「我思う、ゆえに我あり(コギト・エルゴ・スム)」。このあまりにも有名な言葉を残した、近代哲学の父ルネ・デカルト。彼の思想は、現代に生きる私たちの考え方の根幹を築き、科学や社会の発展に計り知れない影響を与えました。しかし、彼がどのような人生を送り、どこでその深遠な思索を深めていったのか、詳しく知る人は意外と少ないのかもしれません。デカルトの生涯は、まさに旅の連続でした。フランスに生まれ、オランダで思索に耽り、そしてスウェーデンでその生涯を閉じる。彼の足跡を辿る旅は、単なる観光地巡りではありません。それは、歴史の息吹を感じ、偉大な哲学者の思考の軌跡を追体験する、知的好奇心を満たす特別な時間となるはずです。ヨーロッパの美しい街並みを背景に、デカルトが見た風景、歩いた道、そして彼が格闘した「真理」とは何だったのかを肌で感じてみませんか?この旅は、きっとあなたの内面に新たな発見と深い感動をもたらしてくれることでしょう。さあ、あなたもデカルトと共に、真理を探究する知的な旅へと出発しましょう。
このような知的な旅の感動は、静寂の時を駆けるチェルノブイリ立入禁止区域への旅でも、歴史の重みと向き合う深い体験として感じられることでしょう。
旅の始まりに:ルネ・デカルトとは何者か?

旅の準備として、まずは私たちの主人公であるルネ・デカルトについて簡単に振り返ってみましょう。彼の人物像を理解することで、訪れる場所それぞれの意味がより深く、鮮やかに感じられるはずです。
デカルトは1596年、フランスのラ・エー・アン・トゥーレーヌという小さな町(現在のデカルト市)で誕生しました。貴族の家系に生まれ、幼少期から優れた知性を発揮し、イエズス会の名門コレージュ・ロワイヤルで学びました。そこで彼はスコラ哲学を含む伝統的な学問を修めるものの、その権威や曖昧さに強い疑念を抱くようになりました。「本当に確実で、疑いようのない真理とは何か?」という純粋な問いが、彼の人生を貫く探究の出発点となったのです。
彼の哲学のもっとも有名な要点は「方法的懐疑」にあります。これは、少しでも疑わしいものはすべて偽であると見なし、徹底して疑うことで、絶対に疑い得ない確実な真理を見出す方法です。感覚は時に私たちを欺き、夢と現実の区別もつきにくい。もしかすると、悪意ある霊が私たちを騙しているかもしれない。そうしたあらゆる事柄を疑い続けた先に、唯一疑うことのできない事実が残りました。それは「このように疑っている『私』が存在する」という真実です。ここから、「我思う、ゆえに我あり(Cogito, ergo sum)」という哲学の第一原理が導き出されるのです。
この動かぬ土台のうえに、デカルトは神の存在や物体の存在を証明し、精神と物体を明確に区分する「物心二元論」をはじめとした壮大な哲学体系を築きました。彼の合理主義的思想は、それまでの神学中心の世界観から、人間理性を中心に据えた近代的世界観へと扉を開いていきました。さらに、彼は哲学者であると同時に優れた数学者・自然科学者でもありました。直交座標系(デカルト座標)を発明し、解析幾何学の創始者として、現代科学の基盤を築いたのです。
彼の人生は書斎にこもる学者とは異なり、非常に活動的でした。三十年戦争にも兵士として参加し、ヨーロッパ各地を旅しながら多くの知識人と交流を深めました。特に、思想の自由が保障されていたオランダを好み、約20年もの長期にわたり滞在しながら、『方法序説』や『省察』といった主要著作を執筆しました。そして晩年には、スウェーデンの若きクリスティーナ女王の招きによってストックホルムに移り、その輝かしい生涯を閉じました。彼の旅は単なる地理的移動にとどまらず、真理を追い求める精神の旅路そのものでした。私たちがこれから辿ろうとしているのは、まさにその知の冒険の軌跡なのです。
旅の序章:フランス – 哲学者の原点を訪ねて
デカルトの思想の旅は、彼の故郷であるフランスから幕を開けます。若き日に彼が何を学び、どのように感じていたのか。その原点を探るために、まずはフランスの美しい田園風景や歴史ある街並みを訪れてみましょう。
生誕地、ラ・エー(デカルト市)
