2024年4月1日、ドイツで大麻の所持と栽培を部分的に合法化する新しい法律が施行されました。この歴史的な転換は、ヨーロッパの中心で新たな文化の幕開けを告げるものとして、世界中から大きな注目を集めています。ビールとソーセージの国というイメージが強いドイツですが、これからは「大麻に寛容な国」という新しい顔を持つことになるのかもしれません。しかし、この「合法化」という言葉だけが一人歩きしてしまい、誰もがどこでも自由に大麻を楽しめるようになったわけでは決してないのです。特に、私たちのような旅行者にとっては、知らなかったでは済まされない厳しいルールが数多く存在します。
「ドイツに行けば、アムステルダムのコーヒーショップのように気軽に楽しめるの?」「旅行者でも合法的に入手できるの?」「運転中に気をつけることは?」そんな疑問が次々と浮かんでくるのではないでしょうか。この記事では、元自動車整備士という視点を活かし、世界をレンタカーで旅する僕、翔太が、ドイツの新しい大麻事情を徹底的に掘り下げます。法律の背景から、旅行者が絶対に知っておくべき具体的なルール、合法的な入手方法の現状、そして万が一のトラブル回避術まで、この記事を読めばすべてがわかるように、詳細に解説していきます。さあ、新しいドイツの扉を開く準備はいいですか?まずは、この変革の中心地、首都ベルリンの地図を眺めながら、旅の計画を練ってみましょう。
また、ドイツでは日曜日に多くの店舗が閉まるなど、旅行者が知っておくべき独自の習慣もあり、日曜日の過ごし方に関する詳細なガイドも合わせて確認しておくと安心です。
ドイツ大麻合法化の背景と概要

なぜ今、ドイツは大きな一歩を踏み出したのでしょうか。その背景には、単なる嗜好品への寛容さだけでなく、複雑で現実的な要因が絡み合っています。この法律の全体像を理解することが、適切なルールの遵守において最初の重要なステップとなるのです。
なぜ今、合法化されたのか?
ドイツにおける大麻合法化の議論は長い時間をかけて展開されてきました。今回の法改正には主に3つの目的があるとされています。
まず第一に、ブラックマーケットの一掃です。これまでの禁止政策では、大麻の取引は完全に犯罪組織に委ねられていました。その結果、品質の保証されない危険な製品が市場に出回り、消費者の健康に深刻なリスクがもたらされるのみならず、犯罪組織の資金源になる事態が続いていました。合法化して管理された流通経路を確立することで、闇市場の勢力を弱め、消費者を守ろうという狙いがあります。安全で品質の管理された大麻が入手可能な環境づくりは、公衆衛生の観点からも非常に重要視されているのです。
次に、司法・警察の負担軽減が挙げられます。これまでは、大麻の所持や使用に関わる軽微な事件に、多くの警察官や検察官、裁判官のリソースが割かれてきました。これらのリソースを、より深刻な犯罪への捜査に振り向けるべきだという意見が強まっていました。合法化によって年間数万件にも及ぶ大麻関連の訴訟が不要になると見込まれており、司法全体の効率化が期待されています。
そして三つ目は、若者の保護と予防教育の強化です。一見意外に思われるかもしれませんが、この法律の重要な柱の一つは若者を大麻から守ることにあります。禁止されていること自体が、逆に若者の好奇心を刺激し、闇市場を通じて危険な製品に手を伸ばすきっかけになっていたのです。合法的な枠組みの中で年齢確認を徹底し、品質管理を行い、得られた税収を予防教育やカウンセリングに充てることで、より効果的に若者の保護が可能になるという考えです。これは、「禁止」から「管理」へと方針を切り替えた、現代的なドラッグポリシーへの転換といえるでしょう。
新しい法律「CanG」の基本方針
今回施行された法律は、「CanG(Cannabisgesetz)」と呼ばれています。この法律の基本方針は、「管理された合法化」です。つまり、無制限に自由化するのではなく、厳しい規制の下で成人の使用を認めるものです。
対象となるのは、ドイツに居住する18歳以上の成人に限られています。彼らは個人の消費目的で一定量の大麻を所持し、自宅で栽培することが認められます。ただし、販売の仕組みはオランダのコーヒーショップのような商業モデルとは異なっています。
CanGが導入したのは、「カンナビス・ソーシャル・クラブ(Anbauvereinigungen)」と呼ばれる非営利の会員制栽培クラブです。会員は会費を支払うことで、クラブが栽培した大麻を規定量まで受け取ることができます。この制度により、営利目的の大規模な商業化を防ぎ、コミュニティ内での管理された消費が目指されています。この点が、旅行者にとって大きな壁となっていますが、その詳細は後ほど説明します。
いつから施行された?
