「友達と旅行?そんな予定、カレンダーのどこを探しても見つからない」。
自嘲気味に呟きながら、私はベトナム・ハノイ行きの航空券を予約していました。SNSのタイムラインを彩る、友人たちの楽しげなグループ旅行の写真。キラキラした笑顔の集合写真を見るたび、胸の奥がチクリと痛む。私には、気軽に「旅行に行こうよ」と誘える友達が、悲しいくらいにいないのです。
昔から、集団行動が苦手でした。周りに気を遣いすぎて疲れてしまう。自分のペースで動けないのがもどかしい。気づけば、ひとりでいることが何よりも快適になっていました。でも、心のどこかでは「ひとり=寂しい人」という世間の目に怯えていたのかもしれません。休日にひとり、旅先にひとり。それはどこか、欠陥品であるかのような烙印に思えてなりませんでした。
でもある日、ふと思ったのです。「誰かと一緒じゃなきゃ楽しめないなんて、誰が決めたんだろう?」と。ひとりの時間を心から愛せるのなら、それは弱さではなく、むしろ強さではないか。他人の評価や同調圧力から解放された、究極の自由ではないか。ならば、その「ひとり」を、徹底的に極めてみよう。中途半端な強がりじゃない、純度100%の孤独を、異国の地で味わい尽くしてみようじゃないか。
選んだ場所は、ベトナム。けたたましいバイクの洪水、熱気とスパイスが混じり合う香り、理解できない言葉のシャワー。五感を揺さぶる圧倒的な混沌の中でなら、私のちっぽけな孤独感なんて、いとも簡単に溶けてなくなってしまうのではないか。そんな期待を胸に、私はバックパックひとつで日本を飛び立ちました。
この旅は、誰かと楽しさを共有するためではありません。私だけの時間、私だけの感覚、私だけの物語を紡ぐための、いわば「孤独を極める」ための儀式なのです。ハノイの旧市街、その混沌の中心地を地図で眺めながら、私の胸は静かに高鳴っていました。
この混沌の中で、理解できない言葉のシャワーを浴びながらも、少しでも現地の人と心を通わせたいなら、使えるベトナム語フレーズを覚えておくのがおすすめです。
旅の始まりは「孤独」という名の翼を広げる準備から

ひとり旅の醍醐味は、その準備の段階からすでに始まっています。誰にも相談せずに、すべてを自分の意思で決めていくこと。それは孤独な作業であると同時に、自分だけの旅を一から組み立てていく、心躍る体験でもあるのです。
パスポート・ビザ・航空券 — 最初の孤独な挑戦
まず取り組むべきは、最も基本的かつ重要な手続きです。パスポートの有効期限は十分かどうか、ベトナム渡航に際してビザは必要かどうか。こうした確認は他人任せにできません。自分の旅は自分で守る、という意識こそが、ひとり旅の第一歩になります。
ベトナムの入国規則は、日本のパスポート所持者にとって比較的シンプルです。2024年現在、観光目的で45日以内の滞在であればビザは免除されます。すなわちパスポートと往復航空券があれば、気軽に旅立てるのです。ただし、この規則は変更される可能性もあるため、渡航前には必ず在ベトナム日本国大使館の公式サイトなどで最新情報をチェックする習慣を身につけましょう。45日を超える長期滞在を予定している場合は、事前にE-visa(電子ビザ)の申請が必要です。こちらもオンラインで完結できるため、ひとりでも問題なく手続きできます。
次に航空券の手配です。私は複数の航空会社の料金を比較できる検索サイトをよく利用します。ひとり旅はスケジュールに多少の柔軟性があるため、最安のチケットを見つけやすいという利点があります。LCC(格安航空会社)を選べば、かなりの節約も可能です。ただし、LCC利用時には注意点もあります。受託手荷物や機内食に追加料金がかかること、座席指定が有料であることが多い点などです。予約時にオプションをしっかり確認し、必要のないものは省く。こうした取捨選択も、ひとり旅の重要なスキルのひとつと言えます。環境負荷を少しでも減らしたいと思い、私は今回、乗り継ぎの少ない直行便を選びました。このような小さな選択が、サステナブルな旅の第一歩となります。
持ち物リスト — 孤独を支える最強の味方
バックパックに詰め込むものは、孤独な旅に臨む兵士が武器を選ぶかのような作業と似ています。持ちすぎれば負担になり、少なすぎれば不安になる。厳選された装備だけが、私の旅を快適かつ安全にしてくれるのです。
絶対に欠かせない一軍メンバー
