こんにちは、旅ライターの亜美です。アパレルの仕事で培った感性を頼りに、世界の美しい街角を巡っています。今回は、多くの人が憧れる国、フランスの喫煙事情について、詳しく、そして実践的に解説していきますね。
「フランスといえば、カフェのテラスでタバコを片手におしゃべりするパリジェンヌ」…そんな映画のワンシーンのような光景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。確かに、フランスには喫煙に対して寛容な文化が根付いていた時代もありました。しかし、現在のフランスは、私たちが抱くイメージとは少し異なり、喫煙に関するルールが年々厳格化されています。せっかくの旅行で、知らなかったでは済まされない罰金やトラブルに見舞われるのは避けたいですよね。
この記事では、フランスへの渡航を計画している愛煙家の方が、安心して旅を楽しむために必要な情報を網羅しました。どこでタバコが吸えて、どこで吸えないのか、タバコはどこで買えるのか、日本からの持ち込みは?といった基本的なルールから、加熱式タバコや電子タバコの扱い、万が一のトラブル回避術まで、女性目線の細やかな視点も交えながら、徹底的にガイドします。この記事を読めば、フランスでのスマートな喫煙マナーが身につき、もっと深く、もっと心地よく、旅を満喫できるはずです。さあ、一緒にフランスの旅の準備を始めましょう。
フランスでの旅のマナーを身につけたら、次は芸術の都パリを中心としたバレエの聖地巡りで、さらに深くフランス文化を体験してみませんか。
フランスの喫煙文化と現状 – イメージと現実のギャップ

フランスの文化とタバコは、長い年月をかけて深く結びついてきました。これは、モノクロ映画の名作からヌーヴェルヴァーグの色彩豊かな映像まで、さまざまな作品で象徴的に表現されてきたことからもうかがえます。しかし、そのイメージだけで現代のフランスを訪れると、少し戸惑うこともあるかもしれません。まずは、イメージと現実の間に広がるギャップを見ていきましょう。
映画に描かれる「タバコとパリジャン」の印象
ジャン=ポール・ベルモンドやアラン・ドロンが演じるアンニュイな主人公が紫煙をくゆらせる姿。ジャンヌ・モローやブリジット・バルドーが、ほっそりとした指にタバコを挟み、物憂げな表情を浮かべる場面。1960年代のフランス映画、特にその時代の作品では、タバコが巧みに小道具として用いられ、登場人物の退廃的な魅力や知性、反発心を示す手段となっていました。カフェのカウンター、アパルトマンの窓辺、セーヌ川のほとりなど、タバコは彼らのスタイルの一部であり、沈黙の中で思想を語る存在だったのです。
こうした映像によって、「フランス人、とりわけパリ在住者はみなタバコを吸い、それが格好良い」というイメージが世界に浸透したのも無理はありません。実際、かつてのフランスではレストランのテーブルに灰皿が当たり前のように置かれ、食後の一服はディナーの締めくくりとして欠かせない習慣でした。街のあちこちにタバコの香りが漂っていたことも、その記憶とイメージに大きく影響しています。
喫煙規制の強化と健康意識の高まり
しかし、21世紀に入ってからフランスの喫煙事情は大きく変わりました。WHO(世界保健機関)をはじめとする国際的な禁煙推進の流れを受けて、フランス政府も国民の健康を守るため、強力な禁煙政策を次々と導入してきたのです。
転機となったのが2007年施行の「デクレ・ベルトラン(Décret Bertrand)」です。この法令により、オフィスや公共施設、駅、空港、商業施設など、屋内の公共空間での喫煙が全面禁止されました。さらに翌2008年には、この規制がレストランやカフェ、バー、ディスコにまで広がり、フランスの飲食店の風景は一変したのです。灰皿はテーブルから姿を消し、人々は喫煙のために店外のテラス席や歩道に出るようになりました。