この歴史的な法律は2024年4月1日に施行されました。この日以降、18歳以上の成人は公共の場で25グラムまでの乾燥大麻を所持しても処罰されなくなりました。また、ドイツに6か月以上居住している人は、自宅で最大3株の大麻草を栽培することが可能となりました。
しかし、法律は段階的に適用される予定です。大麻の重要な入手手段である「カンナビス・ソーシャル・クラブ」の設立・運営が許可されるのは2024年7月1日からです。そのため、施行日直後からすぐに合法的な大麻が市場に流通し始めるわけではなく、この時間差が施行直後の混乱の一因ともなっています。
さらに将来的には、特定地域で商業販売モデルを試験的に導入する「試験プロジェクト」も計画されていますが、開始時期はまだ未定です。このようにドイツの大麻合法化は、まさに始まったばかりの大規模な社会実験の第一段階であることを理解しておく必要があります。
旅行者が知っておくべき!ドイツ大麻の重要ルール
さて、本題に入ります。私たち旅行者がドイツを訪れる際に絶対に守るべきルールについて、一つずつ具体的に確認していきましょう。軽い気持ちでルールを無視すると、楽しいはずの旅行が台無しになるだけでなく、深刻な法的トラブルに巻き込まれる恐れもあります。
まずは基本事項:誰が、どこで、どれくらい?
法律の根本を成すのは、年齢制限、所持量の上限、そして栽培に関する基本的な制限です。これらはすべての規則の基盤となるため、最初にしっかりと理解しておきましょう。
年齢制限 – 18歳以上が対象
大麻の所持、使用、栽培が認められるのは18歳以上の成人に限られています。これは絶対的な規定で例外はありません。18歳未満への大麻の譲渡や提供は非常に重い犯罪とされます。また、たとえ自身が18歳以上であっても、未成年者と一緒にいる場での使用は避けるべきです。特に子どもや若年層の周囲での喫煙は厳しく制限されています。身分証明書の提示を求められることもあるため、パスポートなど年齢確認ができる書類は常に携帯しておくことをおすすめします。
所持制限 – 公共の場での所持上限
旅行者が最も注意すべきなのは所持可能量の上限です。公共の場所で携帯を許されるのは乾燥大麻で最大25グラムまでとなっています。この「公共の場」には路上、公園、駅、公共交通機関などが含まれます。25グラムという量は決して少なくありませんが、これを1グラムでも超える所持は法律違反で、罰金や場合によっては刑事処分の対象となります。
ちなみに、ドイツ在住者は自宅で最大50グラムまでの乾燥大麻を保管することが認められています。ただしこれはあくまで「自宅」での話であり、旅行者が宿泊するホテルや短期アパートが自宅とみなされるかについては法的解釈が定まっていません。混乱を避けるためにも、公共の場での25グラム以内に常に留意しておくのが安全と言えるでしょう。
自宅栽培 – ドイツ居住者のみが認められる権利
成人が自宅で最大3株まで大麻草を栽培できることが法律で認められていますが、これはドイツに6ヶ月以上居住し住民登録をしている人に限られた権利です。したがって、短期旅行者がホテルや短期アパートで大麻を栽培する行為は明確に違法です。栽培に関しては、「ドイツに生活の拠点がある人だけの権利」であることをしっかり認識してください。
ここは厳禁!大麻使用禁止エリア
「25グラムまでなら好きな場所で使ってよい」というわけではありません。法律は特に子どもや青少年を守るため、大麻の使用を厳しく禁じる「禁止ゾーン(Verbotszonen)」を設定しています。
禁止ゾーンとは?学校や幼稚園、遊び場の周辺
最も厳しく規制されているのは子どもたちが集まる施設周辺です。具体的には以下の施設の「出入り口から視認できる範囲内」、一般的には半径100メートル以内での大麻使用が終日禁止されています。
- 学校
- 幼稚園・保育所(Kita)
- 青少年向け施設(青少年センターなど)
- 公共の遊び場(Spielplatz)
- 公営スポーツ施設
ドイツの都市部では公園内に遊び場が散在していることが多いので、公園で喫煙しようとする際は周囲に遊び場や子どもがいないか必ず確認する習慣をつけましょう。禁止ゾーンでの喫煙は高額な罰金が科されるリスクがあります。詳しい情報はドイツ連邦保健省のFAQページも参照可能です。渡航前に目を通すことを強くおすすめします。
歩行者天国での使用時間制限
多くの都市中心部にある歩行者天国(Fußgängerzone)では、大麻使用に時間制限が設けられています。具体的には午前7時から午後8時までは使用禁止です。これは日中買い物客や家族連れが多い時間帯に配慮した措置です。夜8時以降は理論上許可されますが、周辺のレストランやバーのテラス席の状況などを考慮し、周囲に配慮することが求められます。
駅構内や公共交通機関内での使用禁止
ドイツ鉄道(DB)は駅構内(プラットフォームを含む)での大麻喫煙を全面的に禁止しています。これは既存の禁煙ルールを大麻にも適用する形です。また、バス、電車、トラムなどの公共交通機関内での使用も厳禁です。移動中に大麻を使用することは決して考えないようにしましょう。
入手方法は?旅行者が購入可能な場所は?
