エネルギッシュなバイクの波、香り立つフォーの湯気、そしてアオザイが風に揺れる美しい街並み。ベトナムは、訪れる人の五感を刺激し、忘れられない思い出をくれる魅力的な国です。私もその魅力に惹かれ、何度もこの地を訪れています。ハノイの旧市街の迷路のような路地を歩いたり、ホイアンのランタンが灯る幻想的な夜を楽しんだり、その度に新しい発見と感動があります。
しかし、この素晴らしい国を心から満喫するためには、一つだけ忘れてはならないことがあります。それは、ベトナムの法律や文化的なルールを尊重すること。日本とは異なる社会主義国であるベトナムには、旅行者が「知らなかった」では済まされない独自の決まりごとが存在します。「郷に入っては郷に従え」という言葉の通り、現地のルールを事前に理解しておくことは、予期せぬトラブルを避け、自分自身の安全を守るための最高の「お守り」になるのです。
この記事では、ベトナム旅行を計画しているあなたが、安心して旅の準備を進められるように、入国時の持ち物から滞在中の行動、交通ルール、そして万が一のトラブル対処法まで、旅行者が特に気をつけるべき法律やルールを徹底的に解説していきます。ファッションやアートを楽しむように、現地の文化やルールもスマートに理解して、最高のベトナム旅行をデザインしましょう。
旅の準備が整ったら、次はベトナムの喧騒に浸る一人旅の贅沢を計画してみてはいかがでしょうか。
まずは玄関口から!ベトナム入国で注意すべき持ち込み・持ち出しの法律

旅のスタートは空港から始まります。ベトナムに足を踏み入れる前に、まずはスーツケースの中身をもう一度しっかりと確認しましょう。うっかり入れたものが法律違反となるリスクも決して否定できません。スムーズな入国と快適な旅を実現するために、持ち込みや持ち出しに関する規定を確実に把握しておきましょう。
持ち込みが禁止または制限されている物品
どの国でも同様ですが、ベトナムも持ち込みに厳しい制限を設けている品物があります。知らずに持ち込むと没収だけでなく罰金の対象となることもあるため、パッキングの最終段階で念入りにチェックを行うことが重要です。
持ち込みが絶対に禁止されているもの
- 麻薬や向精神薬などの違法薬物: 言うまでもなく持ち込みは厳禁です。ベトナムは薬物犯罪に対して特に厳しい刑罰を設けており、最悪の場合は死刑に処されます。軽い気持ちで携帯することは自分の人生を台無しにする行為です。
- 銃火器、爆発物、各種武器: こちらも当然持ち込みは禁止されています。
- 反政府的・わいせつな内容を含む出版物やメディア: ベトナム政府や共産党を批判する書籍やDVD、ポルノ雑誌やアダルトグッズも持ち込み禁止です。旅行中に読む本やパソコン内のデータも念のため政治的に敏感な内容でないか確認しておくと安心です。
条件付きで持ち込みが制限されるもの
- 電子タバコ: ベトナムでは電子タバコの使用が黙認されているものの、法的な位置づけは曖昧です。空港の税関職員の判断によっては没収される場合も報告されています。特に液体リキッドの成分が麻薬と誤認されるリスクもあるため、愛用者はリスクを理解したうえで持ち込みの可否を判断し、現地での使用は控える方が無難です。
- 医薬品: 持病があり、常用薬を携行する場合は注意が必要です。個人使用の範囲内であれば問題ないケースが多いものの、多量の持ち込みや向精神薬に該当する薬の場合は、必ず医師発行の英文処方箋や診断書を携帯してください。これにより治療目的での服用が証明できます。念のため薬の一般名や成分名を英語でメモしておくと、現地で体調不良時にも役立ちます。
実際にできる準備:チェックリストの作成
ベトナム旅行の荷造り時には、以下の項目をチェックリストに加えましょう。
- 麻薬や武器など法令で禁止されているものがスーツケースに入っていないか最終確認をする。
- 持ち込む書籍やDVDがベトナムの政治や文化に対して攻撃的な内容でないか再確認する。
- 常備薬を持参する場合は英文の処方箋や診断書を準備し、薬の成分名を英語で記録しているかどうかをチェックする。
- 電子タバコはリスクをよく認識し、持ち込みの有無や量を自己責任で判断する。
事前の少しの注意が、空港でのトラブル回避につながります。
知らなければ没収も?通貨の持ち込みと持ち出し規則
ベトナムでは現金払いが依然として一般的。そのためある程度の現金を携行したいところですが、ここにも法律によるルールがあります。
ベトナムの規定では、以下の金額を超える現金を無許可で持ち込むことや持ち出すことは禁止されています。