この法律は義務として厳格に運用され、違反した場合は罰金が科されます。当初、「フランスのカフェ文化が終わる」との反発もあったものの、現在では完全に定着しています。加えて政府は、タバコ税を段階的かつ大幅に引き上げ、タバコ価格は世界的に見ても高額な部類となりました。2024年現在、一箱あたり11ユーロから12ユーロ(日本円で約1,800円〜2,000円)に達しており、これも喫煙率の低下に大きく寄与しています。
さらに、特に若い世代を中心に健康志向が高まり、喫煙をライフスタイルとして選ばない人が増加しています。代わりに、ランニングやヨガ、オーガニック食品への関心が強まるなど、かつての「タバコとコーヒー」という古典的なイメージとは異なる、新しいパリジャンの姿が見受けられるようになりました。このように、フランスの喫煙事情は、私たちが抱く懐古的なイメージと厳しい規制、そして変わりゆく価値観の現実の間で揺れ動いているのです。
【重要】フランスの法律で定められた喫煙禁止場所
フランス旅行を計画している喫煙者の方が最も正確に理解しておくべきは、具体的に「どこで喫煙が禁止されているか」という規則です。法律で定められた禁煙エリアで喫煙をすると、厳しい罰金が科される可能性があります。ここでは、旅行者が直面する様々なシチュエーションごとに、喫煙の可否について詳しく解説していきます。
屋内は原則として全面禁煙!例外はあるのか?
まず、最も基本的な大前提として覚えておくべきことは、「屋内の公共スペースは原則すべて禁煙」であるという点です。このルールは非常に広く適用されています。
- 飲食店(レストラン、カフェ、バーなど): 店内ではまったく喫煙が許されておらず、テーブルに灰皿が置かれていることは絶対にありません。
- 宿泊施設(ホテル、ホステルなど): ロビーや廊下、レストランなどの共用部分は全面禁煙です。客室については後述のホテル選びのポイントを参照してくださいが、多くのホテルでは館内全域が禁煙となっています。
- 交通機関: 電車(TGVやローカル線)、地下鉄(メトロ)、バス、トラムの車内はもちろん、駅の構内や地下鉄のホームも完全禁煙です。
- 空港: 空港ターミナル内は全面的に禁煙となっています。チェックイン後のセキュリティエリアには喫煙所が設けられている空港もあります(パリ=シャルル・ド・ゴール空港など)が、これらはごく限られた場所にあり、ほとんどが屋外の喫煙ブースです。
- 文化施設・商業施設: 美術館、博物館、映画館、劇場、デパート、ショッピングモールなども屋内は例外なく禁煙です。
では、例外は全くないのでしょうか。法律上は、「喫煙室(fumoir)」の設置が認められていますが、設置基準が非常に厳格です。具体的には「完全密閉されていること」「強力な換気装置が備わっていること」「面積が35平方メートル以下であること」「従業員が清掃時以外に立ち入らないこと」などが条件となっており、これを満たした施設は非常に少数です。特に、旅行者が利用するような一般的なカフェやレストランではまず見かけないと言ってよいでしょう。したがって、旅行中は「建物内に入ったら喫煙はできない」と覚えておくのが最も安全で確実です。
屋外でも注意しなければならない場所
「屋内は禁止なら、屋外ならどこでも大丈夫」と考えるのは早計です。フランスでは、屋外でも喫煙禁止の場所が増えています。特に注意すべき場所は以下の通りです。
- 駅のホーム: 屋根の有無に関わらず、駅ホームは禁煙です。ホーム上に指定の喫煙区域(Espace Fumeurs)が設置されていることもありますが、なければ駅の外に出るまで煙草を控える必要があります。うっかり吸うと、巡回中の駅員や警察官から罰金を課される可能性があります。
- 教育機関の周辺: 学校、幼稚園、大学などの敷地内および出入口付近も禁煙です。これは子供たちを受動喫煙から守るための措置で、厳格に運用されています。
- 公園や遊び場: 特に子供向けの遊具があるエリアは、多くの自治体で禁煙に指定されています。パリ市では2015年から、子供の遊び場のある公園内での喫煙が禁止され、違反すると罰金を科されます。広い公園でもエリアごとにルールが異なることがあるため、現地の標識をよく確認しましょう。