すべての物語はここから始まりました。パリからTGVとローカル線を乗り継ぎ、数時間ほど進むと、フランス中西部の穏やかな風景のなかにこの町が現れます。かつてはラ・エー・アン・トゥーレーヌと呼ばれていたこの地は、偉大な哲学者を輩出した誇りから、現在は「デカルト(Descartes)」と名を変えています。町の中心を流れるクレーズ川のほとりに佇み、静謐で美しい場所です。
この町でぜひ訪れてほしいのが、「デカルト博物館(Musée Descartes)」です。彼が1596年に誕生したとされる邸宅が、そのまま博物館として公開されています。石造りの趣ある建物に一歩踏み入れると、まるで17世紀へと時を遡ったかのような感覚に包まれます。館内には、デカルトの生涯や功績に関する資料、肖像画、初版本のレプリカなどが展示されており、彼の生きた時代を肌で感じることができます。なかでも、彼の書斎を再現した部屋では、これから始まる壮大な知的冒険の序章に胸が高鳴ることでしょう。
実際にできること:デカルト博物館訪問のポイント
- アクセス: パリ・モンパルナス駅からTGVでトゥール(Tours)駅またはシャテルロー(Châtellerault)駅へ向かい、そこからローカル線やバス、タクシーを利用してください。バスの本数は非常に限られているため、事前にデカルト市公式サイトなどで時刻表を綿密にチェックすることが、旅を円滑に進めるためのポイントです。レンタカーを利用して、ロワール地方の古城巡りと一緒に楽しむのもおすすめです。
- 開館情報: 開館時間や休館日は季節ごとに変動することがあります。訪問前に必ず公式サイトで最新情報を確認しましょう。特に地方の博物館では、昼休みが長かったり特定曜日に休館したりするケースが多いので注意が必要です。
- チケット: チケットは現地の受付窓口で購入するのが一般的です。規模の小さな博物館なので、予約なしでも入館できることが多いですが、余裕を持って行動するのが安心です。
- 持ち物とマナー: 博物館内は静かに見学するのが基本マナーです。大型の荷物は受付で預かってもらえるか事前に確認しましょう。写真撮影が許可されている場合が多いものの、フラッシュの使用は禁止されていることがほとんどです。展示品を守るため、ルールを守って見学してください。
博物館を見学した後は、ぜひデカルトの故郷の町を散策してみましょう。彼も目にしたであろうクレーズ川のせせらぎや、サン・ジョルジュ教会の鐘の響き。これらすべてが、若きデカルトの感性を育てた風景です。町のパン屋さんで焼きたてのクロワッサンを頬張りながら、静かな時間に身をゆだねるのも、この旅ならではのひとときでしょう。
学びの街、ポワティエ
ラ・エーから近いポワティエは、デカルトが法学を学んだポワティエ大学が位置する歴史ある学術都市です。彼はここで学びつつも、書物だけに頼る知識に限界を感じ、「世間という大きな書物」から学ぶ決意を固めました。彼の旅人として、また思想家としての人生が実質的にこの地から始まったとも言えます。
ポワティエの旧市街は中世の趣を濃厚に残す美しい街並みが広がり、ヨーロッパでも最古級の教会建築であるサン・ジャン洗礼堂や壮大なノートルダム・ラ・グランド教会といった見どころが多彩です。デカルトも歩いたであろう石畳の道を歩みながら、若き哲学者が夢見た未来への希望や既存の権威に対する懐疑の念に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
ポワティエ大学のキャンパスを訪れるのもよいでしょう。彼が学んだ当時の校舎は残っていませんが、今なお多くの学生で賑わうキャンパスの活気は、知の探究が連綿と続いている証です。カフェでコーヒーを飲みながら、もしデカルトが現代の学生だったら何を学ぶだろうかと想像を膨らませるのも、楽しいひとときとなるはずです。
華やかな都、パリ
学びを終えた若きデカルトは、パリへと移ります。当時のパリはヨーロッパ有数の大都市で、多くの知識人や芸術家が集う文化の中心地でした。ここで彼は、生涯の友人となる数学者メルセンヌと出会い、知的な交流を深めました。
デカルトが住んだとされるサンジェルマン・デ・プレ地区は、今もなお洗練されたカフェや書店、ギャラリーが並ぶパリで最も魅力的なエリアの一つです。伝説的なカフェ「レ・ドゥ・マゴ」や「カフェ・ド・フロール」のテラス席に腰を落ち着ければ、サルトルやボーヴォワールなど後世の哲学者たちの息吹を感じ取れるかもしれません。デカルトもこの地のどこかで友人たちと熱い議論を交わしていたことでしょう。