- 5,000米ドル相当以上の外貨
- 1,500万ベトナムドン以上
これらの金額を超えて持ち込んだり、持ち出そうとする場合は空港の税関に必ず申告する義務があります。申告を怠ると、超過分が没収されたり罰金を科せられたりする場合があるので十分注意しましょう。
実際にできる対応:税関申告の流れ
規定額を超える現金を携行する際には、以下の手順で申告を行ってください。
- 申告書の取得: 通常は機内で配られたり、空港税関カウンターに設置されています。
- 必要事項の記入: 名前、パスポート番号、便名などの基本情報に加え、所持している通貨の種類と金額も正確に記載しましょう。
- 提出: 入国審査後、赤いランプの「Goods to Declare」カウンターに向かい、税関職員に申告書とパスポートを提示します。
もっとも安心なのは、クレジットカードやデビットカードを活用し、持ち込む現金を規定内に抑えることです。ベトナムの観光地にはATMが多く設置されているため、必要なときに現地通貨を引き出すことも可能です。海外キャッシング機能付きクレジットカードを一枚持つと、大金を持ち歩くリスクを避けられ、安心して過ごせます。
お土産選びにも細心の注意を!持ち出しが制限される品物
旅の思い出として、ベトナムならではの特別なお土産を購入するのも楽しみのひとつです。ただし、一部の商品は法律により国外への持ち出しが制限されています。特に骨董品や美術品には要注意です。
文化財の海外流出を防止する観点から、ベトナムでは骨董品と認定される品物の持ち出しには文化省が発行する許可証が必要です。許可なく持ち出そうとすると空港で没収されてしまいます。信頼できる店舗で購入する際には、「国外持ち出し可能か」「輸出許可証の発行が可能か」を必ず確認しましょう。
さらに、ワシントン条約で保護されている動植物(象牙製品やタイマイの甲羅製品、一部の蘭など)やそれらを材料にした製品も持ち出し禁止です。市場で珍しいアクセサリーや置物を見かけても、むやみに購入するのは避けましょう。
実際にできるポイント:お土産購入時の注意
- 高価な美術品や古い工芸品を買う際は、必ず正規の店舗を選び、輸出許可証の有無を確認する。
- 骨董品かどうか疑わしい場合は店のスタッフに素直に質問する。「This is antique? Can I take this out of Vietnam?(これは骨董品ですか?ベトナムから持ち出せますか?)」とシンプルな英語で尋ねれば大丈夫です。
- 動物の骨や皮、甲羅などを使った製品には手を出さない。環境保護の観点からも賢明な判断となります。
大切な思い出の品を空港で手放すことがないよう、慎重かつ賢明なお土産選びを心がけましょう。
ベトナム滞在中に守るべき法律とマナー
無事に入国手続きを終えたら、いよいよベトナムの街に足を踏み入れます。ここからは、旅行中に特に注意すべき法律や文化的なマナーについてご紹介します。現地の方々への敬意を忘れずに行動することが、快適な旅を楽しむためのポイントです。
神聖な場所での服装マナー — 肌の露出は避けるべき
ベトナムには、美しい仏教寺院や荘厳な教会など、心を落ち着ける神聖なスポットが数多く存在します。こうした宗教施設を訪れる際には、服装に十分な配慮が求められます。
基本的には、タンクトップやキャミソール、ショートパンツ、ミニスカートなど、肩や膝が出るような服装はマナー違反と見なされます。中には入口で服装チェックが行われ、入場を断られるケースもあります。ホーチミン廟のような格式の高い場所では、より厳しい服装規定が設けられています。
旅行者が実践できるポイント:スマートな服装準備を心がける
暑い気候のベトナムでは軽装をしたくなる気持ちも理解できますが、寺院を訪れる予定がある日は、少し工夫しましょう。
- 持ち物リストに加えるもの: 薄手のカーディガンやストール、パレオをバッグに忍ばせておくのがおすすめです。寺院に入る時にさっと羽織るだけで、肌の露出を抑えることができます。シルク製のストールはお土産にも喜ばれ、日よけや冷房対策にも使えるため、一石三鳥です。
- 服装の工夫: 最初からTシャツや、膝下丈のパンツやスカート(ガウチョパンツやロングスカートなど)を選ぶのも賢明です。風通しの良いリネン素材を選べば、おしゃれとマナー、さらには快適さも実現できます。
現地文化への敬意を示す服装は、旅行者としての大切なマナーです。しっかり準備を整えて、落ち着いた気持ちで祈りの場所を訪れましょう。
写真撮影に関する注意点 — 一枚の写真がトラブルに?