- 病院の敷地内: 病院やクリニックの建物周辺も禁煙区域に含まれています。
加えて、フランス政府は禁煙政策をさらに強化しており、2024年からは新たな禁煙区域が拡大されています。政府によると、全国のビーチ、公園、森林、そして学校などの公共施設周辺での喫煙が原則禁止される方向です。既に一部自治体では独自にビーチでの喫煙を禁止していましたが、これが国全体の法律として整備されます。旅行の際は、屋外でも喫煙が許されているかどうか、周囲の標識や状況を確認する習慣をつけることが非常に重要です。
カフェやレストランのテラス席における喫煙ルール
フランスの喫煙事情を語る上で欠かせないのが、カフェやレストランの「テラス席」の存在です。屋内が全面禁煙となった結果、喫煙者にとっての憩いの場となっているのがこのテラス席です。
基本的に、テラス席は屋外にあたるため、喫煙が許可されています。パリの街角では、小さな丸テーブルを囲み談笑しながらタバコを吸う人の姿を今でも日常的に見ることができます。ただし、いくつか注意すべきポイントがあります。
- 「開放されたテラス」であること: 喫煙可能と認められるテラス席は、完全に屋外であるか、少なくとも一面が完全に開放されている場合に限られます。寒い時期にはビニールカーテンやガラスで四方を囲むタイプのテラスが増えますが、こうした密閉空間は法律上「屋内」と見なされて禁煙となります。店員に「Fumeur?(フュムール?/喫煙者ですか?)」と聞かれた際、喫煙したい場合は「Oui(ウィ/はい)」と答え、喫煙可能な席へ案内してもらいましょう。
- 店舗独自のルール: 法律で認められていても、オーナーの裁量でテラス席を全席禁煙にしている店も一部あります。灰皿がテーブルに置かれているかどうかを確認するのが目安です。灰皿がない場合は喫煙を控えるのがマナーです。
- 周囲への配慮: 最も重要なのは、ほかの客への気遣いです。隣のテーブルに子連れの家族やタバコの煙を嫌がる人がいる場合は、「Ça vous dérange si je fume?(サ ヴ デホンジュ シ ジュ フュム?/タバコを吸ってもご迷惑ではありませんか?)」と一言尋ねるのがスマートです。また、風向きに気をつけて煙が直接かからないようにしたり、食事中の人に煙が邪魔にならないタイミングで吸うなどの配慮が、快適な空間を共有するうえで欠かせません。
テラス席は、ルールとマナーを守れば、愛煙家にとってフランスらしい雰囲気を楽しめる最適の場所です。美しい街並みを眺めながら、カフェオレとともに一服する時間は、きっと旅の素晴らしい思い出となるでしょう。
タバコの購入方法 – 知っておきたい基本情報

フランスに到着してからタバコを買おうと考えている方もいるかもしれません。しかし、日本のようにコンビニやスーパー、自動販売機で気軽に入手することはできません。フランスでタバコを購入する場合は、決められた販売店を訪れる必要があります。ここでは、フランスにおけるタバコの買い方を詳しく解説します。
どこで買える?「TABAC」の看板を探そう
フランスでタバコや葉巻などのたばこ製品を販売できるのは、「TABAC(タバック)」と呼ばれる専用の販売店のみです。街中を歩くと、赤いひし形の中に「TABAC」と書かれた目立つ看板をよく見かけるでしょう。この看板が購入場所の目印です。
TABACは、カフェやバー、新聞・雑誌販売店(Maison de la Presse)を兼業していることが多く、外観は普通のカフェのように見える場合もあります。しかし、この赤いひし形の看板があれば、そこではタバコを取り扱っています。購入は対面式で、カウンター越しに店員に欲しい銘柄を伝えて購入します。銘柄はショーケースにはずらりと並んでいないことが多く、カウンターの後ろの棚に保管されているため、銘柄がわからなければ、自分が普段吸っている種類を伝えるとよいでしょう(例:「Marlboro Gold, s’il vous plaît.(マールボロ・ゴールド、お願いします)」)。
