほど柔らかく、旨味が凝縮された逸品です。
    • ジガンテス・プラキ(Gigantes Plaki): 白いんげん豆をトマトソースとハーブでオーブン焼きにした、素朴ながらも深い味わいの料理。ベジタリアンにも嬉しい一品です。
    • メレクニ(Melekouni): ロドス島伝統のハチミツとゴマ、スパイスを使ったお菓子。ヌガーに似ていますが、より柔らかく、オレンジピールやナッツの風味が豊かです。結婚式などのお祝い事で配られる縁起の良いお菓子で、お土産にも最適です。

    これらの郷土料理は、島の歴史や風土が生み出した宝物。メニューに見つけたら、ぜひオーダーしてみましょう。

    新鮮なシーフードを堪能する

    四方を海に囲まれたロドス島で、シーフードを食べない手はありません。港の近くにある「プサロタベルナ(魚介専門の食堂)」の店先には、その日に水揚げされたばかりの新鮮な魚介が氷の上に並べられ、客は好きな魚を選んで調理法(グリル、フライなど)を指定することができます。

    • タコのグリル(Grilled Octopus): ギリシャのタベルナの定番。シンプルに炭火で焼かれ、オリーブオイルとレモン、オレガノで味付けされたタコは、香ばしくて歯ごたえも抜群。ウーゾとの相性は最高です。
    • カラマリ(Calamari): イカのリングフライ。サクサクの衣と柔らかいイカの組み合わせは、誰もが大好きな味。レモンをたっぷり絞ってどうぞ。
    • シンミャコ・エビ(Symian Shrimp): ロドス島の隣、シミ島名産の小さなエビを殻ごと素揚げにしたもの。カリカリとした食感と濃厚なエビの旨味が口いっぱいに広がり、一度食べたらやみつきになります。
    • フィッシュスープ(Psarosoupa): 様々な種類の魚のアラから出汁をとった、滋味深いスープ。魚の旨味が溶け込んだスープは、旅の疲れを癒してくれます。

    リンドスのビーチサイドのレストランで、青い海を眺めながら新鮮なシーフードを頬張る。これぞエーゲ海の島旅の醍醐味と言えるでしょう。

    地元のワインとスピリッツ

    ロドス島は、古代から続くワイン造りの歴史を持つ産地でもあります。太陽をたっぷり浴びて育ったブドウから造られるワインは、力強くもフルーティー。特に、アティリ(Athiri)という白ブドウ品種や、マンディラリア(Mandalaria)という赤ブドウ品種は、ロドスを代表する土着品種です。島のワイナリーを訪ねて、テイスティングを楽しむのもおすすめです。

    食事と共に楽しみたいのが、ギリシャを代表するアニス風味の蒸留酒「ウーゾ」。水を入れると白濁するのが特徴で、シーフード料理との相性は抜群です。また、ロドス島やクレタ島でよく飲まれるのが、ブドウの搾りかすから造られる「スマ(Souma)」や「ラキ(Raki)」と呼ばれるアルコール度数の高い蒸留酒。地元の人はこれをストレートでくいっと飲み干しますが、旅行者はゆっくり味わうのが良いでしょう。タベルナで食事をすると、食後酒としてサービスで出してくれることもあります。地元の食文化に触れる良い機会ですので、ぜひ試してみてください。

    おすすめのレストラン&タベルナ

    • 旧市街でロマンチックなディナーを: 騎士団通りの近くや、静かな路地裏には、中庭が美しいレストランが点在しています。「Marco Polo Mansion」や「To Marouli」などは、歴史的な建物を改装した雰囲気抜群の空間で、洗練されたギリシャ料理や地中海料理が楽しめます。
    • リンドスで絶景ランチ: リンドスのアクロポリスの麓には、屋上にテラス席を持つレストランが数多くあります。アクロポリスの絶景を見上げながら、あるいはセント・ポール湾を見下ろしながらの食事は格別です。「Melenos Lindos Restaurant」や「Dionysos Restaurant-Bar」などが有名です。
    • 地元の活気を味わうなら: 旧市街の喧騒から少し離れた場所や、新市街には、地元の常連客で賑わう気さくなタベルナがあります。「Koukos」は24時間営業で、伝統的なロドス料理が味わえる人気の店。また、港の近くのプサロタベルナで、その日の獲れたての魚を味わうのも最高の体験です。

    ロドス島滞在を完璧にするための実用情報

    素晴らしい旅は、良い計画から始まります。ロドス島の魅力を最大限に満喫するために、アクセス方法や島内での移動手段、ベストシーズンなど、知っておくと便利な実用情報をご紹介します。

