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    モードの聖地を歩く。アントワープ、ファッションとアートが織りなす旅の記憶

    「ファッションが好きなら、一度はアントワープへ行くべきよ」。アパレルの仕事でお世話になっている先輩バイヤーから、そう言われたのはいつだったでしょうか。パリやミラノの華やかさとは一味違う、知的で、少し影のあるクールな魅力。そんな言葉に惹かれ、私は次の長期休暇の行き先をベルギー第二の都市、アントワープに決めました。

    フランダースの犬の舞台として知られるこの街は、16世紀にはヨーロッパ随一の商業都市として栄え、ダイヤモンド取引の中心地としても世界にその名を轟かせています。しかし、私のようなファッションを愛する者にとって、アントワープは特別な意味を持つ場所。そう、「アントワープの6人」を輩出した、モードの聖地なのです。

    歴史ある石畳の道を歩けば、巨匠たちの息吹を感じる荘厳な教会や美術館があり、一歩路地に入れば、新進気鋭のデザイナーが手がける前衛的なブティックが顔を覗かせる。伝統と革新が美しく溶け合うこの街は、訪れる者のクリエイティビティを静かに、しかし強く刺激してくれます。

    この記事では、私が実際に歩いて、見て、感じたアントワープの魅力を、ファッションとアートを軸にしたモデルプランと共にご紹介します。モーダ美術館(MoMu)での心揺さぶる体験から、知る人ぞ知るセレクトショップ巡り、そして旅をより深く、安全に楽しむための実践的な情報まで。この記事が、あなたの知的好奇心をくすぐり、次の旅への一歩を踏み出すきっかけになれば嬉しいです。

    アントワープのように歴史と文化が息づく街に魅力を感じたなら、バルトの宝石と呼ばれるリトアニア・ビルニュス旧市街の歩き方もきっと次の旅のヒントになるでしょう。

    目次

    なぜ今、アントワープなのか? モードの聖地と呼ばれる理由

    アントワープという名前を聞くと、多くの人が真っ先に「ファッション」を思い浮かべるのは、1980年代に業界に大きな衝撃を与えた「アントワープの6人(The Antwerp Six)」の存在が大きな理由でしょう。ドリス・ヴァン・ノッテン、アン・ドゥムルメステール、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク、ダーク・ヴァン・セーヌ、ダーク・ビッケンバーグ、そしてマリナ・イー。彼らは名門アントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、一台のバンに自らのコレクションを詰め込み、ロンドンのファッションウィークに乗り込みました。

    当時主流だった華やかで構築的なデザインとは一線を画す、脱構築的かつ哲学的な彼らの創作スタイルは、世界中のプレスやバイヤーに大きな衝撃を与え、「アントワープ」の名をファッションの重要な拠点として刻み込みました。彼らの成功は、後に続くデザイナー世代、例えば同時代に活動したマルタン・マルジェラや、ラフ・シモンズ、ハイダー・アッカーマンといった才能たちの道も切り開いたのです。

    この街がこれほど多くの才能を輩出し続ける背景には、アントワープ王立芸術アカデミーの存在が欠かせません。1663年に創設されたこの学び舎のファッション科は、商業主義に流されることなく、学生それぞれの独創性と芸術性を徹底的に磨き上げる教育方針で知られています。その厳しさは伝説的で、卒業できるのはごくわずか。しかし、それゆえにここから巣立つデザイナーたちは、確固たる哲学と比類なき創造力を携えて世界へと羽ばたいていくのです。

    さらにアントワープは、古くから港町として多様な文化が交わる場所であり、芸術の土壌が豊かに育まれてきました。17世紀にはバロック絵画の巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスがこの地で活躍しました。豊かな芸術遺産と、新たな表現を求める革新的な精神が共鳴し合い、アントワープ独自のクリエイティブな空気を生み出しているのです。まさにこれこそが、この街が単なる流行の発信地にとどまらず、「聖地」と称される所以なのでしょう。

    アントワープでしたいことリスト – 亜美流モデルプラン

    では、ここから私自身が体験した3日間のモデルプランをお伝えします。もちろんこれはあくまで一例なので、あなたの関心に合わせて自由にアレンジしてみてください。アントワープの中心地は見どころがコンパクトにまとまっているため、徒歩で十分満喫できますよ。