TABACではタバコのほかに、新聞や雑誌、宝くじ(LOTO)、競馬の投票券(PMU)、切手、バスや地下鉄の回数券(carnet)、文具、飲み物なども販売しており、地元の人々の日常に密着した多機能店舗の役割も果たしています。何か困ったことがあれば、店員に相談してみるのも良いでしょう。
タバコを買う際に注意したいのが営業時間です。TABACは個人経営の小規模店舗が多く、日曜や祝日は休みだったり、昼休憩を長めにとる(13時〜15時頃)、夜も早めに閉店する(19時頃)ことが一般的です。特に地方の小さな町ではこの傾向が強いため、必要な時にすぐ買えるよう、営業時間を事前に調べるか早めに購入しておくことをおすすめします。
年齢制限と身分証明書の提示
フランスでは、法律により18歳未満へのたばこ製品の販売が厳しく禁止されています。この規則は非常に厳格に運用されており、違反した販売者には厳しい罰則が科せられます。
そのため、購入者が18歳未満に見える場合、店員は身分証明書の提示を求める義務と権利があります。アジア人は欧米の人々に比べて若く見られやすいため、20代はもちろん時には30代でも年齢確認を求められることがあります。その際には、パスポートや国際運転免許証など、生年月日が記載された写真入りの公的身分証明書を提示できないと販売を断られることになります。
タバコを購入する際は、パスポートの原本かそのコピー(写真ページ)を持っておくと安心です。特に原本を持ち歩くのに抵抗があれば、スマートフォンで鮮明に撮影した写真でも、多くの場合身分証明として認められます。スムーズに購入するため、これらの準備を忘れないようにしましょう。
フランスで人気のタバコ銘柄と価格
フランスで販売されているタバコは、国際的なブランドからフランス独自の銘柄まで多彩です。日本でもおなじみの「Marlboro(マールボロ)」「Camel(キャメル)」「Lucky Strike(ラッキーストライク)」などは、どこでも手に入ります。フランスの伝統的な銘柄としては、黒タバコ(タバコ葉を乾燥・発酵させた独特の香りが特徴)の「Gauloises(ゴロワーズ)」や「Gitanes(ジタン)」が有名です。かつて多くの文化人に愛されたこれらの銘柄を試してみるのも旅行の楽しみの一つでしょう。
ただし、最も驚くのが価格面です。前述の通り、フランス政府の厳しい増税政策により、タバコの価格は年々上昇しています。2024年現在、主要銘柄の1箱(20本入り)は11ユーロから12ユーロ程度が相場で、日本円に換算すると1,800円以上となり、日本のおよそ3倍の価格です。この高価格は喫煙抑制を目的とした政策の一環で、今後も値上がりが予想されています。
また、フランス(およびEU全域)で販売されているタバコのパッケージには、健康への警告を促すため、喫煙がもたらす病気の衝撃的な写真が大きく印刷されています。日本のシンプルで控えめなパッケージに慣れていると、かなりインパクトがあるでしょう。これもまた、フランスが喫煙に対して非常に厳しい姿勢を示している証拠と言えます。
日本からのタバコの持ち込みについて
フランス国内のタバコ価格を踏まえると、日本から普段愛用しているタバコを持参したいと考えるのは自然なことです。しかし、海外へタバコを持ち込む際には、免税で認められている数量に制限が設けられています。規定数量を超えて持ち込んだ場合、高額な税金が課されたり、没収されたりすることがあるため、ルールをしっかり把握しておくことが大切です。本稿では、日本からフランスへタバコを持ち込む際のポイントを解説します。
免税で持ち込めるタバコの数量
日本のようにEU圏外の国からフランスに入国する際、個人使用を目的とした免税範囲で持ち込めるタバコ製品の数量は、フランス税関により次のように定められています。
- 紙巻きタバコ: 200本(一般的な20本入りの箱であれば10箱、つまり1カートン)
- 細巻きタバコ(シガリロ): 100本(1本あたり3g以下の葉巻)
- 葉巻: 50本
- 刻みタバコ(手巻き用など): 250g