旅の思い出を写真に残すのは楽しみのひとつですが、ベトナムでは撮影場所に十分注意が必要です。不注意にシャッターを切った一枚が、予期せぬトラブルを招くこともあります。
法律で撮影が明確に禁止されているのは、以下の場所です。
- 軍事施設やそれに関連するエリア
- 警察署や政府関連の建物
- 国境周辺地域
多くの場合、「撮影禁止」の表示があるものの、表示がなくても安易にカメラを向けるのは避けましょう。スパイ行為と疑われ、警察に尋問されたり、カメラやスマートフォンを没収される可能性もあります。
また、人物の撮影にも配慮が必要です。特に少数民族の村などを訪れた際は、現地の生活や文化を尊重し、無断で写真を撮ることは控えましょう。撮影を希望する場合は、まず「Xin chào(シンチャオ)」と挨拶をし、ジェスチャーで許可を求めると良いでしょう。笑顔で承諾してもらえれば、素敵な思い出の一枚が撮れるはずです。
旅行者が実践できること:撮影時の心得
- 「怪しいかも」「重要な建物かな?」と感じたら、無理に撮影しないで安全策を優先しましょう。
- 警察官や軍人に向けてカメラを向けるのは避けること。
- 人物を撮る際は、まず笑顔で挨拶し、必ず許可を得る。
美しい風景はもちろん、現地の人たちとの温かい交流も写真に収められれば、旅の思い出がさらに豊かになります。
政治・宗教に関する話題は避けるべき
ベトナムはベトナム共産党による一党支配の社会主義国です。日本人にとっては馴染みが薄いかもしれませんが、この政治体制は非常に繊細な話題となっています。
旅行者が気軽にベトナムの政治体制や政府、ホー・チ・ミン主席について批判的な発言をすることは避けるべきです。公の場はもちろん、SNS上でも同様です。政府はネット監視を行っているとも言われており、不適切な発言は法律違反になる恐れがあります。在ベトナム日本国大使館も、政治や宗教に関わる発言に関して慎重になるよう呼びかけています。
宗教についても同様です。多数派の仏教徒をはじめ、キリスト教やカオダイ教など多様な信仰が共存しています。ほかの人々の信仰を尊重し、特定の宗教への批判や冗談は控えましょう。
旅行者は「お客様」であると同時に、「訪問者」という謙虚な姿勢を持つことが重要です。政治や宗教という複雑なテーマは避け、文化や食事、人々の温かさといった旅の素敵な部分に焦点を当てるのが賢明です。
身分証(パスポート)の携帯義務と安全な管理方法
ベトナムでは、外国人旅行者に対して常時身分証明書、具体的にはパスポートの携帯を義務付けています。
警察官に提示を求められた際に携帯していないと、罰金や警察署での対応を求められることもあります。ですので、外出時は必ずパスポートを身につけておくことが必要です。
しかし、紛失や盗難のリスクがあるのも悩ましい点です。パスポートは海外での唯一の公的な身分証明書であり、失くしてしまうと再発行手続きが非常に煩雑で、旅行計画に大きな支障をきたします。
旅行者が実践できる対策:パスポートの多重安全管理
パスポートの携帯義務と紛失リスクへの対策として、以下の方法がおすすめです。
- 原本の安全な携帯: スキミング防止機能を備えたセキュリティポーチやウエストポーチに入れ、服の下など外から見えない場所で携帯するのが最も安全です。
- コピーやデジタルデータの準備:
- 紙のコピー: パスポートの顔写真ページとベトナム入国スタンプのあるページのコピーを複数枚用意し、原本とは別の場所(スーツケースや別バッグなど)に保管します。
- デジタルデータ: スマートフォンの写真フォルダやGoogle Drive、Dropboxなどのクラウドストレージに画像を保存しておきます。これにより、原本もコピーも失った場合でも身分を示せる手段が確保できます。