    1日目:ファッションの源流を感じる日

    初日は、アントワープがモードの聖地と称される理由を肌で感じることに専念しましょう。インスピレーションを全身で受け取る一日に。

    モーダ美術館(MoMu)で創造性の洗礼を受ける

    アントワープのファッションを語るうえで外せないのがモーダ美術館、通称「MoMu」です。地元デザイナーの作品を中心に、歴史的衣装から最新ファッションまで膨大なコレクションを所蔵しています。

    私が訪れた時はベルギーの現代デザイナーに焦点を当てた特別展が開催されていました。布地の使い方や独創的なシルエット、細部に宿る匠の技。ガラス越しに見る服たちは単なる商品ではなく、デザイナーの哲学が込められたアートピースそのものです。特にドリス・ヴァン・ノッテンによる刺繍やジャカードの繊細さには自然と息を呑みました。多彩な生地に触れてきた私でも、この繊細かつ大胆な色彩の組み合わせには心を奪われました。

    MoMuは常設展を持たず、年数回の企画展でコレクションを公開する形態のため、何度訪れても新鮮な発見があります。

    • チケット購入のポイント

    MoMuは非常に人気があるため、特に週末は混雑しがちです。スムーズな入場のため、「モーダ美術館公式サイト」から事前にオンライン予約するのを強くおすすめします。サイトの「Tickets」から展覧会、訪問日、時間を選び、名前とメールアドレスを入力後、クレジットカードで決済すればEチケットがメールで届きます。当日はスマートフォンの画面か印刷したものを提示するだけでOK。言語による不安もなく、とても簡単です。

    • 準備と注意点

    大きな荷物やリュックは館内設置の無料ロッカーに預ける必要があります。1ユーロ硬貨を使用しますが、使用後は戻ってくるのでご安心を。館内でのフラッシュ撮影は禁止されているため、静かな環境でじっくり作品と向き合いましょう。

    アントワープ王立芸術アカデミーの外観を楽しむ

    MoMuのすぐ近くにあるのが、世界中からファッションを志す若者が集まるアントワープ王立芸術アカデミー。校舎内は一般公開されていませんが、歴史を感じる重厚な建物を外側から眺めるだけでも特別な雰囲気が漂います。

    私が訪れた平日昼下がりには、学生たちが個性的でエッジの効いたファッションに身を包み校舎を出入りしていました。黒を基調にしたミニマルスタイルや古着を大胆にリメイクした装いが目を引き、「ここは本当にクリエイティブな街なんだ」と強く感じました。もしかすると未来のラフ・シモンズはこの中から誕生するのかも、そんな想像をかき立てられる刺激的な場所です。

    セレクトショップ巡りで次世代の巨匠を探す

    アントワープ散策の醍醐味はやはりショッピング。特に「アントワープの6人」の店舗や、彼らに影響を受けたセレクトショップは見逃せません。

    • Dries Van Noten「Het Modepaleis」

    まずはドリス・ヴァン・ノッテンの旗艦店「Het Modepaleis(モードパレス)」へ。19世紀の建物を改装した美しい店内は宮殿のような趣があります。ウィメンズ、メンズ、アクセサリーがフロアごとに分かれ、まるで美術館をめぐるようにゆったりと最新コレクションを鑑賞可能。ここでしか入手できない限定アイテムもあるため、ショーウィンドウのディスプレイから彼の美意識の高さが伝わり、入店前から心を躍らせます。

    • Ann Demeulemeester

    詩的かつゴシックな世界観が好きな方には、アン・ドゥムルメステールが最初に開いたショップ跡地がおすすめ。現在は別のブランドが入っていますが、Verversrui通りにあるこの場所はファンにとっての聖地です。近隣にはダークでアーティスティックな雰囲気のセレクトショップも点在し、ブランドの精神を受け継いでいます。

    • Copyright Bookshop

    ファッションファンなら本屋もぜひ訪れて。MoMuの隣にある「Copyright Bookshop」は、ファッション、アート、建築、写真関連の専門書が豊富に揃う知的好奇心の宝庫です。日本では入手困難な貴重な写真集や雑誌のバックナンバーも発見可能。ページをめくるだけで新たなインスピレーションが湧いてきます。

    • Louis

    アントワープのファッションシーンで欠かせないセレクトショップ「Louis」。マルタン・マルジェラを早くから発掘し、ラフ・シモンズやハイダー・アッカーマンなどアカデミー出身のデザイナーを支援してきた歴史があります。バイヤーのセンスが光る厳選アイテムはファッション愛好家ならずとも訪れる価値があります。