これらは「いずれか1種類を上限」とするか、複数種類を組み合わせる場合は、それぞれの割合の合計が100%となるよう調整する必要があります。たとえば、紙巻きタバコを100本(上限の50%)、葉巻を25本(上限の50%)というように配分する形です。また、17歳未満の旅行者については、タバコの免税持ち込みは認められていません。
この免税枠はあくまで個人使用目的に限られます。1カートンは一般的な旅行期間には十分な量といえるでしょう。超過した場合はフランス到着時に税関で申告し、関税や付加価値税を支払う必要があります。申告を怠ると脱税と見なされ、税金に加えて高額の罰金が科される可能性があるため、必ず規定数量を守ってください。詳細についてはフランス税関の公式サイトをご覧いただき、渡航前に確認しておくと安心です。
加熱式タバコ(IQOSなど)および電子タバコ(VAPE)の持ち込みについて
近年利用者が増えている加熱式タバコ(IQOS、gloなど)や電子タバコ(VAPE)に関しても、フランスへの持ち込みは基本的に可能です。
- 本体(デバイス): 加熱式や電子タバコの本体にはリチウムイオン電池が搭載されています。航空会社の規定により、リチウムイオン電池内蔵の電子機器は受託手荷物への収納が禁止されており、必ず機内持ち込み手荷物として携帯する必要があります。これは火災リスクを防止するための国際的なルールですので、厳守してください。誤ってスーツケースに入れてしまうと、保安検査で呼び止められて荷物を開けるよう求められます。
- 消耗品(タバコスティック・リキッド): IQOSのヒーツやテリア、gloのネオスティックなど専用のタバコスティックは、税関では一般的に「紙巻きタバコ」と同様に扱われます。したがって、免税範囲も紙巻きタバコと同じく「200本まで」と考えるのが安全です。一方、電子タバコ用リキッドは液体物の機内持ち込み制限(容量100ml以下の容器に入れ、1リットル以下のジッパー付き透明袋にまとめる)に準じるため注意が必要です。
フランス国内、特にパリのような大都市ではVAPE専門店が増えており、多彩なフレーバーのリキッドや各種デバイスが購入可能です。しかし、加熱式タバコ用の専用スティックは日本ほど手軽にどこでも手に入るわけではありません。TABACで取り扱いがある場合もありますが、品揃えには限りがあります。普段愛用している銘柄がある場合は、免税範囲内で日本から十分に持参しておくことをおすすめします。
喫煙者のための実践的行動ガイド

ルールを理解したら、いよいよフランスの街へ出かけましょう。ここでは、実際に喫煙する際に役立つ、より実践的なポイントをご紹介します。マナーを守り、スマートに振る舞うことが、快適な旅の秘訣です。
パリの街角でタバコを吸いたい!どこで吸うのが正解?
まず押さえておきたいのは、「法律で禁じられていない屋外の公共スペース」で喫煙することです。具体的には、大通りの歩道や広場などが該当します。ただし、単にタバコを吸うだけではマナー違反となることも。特に気をつけたいのは「吸い殻の処理」です。
パリの市街地では、歩道の至るところに公共のゴミ箱が設置されています。さらに、多くのゴミ箱の上部には、吸い殻を消して捨てられる金属製の灰皿が取り付けられています。喫煙するときは、まずこの灰皿付きのゴミ箱の近くを探すのが最もスマートな方法です。そこで立ち止まり、タバコを吸い終えたらしっかり火を消し、必ず灰皿部分に吸い殻を入れましょう。これにより、ポイ捨てを防止し、火災の危険も減らせます。
もし灰皿付きのゴミ箱が近くに見当たらない場合は、どうしたらよいでしょうか?その答えは次の項目で紹介する必須アイテムにあります。
絶対に避けたいのが「吸い殻のポイ捨て」です。フランスではこれを軽犯罪とみなし、厳しい罰金が科されることがあります。罰金額は地域によって異なりますが、パリ市では135ユーロ(約22,000円)が一律で課されます。観光客であっても免除されることはありません。美しい街並みを守る意識はもちろん、思わぬ出費を避けるためにも、吸い殻の投げ捨ては絶対にやめましょう。
携帯灰皿は必須の持ち物!
