カラフルなマカロン、ショーウィンドウを彩るオートクチュール、セーヌ川にきらめく夕陽。パリという街を思い浮かべるとき、私たちの胸をときめかせるイメージは数え切れないほどあります。でも、その中でもとりわけ心惹かれる、素朴で、それでいて最高にパリらしい光景。それは、焼きたてのバゲットを小脇に抱え、石畳の道を颯爽と歩くパリジェンヌの姿ではないでしょうか。
映画『アメリ』のワンシーンのように、あるいはファッション雑誌のページをめくるように。あの何気ない日常の一コマに、私たちは言いようのない憧れを抱きます。それはきっと、ただ「パンを持って歩く」という行為以上の、パリに根付く豊かな食文化と、日々の小さな幸せを大切にするエスプリ(精神)が凝縮されているから。
今回の旅のテーマは、そんな憧れを現実にすること。最高のブーランジェリー(パン屋さん)で黄金色のバゲットを手に入れ、パリの美しい街並みを自分の足で歩く。それは、観光地を巡るだけの旅とは一味違う、パリの日常にそっと溶け込むような、特別な体験になるはずです。
この記事では、アパレル企業で働きながら世界中を旅する私が、ファッションやアートの視点も交えながら、あなたの「パリでバゲットを持って歩く」という夢を、最高にスタイリッシュで、忘れられない思い出にするための完全ガイドをお届けします。
最高のバゲットの見つけ方から、絵になるフォトスポット、さらには女性一人でも安心な安全対策まで。この記事を読み終える頃には、あなたはもうパリの街角を歩く自分の姿を、はっきりとイメージできているはず。さあ、一緒に夢の扉を開きましょう。
この特別な旅の他に、感性を刺激するアートとファッションに恋するパリの女子旅プランもぜひチェックして、あなたの夢をさらに広げてください。
なぜ私たちは「パリでバゲット」に憧れるのか?

そもそも、なぜこれほどまでに「パリでバゲットを持つ姿」が私たちの心をつかみ、離さないのでしょうか。その理由はおそらく、いくつかの要素が重なり合い、生まれる独特の魅力にあります。
映画や写真が映し出す、象徴的なパリのイメージ
私たちが思い浮かべる「パリらしい風景」は、多くの場合、映画や写真、アート作品によって形づくられています。ジャン=リュック・ゴダールの作品でアンナ・カリーナが無造作にバゲットをかじる姿や、ロベール・ドアノーが捉えた恋人たちのキスの瞬間、そしてその背後にある日常の情景。こうした文化の中でバゲットは、単なる食べ物ではなく、パリの空気感やライフスタイルを象徴する重要なモチーフとして描かれてきました。
バゲットを手に歩くことは、まるで自分が憧れの映画のヒロインになったかのようなロマンティックな気分に誘います。それは、物語の世界に入り込むための魔法の杖のような存在かもしれません。
パリジェンヌの毎日に触れる体験
旅の魅力は非日常を味わうところにありますが、その土地の「日常」に少しだけ触れることができれば、旅はより深く、豊かなものになるでしょう。パリジェンヌにとって、毎日ブーランジェリーへ行き、焼きたてのバゲットを買って帰るのは、いたって自然な日課です。
列に並びながら店員と「Bonjour!」と挨拶を交わし、「Une tradition, s’il vous plaît(トラディションを一本ください)」と注文する一連の流れを体験することで、単なる観光客を超え、まるでパリの住人の一人になったような感覚を覚えます。バゲットの温もりを感じながら街を歩くと、普段は観光客で賑わう通りもまた違った顔を見せてくれるのが不思議です。
シンプル・イズ・ベストの美学
華やかな美食の都であるパリですが、その食文化の根底には、実は非常にシンプルで本質的な価値観が流れています。小麦粉と水、塩、酵母。このたった四つの材料から作られるバゲットが、日々の食卓に欠かせない存在として愛され続けていることは、「豊かさとは何か」を考えさせられます。
高級レストランのフルコースも素晴らしいものの、焼きたてバゲットに、ほんの少しの美味しいバターやチーズを添えるだけで満たされるという、シンプルで贅沢な時間。情報や物が溢れる現代だからこそ、私たちはそんな本質的な豊かさに強く惹かれているのかもしれません。バゲットを一本買うという小さな行動が、パリの価値観に触れるための最初の一歩となるのです。
完璧なバゲット体験のための準備リスト
憧れのイメージを膨らませたところで、次は実際の準備に取りかかりましょう。最高の体験は、入念な準備から生まれます。パリの街角で心からバゲットウォークを楽しむために、日本でできることと、パリに到着してからすべきことをまとめました。
パリへの旅立ち前に日本で準備しておきたいもの