    2日目:アートと歴史に浸る日

    アントワープの魅力はファッションだけにとどまりません。2日目は歴史と芸術の深みを感じる日として、街の文化に触れてみましょう。

    ルーベンスの家で天才画家の息吹を感じる

    17世紀バロック絵画の巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスは、生涯の長い期間をアントワープで過ごしました。彼のアトリエ兼住居だった建物は「ルーベンスの家(Rubenshuis)」として公開されています。

    ここでは作品だけでなく、家族と生活し、弟子たちを育み、世界中から客人をもてなした当時の生活空間を体感できます。豪華な調度品、美しく設計された中庭、光が差し込む広々としたアトリエなど、400年前の天才の息吹を身近に感じられる場所です。代表作「アダムとイブ」も間近で鑑賞でき、その圧倒的な筆致と豊かな色彩に心を奪われます。

    • おすすめ:オーディオガイドの活用

    ルーベンスの家でも事前にオンラインでチケットを購入するのが便利です。入場時に日本語対応のオーディオガイドを借りると各展示や部屋の解説、ルーベンスの私生活にまつわる興味深いストーリーが聞け、鑑賞の理解と充実度が一層高まります。

    プランタン=モレトゥス活版印刷博物館で知的探求を

    次に訪ねたいのはユネスコ世界遺産「プランタン=モレトゥス博物館」。16世紀創業の活版印刷工房が当時のまま保存されており、世界唯一の施設です。

    中に入るとインクと古木の香りに包まれ、並ぶ活字棚や巨大な木製印刷機に触れて、当時の空気を実感します。ここではガリレオ・ガリレイの著作も印刷されたと伝えられ、壁にはルーベンスが描いた印刷工の家族像も飾られています。印刷技術と芸術の交流が深いことが伺え、本の歴史や知識の広がりを感じられる、たいへん知的刺激のある空間です。

    ノートルダム大聖堂で荘厳な芸術を堪能

    アントワープの象徴といえば、天に向かってそびえるノートルダム大聖堂。ゴシック建築の傑作として街のあらゆる場所からその壮麗な姿が望めます。

    多くの日本人が「フランダースの犬」の最終話の舞台として記憶している場所でもあります。主人公ネロが憧れたルーベンスの祭壇画「キリストの昇架」と「キリストの降架」の前で、愛犬パトラッシュとともに永遠の眠りにつく感動のシーンです。実際に絵の前に立つと物語との境界が曖昧になり、胸を打つ体験となるでしょう。光と影のドラマチックな表現が圧倒的です。

    • 訪問時のマナーと服装について

    ノートルダム大聖堂は現役の教会であり、神聖な祈りの場でもあります。訪問時は敬意を持って静かに行動しましょう。特に夏季は肌の露出が多い服装(タンクトップやショートパンツなど)では入場を拒否される場合があります。肩や膝を覆う服装が望ましく、念のためストールやカーディガンを持参すると安心です。ミサの時間帯は信者の妨げにならないよう静粛に、飲食や大声での会話は控えましょう。

    3日目:街歩きとローカル体験を楽しむ

    最終日は少し目線を広げて、アントワープの日常や建築の魅力に触れる旅を。暮らすように街を巡る一日です。

    スヘルデ川沿い散策とMAS美術館の絶景

    アントワープは港町です。流れるスヘルデ川のほとりをのんびり歩くのは心地よいひととき。川沿いにはリノベーションされた倉庫街に並ぶ洗練されたカフェやレストランが点在します。

    特徴的なのがレンガとガラスが積まれたような独特の外観を持つ「MAS(Museum aan de Stroom)」。名前は「川沿いの博物館」を意味し、アントワープの海運史や世界との繋がりをテーマに展示していますが、最大の魅力は建築そのものと屋上テラスからのパノラマ風景です。展示を見なくても、無料のエスカレーターで最上階に上がれば、360度の大展望が楽しめます。

    眼下に広がる古い街並み、港の巨大クレーン、雄大なスヘルデ川を一望できる最高のビューポイントです。

    Cogels-Osylei通りでアール・ヌーヴォー建築に浸る

    中心部からトラムに乗って少し郊外に向かい、Zurenborg地区へ。ここには19世紀末から20世紀初頭にかけて建てられたアール・ヌーヴォー様式の邸宅群が並びます。「Cogels-Osylei」という美しい通りはまるでおとぎ話の世界のよう。

