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ドーバー海峡を35分で横断!車ごと列車に乗る夢の体験「ユーロトンネル」歴史と完全ガイド

イギリスとヨーロッパ大陸。かつて、この二つの地域を隔てるのは、白く険しい断崖と、気まぐれな空模様のドーバー海峡でした。船か飛行機でしか渡れなかったこの海峡に、今やわずか35分で渡れてしまう驚異の海底トンネルがあることをご存知でしょうか。その名も「ユーロトンネル」。正式名称は「英仏海峡トンネル(Channel Tunnel)」。今回は、ただの移動手段ではない、旅の体験そのものを変えてしまうこの巨大インフラの魅力に、元自動車整備士の視点から迫ってみたいと思います。自分の愛車やレンタカーと共に、列車に乗り込み、海の底を駆け抜ける。そんなSF映画のような体験が、現実にあるのです。さあ、イギリスとフランスを結ぶ夢のトンネル「ユーロトンネル」の歴史を紐解き、実際に利用するための完全マニュアルを手に、まだ見ぬヨーロッパの道へと走り出しましょう。

ユーロトンネルでヨーロッパ大陸に渡ったら、次はワイン発祥の地ジョージアで8000年の歴史を味わう旅もおすすめです。

目次

夢の海底トンネル「ユーロトンネル」の全貌

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ユーロトンネルと聞くと、多くの人がロンドンとパリを結ぶ高速列車「ユーロスター」を思い浮かべるかもしれません。しかし、今回私が注目したいのは、車やドライブ好きにとっての聖地とも言えるサービス、「ル・シャトル(Le Shuttle)」です。この二つは、同じトンネルを利用していますが、その目的やスタイルは大きく異なります。

「ル・シャトル」と「ユーロスター」の違いとは?

まずは、この二つのサービスの違いをはっきりさせておきましょう。旅の計画を立てる際の基本的なポイントです。

ユーロスター(Eurostar)

こちらは人を運ぶ高速旅客列車です。ロンドンのセント・パンクラス駅、パリの北駅、ブリュッセルの南駅といった主要都市の中心駅を直接結んでいます。スーツケースを持って乗車する、日本の新幹線に似たイメージです。都市間の移動を素早く快適に行いたいビジネスや観光の利用者に最適で、車両の持ち込みはできません。

ル・シャトル(Le Shuttle)

今回の主役となるのがこちらです。ル・シャトルは乗用車、キャンピングカー、バス、バイク、トラックなどの「車両」を、その運転手や乗員とともに運ぶ大型の貨物列車です。イギリス側のフォークストーン(Folkestone)とフランス側のカレー(Calais)にある、高速道路に直結した広大なターミナル間を往復しています。つまり、ターミナルまで自分の車で行き、そのまま車ごと列車に乗り込み、海峡を渡って目的地でまた車ごと降り、そのまま走り出すという、シームレスなドライブ旅行を叶えるサービスです。

私のように大陸横断を目指す者にとって、このル・シャトルはまさに救世主です。フェリーのように天候に左右される心配がほとんどなく、乗船や下船の手続きの煩雑さもありません。そして何より、自分が慣れ親しんだ車内で旅を続けられる安心感は計り知れません。この記事では、この「ル・シャトル」を利用した旅に絞り、その魅力と全容を詳しく解説していきます。

驚異の技術力!トンネルの構造

ユーロトンネルは、実は一本のトンネルではありません。安全性を極限まで高めるため、非常にユニークな構造を採用しています。海底約40メートルの地中を、3本のトンネルが並行して走っているのです。

走行トンネル(北行き・南行き)

直径7.6メートルのトンネルが2本あり、それぞれ一方通行で北行き(フランス→イギリス)と南行き(イギリス→フランス)の列車が通ります。ル・シャトルやユーロスターが利用するのは、この二つの走行トンネルです。

サービス・トンネル

2本の走行トンネルの間に、直径4.8メートルの小さめのトンネルが走っています。これがサービス・トンネルと呼ばれるもので、平常時はメンテナンス車両の走行や換気を行っていますが、真の役割は緊急時に発揮されます。もし走行トンネルで火災やトラブルが発生した場合、乗客はこのサービス・トンネルを通って安全に避難できる設計です。約375メートルごとに、走行トンネルとサービス・トンネルをつなぐ連絡通路が設けられており、世界最高水準の安全対策が施されています。この徹底した安全配慮には、元整備士として深く感銘を受けます。