- パスポートと各種書類のコピー:パスポート原本はホテルのセーフティボックスに保管し、持ち歩き用にコピーやスマホで撮影したデータも必ず用意します。紛失や盗難時のリスクヘッジです。
- 現金(日本円・米ドル)とクレジットカード:ベトナムの通貨はドンですが、現地で両替するのが一般的です。少額の米ドルを持っていると、アライバルビザの取得など緊急時に役立ちます。クレジットカードは最低2枚、異なるブランド(VISAとMasterCardなど)を用意し、別々に保管するのが基本です。
- 海外旅行保険証:旅行保険はただのお守りではなく必須アイテムです。病気やケガ、盗難など予期しないトラブルから身を守る最大の防御策。キャッシュレス診療対応の保険を選べば、現地で高額な医療費を立て替える必要がなく安心です。
- スマートフォンと関連機器:SIMフリーのスマホ、モバイルバッテリー、充電器、変換プラグ(ベトナムはA型またはC型が主流)。これらなくしては、現代のひとり旅は成立しません。
ベトナムの旅で重宝する二軍選手
- eSIMまたはSIMカード:現地の空港や街角で購入可能ですが、私は日本で事前にeSIMを契約しました。到着直後からネット接続できる安心感は何物にも代えがたいです。地図や翻訳、配車アプリの「Grab」など、ネット環境は命綱です。
- 日焼け対策アイテム:南国の日差しは想像以上に強烈。日焼け止め、帽子、サングラス、UVカット加工の薄手の羽織物は必携です。
- 虫除けスプレー・痒み止め:特に夜や川辺では蚊に注意。デング熱など感染症リスクを避けるため、肌の露出は控え、虫除け対策を徹底しましょう。
- 衛生用品:ウェットティッシュ、アルコール消毒ジェル、トイレットペーパーは、ローカル食堂や公共トイレで備え付けがないことも多いため、ポケットに忍ばせておくとぐっと快適になります。
- サステナブルなグッズ:マイボトルとエコバッグ。ベトナムではペットボトルやビニール袋の使用が多いので、ゴミ削減のために給水ポイントではマイボトルで水を補充し、買い物時にはエコバッグを利用する。旅人としてのちょっとした心遣いです。
持ち込み禁止物・制限品に注意
忘れてはならないのが、持ち込みが禁止または制限されている品目です。特に肉製品(ジャーキーやソーセージなど)は家畜伝染病予防の観点から原則禁止されています。お土産や個人消費のためでも、没収や罰金対象となることがあるため、十分な注意が必要です。
心の準備 — 「ひとり」を最大の武器にするマインドセット
持ち物以上に重要なのが、心の準備です。ひとり旅には自由と引き換えに、不安や孤独がつきまとうもの。その感情にどう向き合うかによって、旅の充実度は大きく変わってきます。
「道に迷ったら?」「体調が悪くなったら?」「言葉が通じなかったら?」
心配は尽きませんが、こう捉えてみるのです。「何とかなる」と。スマートフォンと少しの勇気さえあれば、たいていの困難は乗り越えられます。完璧に計画が進まないのが旅の醍醐味。思いがけないトラブルも、後になれば楽しい笑い話に変わります。そうした柔軟なマインドセットが、孤独な旅人を強くしてくれるのです。
そして最も肝心なのが、「寂しさ」を敵視しないこと。カフェでひとり、夕陽を眺めながら物思いにふける時間。誰にも邪魔されず、自分と静かに向き合うそのひとときは、日常の喧騒では味わえないかけがえのない宝物です。寂しいのではなく自由。孤独ではなく独立。このように気持ちを切り替えたとき、ひとり旅は自己肯定感を高める最高のセラピーとなるでしょう。
ハノイの喧騒に身を投げて、孤独を味わい尽くす
準備は整いました。いよいよ孤独の極みに挑む旅の実践が始まります。飛行機がハノイのノイバイ国際空港に着陸したその瞬間、むっとした熱気に包まれながら、私の冒険が幕を開けました。
ノイバイ国際空港から市内へ―初めての挑戦と小さな成功体験
空港からハノイ市内への移動は、一人旅における最初の関門です。方法はいくつかあります。
- タクシー:一番手軽ですが、料金の不透明さには注意が必要です。乗るなら、緑色の車体を持つ「Mai Linh(マイリン)」や白色の「Vinasun(ビナサン)」が比較的安全とされています。乗車前にメーター使用の確認は必須です。
- 配車アプリ「Grab」:私の最推しはこちら。事前に料金が確定し、キャッシュレス(カード登録時)で支払いが完結。指定された場所で待つだけで予約した車が迎えに来るので、言葉が通じなくても目的地を伝える手間が省けます。一人旅の強力な味方です。