旅の快適さは、パッキングの質でほぼ決まると言っても過言ではありません。特にファッションの都パリでは、機能性とおしゃれの両立が重要です。
- 歩きやすくておしゃれな靴を選ぶ
石畳の多いパリを長時間歩くには、スニーカーやフラットシューズが必須です。しかし、せっかくなら気分を上げてくれる一足を選びたいもの。高品質なレザーのスニーカーや、デザイン性の高いバレエシューズなどがおすすめです。新品の靴は靴擦れの原因になりやすいので、日本で予め履き慣らしておきましょう。
- 調節しやすいレイヤードスタイルを意識する
パリの天気は変わりやすく、一日のうちで晴れたり曇ったり、急に肌寒く感じることもあります。カーディガンやジャケット、薄手のストールなど、さっと羽織ったり脱いだりできるアイテムを中心にコーディネートを組んでください。トレンチコートはパリの街並みにもよく似合う定番の一着です。
- 少しフォーマルな服装を用意する
高級レストランやオペラ座に行く予定があるなら、ワンピースやきれいめのブラウスとスカートなど、少し格上げできる服を一着持っていくと安心です。高級店ではTシャツやスニーカーだと入店を断られることもあります。場所によって服装のルールが異なりますが、準備があれば心配いりません。
- 防犯グッズの準備を忘れずに
残念ながら、パリはスリや置き引きが多い地域でもあります。観光客は特に狙われやすいので、しっかり対策をしておきましょう。
- 斜め掛けでファスナー付きのバッグ: バッグは必ず体の前に抱えるように持ち、リュックは背負ったままだと開けられるリスクが高いため前に抱えるか避けるのが賢明です。
- セキュリティポーチや腹巻: パスポートや大金、予備のクレジットカードは体に密着できるセキュリティポーチに入れておくのが一番安全です。
- ワイヤーロック: カフェなどで席を外す際に、荷物と椅子を繋いでおくと安心感が増します。
- クレジットカードと少額のユーロ現金
パリはキャッシュレス化が進んでいますが、小さなパン屋や市場などでは現金のみ対応の場合や、カード払いで断られることもあります。50ユーロ程度の現金を両替して持参すると便利です。クレジットカードはVISAとMastercardを1枚ずつ用意して、どちらかが使えない場合に備えましょう。出発前には利用限度額と暗証番号の確認も忘れずに。
- 海外旅行保険への加入
万が一の病気やケガ、盗難に備えて、必ず海外旅行保険に加入してください。クレジットカードに付帯している保険もありますが、補償内容が十分か事前に確認し、必要があれば別途保険に加入することをおすすめします。治療費だけでなく、携行品の損害や賠償責任もカバーされていると安心です。
パリ到着後にまず手に入れたいもの
空港に降りてパリの空気を感じたら、本格的な街歩きの前にいくつかの手続きを済ませると、その後の移動がずっと快適になります。
- 交通系ICカード「Navigo(ナビゴ)」
パリ市内のメトロやバス、RER(高速郊外鉄道)が乗り放題になる交通カードです。主に2種類あります。
- Navigo Découverte: 1週間(月曜〜日曜)または1ヶ月単位でチャージするカード。月曜始まりなので、週の後半に到着する場合は割高になることもあります。顔写真(2.5cm×3cm)が必要なため、日本で証明写真を用意するとスムーズです。
- Navigo Easy: SuicaやPASMOのように必要な分だけチャージして使うカード。短期滞在やあまり移動が多くない方向けです。
駅の窓口や券売機で購入可能ですが、窓口は混雑しがちなので時間に余裕をもって訪れてください。
- ミュージアムパスの検討
ルーブル美術館、オルセー美術館、ヴェルサイユ宮殿など、多くの観光名所に入場できる共通パス。2日券、4日券、6日券があり、行きたい場所の入場料を合算してお得かどうかを検討してみましょう。最大のメリットは、チケット購入の長い行列を避けて専用入り口からスムーズに入場できること。時間を有効に使いたい方に特におすすめです。公式サイトや現地の観光案内所、一部美術館で購入できます。
- 通信手段の確保(SIMカード/eSIM)
地図アプリの利用や店舗情報の検索など、スマートフォンは旅に必須です。通信手段は以下の方法があります。
- eSIM: 物理的なSIMカードを入れ替える必要がなく、オンラインで購入・設定ができるため非常に便利。日本にいる間に設定すれば、パリの空港に着いた瞬間からネット接続が可能です。
- 現地SIMカード: 空港や街中のキャリアショップ(Orange、SFRなど)で購入可能。パスポートの提示が必要な場合があります。