警察官に身分証明を求められたら、まずはコピーやスマホの画像を提示し、原本はホテルの金庫にあると説明することで、多くの場合は理解を得られます。ただし、法律上は「原本携帯」が義務付けられているため、状況によっては原本の提示を求められることもあります。その際は臨機応変に対応する心構えが必要です。
バイク社会を生き抜く!交通ルールと安全確保

ベトナムの都市部を訪れると、まず圧倒されるのが道路を埋め尽くす無数のバイクの群れです。この活気あふれる風景はベトナムの象徴の一つであると同時に、旅行者にとっては最大の注意点のひとつでもあります。ここでは、現地の交通規則や安全に移動するための実践的な知識をお伝えします。
バイクレンタルと無免許運転の深刻なリスク
観光地には、外国人旅行者向けに「1日〇〇ドル」という手軽な料金でバイクをレンタルできる店が数多く存在します。風を感じながら自由に街を走るのは非常に魅力的に映ることでしょう。しかし、その裏には大きな危険が潜んでいます。
結論を述べると、日本の運転免許証やジュネーブ条約に基づく国際運転免許証では、ベトナムでバイクの運転は認められていません。
ベトナムはジュネーブ条約に加盟していないため、日本発行の国際免許証は法的な効力を持ちません。ベトナムの運転免許を持たない外国人がバイクを運転することは、重大な「無免許運転」となり、法律違反に該当します。
レンタル業者は営業のため免許の確認を怠ることが多いですが、それに安易に甘えてはいけません。無免許で警察に摘発されれば、高額な罰金が科せられます。さらに深刻なのは、事故を起こしてしまった場合です。無免許運転の事故は海外旅行保険の補償対象外となり、賠償金や自身の医療費は全て自己負担となります。その金額は数百万、場合によっては数千万円に及ぶこともあります。軽傷ならまだしも、死亡事故を起こした場合は刑事責任を問われ、ベトナムの監獄に収監される可能性もあります。
読者ができること:安全で快適な移動手段の選択
バイク運転は絶対に避け、以下の安全な移動方法を活用しましょう。
- 配車アプリ(Grab、Gojekなど): ベトナム旅行に欠かせないアプリです。スマートフォンから簡単に目的地を指定でき、料金も事前に確定するのでぼったくりの心配がありません。バイクタクシー(Grab Bike)なら爽快に風を感じられ、安全も確保できます。複数名なら自動車(Grab Car)が便利です。利用もシンプルです。
- 手順1: アプリをインストールし、クレジットカード情報を登録する。
- 手順2: 現在地と行き先を入力する。
- 手順3: 車種(バイクまたは車)を選び、料金を確認して配車を依頼する。
- 手順4: 指定場所に到着したドライバーの車両番号と顔写真を確認してから乗車する。
タクシー: 信頼できる大手タクシー会社(緑色のマイリンタクシーや白色のビナサンタクシーなど)を選びましょう。乗る前にメーターが正常に動いているか必ずチェックすることが大切です。
自分の命と楽しい旅のために、無免許運転という危険な賭けは絶対に避けてください。
道路横断の極意 – バイクの流れに乗る技術
ベトナムの街には信号機のある横断歩道が非常に少ないです。では、どのようにして道路を渡るのでしょうか?答えは「絶え間なく行き交うバイクの波を読んで、その間をゆっくりと渡る」という、旅行者にとっては驚くべき方法なのです。
現地の人々はバイクの隙間を縫うように、動じることなく道路を横断します。この光景を見て「絶対に渡れない」と感じるかもしれませんが、コツを掴めば安全に渡ることができます。
もっとも重要なのは、「急に走り出さず、急に止まらず、後ずさりもしない」ということです。バイクの運転手は「歩行者が一定の速度で一直線に進んでくる」という行動を予測して避けています。不規則な動きをすると避けきれず、接触などの事故につながりやすいのです。