そして、パリにはデカルトの思想の旅の完結点ともいえる場所があります。サンジェルマン・デ・プレ地区の中心に位置する、パリ最古の教会「サン=ジェルマン=デ=プレ教会」。いくつもの変遷を経て、彼の遺骸は現在この教会に安置されています。荘厳なロマネスク様式の教会に足を踏み入れ、静まり返った空間で彼の墓標を前にすると、フランスで生まれスウェーデンで亡くなり、再び故国に戻ってきた彼の波乱に満ちた人生に深い感慨を抱くことでしょう。
実際にできること:パリでの教会訪問マナー
- 服装について: サン=ジェルマン=デ=プレ教会は観光名所であると同時に、今も多くの信者が祈りを捧げる聖なる場所です。訪問時は敬意を表した服装を心がけましょう。特に夏場は、肩や膝が露出するタンクトップやショートパンツ、ミニスカートなどは控えるのが賢明です。ストールやカーディガンをひとつ持参すると、さっと羽織れて便利です。
- 禁止事項: 教会内での大声の会話や飲食は厳禁です。携帯電話はマナーモードに設定し、通話は控えてください。写真撮影は許可されることが多いものの、ミサの最中や祈りの邪魔にならないよう最大限の配慮をしてください。フラッシュの使用や三脚の持ち込みは基本的に禁止されています。
- ミサの時間: ミサや冠婚葬祭などの儀式が行われる時間帯は、信者以外の入場が制限されたり、見学可能範囲が限定されたりする場合があります。パリ観光局公式サイトなどで事前に確認しておくとスムーズです。
- 寄付について: 入場は無料ですが、教会維持のための寄付を受け付けています。可能であれば、少額でも寄付をすると良いでしょう。
思索の舞台:オランダ – 自由の空気の中で

「世間という大きな書物」を読み解く決意を抱いたデカルトが、もっとも長い時間を過ごし、精神的にも最も豊かな時期を迎えたのがオランダでした。17世紀のオランダは「黄金時代」の真っ只中であり、貿易による経済的繁栄だけでなく、宗教的寛容と出版の自由が保障されていたため、ヨーロッパでもっとも自由な土地の一つでした。権威や伝統に縛られることなく、純粋な理性の探究を目指したデカルトにとって、この地はまさに理想郷と言える場所でした。彼の主要な著作の多くは、まさにこのオランダで生み出されました。
運河の街アムステルダム
デカルトはオランダ国内のさまざまな都市を転々としましたが、アムステルダムにも何度も滞在しました。彼が住んでいたといわれる家はヴェスター教会のすぐそば、ヴェステルマルクト6番地にあり、現在はその外壁に記念プレートが飾られています。アンネ・フランクの家からもほど近いこの場所は、歴史の重層さをひしひしと感じさせます。プレートを見上げながら、デカルトが窓から眺めたであろう運河の風景を想像してみてください。行き交う船や活気に満ちた市場、さまざまな言語が飛び交う雑多な空気。この自由な環境が、彼の思索に大きな刺激を与えたのは間違いありません。
アムステルダムではぜひ運河クルーズを体験してみてください。水上から眺める街並みは、地上とはまた違った趣きを持っています。17世紀当時の建物が今なお多く残り、まるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。また、アムステルダム国立美術館ではレンブラントの『夜警』をはじめとするオランダ黄金時代の名作を鑑賞可能です。デカルトと同時代の画家たちが光と影を巧みに表現した作品は、彼の哲学が誕生した時代の空気感をより深く理解するための手助けとなるでしょう。
アムステルダム市内交通のポイント:読者が役立てられる情報
- 公共交通機関: アムステルダム市内の移動には、トラム・バス・地下鉄を運行するGVBの乗り物が非常に便利です。短期滞在の観光客には「GVBデイチケット」が特におすすめで、1日から7日までの期間券があり、その間は乗り放題となります。中央駅や主要駅の券売機、市内のキオスクで購入でき、券売機はタッチパネル式で英語表示も選択可能なので安心です。
- 乗降時の注意点: トラムやバスの乗降時には、必ず車内に設置されたカードリーダーにチケットをタッチする必要があります。これを忘れると検札時に罰金を科されることがあるため、特に降車時のタッチを習慣づけるようにしましょう。