全長約50.45km、そのうち約37.9kmが海底部分という、この海底トンネルは世界最長の記録を持っています。壮大なこのプロジェクトがどのようにして実現したのか、その歴史に迫ってみましょう。

世紀のプロジェクト!ユーロトンネル建設に秘められた歴史

イギリスとフランスを陸上で結ぶという壮大な構想は、じつに200年以上も前から描かれてきました。しかし、その実現までの道のりは決して容易ではなく、技術的な課題や政治的な対立、さらに二度の世界大戦によって、計画は幾度となく頓挫してきたのです。

ナポレオンも夢見た海底トンネルの構想

ユーロトンネルの最も古い構想は、実に1802年にまで遡ります。これはフランスの技術者アルベール・マチュー=ファヴィエがナポレオン・ボナパルトに提案した計画でした。彼のアイデアは、海底にトンネルを掘り、オイルランプで照らされた中を馬車が行き交うという、当時としては極めて斬新なものでした。海峡の中央には人工島を築き、馬を乗り換えるための休憩所も設ける計画だったそうです。しかし、その時代の英仏関係は極めて緊張しており、この夢のような計画が実現することはありませんでした。

その後も19世紀を通じて何度かトンネル計画が持ち上がりました。蒸気機関車の登場に伴い、鉄道トンネルのアイデアが生まれ、1880年代には実際に試掘が両国で開始されました。イギリス側で約1.8km、フランス側で約1.6kmの掘削が行われたのです。しかし、「トンネルは国防の脅威になる」というイギリス軍の強い反対により、プロジェクトは再び中断されました。掘り進められたトンネルの跡は今でもひっそりと残っているといいます。

11台の大型TBMが切り開いた道

時代が進み、20世紀後半になるとヨーロッパ統合の流れの中で、英仏間の海底トンネル構想は再び具体性を帯びてきました。1986年にはイギリスのサッチャー首相とフランスのミッテラン大統領がカンタベリー条約に調印し、官民連携の巨大プロジェクトとしてトンネル建設が正式に決定されました。

そして1988年、両国の沿岸から歴史的な掘削作業がスタートします。この難工事を支えたのがTBM(トンネルボーリングマシン)と呼ばれる巨大な掘削機でした。全長200メートル、1,000トンを超える重量を誇るこのマシンは、地中の巨大なモグラのような存在です。先端に装着されたカッターヘッドが回転しながら地盤を掘削し、後方ではセグメントと呼ばれるコンクリートブロックを順次組み立ててトンネルの壁面を形成していくという驚異的な装置です。合計11台のTBMがイギリス側とフランス側から、一日に数十メートルの速度で、慎重かつ着実に掘削を進めていきました。

この建設現場はまさに時間との闘いであり、約13,000人の作業員が24時間体制でプロジェクトに従事しました。彼らは高圧の地下環境や時折襲う出水といった危険と隣り合わせで作業を続けていたのです。

歴史に刻まれた瞬間「ハンドシェイク」

そして1990年12月1日、世界が固唾をのんで見守る中、歴史的な瞬間が訪れます。イギリス側から掘り進められていたTBMとフランス側のTBMが海底でついに合流しました。最後の数メートルは手作業で慎重に掘削され、やがて数センチの直径の穴が貫通。その穴を通じてイギリス人作業員のグラハム・ファグとフランス人作業員のフィリップ・コゼットが固い握手を交わしました。両者は国旗を交換し、シャンパンで祝杯を挙げる姿が世界中に報じられました。これは長年の英仏対立の歴史を乗り越え、ヨーロッパの一体化を象徴する感動的なシーンとなったのです。

貫通から約3年半後の1994年5月6日、エリザベス女王とミッテラン大統領が臨席する華やかな式典のもと、ユーロトンネルはついに開業の日を迎えました。ナポレオンの夢が約2世紀の時を経て実現し、イギリスはついにヨーロッパ大陸と陸路で繋がったのです。この建設の歴史については、公式サイトの歴史ページでも詳しく紹介されています。

実践ガイド!ユーロトンネル「Le Shuttle」完全乗車マニュアル

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さて、歴史の壮大さに思いを馳せたところで、いよいよ実践編に入ります。ここからは、私が実際に体験した流れに沿って、チケット予約から乗車までの手順を誰にでも分かりやすく詳しく解説します。この記事を読めば、あなたも迷わずドーバー海峡を渡ることができるでしょう。