- Wi-Fiルーターレンタル: 複数人での利用やPCも一緒に使いたい場合に便利。日本でレンタルして持参します。
準備が整ったら、いよいよ冒険の始まりです。最高のバゲットを探す旅へ出発しましょう。
最高のパン屋さん(ブーランジェリー)を見つける冒険

パリには数えきれないほどのブーランジェリーが立ち並んでいます。角を曲がるたびに香ばしいパンの香りが漂ってくるほどです。では、その中から「最高のバゲット」をどうやって見つけ出せばよいのでしょうか?まるで宝探しのように心躍る冒険とも言えるでしょう。
「Meilleure Baguette de Paris」(パリ最高バゲットコンテスト)を追いかけて
パリのパン職人たちにとって、一番栄誉ある大会が毎年開催される「パリ最高バゲットコンクール(Grand Prix de la Baguette de Tradition Française de la Ville de Paris)」です。審査のポイントは焼き加減、味、中の気泡の入り方、香り、さらに見た目の美しさです。この大会で優勝したブーランジェリーは、その翌年1年間フランス大統領のエリゼ宮に毎日バゲットを納めるという名誉を得られます。
このコンクールの歴代優勝店を巡ることは、最高のバゲットに出会う最も確かな方法のひとつです。優勝店の店先には「Meilleure Baguette de Paris 20XX」という誇らしげなプレートが掲げられています。これを目印に散策すれば、街歩きも一層楽しくなります。歴代の優勝店リストは、パリ市公式サイトなどで確認可能です。毎年異なるお店が選ばれるため、最新情報を参照して訪れてみてください。
亜美のおすすめブーランジェリー3選
コンクール受賞店以外にも、地元のパリジャンに愛されている名店は数多く存在します。ここでは、私がパリ訪問の度に必ず立ち寄ってしまう、とっておきのブーランジェリーを3つご紹介します。
- Poilâne(ポワラーヌ)
サンジェルマン・デ・プレに本店を構える1932年創業の老舗です。ポワラーヌの代名詞はバゲットではなく、「ミッシュ・ポワラーヌ」と呼ばれる石臼で挽いた全粒粉を使った大きな田舎パン。ずっしりと重く、ライ麦のほのかな酸味が特徴で、一度味わうと記憶に残ります。もちろんバゲットも絶品ですが、この店のスペシャリテをぜひ試してみてください。スライス売りもあるので、一切れから味見できるのも嬉しいポイントです。チーズやハムとの相性は言うまでもありません。
- Du Pain et des Idées(デュ・パン・エ・デジデ)
サン・マルタン運河近くにある、この店はまるで宝石店のような美しい内装が特徴です。週末は休みの職人気質な店ですが、平日には行列が絶えません。名物はピスタチオとチョコのエスカルゴやオレンジの花の香りが漂うブリオッシュなどのヴィエノワズリーですが、「Le Pain des Amis」と呼ばれるバゲットも秀逸。ナッツのような香ばしさともちもちした食感があり、他店とは一線を画す独特の味わいです。少し足を伸ばしてでも訪れたい名店です。
- Boulangerie Utopie(ブーランジェリー・ユトピー)
マレ地区北部の若者に人気のエリアに位置する、モダンなブーランジェリーです。伝統を尊重しながらも革新的なパン作りに挑戦している点が魅力。特に目を引くのは、竹炭が練り込まれた真っ黒なバゲット「Baguette au charbon actif」。見た目のみならず味わいも香ばしく、食事のアクセントになります。もちろん伝統的なバゲット・トラディションでもコンクール入賞の実績があり、常に新しい驚きを提供し続ける注目のお店です。
パン屋でのスマートな注文のコツ
狙ったブーランジェリーを見つけたら、いよいよ注文です。少し緊張するかもしれませんが、いくつかポイントと簡単なフランス語を覚えておけば問題ありません。
- まずは挨拶を忘れずに
フランスでは店に入る際「Bonjour(ボンジュール)」、帰る時は「Merci, Au revoir(メルシー、オウ・ヴォワール)」と声をかけるのが基本マナー。これだけで店員さんの態度がぐっと柔らかくなります。
- バゲットの種類を理解する
バゲットは大きく2種類に分かれます。
- Baguette Ordinaire(バゲット・オルディネール):一般的なフランスパンで、価格も手頃です。
- Baguette de Tradition(バゲット・ド・トラディション):通称「トラディション」と呼ばれ、法律で添加物の使用が禁じられ、小麦粉・水・塩・酵母のみで作られています。外はパリッと、中はもちもちかつ気泡が大きく、小麦の風味が豊か。値段はやや高めですが、ぜひこちらを選ぶことをおすすめします。