ここまでルールについて説明しましたが、最も気になるのは「結局どこで合法的に大麻が手に入るのか?」という点でしょう。結論から言うと、2024年6月時点では旅行者がドイツで合法的に大麻を入手するのは非常に難しい状況です。
「カンナビス・ソーシャル・クラブ」の仕組み
前述のとおり、2024年7月1日から始まる合法大麻供給の中心は「カンナビス・ソーシャル・クラブ」と呼ばれる非営利団体です。最大500人の会員から構成され、会員のためだけに大麻の栽培と配布を行います。
- 会員資格 : 18歳以上でドイツに居住(住民登録必須)
- 会費 : クラブの運営費(栽培費用など)を賄う会費制
- 配布量 : 月間最大50グラム、1日あたり最大25グラムまで
- 消費制限 : クラブ内での使用は禁止。受け取った大麻は即座に持ち帰る必要あり
このクラブは非営利で、利益を得るための販売は一切認められていません。
旅行者はクラブに加入できる?
現行法では、クラブ会員はドイツ居住者に限定されており、短期滞在の旅行者は加入できません。これは大麻ツーリズムを防ぐ意図があります。将来このルールが変わる可能性は否定できませんが、少なくとも当面は旅行者がこのルートを利用できないと認識すべきです。
商業販売はまだ先?試験プロジェクトの計画
法律では、もう一つの供給手段として特定地域で免許制の専門業者が商業販売を行う「試験プロジェクト」の実施が想定されています。これが実現すれば、アムステルダムのコーヒーショップのように旅行者も身分証明書を提示すれば大麻を購入可能になる可能性があります。ただし、開始時期や地域、細則は未定であり、数年先になる可能性も高く、現段階での選択肢とは言えません。
闇市場での購入は絶対に避けるべき
合法な入手経路が事実上ないため、路上の売人から購入しようと考える人もいるかもしれませんが、これは絶対に避けるべきです。闇市場での購入は依然として違法であり、警察に摘発されれば罰則が科されます。さらには品質保証がなく、健康に悪影響を及ぼす有害物質が混入しているリスクが極めて高いです。合法化の大きな目的の一つが、こうした闇市場から消費者を守ることにあるため、自ら危険な道に踏み込む行為は絶対に控えましょう。
【実践編】ドイツ滞在中に大麻を楽しむためのステップ

現時点では、旅行者が合法的に大麻を楽しむためのハードルは非常に高いものの、全く不可能というわけではありません。ここでは、ドイツで大麻に触れる機会があった際に、どのように行動すべきかを段階的に説明します。
Step1: 自身の状況を確認しよう
最初に行うべきことは、自分の状況と関連する法律の要件を正確に理解することです。思い込みや誤った情報に基づいて行動するのは大変危険です。
年齢と滞在資格の確認
あなたは18歳以上でしょうか?これがまず絶対条件です。次に、あなたの滞在資格は何かを把握しましょう。短期の観光ビザで来ている旅行者なのか、それとも就労や留学で長期滞在し、住民登録を済ませているのか。この違いによって認められる行為が大きく変わります。この記事で説明しているとおり、栽培やクラブへの加入はドイツの居住者にのみ許可されています。
ドイツの法律を正しく理解する
この記事の内容をもう一度丁寧に読み直してください。所持量の上限(25g)、使用禁止区域(学校周辺や歩行者天国の日中など)、運転中の禁止事項など、基本的なルールをしっかりと把握しましょう。特に禁止区域の規定は複雑で、「公園だから問題ないだろう」といった安易な考えは避けてください。
Step2: 合法的な入手方法を模索する(現段階での課題)
現状、旅行者が合法的に大麻を入手できる唯一の方法は、「18歳以上のドイツ居住者からの無償譲渡」のみとなっています。法的には、成人間で所持量の上限(25g)を超えない範囲での無料譲渡が認められていますが、多くの注意点があります。
知人からの譲渡についての注意事項
もしドイツに住む友人がいるなら、その友人から少量(25g以下)を無償で譲り受けることは理論上合法です。ただし、これは必ず無償でなければなりません。金銭のやり取りが発生すれば違法な販売とみなされます。また、友人が合法的に入手または栽培したものであることが前提です。闇市場由来のものを譲り受けると、双方がリスクを負うことになります。