- OVチップカード: オランダ国内の他都市への鉄道利用や長期滞在の場合、日本のSuicaやPASMOのような交通系ICカード「OVチップカード」の購入も便利です。ただしカード代金や最低チャージ額が必要なため、短期旅行者にはデイチケットのほうが手軽でお得なケースが多いです。
『方法序説』が生まれた街、ライデン
アムステルダムから電車で約30分ほどのライデンは、オランダ最古の大学であるライデン大学を抱える、落ち着いた美しい学術都市です。デカルトはここで、自身の哲学的宣言書ともいえる『方法序説』を1637年に匿名で刊行しました。当時はガリレオ裁判に見られるように、伝統的な教義に反する学説を公表することが非常に危険でした。思想の自由が保障されたライデンだからこそ、この画期的な書籍は世に出ることができたのです。
ライデン大学の歴史的な建物を訪れ、その学術的な雰囲気を体感してみてください。キャンパス内にある植物園「ホルタス・ボタニクス」はヨーロッパ最古級の植物園の一つであり、デカルトもここで思索にふけった可能性があります。また、当時の出版社があった場所を散策するのも趣深いです。具体的な建物は残っていませんが、運河沿いの道を歩きながら、活版印刷によって新しい思想が世界に広まっていく瞬間の興奮に思いを馳せられるでしょう。
ライデンは「博物館の街」としても知られています。シーボルトハウスでは日本との思いがけない繋がりを知ることができ、国立古代博物館では豊富なエジプトコレクションを楽しめます。知的好奇心の旺盛だったデカルトも、この街の知的な空気を存分に味わったことでしょう。
哲学的議論の場、ユトレヒト
ユトレヒトもまた、デカルトが滞在し重要な活動を行った都市の一つです。ドム塔がそびえる美しい街で、彼はユトレヒト大学の教授たちと活発な論争を交わしました。彼の新たな哲学は多くの支持者を集める一方で、伝統的な学問を守る者たちから激しい非難も受けました。ユトレヒトは、デカルトの思想がヨーロッパの知的界に投げかけた波紋をリアルタイムで感じられる場所だったのです。
ユトレヒトの魅力は、二層になった美しい運河の景観にあります。運河沿いにはカフェやレストランが軒を連ね、独特の雰囲気を形成しています。晴れた日には運河沿いのテラス席で休憩しながら、デカルトがここで交わしたであろう熱い議論に思いを巡らせてみるのも良いでしょう。彼の哲学が決して順風満帆に築かれたものではなく、多くの抵抗や論争を経て確立されたことを身近に感じられるはずです。
終着の地:スウェーデン – 北方の女王のもとで
デカルトの人生の旅路は、北欧スウェーデンで予想外の終焉を迎えました。当時、わずか22歳にして「北のミネルヴァ」と称えられる卓越した才知を持つスウェーデン女王クリスティーナが、デカルトの名声に魅かれて彼を宮廷の哲学家庭教師として招いたのです。年を重ねつつあったデカルトは迷いながらもその招きを受け、1649年の秋にストックホルムへと旅立ちました。
氷の都、ストックホルム
「水の都」とも称されるストックホルムの冬は、暖かなオランダで暮らしていたデカルトにとって非常に厳しいものでした。女王は彼に早朝5時からの講義受講を望みましたが、夜型の習慣を持っていたデカルトには大きな負担となりました。厳寒と慣れない早朝の生活リズムが彼の体力を奪い、ストックホルム到着からわずか数ヶ月後の1650年2月、肺炎により53歳で生涯を終えました。
ストックホルムに来たら、最初に旧市街「ガムラスタン」を散策してみましょう。宮崎駿の『魔女の宅急便』の舞台モデルとも言われるこの美しい街は、中世の趣を今に伝える石畳の道や鮮やかな色彩の建物が見どころです。デカルトもここを歩きながら、女王の待つ王宮へ向かったことでしょう。壮麗なストックホルム宮殿を目にしながら、彼がこの北の地で何を感じ、何を思ったのか思いを馳せてみてください。
彼が息を引き取ったのは、かつてフランス大使館があった場所と伝えられています。現在その建物は残っていませんが、彼はガムラスタンのどこかで異国の地の最期を迎えました。遺体は最初、ストックホルム市内のアドルフ・フレデリック教会に埋葬されましたが、その後フランス政府の要望で掘り出され、パリのサン=ジェルマン=デ=プレ教会へと移されました。ただし、頭蓋骨だけはスウェーデンに残り、数多くの人の手を経て、現在はパリの人類学博物館に保管されているという不思議な運命を辿っています。