- 注文の際のフレーズ
「Une tradition, s’il vous plaît.(ユヌ・トラディション、シル・ヴ・プレ)」 (トラディションを一本ください) これだけで十分です。もし半分だけ欲しい場合は、 「Une demi-tradition, s’il vous plaît.(ユヌ・ドゥミ・トラディション、シル・ヴ・プレ)」 と言えば半分にカットしてもらえます。一人旅にはこの「demi(ドゥミ)」がとても便利です。
- 支払いについて
小規模な個人店の場合、5ユーロ以下の買い物ではクレジットカードが使えないことがあります。小銭や少額紙幣を用意しておくとスムーズです。支払いが済めば、焼きたてのバゲットを受け取りましょう。その温かさと香ばしい香りに、きっと胸が高鳴ることでしょう。
バゲットを持ってどこへ行こう?パリのフォトジェニックスポット巡り
さあ、最高のバゲットを手に入れました。紙袋から少しだけ顔をのぞかせる、黄金色に輝くパン。この心強い相棒とともに、パリの街へ繰り出しましょう。歩くだけで絵になる街、パリですが、中でも特におすすめのスポットをいくつかご紹介します。
セーヌ川沿いで楽しむピクニック
パリと言えばバゲット、そしてセーヌ川沿いは欠かせません。特にシテ島やサン=ルイ島、さらに左岸の河川敷は絶好のピクニックエリアです。
- おすすめルート:
サンジェルマン・デ・プレ周辺のブーランジェリーでバゲットを手に入れたら、近隣のマルシェやチーズ専門店、シャルキュトリー(ハム・ソーセージ専門店)でお気に入りのチーズや生ハム、オリーブなどを買い揃えましょう。小さなナイフやカッティングボードがあると便利ですが、お店でスライスをお願いするのも良い選択です。ワインも欲しいところですが、フランスの多くの公共エリアでは飲酒が禁止されていることがあるため注意してください。ピクニックにはノンアルコールのシードルやジュースを選ぶのが安全です。
- ピクニックスポットのおすすめ:
ポン・デ・ザール(芸術橋)のたもとや、ノートルダム大聖堂が見渡せるサン=ルイ島の先端は、景観が抜群です。レジャーシートを広げて座りながら、行き交うバトームーシュ(遊覧船)を眺めつつ、バゲットをちぎってチーズとともに味わう。こんな贅沢は他にありません。太陽の光に包まれながら、地元パリジャンたちに混ざってゆったりとした午後のひとときを過ごしてみてください。
モンマルトルの丘で芸術気分に浸る
画家たちがイーゼルを並べるテルトル広場や、美しい真っ白なドームが印象的なサクレ・クール寺院。芸術の香りが満ちるモンマルトルは、バゲットにもぴったりの場所です。
- おすすめルート:
メトロのアベス(Abbesses)駅で降り、まずは「ジュ・テームの壁」に立ち寄って愛の言葉に包まれてみましょう。そこから曲がりくねった坂道や階段を上りながら、まるで冒険しているかのような散策を楽しんでください。途中、見つけたブーランジェリーでバゲットを購入し、サクレ・クール寺院前の階段を目指します。
- 過ごし方のヒント:
階段に腰掛け、眼下に広がるパリのパノラマを眺めながらバゲットをかじるひととき。遠くにはエッフェル塔の姿も見え、まるで自分が一枚の絵画の一部になったような不思議な感覚に包まれます。近くのテルトル広場では、似顔絵を描いてもらうのも素敵な思い出になるでしょう。ただし客引きが多いため、描いてもらう際は事前に料金をしっかり確認することが大切です。
リュクサンブール公園で静かなひとときを
パリ市民に愛される憩いの場、リュクサンブール公園。広大な敷地には美しい花壇や噴水、そして無数の緑色の椅子が並んでいます。
- おすすめルート:
カルチェ・ラタン地区の散策と組み合わせるのが良いでしょう。ソルボンヌ大学を脇に見ながら、古本屋が立ち並ぶ通りを抜けて公園へ向かいます。公園の周辺にも評判の良いブーランジェリーが多数あります。
- 過ごし方のポイント:
公園に入ったら、好きな椅子を見つけて腰かけてみましょう。読書を楽しむ人、会話に花を咲かせるカップル、池で船を浮かべて遊ぶ子どもたち……その穏やかな光景を眺めるだけで、心が落ち着きます。ここでは静かに過ごすことがマナー。芝生の立ち入り可能な場所と禁止エリアが決められているので、必ず標識を確認してください。バゲットを味わいながら旅の計画を練り直したり、日記を書いたり。自分と向き合う穏やかな時間を過ごすのに最適な場所です。
もっと楽しむ!バゲット・プラスアルファのアイディア

バゲットを手に街を歩くだけでも十分魅力的ですが、せっかくなら一歩踏み込んで、パリの食文化をじっくり堪能してみませんか?