見知らぬ人からの「プレゼント」という申し出も慎重に扱うべきです。その背後にトラブルが潜んでいる可能性も否定できません。最も安全なのは、信頼できる友人関係の範囲内でこの選択肢を考えることです。
カンナビス・ソーシャル・クラブに関する情報収集
旅行者は入会できませんが、ドイツで成長しつつある大麻文化の中心となるクラブの動向を把握するのは興味深いでしょう。多くのクラブがウェブサイトやSNSで情報を発信しています。彼らの活動理念や栽培予定の品種を知ることで、ドイツ社会の動きをより深く理解できます。ただし、クラブに直接連絡して「旅行者でも購入可能か」と問い合わせるような行為は、迷惑となるため絶対に控えてください。
Step3: 使用場所のルールを徹底しよう
幸運にも合法的に大麻を手に入れられた場合、次に重要なのは「使用場所の選定」です。不適切な場所で使用すれば即座に違法となります。
禁止区域を避けるための地図アプリ活用法
渡航前にGoogleマップなどの地図アプリで滞在先周辺に学校や幼稚園、遊び場がないかを確認しましょう。ドイツ語では学校が「Schule」、幼稚園が「Kita」や「Kindergarten」、遊び場は「Spielplatz」と表示されます。これらの施設から少なくとも100メートル離れている場所での使用を検討してください。ベルリンなど一部都市では、禁止区域を地図上に示す非公式サイト(Bubatzkarteなど)もありますが、情報の正確性は自己責任で判断する必要があります。
ホテルや宿泊施設でのルール確認の重要性
公共の場でルールを守っていても、滞在先の規則を破っては意味がありません。多くのホテルや集合住宅では館内全体(客室のバルコニーも含む)が禁煙エリアとなっています。この禁煙ルールはタバコだけでなく大麻にも適用されると考えるのが一般的です。チェックイン時に宿泊施設の喫煙ポリシーを必ず確認し、規則を遵守してください。無許可で客室内で使用した場合、高額な清掃費用を請求されたり退去を求められたりするリスクがあります。
トラブル回避術と注意点
いかに注意を払っていても、予期しないトラブルに巻き込まれる可能性はゼロではありません。ここでは特に重大なトラブルに発展しやすい事例と、その対処法について解説します。
運転と大麻――絶対に避けるべき組み合わせ
元自動車整備士であり、現在も世界中を車で旅する者として、強く言いたいことがあります。大麻を使用した後の運転は絶対に避けてください。それは自分自身の命だけでなく、周囲の人々の安全も脅かす、非常に無責任な行為です。
ドイツの新たなTHC許容量と罰則
大麻の合法化に伴い、ドイツでは運転時のTHC(大麻の有効成分)血中濃度に関する新たな基準値が検討されています。専門家委員会は、従来のほぼゼロである1ナノグラム/ミリリットルから3.5ナノグラム/ミリリットルへの引き上げを推奨しました。これは、ビール1~2杯の飲酒時のアルコール濃度に例えられていますが、THCは個人差が大きく、アルコールのように「何時間経てば安全」といった明確な指標が立てにくいのが実情です。使用後24時間以上経っても、体内にTHCが残り基準を超える可能性は十分にあります。ドイツ自動車連盟(ADAC)などの団体も、この点について警告を続けています。
基準を超えて運転した場合、初回でも500ユーロの罰金と1ヶ月の免許停止が科せられます。事故を起こした場合は、さらに厳しい刑事罰が待ち受けています。
「影響下での運転」と見なされるリスク
血中濃度が基準以下であっても、警察官に運転に支障をきたしていると判断されれば罰則の対象となる場合があります。ろれつが回らない、蛇行運転をするなど、不自然な挙動が見られれば厳しい検査を受けることになります。レンタカーでの旅は楽しいものですが、その自由を守るためにも「吸ったら絶対に乗らない」を徹底してください。
ライター翔太からのアドバイス:運転前の大麻使用は絶対NG