読者がすぐに実践できる、安心な道路横断のポイント
ステップ1:深呼吸して落ち着く
焦らずに周囲のバイクの流れをしっかり観察しましょう。
ステップ2:アイコンタクトで意思表示
渡り始める前にバイクの運転手と目を合わせ、自分が渡る意志を示します。
ステップ3:一定速度で歩き始める
決心がついたら、ゆっくりと止まらず一定のペースで歩き進みます。するとバイクがあなたを避けてくれる感覚を実感できるでしょう。
ステップ4:集団で渡る
一人での横断に不安がある場合は、地元の人が渡るタイミングを見計らい、その直後についていくと安全かつ確実です。
この「ベトナム式の道路横断」は最初はスリルを感じるかもしれませんが、慣れればベトナムならではの体験として楽しめるはず。習得すれば、あなたもベトナム旅行の達人です。
深刻なトラブルに巻き込まれないために
楽しい旅行を台無しにしないためには、犯罪に巻き込まれないよう自らを守ることが非常に重要です。ベトナムの治安は比較的安定していますが、観光客をターゲットにした犯罪や、法のグレーゾーンに絡む誘惑も存在します。ここでは、特に注意すべき3つのポイントについてご紹介します。
ギャンブルの誘惑 – カジノ以外の賭博はすべて違法
ベトナムでは、公営の宝くじを除き、国民による賭博行為は厳しく禁止されています。路上でトランプや賭け事に誘われても、決して参加してはいけません。これらの多くは詐欺であるケースが多く、一度関わると高額な金銭を要求されるだけでなく、違法行為に加担したとして警察に逮捕される危険があります。
ただし、一部の大型ホテルには、外国人観光客専用の合法的なカジノが併設されており、これらは政府の許可を受けて運営されています。入場時には必ずパスポートの提示が必要です。ギャンブルを楽しみたい場合は、こうした正規の施設を利用するようにしましょう。外務省海外安全ホームページでも、違法賭博への警戒が呼びかけられています。
薬物犯罪の厳しい現実 – 死刑もあり得る重罪
冒頭でも述べた通り、ベトナムでは薬物関連の犯罪は極めて重い罪とされます。ヘロインや覚せい剤などの強力なドラッグのみならず、大麻も同様に禁止されています。ナイトクラブやバーで見知らぬ人から薬物を勧められても、絶対に手を出さないでください。「少しだけなら」「ここでは合法だと思った」といった言い訳は一切通用しません。
規定量を超える薬物の所持、販売、製造、輸送は、最高刑として死刑が科せられます。外国人旅行者であっても例外はなく、過去に外国人が薬物関連で死刑判決を受けた事例もあります。
また、知らない人から「荷物を預かってほしい」「日本まで運んでほしい」などと頼まれても、決して引き受けないでください。中身が麻薬である可能性が高く、自覚なしに運び屋になる危険性があるためです。自身の荷物は必ず自分で管理し、安易な親切心が取り返しのつかない事態を招くことを心に留めておきましょう。
買春・売春に関する厳格な法律
ベトナムでは買春および売春は法律で禁止されており、サービスを提供する側だけでなく、購入する側も処罰の対象となります。外国人旅行者であっても、買春行為が摘発されれば、罰金や国外退去処分などの厳しい処分が科されます。
夜の繁華街で声をかけられても、決してついて行かないようにしてください。こうした誘いは買春リスクだけでなく、睡眠薬強盗や美人局(つつもたせ)といった別の犯罪に巻き込まれるきっかけにもなります。甘い誘惑の裏には、大きな危険が隠れていることを忘れないでください。
もしもの時のために!トラブル対処法と緊急連絡先

どんなに注意を払っていても、思いがけないトラブルに巻き込まれる可能性はゼロとは言えません。重要なのは、慌てず冷静に対処することです。ここでは、万が一のために具体的な対応方法と覚えておくべき連絡先をまとめました。
パスポートを紛失した場合は?