マルシェでぴったりのパートナーを探す
パリの魅力のひとつは、街の至るところで開催されるマルシェ(市場)です。新鮮な野菜や果物、焼きたてのパン、地方の特産チーズ、カラフルなオリーブなど、見るだけで心が躍ります。
- おすすめのマルシェ:
- マルシェ・バスティーユ: パリ最大規模のマルシェで、木曜と日曜に開催。食材に加え、雑貨や衣類も並び、活気にあふれています。
- マルシェ・デ・ザンファン・ルージュ: マレ地区にあるパリ最古の常設市場。屋根があるので雨天時も安心です。モロッコ料理やイタリアンなど多国籍のデリスタンドが揃い、その場でランチを味わえます。
- 会話のポイント:
マルシェでは店主とのやりとりも楽しみのひとつ。欲しいものを指さしながら「Ça, s’il vous plaît(サ、シル・ヴ・プレ/これをください)」と言えば大丈夫。チーズ屋さんでは好みを伝えると試食をさせてもらえることも。「Un peu(アン・プ/少しだけ)」と言えば、少量から購入可能です。ここで手に入れた食材とバゲットがあれば、即席でおいしい食事が完成します。
バゲット主役の手軽なアパルトマンごはん
滞在先にキッチン付きのアパルトマンを選んだなら、楽しみはさらに広がります。外食ももちろん良いですが、自分でパリの食材を使って作る「アパルトマンごはん」は、旅の特別な思い出になるでしょう。
- 簡単レシピ「タルティーヌ」:
タルティーヌとは、パンのスライスにさまざまな具材をのせたフランス式のオープンサンドイッチです。バゲットを使えば、手軽におしゃれな一品が作れます。
- 基本の作り方: バゲットを1~2cmの厚さにスライスし、軽くトーストします。
- アレンジ例:
- ジャンボン・フロマージュ: バターを塗り、良質なハムとチーズ(コンテやグリュイエールなど)をのせる。
- アボカドとサーモン: クリームチーズを塗り、スライスしたアボカドとスモークサーモンをのせ、ディルを散らす。
- トマトとバジル: ニンニクの切り口をパンにこすりつけ、オリーブオイルを垂らし、スライスしたトマトとバジルの葉をのせる。
マルシェで手に入れた新鮮な野菜でサラダを添えれば、レストランに引けを取らない、素敵な朝食やブランチが楽しめます。
パリジェンヌに学ぶ、スマートで安全な街の歩き方
憧れのパリ旅行を心から楽しむためには、欠かせないのが安全対策です。ちょっとした知識と心構えがあれば、トラブルに巻き込まれるリスクを大幅に減らすことができます。ここでは、女性の視点から見た安全な街の歩き方をご紹介します。
狙われにくくなるファッションと振る舞い
スリや詐欺師は、「お金を持っていそうで警戒が薄い観光客」をターゲットにしています。そう見られないための工夫が重要です。
- 服装は「上品なカジュアル」で自然に溶け込む: 全身を高級ブランドで固めると、「観光客」として目立ってしまいます。パリジェンヌのように、シンプルで上質なアイテムをさりげなく着こなすのが理想的です。例えば、デニムにきれいめのニット、上質なコートといった組み合わせは、街の風景に溶け込みやすいでしょう。
- バッグの持ち方は基本を徹底: 先述の通り、バッグは必ず斜めがけにし、体の前でしっかり抱えるように持つことが鉄則です。さらに、ファスナーの引き手部分を安全ピンで留めておく簡易的な防犯策も有効です。
- メトロや混雑した場所での注意点:
- 乗り降りの際は特に用心: スリはドアが閉まる瞬間を狙い、そのまま逃走することが多いため、ドア付近には立たず、貴重品はきちんと守りましょう。
- スマホの扱いに気を付ける: 歩きスマホだけでなく、メトロ内で夢中になって操作していると、ドアが閉まる瞬間にひったくられる可能性があります。使用時は周囲への注意を怠らないようにしましょう。