STEP 1: チケット予約 – 旅のプランはここからスタート

ユーロトンネルの旅は、オンラインでのチケット予約から始まります。特に夏のバカンスシーズンや週末は混雑が予想されるため、早めの予約がおすすめです。

予約手順と公式サイトについて

チケットの予約は、Eurotunnel Le Shuttle公式サイトで行うのが最も安心で簡単です。サイトは英語ですが、直感的に操作できるため予約はスムーズに進みます。

予約ページでは、以下の情報を入力していきます。

  • 往復か片道かの選択: 「Single(片道)」か「Return(往復)」を選択します。
  • 出発地と目的地: イギリス側なら「Folkestone」、フランス側なら「Calais」を指定してください。
  • 日付と時間帯: ご希望の出発日とおおまかな時間帯を入力します。
  • 車両の種類とサイズ: ここが重要なポイントです。車のタイプ(普通車、バン、キャンピングカーなど)と車高を選びます。特に、ルーフボックスや自転車キャリアを装着している場合は、全長・全高を正確に把握し、「Car up to 1.85m high」や「Car over 1.85m high」など適切なオプションを選びましょう。誤った選択をすると乗車不可となる恐れがありますので注意が必要です。
  • 乗車人数: 運転者を含めた人数を記入します。

料金体系と各種チケットの特徴

料金は需要と供給に応じて変動します。一般的に、週末や祝日、また日中の便は価格が高く、平日の早朝や深夜は比較的安価です。チケットには複数の種類があり、それぞれサービスの内容や柔軟性に違いがあります。

Standard(スタンダード)

最もベーシックなチケットです。基本的には予約した便にのみ乗車可能ですが、2時間以内の前後の便に空きがあれば無料で変更できる場合もあります(保証はありません)。予約変更やキャンセルには手数料がかかるか、返金不可の場合も多いため、日程が確定している方に向いています。

Standard Refundable(スタンダード・リファンダブル)

スタンダードの柔軟性を高めたチケットです。出発前であれば手数料なしで全額返金が可能ですが、便の変更ルールはほぼスタンダードと同じです。

Flexiplus(フレキシプラス)

私が長距離ドライブでよく選ぶのがこのフレキシプラスです。料金は高めですが、それに見合う価値があります。最大の利点は、予約した日のどの便でも追加料金不要で自由に乗車できること。例えば、15時の便を予約していても、高速道路の渋滞で18時に着いてしまっても、空いていれば次の便に問題なく乗れます。逆に早めに到着した際は前の便に乗ることも可能です。さらに、専用チェックインレーン、専用パスポートコントロール、無料のドリンクやスナック、Wi-Fi完備の専用ラウンジも利用できます。時間的にも精神的にも余裕が生まれ、安全運転へとつながります。特に旅程が不確定な大陸横断の旅では非常に心強い選択肢です。

予約時に車両のナンバープレートを登録しておくと、当日のチェックインが格段にスムーズになります。

STEP 2: ターミナルへ – 出発前の準備と忘れ物チェック

予約が済んだら、出発準備です。持ち物の確認は怠らないようにしましょう。

必携のアイテムリスト

  • パスポート: 全員分必ず携帯してください。イギリスはシェンゲン加盟国ではなく、EU圏との間でも必ず国境審査があります。
  • 予約確認書: メールで送られてくる予約確認書(予約番号記載)をスマホに保存するか、印刷しておきましょう。チェックイン時に必要です。
  • 運転免許証と国際運転免許証: 日本の免許証だけで運転可能な国もありますが、国際運転免許証を用意しておくと安心です。
  • 車検証(V5C Registration Document): レンタカーの場合はレンタル契約書が代わりとなります。
  • 自動車保険証明書: 対人・対物保険の有効性を示す書類。グリーンカードなどが該当します。

元自動車整備士からのアドバイス:イギリス・フランス運転用の車両準備

特にイギリスでの運転は大陸のヨーロッパと異なるルールが多いため、準備が必要です。

  • GBまたはUKステッカー: イギリス以外の国で登録された車両は、イギリス走行時に国籍を示すステッカーの掲示が義務付けられています。ブレグジット後は「UK」表示が推奨されています。
  • ヘッドライトの調整: イギリスは左側通行、フランスは右側通行のため、対向車を眩惑させないよう光軸調整用のステッカー(ヘッドランプコンバーター)を貼るか、車内設定でライトの方向を切り替えてください。新しい車は車内操作で切り替え可能なこともあります。
  • 警告・安全用品: フランスでは反射ベスト(ハイビジジャケット)と三角表示板の搭載が義務付けられています。イギリスでも携帯が強く推奨されているので忘れずに用意しましょう。