海外旅行中に最も避けたいトラブルのひとつがパスポートの紛失です。紛失や盗難に遭った際は、以下の手順を迅速に行ってください。
読者が実践できること:パスポート紛失時の対応手順
- 手順1:警察署で紛失証明書を取得する
- 紛失した場所を管轄する最寄りの警察署(Công an Phường)に出向き、パスポートをなくしたことを届け出ましょう。その際、「紛失証明書(ポリスレポート)」を発行してもらいます。この書類はその後の手続きに必須となるため、大切に保管してください。
- 手順2:必要書類を用意する
- 日本大使館・総領事館での手続きには、次の書類が必要となります。
- 紛失一般旅券等届出書(現地の大使館・総領事館で入手可能)
- 警察署で発行された紛失証明書
- 写真2枚(サイズ4.5cm×3.5cm、撮影から6ヶ月以内のもの)
- 戸籍謄本または抄本の原本(発行から6ヶ月以内のもの)
- 航空券の予約確認書など帰国予定がわかる書類
- 戸籍謄本については、日本にいる家族に依頼し、FAXや国際郵便で送ってもらう必要があります。事前にコピーやデータを用意しておくとスムーズです。
- 手順3:日本大使館・総領事館で申請手続きを行う
- 必要書類が揃い次第、管轄の日本大使館(ハノイ)または総領事館(ホーチミン)へ赴き、「帰国のための渡航書」の発給を申し込みます。この渡航書は日本へ戻るための一時的なパスポート代わりとなり、発給には通常1~2日ほどかかります。
- 手順4:ベトナム公安省の出入国管理局で出国ビザを取得する
- 「帰国のための渡航書」を受け取った後は、ベトナムの出入国管理局へ行き、出国ビザ(スタンプ)を取得してください。これにより、ベトナムから合法的に出国できるようになります。
手続きは複雑で時間も要します。だからこそ、パスポートは常に厳重に管理することが何より重要です。
読者ができること:公式情報の確認
最新情報や詳しい手続きについては、必ず以下の公式サイトでご確認ください。
交通事故に巻き込まれた場合
もし交通事故の当事者(被害者・加害者)となってしまった際は、落ち着いて以下の対処を行いましょう。
読者ができること:交通事故発生時の対応
- ステップ1:自身の安全を確保し、警察・救急に連絡する
- まずは自分と周囲の安全を確保してください。負傷者がいる場合はすぐに救急車(電話番号:115)を呼びます。そのうえで、必ず警察(電話番号:113)にも連絡し、現場の検証を依頼しましょう。
- ステップ2:海外旅行保険会社のサポートデスクに連絡する
- 加入している海外旅行保険のサポート窓口に速やかに電話をし、日本語対応可能な会社が多いため安心です。オペレーターが病院の手配から通訳サービス、相手方との交渉にいたるまで的確にアドバイスしてくれます。プロの指示に従うのが最善です。
- ステップ3:相手の情報を記録する
- 可能な範囲で、相手の氏名、連絡先、住所、車両ナンバーなどをメモしてください。スマートフォンのカメラで撮影しておくと簡単で確実です。
海外旅行保険への加入はもはや「任意」ではなく「必須」と言えます。高額な治療費や賠償金のリスクを考え、十分な補償内容の保険に入ることが、自身を守る最大の備えです。
不当請求や詐欺に遭遇した場合
タクシーのメーター不正やシクロ(人力車)での法外な料金請求、お土産店でのしつこい勧誘など、旅行者が金銭トラブルに巻き込まれるケースは今も見られます。
不当な請求を受けた際は、まずはっきりと「No」と断る勇気を持つことが大切です。相手が複数で威圧的であれば、身の安全を最優先にして人通りの多い場所に移動したり、周囲の人に助けを求めたりしましょう。
無理にその場で大金を支払う必要はありません。交渉が進まない場合は、「警察に行きましょう(Let’s go to the police.)」と言うと退くことも多いです。ハノイやホーチミンといった主要都市には、外国人観光客向けのサポート窓口も設置されています。トラブル時にはこれら公的機関に相談する方法もあります。詳細はベトナム観光総局の公式サイトで事前に確認しておくと安心です。
ベトナムの法と文化を尊重し、最高の旅を創り上げる
これまで、ベトナム旅行で気をつけるべき法律やルールについて、詳しくご説明してきました。多くの「やってはいけないこと」に触れ、不安に感じた方もいるかもしれません。しかし、これらは決してあなたの旅を窮屈にするためのものではありません。
現地の法律や文化を事前に理解し、尊重することは、旅行者として自分の安全を守る最も効果的な方法であり、同時にベトナムという国やその住民への最大の敬意を示すことでもあります。
パスポートの取り扱い方、寺院での服装のマナー、道路の横断方法。一つ一つの細かな配慮が、思わぬトラブルを防ぎ、あなたの旅をより快適で充実したものにしてくれます。ルールを理解したうえで行動すれば、ベトナムはいつまでも温かく、刺激的で魅力的な笑顔を見せてくれるでしょう。
さあ、準備は万全です。この記事を旅の指針に、ベトナムの活気あふれる街並みに飛び込んでみてください。きっと、心を揺さぶる忘れられない体験があなたを待っています。安全で思い出深い、あなただけの素晴らしいベトナム旅行となることを願っています。