- 不審な動きに警戒を: 数人のグループが不自然に近づいてきたり、物を落として注意を引こうとするのは典型的なスリの手口です。アンケートや署名を求められた場合も、仲間がバッグを狙っているかもしれません。毅然と断ってその場を離れるのが安全です。
万が一のために知っておきたいサバイバル術
どんなに準備していても、事故やトラブルに遭う可能性はゼロではありません。慌てず冷静に対処できるよう、事前に対応方法を把握しておきましょう。
- 盗難にあった場合の対応:
- まずは自分の安全を最優先: 犯人を追いかけるのは非常に危険なので絶対に避けてください。
- カードの利用停止を即行う: クレジットカードやキャッシュカードは、カード会社の緊急連絡先にすぐ電話して利用停止の手続きをしましょう。この連絡先は事前に控え、カードとは別に保管しておくと安心です。
- 警察に被害届を提出: 最寄りの警察署(Commissariat de Police)で盗難届(Déclaration de vol)を出します。この盗難証明書は、海外旅行保険の請求やパスポート再発行の手続き時に必須です。簡単な英語で十分ですが、フランス語の関連単語を事前に調べておくと手続きがスムーズになります。
- パスポート紛失時の手続き: 警察で盗難証明書を取得後、在フランス日本国大使館で帰国用渡航書またはパスポートの再発行手続きを行います。写真や戸籍謄本(または抄本)が必要なので、コピーをデータ化してクラウドに保存しておくと便利です。
- トラブル時に役立つ窓口: 外務省の海外安全ホームページや在フランス日本国大使館のウェブサイトで、常に最新の旅の安全情報や緊急連絡先を確認しておくことが望ましいです。
知っておきたいパリのルールとマナー
安全面だけでなく、現地の文化やマナーを理解し尊重することも、心地よい旅の鍵となります。
- 挨拶は魔法の言葉: お店やレストラン、ホテルのスタッフに会う際は、必ず「Bonjour(こんにちは)」「Bonsoir(こんばんは)」と声をかけるのが基本です。これがあるかないかで、相手の印象は大きく変わります。
- チップの慣習: パリのレストランではサービス料が料金に含まれているため、チップは義務ではありません。しかし、特に良いサービスを受けた場合は、小銭をテーブルに置いたり、料金の5~10%程度を渡したりするとスマートな印象を与えます。
- 公共交通機関でのマナー: メトロでは大声で話さず控えめに。また、お年寄りや妊婦、体の不自由な方には席を譲るのが世界共通の礼儀です。
これらのポイントを押さえれば、あなたは単なる観光客ではなく、パリという街を尊重しながらスマートに旅を楽しむひとりの旅人となるでしょう。
旅の記憶をバゲットの香りと共に

パリの街角で、温かいバゲットをそっと抱きしめた瞬間。パリッと香ばしいクラスト(皮)を割り、小麦の芳醇な香りを胸いっぱいに吸い込んだ時。セーヌ川のほとりで仲間と笑顔を交わしながら、そのバゲットを分け合ったあの時間。
「パリでバゲットを持ち歩く」という体験は、単なる食の楽しみ以上の意味を私たちに届けてくれます。それはパリという街が紡ぐ歴史や文化、そして日常の空気に、ほんのひとときでも触れさせてもらえる特別な瞬間なのです。
帰国後も、パン屋さんの店先に並ぶフランスパンを見るたびに、あなたはきっとあの時の記憶を思い返すでしょう。石畳の足元、街の喧騒、カフェの香り、そして腕の中で感じたあの温かさを。その香ばしい思い出こそが、次の旅へとあなたを誘う最高の道しるべとなるに違いありません。
パリの旅は、訪れるたびに新たな表情を見せてくれます。次に足を運ぶときは、また別のブーランジェリーの扉をそっと開けてみてください。パリ観光局の公式サイトには、まだ知られていない魅力あふれる情報が満載です。一本のバゲットから始まる物語は、さらなる広がりを見せていきます。
さあ、地図を手に、お気に入りのバッグを肩にかけて。あなたのための、最高にスタイリッシュで美味しい冒険が、パリで待っていることでしょう。