ターミナル到着の目安時間

公式サイトでは、出発時刻の最低45分前まで、遅くとも120分前までにチェックインを済ませるよう推奨しています。初めて利用する方や週末は混雑が予想されるため、余裕を持って90分〜2時間前に到着すると安心です。Flexiplusの場合は時間に余裕があるため、さらに気軽に行動できます。

STEP 3: チェックインから乗車まで – 手続きのスムーズな流れ

フォークストーンかカレーの巨大ターミナルへ到着したら、いよいよ手続き開始です。とはいえ、すべて車に乗ったまま進めるドライブスルー形式なので安心してください。

自動チェックイン

ゲートを通過すると、自動チェックイン機が並んでいます。カメラが予約時に登録したナンバープレートを自動認識し、タッチパネルに予約情報が表示されます。もし認識されなければ、予約番号かクレジットカード番号を入力すれば問題ありません。画面の指示に従うと、搭乗証(ハンガー)が発券され、乗車列車の出発時刻と待機レーンのアルファベット(例:W)が印字されています。

国境審査(パスポートコントロール)

ユーロトンネルの最大の特徴の一つが、国境審査を乗車前に済ませられる「ジュクスタポーズ方式(Juxtaposed controls)」です。

  • フランス(カレー)→イギリス(フォークストーン): フランスの出国審査通過後、すぐイギリスの入国審査ブースがあります。つまりフランス国内でイギリス入国手続きを完了できます。
  • イギリス(フォークストーン)→フランス(カレー): 同様に、イギリスの出国審査後すぐにフランスの入国審査があります。

どちらの場合も、車に乗ったまま窓を開けてパスポートを渡すだけで簡単です。簡単な質問(滞在先や目的など)に答えたら手続き完了です。

セキュリティチェック

国境審査の後、簡単なセキュリティチェックがあります。係員が爆発物探知用の布で車内外を軽く拭くこともありますが、すぐに終わります。

ターミナルビルと搭乗レーンへ移動

すべての手続きが終わったら、搭乗票に示されたレーンへ移動します。時間に余裕があれば、巨大なターミナルビル内で休憩可能です。免税店やレストラン、カフェ、トイレに加え、子ども用遊び場やペットのための運動エリアもあり、旅の疲れを癒すのにぴったりです。

STEP 4: いざ乗車!列車内の過ごし方

出発時間が近づくと電光掲示板に「Boarding Now」の表示が出ます。係員の案内に従い車を進めると、前方に巨大な列車の入口が見えてきます。スロープを登り、そのまま自走で列車内へ進入。列車は多くの場合2階建て構造で、係員が手際よく駐車位置まで誘導してくれます。

車を駐車したらパーキングブレーキをしっかりかけてエンジンを切ります。ここから約35分間、列車による移動です。乗客は車外に出て自由に過ごせ、車両間にはトイレも完備されています。窓はないものの車内は明るく、揺れはほとんど感じません。トンネル内は携帯電話の電波が基本的に届きませんが、専用ラジオで運行情報や到着案内を聞くことが可能です。

あっという間の35分間で、列車は対岸のターミナルへ到着します。アナウンスが流れたら車に戻り、エンジンをかける準備をしましょう。先頭から順にスロープをゆっくり下って列車を降ります。そこはもう、標識や言語が異なる新しい国。あとはそのまま高速道路に合流し、次の目的地へドライブを再開できます。

知っておきたいユーロトンネルのルールと注意点

快適かつ安全な旅を実現するために、ユーロトンネルではいくつかの重要なルールが設けられています。特に、持ち物や同行するペットについては事前に確認しておくことが不可欠です。トラブルを未然に防ぐためにも、十分に理解しておきましょう。