    曲線を描く鉄細工や色鮮やかなタイル、花の女神が描かれたフレスコ画など、どの邸宅も独自の装飾が施され、まるで野外美術館のような趣があります。カメラを持ってお気に入りの建物をゆっくり探し歩く時間は贅沢そのものです。

    • トラムの乗り方

    アントワープ中央駅からCogels-Osylei通りの最寄り駅(Antwerpen-Berchem周辺)へはトラム利用が便利。チケットは駅や近隣の券売機、または公共交通会社「De Lijn」のアプリで購入可能です。1日乗車券(Dagpas)や10回券(Lijnkaart)を買うと市内のバス・トラムが乗り放題になり便利。乗車時は車内の黄色い機械にチケットをかざすのをお忘れなく。

    ローカルマーケットで掘り出し物を探す

    旅の醍醐味の一つが地元マーケットの散策。アントワープでは週末を中心に様々な市が開かれます。特に有名なのが金曜午前に開催される「Vrijdagmarkt(金曜市)」。ここではアンティーク家具や食器、古書、雑貨などがオークション形式で取引され、見ているだけでも楽しめます。運が良ければ掘り出し物に出会えるかもしれません。

    さらに土曜には劇場広場で「Exotic Market」が開かれ、世界各国の食材やデリカテッセンが賑やかに並びます。モロッコのスパイスやトルコのオリーブ、ベルギー産のチーズなど多彩な味覚に触れ、地元の賑わいに混じって食べ歩きするのもおすすめです。

    旅の準備と実践ガイド – アントワープを120%楽しむために

    ここからは、アントワープ旅行の計画から現地で快適に過ごすための具体的な情報をお伝えします。ちょっとした準備で旅の満足度が大きくアップしますよ。

    チケット&交通について

    • 日本からのアクセス

    日本からベルギーへの直行便は現在運休中のため、ヨーロッパの主要都市(アムステルダム、パリ、フランクフルトなど)を経由するルートが一般的です。ベルギーの主要空港はブリュッセル国際空港で、ここからアントワープまでは国鉄(SNCB/NMBS)の直通列車で約30分と非常に便利です。

    • ブリュッセルからアントワープへのアクセス

    ブリュッセル中央駅などからアントワープ中央駅へは、国鉄の列車が頻繁に運行されています。所要時間はおよそ40〜50分です。チケットは駅の窓口や券売機で購入可能ですが、ベルギー国鉄の公式サイトや専用アプリから事前に購入するとスムーズです。週末には割引チケット(Weekend Ticket)が使えることもあるため、チェックしてみると良いでしょう。

    • アントワープ・シティ・カード

    市内の主要な美術館や教会に無料または割引価格で入場でき、公共交通機関も乗り放題になる「アントワープ・シティ・カード」があります。24時間、48時間、72時間の3種類があり、多くの施設を効率よく訪れたい方にお得です。ただし、MoMuなど一部の施設は対象外なので、自分の旅行プランと照らし合わせて利用の可否を判断してください。カードは観光案内所やオンラインで購入できます。

    持ち物&服装のポイント

    • 必携アイテム一覧
    • パスポート、航空券(Eチケット)の控え
    • クレジットカード(VISA、Mastercardが主流で、ICチップ付きが望ましい)、少額の現金(ユーロ)
    • 海外旅行保険証(病気や盗難などの万一に備え必須です)
    • スマートフォン、充電器、モバイルバッテリー
    • 変換プラグ(ベルギーはCタイプです)
    • eSIMもしくは海外用Wi-Fiルーター
    • 常備薬、化粧品、生理用品など
    • 服装のアドバイス:ファッション性と機能性を両立

    アントワープは石畳の道が多いため、ピンヒールは避けましょう。歩きやすく、街の雰囲気にも合うレザー製のフラットシューズやショートブーツ、上質なスニーカーがおすすめです。天候が変わりやすく「一日の中に四季がある」と言われることもあるので、脱ぎ着しやすいカーディガンやジャケット、撥水性のあるアウター、折りたたみ傘を必ず用意しましょう。 ファッションの街ですので、少しだけおしゃれに気を配るのも楽しいですよ。上質なコートやデザイン性のあるブラウス、お気に入りのスカーフやアクセサリーを加えるだけで気分が上がります。ダークトーンで全体をまとめ、差し色をひとつ入れるスタイルは、アントワープの街並みによく映えます。