私からの忠告は簡潔です。「その日に車を運転するなら、大麻は絶対に使用しないでください」。翌日に長距離移動がある場合は、前日の夜も避けるべきです。THCの影響は想像以上に長く残ります。短時間の快楽のために、一生後悔するような事故を起こしてはならないのです。美しいドイツのアウトバーンを走る権利を、自ら失わないでください。
国境越えの際に特に注意すべきポイント
ドイツ国内では合法でも、国境を越えた瞬間にそれらの規則は無効となります。これは旅行者が特に陥りやすい落とし穴です。
ドイツ国外へ持ち出すことは厳禁
ドイツで購入または譲渡された大麻を国外に持ち出すことは厳しく禁止されています。隣接するフランス、ポーランド、オーストリアなど、すべての隣国で大麻所持は違法です。シェンゲン協定によって国境検査は簡素化されていますが、抜き打ち検問が頻繁に行われています。車のトランクから大麻が見つかれば、その国の法律により逮捕・処罰されます。「少量なら大丈夫だろう」という考えは通用しません。
日本への持ち込みは「大麻取締法」で重罪
当然のことながら、日本への大麻持ち込みは「大麻取締法」により厳重に処罰されます。合法的に海外で入手したものであっても例外はなく、営利目的であれば最高10年以下の懲役、個人使用でも7年以下の懲役が科せられます。人生を破滅させる重大な過ちになるため、お土産として持ち帰るなど論外です。この点について、在ドイツ日本国大使館も繰り返し警告しています。
空港での検査と潜むリスク
ドイツ出国時、日本入国時には麻薬探知犬や高度な検査機器による厳格なチェックが実施されます。衣服や鞄に付着したわずかな匂いや成分からでも所持や使用が発覚する可能性があります。ドイツ滞在中に大麻を使用した場合は、帰国前に衣類を洗濯し、鞄の中もきちんと整理するなど細心の注意が求められます。
警察に職務質問されたときの対応は?
もし路上で警察官に声をかけられた場合には、落ち着いて対処することが肝心です。慌てず冷静に行動しましょう。
落ち着いた対応を心がける
まずは冷静に警察官の指示に従ってください。ドイツの警察官は基本的にプロフェッショナルで、威圧的な態度を取ることは少ないです。英語を話せる警官も多いので、ドイツ語が分からなくてもゆっくり英語でコミュニケーションを試みましょう。
所持量が上限以下であることを伝える
大麻を所持している場合は正直に申告し、25グラム以下であることをはっきり示しましょう。法律の範囲内であることを毅然と伝えれば、大事に至る可能性は低いです。その際、身分証明書としてパスポートの提示を求められることが多いので、すぐに取り出せるよう用意しておきましょう。
権利を主張する
不当な扱いを受けたと感じたり、状況が不利と感じた際には、「弁護士に連絡する権利(Recht auf einen Anwalt)」や「通訳を要求する権利」があることを主張できます。ただし、対立的な態度は避け、あくまで冷静かつ丁寧に自分の権利を伝えることが大切です。
日本大使館・領事館への連絡先を把握しておく
逮捕など事態が深刻化した際には速やかに在ドイツ日本大使館や最寄りの総領事館に連絡してください。これらの機関は法的な助言はできませんが、弁護士リストの提供や家族との連絡支援など、邦人保護のための様々なサポートを行います。渡航前に管轄の大使館・総領事館の連絡先を控えておくと安心です。
ドイツと他国の比較 – ヨーロッパの大麻事情

ドイツの今回の動きは、ヨーロッパ全体の大麻政策に大きな影響を及ぼす可能性があります。ここでは、他の国、特に旅行者に人気の高いオランダとの違いを見てみましょう。
オランダ(アムステルダム)との相違点
「大麻と言えばアムステルダム」というイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、ドイツの制度はオランダのものとは根本的に異なっています。
コーヒーショップ制度とドイツのクラブ制度の違い