持ち込み禁止・制限されている物品

安全面を考慮し、特定の物品の持ち込みは禁止されています。

  • 危険物: ガソリンやガスボンベ、花火、毒物などの危険物は持ち込めません。キャンプ用のガスボンベもこれに含まれるため注意が必要です。
  • LPG(液化石油ガス)車: LPG燃料を使用する車両は、特定の条件を満たす場合のみ搭乗が許可されます。例えば、タンクが車両メーカーによって恒久的に装着されていることや、タンク内のガス残量が80%以下であることなどの厳格な規定があります。LPG車での利用を検討している場合は、必ず公式サイトのLPG車に関する規定を事前に確認し、不明点があればお問い合わせください。
  • 大量の現金や特定の食品: イギリスとEU間の移動においては、税関規則も適用されます。10,000ユーロ相当以上の現金を携帯する場合は申告が必要です。また、ブレグジット以降、肉製品や乳製品といった一部食品の持ち込みが個人使用目的であっても厳しく制限されています。最新情報は英国政府の公式ウェブサイトなどでご確認ください。

ペットとともにドーバー海峡を渡る場合

ユーロトンネルは、ペット連れの旅行者から高い支持を受けています。飛行機のようにペットを貨物室に預ける必要がなく、旅の間ずっと一緒に過ごせるためです。ただし、イギリスとEU間でペットを連れて移動するには、厳格な手続きが求められます。

  • 必要な条件:
  • マイクロチップ: ISO規格に適合したマイクロチップの装着が必須です。
  • 狂犬病予防接種: マイクロチップ装着後に受ける必要があります。
  • 動物検疫証明書(Animal Health Certificate): 出発前に獣医による発行が必要です。なお、イギリスからEUへ向かう際は、EU内の獣医が発行したペットパスポートも有効ですが、英国発行のものは使用できません。
  • 条虫(サナダムシ)駆除: 犬がイギリスに入国する際には、入国の1~5日前に獣医が行う条虫駆除の投薬とその証明書が必須です。

これらの手続きは複雑で、どれか一つでも不備があるとペットの入国が拒否されたり、検疫施設に高額な費用で預けられたりする恐れがあります。ペットと旅行する計画を立てる際は、数ヶ月前から準備を始め、公式サイトのペット旅行に関する情報ページや英国・EUの動物検疫関連の公式情報を十分に確認してください。なお、ターミナルにはペット専用のチェックインカウンターが設置されており、そこで全ての書類やマイクロチップの確認が行われます。

万が一のトラブルに備える

どれほど便利なサービスであっても、予期せぬトラブルが起こる可能性はあります。しかし、あらかじめ対応方法を把握しておけば、慌てることなく冷静に対応することが可能です。

遅延や運休が発生した場合

ユーロトンネルは天候の影響を受けにくいですが、技術的な故障やトンネル内での車両トラブル、または安全上の理由により、遅延や一時的な運行停止が生じることがあります。

  • 最新情報の確認: まずは公式サイトの「Travel Information」ページや公式X(旧Twitter)アカウントをチェックし、現在の運行状況を把握しましょう。すでにターミナルにいる場合は、電光掲示板やアナウンスに注意を払ってください。
  • 対応策: 大幅な遅延が発生した際は、チケットの種類に応じた対応が行われます。Standardチケットの利用者は、空席があれば後続の便に振り替えられますが、待ち時間が発生する場合があります。一方、Flexiplusチケット保持者であれば、運行再開後に優先的に案内されるため、そのメリットが活かされます。
  • 代替手段の検討: もし長時間の運行見合わせが続く場合は、代わりにフェリーの利用も考慮しましょう。ドーバーとカレー間にはP&O FerriesやDFDS Seawaysなど複数のフェリー会社が頻繁に運航しています。ユーロトンネルのチケットがフェリーに振り替えられる特別措置が取られることもありますが、基本的には自身で手配する必要があります。

予約内容の変更・キャンセル・返金について

旅程が変更になることもあるでしょう。予約の変更やキャンセルは、公式ウェブサイトの「My Eurotunnel」アカウントから手続きを進められます。

  • Standardチケット: 変更に際しては手数料が発生する場合が多く、出発時刻を過ぎると変更や返金はできません。キャンセルや返金の可否は、購入時の条件に準じます。
  • Flexiplusチケット: 出発日前であれば、無料で何度でも予約を変更可能です。キャンセルした場合は全額返金されます。この柔軟性により、旅行の自由度が大きく向上します。

トンネル内でトラブルが発生した際の対応

考えたくはない事態ですが、万が一トンネル走行中に火災などの緊急事態が起こっても、慌てる必要はありません。ユーロトンネルは世界最高水準の安全対策が施されています。

列車の乗務員は高度な訓練を受けており、彼らの指示に冷静に従うことが最も重要です。車内に煙が充満するような状況では、乗客は車から離れ、トンネルの壁にある避難扉から新鮮な空気が供給される中央のサービス・トンネルへ避難します。その後、サービス・トンネル内を走行する特殊な避難車両に乗り換え、地上へ脱出する仕組みとなっています。定期的に大規模な防災訓練も実施されており、安全性は常に確保されています。