    • あると便利なアイテム
    • エコバッグ:ベルギーではスーパーやショップのレジ袋が有料。折りたためるエコバッグを常時携帯すると便利です。
    • ウェットティッシュや除菌ジェル:レストランでおしぼりが出ないことも多いため役立ちます。
    • ジップロック付きの袋:液体のお土産を入れたり、使いかけのものをまとめたりするときに便利です。

    安全対策 — 女性のひとり旅でも安心して過ごすために

    アントワープは治安が比較的良好な街ですが、海外であることを念頭に油断は禁物です。特に女性のひとり旅の場合は、基本的な安全対策を徹底しましょう。

    • 治安状況と注意すべきエリア

    観光客が集まる旧市街やショッピングストリートは日中なら比較的安全ですが、人混みではスリや置き引きに注意が必要です。アントワープ中央駅周辺は夜になると雰囲気が変わるため、夜遅くの一人歩きは避け、明るく人通りの多い道を選んでください。特に駅の裏側は用事がなければ近寄らないほうが賢明です。

    • スリ・置き引き対策の具体例
    • バッグは前で抱える: リュックは必ず前に背負い、ショルダーやトートバッグも体の前に持ち、手でしっかり押さえてください。ファスナーや蓋のないバッグは避けましょう。
    • 貴重品は分散管理: パスポートや現金、クレジットカードは一つにまとめず複数に分け、ホテルのセーフティボックスも利用すると安心です。
    • レストラン・カフェでの注意: 席を確保するために荷物を置いたまま注文に行くのは避けてください。数秒の間に盗まれる恐れがあります。バッグは膝の上か壁側の足元に置き、椅子にかけるのも危険です。
    • 知らない人からの接近に注意: 道を尋ねるふりをしたり、服にわざとケチャップをつけて気を引く手口があります。気がそれている間に仲間にスリをされることもあるので、不自然に近づいてくる人には毅然とした態度で距離を保ちましょう。
    • トラブル時の対処法
    • パスポート紛失・盗難時: まず最寄りの警察署で盗難・紛失証明書を取得します。その後、ブリュッセルの在ベルギー日本国大使館で「帰国のための渡航書」または新しいパスポートを申請します。手続きには戸籍謄本(または抄本)や写真が必要なので、事前にコピーやデータを用意しておくと安心です。
    • クレジットカード紛失・盗難時: ただちにカード会社の緊急連絡先に連絡し、利用停止の手続きをしてください。連絡先は事前にメモしておくか、スマートフォンに登録するとよいでしょう。
    • 緊急連絡先: 警察・救急・消防への連絡はすべて「112」です。この番号は必ず覚えておいてください。

    最新の安全情報は、出発前に外務省海外安全ホームページや在ベルギー日本国大使館のウェブサイトで必ず確認しましょう。万全の準備をして、安心して旅を満喫してください。

    食の楽しみも忘れずに – アントワープグルメ紀行

    クリエイティブな刺激で空腹を感じたら、美味しいベルギーグルメでエネルギーを補給しましょう。美食の国ベルギーは、アントワープにも魅力的な食べ物が数多く揃っています。

    ベルギーの定番!フリッツとビールの黄金ペア

    ベルギーの国民食と言えば、フリッツ(フライドポテト)。街のあちこちに「フリコット」と呼ばれるフリッツ専門店があり、揚げたて熱々を円錐形の紙カップに入れて提供してくれます。ベルギーのフリッツは二度揚げするのが特徴で、外はカリッと、中はほっくりとした食感を楽しめます。そのまま食べても美味しいですが、多彩なソースから好みの味を選ぶ楽しさも格別です。定番のマヨネーズに加え、ピリッと辛いサムライソースやトマトとマヨネーズをベースにしたアンダルースソースなど、いろいろ試して自分のお気に入りを見つけてみてください。

    そして、フリッツのおともに欠かせないのがベルギービール。銘柄ごとに専用グラスがあるほど種類が豊富で、世界一と言われることも珍しくありません。フルーティーな白ビールから濃厚なトラピストビールまで、味わいは多岐にわたります。パブでバーテンダーにおすすめを聞くのも、旅の醍醐味のひとつです。飲みやすいものから試したい場合は、「Hoegaarden(ヒューガルデン)」や「Brugse Zot(ブルッグス・ゾット)」がおすすめです。