オランダでは、特定の許可を受けた「コーヒーショップ」にて、18歳以上の成人が少量の大麻を購入し、その場で使用することが事実上認められています。これは法的に完全な合法ではなく、「非犯罪化」された「寛容政策(Gedogenbeleid)」に基づくものです。これらのコーヒーショップは商業的な店舗であり、身分証明書さえ提示すれば、旅行者でも比較的容易に利用可能です。
一方、ドイツが導入したのは、先述の通り非営利の「カンナビス・ソーシャル・クラブ」制度です。こちらは居住者限定の会員制であり、利益を追求しない仕組みとなっています。この差異は、大麻ツーリズムを積極的に受け入れてきたオランダと、それを抑制しようとするドイツの姿勢の違いを明確に示しています。
旅行者の利用のしやすさの違い
制度の違いにより、旅行者が利用しやすいかどうかには大きな差があります。アムステルダムでは、中心部に数多くのコーヒーショップが存在し、観光客が気軽に立ち寄れる環境が整っています。しかしドイツでは、そもそも旅行者が合法的に大麻を入手する手段がほとんどないのが現状です。ドイツへの旅行を計画する際には、アムステルダムのような体験を期待しないことが重要となります。
マルタ、ルクセンブルクの状況
実は、ヨーロッパで嗜好用大麻を合法化したのはドイツが最初ではありません。2021年にマルタ、2023年にはルクセンブルクが、それぞれ個人使用と栽培を合法化しています。しかし、これらの国は規模が小さく、ヨーロッパ全域に与える影響は限定的でした。人口8000万人を超える大国ドイツの合法化は、チェコやスイスなど他国の政策にも影響を及ぼし、ヨーロッパ全体で規制緩和の動きが一層加速する可能性があると見られています。
ヨーロッパ旅行で注意すべき点
このようにヨーロッパ内でも国ごとに大麻に関するルールは大きく異なります。車や電車で簡単に国境を越えられるからこそ、現在自分がいる国の法律を正確に理解しておくことが不可欠です。ドイツで合法だからといって同じ感覚でフランスやイタリアに持ち込んでしまうと、即座に犯罪者となってしまいます。複数国を巡る旅行を計画する際には、特に十分な注意が求められます。
新しい時代の幕開けと旅行者へのメッセージ
ドイツにおける大麻の合法化は、単なる新たな嗜好品の解禁にとどまりません。これは、個人の自由、公衆衛生、そして社会の在り方そのものを問う、大規模な社会実験の幕開けと言えるでしょう。こうした歴史的な変革の最中にドイツを訪れることは、私たち旅行者にとって非常に刺激的な体験となるはずです。
商業販売の試験プロジェクトの行方は?
今後特に注目されるのは、商業販売を検証する「試験プロジェクト」の進展です。これが実施されれば、旅行者も合法的に大麻を入手できる道が開け、ドイツの観光風景に大きな変化が訪れる可能性があります。ただし、その実現には多数の法的課題や、社会的な合意形成が不可欠です。私たちは慌てることなく、ドイツ社会がどのような結論に至るのかをじっくり見守る必要があるでしょう。
社会的影響と将来的な法改正の展望
この法律が医療分野や経済、そして犯罪率に及ぼす影響について、世界中の研究者や政策決定者が注目しています。実験の結果次第では規制がさらに緩和される可能性もありますし、一方で問題点が明らかとなり規制強化に向かうこともあり得ます。法律は常に社会の変化を反映し、その姿を更新し続けるものだからです。
責任ある楽しみ方の大切さ
もし幸運にもドイツで合法的に大麻を体験できる機会があったなら、ぜひ「責任ある旅行者」としての自覚を持って振る舞ってください。法律の順守はもちろん、周囲の人々への配慮も忘れてはなりません。特に子どもたちの近くでの使用は厳禁です。あなたのひとつひとつの行動が、日本人旅行者全体のイメージにも影響を与えます。
そして何より、大麻は旅の主役ではありません。ドイツは美しい街並みや豊かな自然、深い歴史と文化、そして美食の宝庫でもあります。新たな文化への接触は素晴らしい体験ですが、それだけに偏ってしまっては本末転倒です。この新しい法律を、ドイツという国をより深く知るための一つのきっかけとして捉え、安全かつ思い出に残る旅をつくり上げてください。私も、このダイナミックに変わり続けるヨーロッパの道を、慎重かつ安全に走り続けたいと思います。