前述したように、灰皿付きのゴミ箱がすぐには見つからないことも珍しくありません。そんな状況に備えて、喫煙者の皆さんにぜひ持参をおすすめしたいのが「携帯灰皿」です。
日本では喫煙者のマナーとして広く普及している携帯灰皿ですが、フランスでは案外使っている人が少ないのが現状です。だからこそ、携帯灰皿をスマートに使う姿は周囲から洗練された印象を持たれます。タバコを吸い終えたら、サッと携帯灰皿に吸い殻を収納し、バッグに戻す。この一連の動作が責任感ある大人のマナーとして好評価を得るでしょう。
私自身、アパレル業界で働いている立場から、ファッションの一部として楽しめるおしゃれな携帯灰皿を選ぶことをおすすめします。レザー製の高級感あるものや、カラフルなデザインのものなど、旅のスタイルに合わせて選べば、単なる道具以上に旅気分を盛り上げる素敵なアクセサリーになります。機能性だけでなくデザイン性にもこだわり、自分のお気に入りを見つけてください。それがフランスの街角でスマートに振る舞うための、最高にクールなアイテムになるはずです。
ホテル選びのポイント
一日の終わりに、ホテルの部屋でゆったりと一服したい方も多いでしょう。ただし、フランスのホテル選びは喫煙者にとって少し注意が必要です。
まず知っておきたいのは、フランスの多くのホテルが「全館禁煙(non-fumeur)」であること。予約サイトのホテル情報にも記載されている場合が多いので、必ずチェックしましょう。全館禁煙のホテルでは、客室内だけでなくバルコニーや窓際での喫煙も禁じられています。もし禁煙の部屋で喫煙が発覚すると、タバコの臭いを消すための特別清掃費として、高額な罰金(数百ユーロに及ぶことも)を請求されることがあるため絶対に避けなければなりません。
では、喫煙可能なホテルを見つけるにはどうすればよいでしょうか?いくつかの方法があります。
- 予約サイトのフィルター機能を使う: Booking.comやExpediaなどの大手予約サイトには、検索条件を絞るフィルターがあります。その中に「喫煙可の部屋(Smoking rooms)」や「喫煙可能施設」といった項目があればチェックを入れて検索してください。しかし、喫煙可能なホテルは非常に少ないのが現状です。
- 「バルコニー付き」の部屋を探す: 喫煙可能な部屋が見つからない場合の次善策として、「バルコニー(balcon)」や「テラス(terrasse)」付きの部屋を選ぶ方法があります。部屋自体は禁煙でも、屋外にあるプライベートバルコニーでの喫煙が許されていることも。ただしホテルのポリシー次第なので、予約前に必ずホテルに問い合わせて確認しましょう。メール等で「Est-il permis de fumer sur le balcon?(エティル ペルミ ドゥ フュメ スー ル バルコン?=バルコニーでの喫煙は許可されていますか?)」と尋ねておくと安心です。
- 直接ホテルに問い合わせる: 予約サイトの情報ではわからないことも多いので、最終的にはホテルにメールや電話で直接問い合わせるのが最も確実です。喫煙者であることを伝え、喫煙可能な部屋やスペースがあるかどうか確認しましょう。
手間ではありますが、このような事前確認を怠らないことが、滞在中の不要なトラブルやストレスを避けるための鍵となります。
トラブル回避術 – 罰金や注意を受けないために
どれだけ注意を払っていても、慣れない海外の地では無意識のうちにルールを違反してしまったり、周囲とのトラブルに巻き込まれる可能性は完全には排除できません。万が一に備え、冷静な対応方法を身につけておきましょう。
罰金の目安と支払い方法
フランスで喫煙に関する規則を破った場合、その場で罰金が科されることがあります。取り締まりを行うのは、警察(Police Nationale / Gendarmerie)や駅など特定の場所の保安職員です。