    甘い誘惑―チョコレートとワッフルの魅力

    ベルギーは世界屈指のチョコレートの国。アントワープにも老舗から新進気鋭のショコラティエが多数点在しています。

    • DelRey(デルレイ):ダイヤモンドの街アントワープにふさわしく、ダイヤモンド型のチョコレートで知られる高級老舗。一粒一粒が宝石のように美しく、大切な人へのお土産にも最適です。
    • The Chocolate Line(ザ・チョコレートライン):奇才ドミニク・ペルソーネ氏が手がける独創的かつ前衛的なチョコレートが人気。わさびやベーコン、コーラなど、驚きのフレーバーとカカオのハーモニーを楽しめます。

    街中を歩くと漂ってくる甘く香ばしい香り、その正体はワッフルです。ベルギーワッフルには、ふんわり四角く、フルーツやクリームをトッピングして味わう「ブリュッセル風」と、生地にパールシュガーを練りこみ丸い形でモチモチ食感が楽しめる「リエージュ風」の2種類があります。どちらも絶品ですが、食べ歩きには手軽なリエージュ風が特におすすめです。

    ちょっと贅沢に―予約必須の人気レストランでディナーを

    ディナーはおしゃれをしてレストランへ。アントワープは美食の街としても評価が高く、ミシュラン星付きのレストランも多くあります。人気店は予約が必須で、多くの店舗が公式サイトにオンライン予約システムを導入しているため、日本にいるうちに予約しておくと安心です。

    ベルギーのレストランでは基本的にチップはサービス料に含まれていますが、特に満足のいくサービスを受けた際は、お会計の5~10%相当の現金をテーブルに残すのがスマートなマナーです。

    ファッション好き必見!アントワープのお土産リスト

    旅の思い出と共に持ち帰るお土産。ありきたりな品ではなく、アントワープらしいセンスが感じられる少し特別なアイテムを選んでみませんか?

    • デザイナーズブランドのアクセサリー類

    ドリス・ヴァン・ノッテンのスカーフや、アントワープ出身デザイナーによるアクセサリーなど、憧れのブランドの小物を自分へのご褒美として。洋服は手が届かなくても、小物ならつい手が伸びてしまうことが多いです。

    • MoMuミュージアムショップのオリジナルグッズ

    モーダ美術館のショップでは、デザイン性の高いオリジナルグッズや、ファッション関連の書籍、ポストカードなど豊富に揃っています。展覧会の図録は、旅の後もインスピレーションを与えてくれる素敵な記念品になります。

    • ヴィンテージショップで見つける一点物

    アントワープには質の高いヴィンテージショップが数多く点在しています。デザイナーズブランドの古着やユニークなアクセサリーなど、世界に一つだけの宝物探しは格別の楽しみ。特にKammenstraat周辺には個性的な店が集中しています。

    • ベルギーリネンのハンカチやキッチンクロス

    ベルギーは古くからリネンの産地として知られています。上質で吸水性に優れたリネン製のハンカチやキッチンクロスは実用的でありながら洗練された雰囲気を持ちます。かさばらず持ち帰りやすいため、お土産にぴったりです。

    旅の終わりに – アントワープが私に教えてくれたこと

    アントワープでの3日間は、あっという間に過ぎ去りました。この街を歩きながら感じたのは、過去への深い敬意と未来に恐れず挑む革新的な精神が見事に調和しているということです。ルーベンスの時代に建てられた壮麗な建物の隣で、若いデザイナーが斬新な服づくりに没頭している。その対比こそが、アントワープの尽きることのない魅力だと私は思います。

    それはまるでファッションそのもののように感じられました。過去のアーカイブにインスピレーションを受けつつも、常に新たな素材や技術、価値観を取り入れて進化し続ける。伝統を大切にしながらも、決してそこに安住しない。そんなクリエイティブの本質を、この街全体が伝えてくれているように思えました。

    この街は、ただ美しい景色を眺めたり、美味しい食を楽しんだりするだけの場所ではありません。訪れる人の感性を揺さぶり、「自分は何を美しいと感じるのか」「自分は何を表現したいのか」と静かに問いかけてくる場所です。

    次にこの街を訪れるとき、私はどんな自分でいるのだろう。そんな思いを抱きながら、私はアントワープ中央駅の壮麗なドームを見上げ、帰路につきました。私の旅の記憶が、あなたの心に小さな光を灯し、まだ見ぬ世界への扉を開くきっかけとなれば幸いです。

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    この記事を書いたトラベルライター

    アパレル企業で培ったセンスを活かして、ヨーロッパの街角を歩き回っています。初めての海外旅行でも安心できるよう、ちょっとお洒落で実用的な旅のヒントをお届け。アートとファッション好きな方、一緒に旅しましょう!

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