冬のストックホルム観光に向けた準備ガイド
- 必須アイテムと服装: 冬期(11月~3月頃)のストックホルム訪問では、防寒対策が何より重要です。気温は零度以下が普通で、日照時間も非常に短くなります。
- 衣類: 保温効果の高いインナー(例:ヒートテック)、ウールやフリース素材のセーター、防風・防水機能のあるダウンジャケットやコートは必須です。パンツの下にタイツやレギンスを重ねるとさらに効果的です。
- 小物類: 耳まで覆う帽子、暖かい手袋、厚手のマフラーは欠かせません。特に手足の末端は冷えやすいため、使い捨てカイロを日本から持参すると便利です。
- 靴: 最も重要なのは靴選びです。石畳の道は凍結し滑りやすいため、防水性があり靴底が滑り止め加工されたスノーブーツやトレッキングシューズを用意してください。普通のスニーカーは非常に危険です。
- 万が一の備え: 凍結した道での転倒や怪我に備え、海外旅行保険の加入を強くおすすめします。保険があれば現地での医療費をキャッシュレスで済ませられる場合もあり安心です。緊急時にはホテルスタッフへ連絡したり、救急車を呼んでもらいましょう。スウェーデンの緊急通報番号は「112」です。
- 公共交通について: ストックホルムの地下鉄、バス、トラムなど公共交通はSL社が運営しています。移動には「SLカード」という交通パスが便利で、駅の窓口やキオスクで購入・チャージが可能です。詳細な路線図や料金は、SLの公式サイト(英語)でご確認ください。
デカルトを巡る旅のプランニング

フランス、オランダ、スウェーデン。広範囲にわたるデカルトの足跡を効率的かつ深く味わうためのプランニングのポイントをいくつかご紹介します。
モデルコースのご提案
- フランス集中ルート(4泊6日): デカルトの哲学旅の入門編に最適です。パリを拠点に、日帰りでポワティエ訪問、さらに1日をかけてデカルトの故郷であるラ・エー(デカルト市)まで足を伸ばすプランです。パリの美術館めぐりやグルメも味わいながら、デカルトの原点に触れることができます。
- フランス・オランダ周遊プラン(7泊9日): パリから高速鉄道タリスでアムステルダムへ移動し、2カ国を巡る充実した旅程です。パリでデカルトの生涯の痕跡に触れた後、オランダでは彼の思想が花開いた自由な風土を体感します。アムステルダムを拠点に、ライデンやユトレヒトへの日帰り旅行が効率的です。
- 3か国完全制覇プラン(10泊12日以上): 時間に余裕がある方におすすめの究極のデカルト旅。上記のフランス・オランダ周遊に加え、アムステルダムからストックホルムへのフライトも加えます。季節の変化を感じつつ、デカルトの人生を最初から最後まで追体験できる、心に残る旅となるでしょう。
旅の準備と持ち物リスト
快適な旅をサポートする基本的な持ち物リストです。お好みに合わせて調整してください。
- 必携品:
- パスポート(有効期限の確認をお忘れなく)
- 航空券、鉄道の予約確認書(Eチケット等)
- 少量の現金(ユーロ、スウェーデンクローナ)およびクレジットカード
- 海外旅行保険証書
- スマートフォン、充電器、モバイルバッテリー
- 電源変換プラグ(主にCタイプですが、SEタイプも用意しておくと安心です)
- 衣類:
- 季節に適した服装(ヨーロッパは天候が変わりやすいため、重ね着可能なものが便利です)
- 歩きやすい靴(石畳が多いためスニーカーがおすすめ。冬のスウェーデンは別途ご配慮ください)
- ややフォーマルな服装(レストランや教会訪問用)
- パジャマ、下着、靴下
- あると便利なもの:
- デカルト関連書籍(『方法序説』など、旅先で読むと一層感慨深いです)
- 常備薬や絆創膏
- 折りたたみ傘
- エコバッグ(多くのスーパーで有料のため)
- 翻訳アプリや簡易会話帳
- ウェットティッシュ、除菌ジェル
各国間の移動手段
ヨーロッパ内の移動は非常に便利です。賢く活用して、快適な旅を計画しましょう。
- 高速鉄道: パリからアムステルダムへは高速鉄道「タリス(Thalys)」が最も便利です。所要約3時間半で都市中心部を結びます。チケットは早期予約で割安になる「早割」があります。OmioやTrainlineなどの比較サイトを利用し、公式サイトで予約するのがおすすめです。