- 禁煙区域での喫煙: 公共交通機関や屋内禁煙エリアでの喫煙に対する基本的な罰金は68ユーロです。この支払いが定められた期限内に行われない場合には、金額が180ユーロ、さらに場合によっては450ユーロにまで引き上げられることがあります。
- 吸い殻の投げ捨て: 前述したように、吸い殻のポイ捨てに対する罰金はより重く、多くの都市で135ユーロに設定されています。
制服を着た担当者に違反を指摘されて罰金を科された際は、現場で支払いを求められるケースが一般的です。その際、必ず「罰金の理由」「金額」「支払いを証明する領収書(reçu)」の提示を求めて内容をよく確認しましょう。不当な請求や詐欺の可能性もゼロではないため、相手の身分証明書の提示を求める権利もあります。支払い方法は現金またはクレジットカードが可能な場合もありますが、基本的にはその場で支払う必要があります。「後で支払う」という選択肢は原則として認められていません。その場で支払いを拒否したり、その場から逃げようとしたりすると、事態がさらに悪化し、警察署へ連行される恐れもあります。指摘を受けたら素直に非を認め、速やかに支払いに応じるのが賢明です。
周囲の反応と言葉遣い – フランス人の対応
フランス人はかつて喫煙に寛容なイメージがありましたが、それも過去の話となりつつあります。健康志向の高まりとともに、タバコの煙を嫌う人や受動喫煙に敏感な人が年々増加しています。特に子どもの前での喫煙は厳しく見られ、公園の遊び場付近やベビーカーを押す人のそばでの喫煙は絶対に避けるべきです。
もし喫煙中に近くの人からフランス語で声をかけられたり、ジェスチャーをされた場合、煙に対する苦情の可能性が高いです。言葉がわからなくても、眉をひそめたり、手で煙を払うような動作があれば、それが注意のサインです。
そんなときは感情的になったり無視したりせず、すぐに「Pardon(パルドン=すみません)」や「Excusez-moi(エクスキューゼ・モワ=失礼します)」と一言謝罪し、タバコの火を消すかその場から離れましょう。丁寧に対応すれば大きなトラブルに発展することはほとんどありません。相手も理解してくれるはずです。異文化の環境では、お互いの違いを尊重し、謙虚な態度でコミュニケーションを取ることが何より重要です。
電子タバコ(VAPE)と加熱式タバコ(IQOS)の最新事情

紙巻きタバコの代替として、世界的に利用者が増えている電子タバコ(VAPE)や加熱式タバコ(IQOSなど)。では、フランスにおけるこれらの製品の現状はどうなっているのでしょうか。最新の事情を見ていきましょう。
フランスでのVAPE文化
フランスでは、電子タバコ(フランス語でcigarette électroniqueまたはvapoteuseと呼ばれます)が若い世代を中心に広く普及し、一種のサブカルチャーとして根付いています。パリの街を歩けば、大型のデバイスから大量の蒸気を吐く「ベイパー(Vaper)」たちをよく目にすることでしょう。
この人気を受けて、都市部の至る所にVAPE専門店(Vape Shop)が点在しています。専門店では多様なデザインのデバイスはもちろん、フルーツ系・デザート系・タバコ系など非常に多彩なフレーバーのリキッドが販売されています。加えてニコチンの有無や濃度も選択可能で、禁煙補助として使用する人も多いです。もしあなたがVAPEユーザーなら、現地のショップで日本では見かけない珍しいリキッドを探す楽しみもあるでしょう。
一方で、近年フランスで急速に流行したのが、「Puff(パフ)」と呼ばれる使い捨て型の電子タバコです。手軽さやカラフルなデザインが若者に支持されましたが、そのポイ捨て問題による深刻な環境汚染や、若年層の喫煙入り口になるとの批判も強くなりました。このためフランス政府は、環境保護および公衆衛生の観点から、使い捨て電子タバコの禁止法案を成立させ、2024年後半に施行される見込みです。このように、VAPEを取り巻く環境は規制の変化を迎えています。
使用場所のルールは紙巻きタバコと同様?