    ロドス島へのアクセス

    • 飛行機で: ロドス・ディアゴラス国際空港(RHO)があり、ギリシャの首都アテネからは1年を通じて毎日複数の便が運航しています(所要時間約1時間)。また、4月から10月にかけての観光シーズンには、ヨーロッパの主要都市(ロンドン、フランクフルト、パリ、ローマなど)から多くのチャーター便や格安航空会社の直行便が就航するため、ヨーロッパ経由でのアクセスも非常に便利です。
    • フェリーで: アテネのピレウス港からロドス島へは、大型フェリーが運航しています。所要時間は船会社やルートによりますが、13時間から20時間以上かかるため、時間に余裕のある船旅を楽しみたい方向けです。また、サントリーニ島やクレタ島、コス島といった他のエーゲ海の島々や、隣国トルコのマルマリスからもフェリーが結んでいます。島々を巡るホッピング旅行の拠点としても最適です。

    島内の交通手段

    • レンタカー: ロドス島を隅々まで自由に見て回りたいなら、レンタカーが最もおすすめです。旧市街以外の主要な見どころ(リンドス、カミロス、ビーチなど)は島中に点在しているため、車があれば効率的に、そして自分のペースで旅ができます。空港やロドス市内に多くのレンタカー会社があります。国際運転免許証を忘れずに持参しましょう。道は比較的整備されていますが、特に内陸部では道が狭く曲がりくねっている場所もあるので、運転には注意が必要です。
    • バス: ロドス市内を拠点に、島の主要な観光地やビーチへ向かう公共バスのネットワークが発達しています。東海岸行き(リンドス、ファリラキ、アンソニー・クイン湾方面)と西海岸行き(カミロス、空港方面)でバスターミナルが分かれているので注意が必要です。料金も手頃で、観光客にとって便利な足となります。ただし、本数は限られているため、事前に時刻表を確認しておくことが重要です。
    • タクシー: タクシーは空港や市内の主要な場所に待機しており、メーター制で利用できます。特定の場所へ直接行きたい場合や、バスの時間が合わない場合に便利です。

    ベストシーズンと服装

    • ベストシーズン: ロドス島観光のベストシーズンは、気候が穏やかで過ごしやすい春(4月〜6月上旬)と秋(9月〜10月)です。花々が咲き乱れる春、海水がまだ温かい秋は、観光にも海水浴にも最適で、ハイシーズンほどの混雑もありません。
    • ハイシーズン: 7月と8月は、気温が非常に高く、日差しも強烈なハイシーズンです。世界中からバカンス客が訪れ、ビーチやリゾートは大いに賑わいます。海水浴やナイトライフを楽しみたい方には最適ですが、遺跡観光などは暑さ対策が必須です。
    • 服装: 夏はTシャツ、短パン、サンドレスといった軽装で十分ですが、日差し対策として帽子、サングラス、日焼け止めは必需品です。また、教会や修道院を訪れる際は、肩や膝を覆う服装が求められる場合があるため、ストールや羽織るものがあると便利です。朝晩や、内陸部の「蝶の谷」などでは少し肌寒く感じることもあるので、薄手の長袖が一枚あると重宝します。春と秋は、日中は暖かくても朝晩は冷え込むことがあるため、ジャケットやカーディガンなど体温調節できる服装が良いでしょう。歩きやすい靴は、石畳の旧市街や遺跡散策の必須アイテムです。

    宿泊エリアの選び方

    ロドス島には多様な宿泊施設があり、どのエリアに滞在するかで旅のスタイルも変わってきます。

    • ロドス旧市街: 歴史の真ん中で眠りたい方に。中世の建物を改装したブティックホテルやペンションが多く、夜の静かな石畳を散策するなど、没入感のある滞在ができます。ただし、車の乗り入れが制限されるため、荷物が多い場合は少し不便かもしれません。
    • ロドス新市街: 利便性を重視する方に。レストラン、ショップ、バーが集まり、ビーチもすぐそば。交通の便も良く、島内各地へのバスもここから出発します。リゾートホテルから手頃なアパートメントまで、選択肢が豊富です。
    • リンドス: ロマンチックな滞在を求めるカップルや、静かに過ごしたい方に。美しい村の景色と、アクロポリスの絶景を独り占めできます。高級ヴィラやアパートメントが中心で、落ち着いた大人のリゾートです。
    • ファリラキ: ビーチとナイトライフを満喫したい若者やグループに。長い砂浜のビーチにはウォータースポーツ施設が充実し、夜はクラブやバーが賑わいます。大規模なオールインクルーシブホテルが多いのも特徴です。
    • イアリソス/イクシア: ウィンドサーフィンやカイトサーフィンを楽しみたい方に。島の北西部に位置し、常に良い風が吹くことで知られています。ビーチ沿いに多くのリゾートホテルが立ち並びます。

    あなたの旅の目的に合わせて、最高の拠点を選んでください。太陽と歴史が織りなす島、ロドスは、きっとあなたの期待を遥かに超える感動と、忘れられない思い出を与えてくれるはずです。

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    この記事を書いたトラベルライター

    SimVoyage編集部は、世界を旅しながら現地の暮らしや食文化を体感し、スマホひとつで快適に旅する術を研究する旅のプロ集団です。今が旬の情報から穴場スポットまで、読者の「次の一歩」を後押しするリアルで役立つ記事をお届けします。

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