ユーロトンネルが変えたもの – 社会・経済へのインパクト

ユーロトンネルの開業は、単に移動時間の短縮にとどまらず、イギリスとヨーロッパ大陸の関係性を根本から変革し、人や物、文化の交流を飛躍的に促進しました。

物流の中枢として

ユーロトンネルを通過する交通の約4分の1はトラックが占めています。生鮮食品から工業製品まで多種多様な貨物を積んだトラックが、24時間365日休みなくこのトンネルを行き来しています。フェリーのように悪天候での欠航リスクがほとんどなく、時間の正確さが高いため、サプライチェーンにおいて重要な役割を果たしています。イギリスのスーパーマーケットに並ぶヨーロッパ産の野菜や果物、そしてヨーロッパ大陸の市場に流通するイギリス製品の多くが、このトンネルを経由して輸送されています。まさに両経済圏を繋ぐ重要な動脈であると言えるでしょう。この巨大インフラの運営を手がけるのはGetlinkという企業で、その活動はヨーロッパ経済に大きな影響を及ぼしています。

人の移動と文化交流の活性化

車で気軽に国境を越えられるようになったことで、人々の生活スタイルにも大きな変化が生まれました。イギリス南東部に住む人々にとって、フランス北部は日帰りや週末の旅先として定着し、ワインの購入や美味しいランチを楽しむために気軽にフランスへドライブに出かけることが日常化しています。反対にフランスやベルギーからも多くの観光客が車でイギリスを訪れています。

こうした人の往来が盛んになることで文化交流も深まり、お互いの国に対する心理的な距離が縮まっていきます。ヨーロッパ市民としての一体感を醸成する上で、ユーロトンネルが果たしてきた役割は非常に大きいと言えるでしょう。

ブレグジット後の状況の変化

2020年にイギリスがEUを離脱(ブレグジット)したことで、ユーロトンネルの運営にも変化が生じました。これまで必要なかった税関手続きが導入され、パスポートにスタンプが押されるようになりました。当初は新たな手続きによる大混雑が懸念されましたが、ITシステムの導入や人員の増強により、現在では比較的スムーズな通過が維持されています。物理的な接続は変わらないものの、制度上での「国境」が再び明確になった象徴的な場所として、ユーロトンネルは新たな時代を迎えています。しかしながら、このトンネルがイギリスと大陸を結ぶ最も重要なインフラであることに変わりはありません。

ドーバーを越えて、まだ見ぬ景色へ

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ユーロトンネルは、単なる交通手段にとどまりません。それは、かつて実現不可能とされた夢を人間の知恵と情熱で形にした、壮大な歴史の証しです。そして私たちドライバーにとっては、旅の始まりを告げる胸が高鳴るゲートでもあります。

愛車のハンドルを握ったまま静かに列車に乗り込む時のわくわく感。わずか35分後、列車の扉が開いた瞬間に目に飛び込んでくる、今まで見たことのない道路標識や景色。それは、フェリーや飛行機では決して味わえない、世界がシームレスに移り変わる魔法のような体験です。

元自動車整備士として、私は車の持つ可能性を信じています。車とは単なる移動手段ではなく、自由の象徴であり、最高の旅のパートナーなのです。そのパートナーと共に、国境はもちろん、海さえも越えて行ける。ユーロトンネルは、そんな現代の冒険を叶えてくれる偉大な存在なのです。

イギリスの田園風景を駆け抜け、ユーロトンネルをくぐり抜けた先には、広大なフランスの大地が広がります。その先は、ベルギーの歴史ある古都を訪れるもよし、ドイツのアウトバーンを疾走するもよし、スイスのアルプスへと向かうもよし。道は限りなく続いています。この記事が、あなたの新たな旅への第一歩となれば、これ以上の喜びはありません。さあ、今度はあなたが、この素晴らしい体験を味わう番です。

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この記事を書いたトラベルライター

元自動車整備士、今はロードトリップ愛好家!レンタカーでアメリカ横断しながら、絶景とBGMとキャンプ飯を楽しんでます。車と旅、どっちも好きな方はぜひチェックしてください!

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