では、電子タバコや加熱式タバコはどこでも自由に使用できるのでしょうか。答えは「いいえ」です。これらの製品の使用に関するルールは、紙巻きタバコの規定とほぼ同等、もしくはそれに準じて判断するのが安全です。
フランスの法律では、電子タバコの使用は以下の場所で明確に禁止されています。
- 学校などの教育施設の敷地内
- 公共交通機関(バス、電車、地下鉄など)内
- 密閉された職場内
飲食店(レストランやバー)に関しては、法律上は紙巻きタバコのような全面禁止の規定はありませんが、多くの店舗が自主的に電子タバコや加熱式タバコの店内使用を禁じています。これは他の客への配慮(蒸気の匂いや見た目を不快に感じる人がいるため)や、紙巻きタバコの喫煙誘発防止のためです。店舗の入り口や内部に「Vapotage interdit(電子タバコ禁止)」のステッカーを貼っている例も多く見られます。
結論として、トラブル回避のためには、「紙巻きタバコが禁止されている場所では、電子タバコや加熱式タバコも使用しない」というシンプルな原則を守るのが最も賢明です。例えばカフェのテラス席など屋外で喫煙可能な場所であれば問題ありませんが、その際も周囲の人への配慮を忘れないようにしましょう。
これからのフランス旅行とタバコの付き合い方
これまで、フランスにおける喫煙に関するさまざまなルールやマナー、最新の情報について詳しくご紹介してきました。かつての自由なイメージとは異なり、現代のフランスでは喫煙に対して厳格な姿勢が取られていることをご理解いただけたかと思います。
とはいえ、これは決して喫煙者の旅行を否定するものではありません。重要なのは、ルールを正確に把握し、周囲への配慮を欠かさずにスマートに行動することです。決められた場所でマナーを守りながら一服する時間は、旅の緊張を和らげ、美しい風景をより深く味わうためのアクセントにもなりえます。携帯灰皿を携えて、灰皿付きのゴミ箱のそばでひと息つく。カフェのテラス席で、隣の方に笑顔で軽く会釈をしながらタバコに火をつける。そうした洗練された振る舞いこそ、成熟した大人の旅のスタイルと言えるのではないでしょうか。
また、この機会にタバコ以外の楽しみを見つける旅を計画してみるのも素敵です。喫煙所を探し求める時間を、普段は見過ごしてしまいがちな小さなブティックやギャラリーを訪れるひとときに変えてみる。マルシェで地元の人々と交流しながら新鮮なフルーツを味わう。セーヌ川のほとりを気の向くままに散歩する。タバコから少し距離を置くことで、これまで気づかなかった新たなフランスの魅力に触れられることでしょう。
フランスの禁煙政策は今後もさらに変化・進展していく可能性があります。この記事でご紹介した情報も、時間の経過とともに更新されることが考えられます。ご旅行の直前には、在フランス日本国大使館のウェブサイトやフランス観光開発機構の公式サイトなどで最新情報を一度ご確認されることをお勧めします。
正しい知識と少しの思いやりがあれば、喫煙者も非喫煙者も、誰もがこの美しいフランスで忘れられない素晴らしい時間を過ごせるはずです。あなたのフランス旅行が最高の思い出となることを心から願っています。