- 飛行機(LCC): オランダからスウェーデンなど長距離移動には格安航空会社(LCC)が便利です。KLMオランダ航空やスカンジナビア航空のほか、EasyJetやRyanairも選択肢に入ります。ただしLCCは預け荷物が有料だったり、市街地から離れた空港を利用することもあるため、総コストと所要時間を考慮し検討してください。
- バス: 時間はかかりますが、もっとも低価格な移動手段は長距離バスです。FlixBusなどがヨーロッパ全域にネットワークを持っています。時間に余裕があり費用を抑えたい学生旅行などには適した選択肢です。
旅先でのもしもの備え:トラブルと対処法
どれだけ入念に準備をしていても、予想外のトラブルは起こり得ます。しかし、あらかじめ対処法を把握しておけば、慌てず落ち着いて対応することが可能です。
よくあるトラブル例とその対策
- スリ・置き引き: パリやアムステルダムといった大都市の観光スポットや駅、地下鉄ではスリや置き引きが頻繁に発生します。バッグは体の前で持ち、貴重品は内ポケットにしまい、レストランでは席に荷物を置きっぱなしにしないなど、基本的な注意を怠らないことが大切です。現金は複数に分けて持ち、パスポートはコピーやスマートフォンでの写真を用意しておくと、万が一紛失しても再発行の手続きがスムーズになります。
- 交通機関のストライキ: フランスをはじめヨーロッパ各地では公共交通機関のストライキが比較的よく発生します。旅行前に現地のニュースをチェックし、もしストライキに遭遇した場合は、代替の交通手段(バス、タクシー、他の鉄道会社の列車など)を早めに探すことが重要です。最新の情報は駅の案内所や公式ウェブサイトで確認するのが確実です。返金や振替については、それぞれの鉄道会社や航空会社の規定に従うため、窓口で詳細をしっかり確認しましょう。
- 病気や怪我: 慣れない環境で体調不良やケガをすることもあり得ます。海外旅行保険に加入している場合、提携病院でのキャッシュレス診療や医療通訳サービスが利用できることがあります。保険会社の緊急連絡先はすぐに取り出せる場所に保管しておきましょう。軽い症状ならば、薬局(FarmaciaやApotheekなど)で薬剤師に相談し薬を購入することも可能です。
緊急時の連絡先
万が一、パスポートを紛失したり、大きな事件や事故に巻き込まれたりした場合は、滞在国の日本大使館または総領事館に連絡してください。彼らはパスポート再発行の手続きや、現地警察への届け出の方法などについて適切なアドバイスを提供してくれます。各国の日本大使館の連絡先は外務省の海外安全ホームページなどで事前に確認し、メモを用意しておくと安心です。
哲学の旅がもたらす、内なる対話

デカルトの足跡をたどる旅は、私たちにどのようなものをもたらすのでしょうか。それは単なる歴史の知識を得るだけにとどまりません。彼が暮らした街の空気を吸い込み、彼が目にしたかもしれない風景を見つめ、彼の思考の軌跡を追体験することで、自然と自分自身の内面と向き合うことになります。
「本当に確かなものは何か?」。デカルトが一生をかけて問い続けたこのテーマは、情報が氾濫し価値観が多様化する現代に生きる私たちにとっても、極めて重要な問いです。私たちがあたりまえだと思い込んでいた常識や、疑うことなく信じてきた価値観を、一度デカルトのように徹底的に疑ってみる。この旅は、そんな「知的冒険」への誘いでもあります。
フランスの穏やかな田園風景の中で自身の原点に思いを馳せ、オランダの自由な空気のもとで凝り固まった思考をほぐし、そしてスウェーデンの厳しい寒さのなかで、自分の存在の確かさを改めて感じる。それぞれの場所が、あなた自身の「コギト」を見つけるための舞台となるのです。
旅を終え日常に戻ったとき、きっと世界は少し違って見えることでしょう。物事の本質を見極めようとする視点、他人の意見に流されることなく自分の頭で考える力。デカルトの旅は、そんな知的な体力を私たちに与えてくれます。「我思う、ゆえに我あり」という言葉の意味を、ただ頭で理解するのではなく、心と身体で実感すること。それこそが、この知的な旅が私たちに贈ってくれる、かけがえのない財産なのかもしれません。