- 路線バス:最も経済的な手段で、特に86番バスは空港と市内中心部(ホアンキエム湖周辺)を直結し、多くの旅行者に人気です。大きな荷物があっても問題ありませんが、周囲の地理にある程度慣れていて、時間に余裕がある人向けです。
私は迷わずGrabを選びました。事前にアプリのダウンロードとクレジットカードの登録を済ませ、目的地である旧市街のホテルを入力。料金に納得して配車依頼をし、数分後に指定の乗車場所でナンバープレートを確認してスムーズに車に乗り込みました。運転手と簡単に挨拶を交わしながら、誰にも頼らず自身の手でこの一連の手続きをやり遂げたことが、小さいながらも確かな自信となりました。
旧市街の混沌―雑踏の中で感じた確かな「自分」
ハノイの旧市街はまさに「混沌」という言葉がぴったりの場所。途切れないバイクの群れ、耳をつんざくクラクション、人々の物売りの声、香草と排ガスが混ざり合う独特の匂い。五感が情報の洪水に圧倒されそうになります。
普通なら、その強烈なエネルギーに押されてしまうかもしれませんが、不思議と恐怖心は湧きませんでした。なぜなら私は完全に「個」として存在していたからです。この雑踏の中、誰も私に関心を持たない。私が何者でどこから来たか、どこへ向かっているか誰も気にしない。その完全な匿名性こそが信じられないほどの自由と解放感をもたらしてくれました。
他人の視線やペースを気にする必要もなく、気の向くままに路地へ入り、面白い看板を見つければ立ち止まり、疲れたら道端の低い椅子に腰掛けて行き交う人々を眺める。すべてが自由で、すべてが自分の選択。混沌としたこの街の中で、私は間違いなく「私」として存在している。そんな感覚は、やみつきになるほど心地よいものでした。
ベトナムコーヒーと孤独の甘美な共演
ハノイの街角には、おしゃれなカフェが数多く点在しています。フランス統治時代の影響を色濃く残すこの街で、コーヒーは暮らしの中に深く根付いています。一人旅の心強い相棒として、これほど頼もしいものはありません。
私が夢中になったのは「カフェ・チュン(Cà phê trứng)」、いわゆるエッグコーヒー。濃く淹れたベトナムコーヒーの上に、卵黄とコンデンスミルクを泡立てたクリームがたっぷりと乗った、まるで飲むティラミスのようなスイーツドリンクです。その甘くて濃厚な味わいが、歩き疲れた体にじんわりと染みわたりました。
カフェの窓際に腰掛け、注文したエッグコーヒーをゆっくり味わいながら、日記を開いて旅で感じたことや考えたことを誰にも見せることなく静かに書き綴る。あるいは、本の世界に没頭する。周囲のざわめきが心地よいBGMとなり、不思議と集中力が増していきます。誰かと話す必要のない、静寂の時間。それは退屈などではなく、自分自身と向き合うためのかけがえのない豊かなひとときでした。
路上グルメとの交流―指差しと笑顔が繋ぐ世界共通の言葉
一人旅の食事に不安を感じる人もいるかもしれません。立派なレストランに一人で入るのは勇気がいる、と。しかしベトナムでは心配は無用です。なぜなら、この国で最高の味は路上にこそあるからです。
プラスチック製の低い椅子と簡素なテーブルが並ぶ屋台。地元の人に混じって味わう一杯のフォー(米粉の麺)、ブンチャー(つけ麺)、バインミー(ベトナム風サンドイッチ)は、高級レストラン以上に感動的な体験をもたらしてくれます。
注文は、言葉がわからなくても大丈夫。メニューや隣の客が食べているものを指させば、たいてい通じます。「モッ(Một)=ひとつ」「カムオン(Cảm ơn)=ありがとう」。このふたつの言葉と笑顔があれば、十分にコミュニケーションは成立します。衛生面が気になる場合は、地元の客が多い店を選ぶのがおすすめ。回転率が高い店は新鮮な食材を使っている証拠です。熱々のスープで仕上げるフォーなどは、比較的お腹にやさしいメニューだと言えるでしょう。
熱々のフォーの丼を前に、一人黙々と麺をすする。周囲は賑やかに会話を楽しむ家族連れやカップルたち。でも孤独感はなく、むしろこの場の空気や味に集中できることが、極上の贅沢に思えました。美味しいものを味わうとき、誰もが孤独なのだという当たり前の事実を、この路上で実感したのです。
孤独が深まる時、旅はもっと面白くなる

旅の折り返し地点に差し掛かると、最初の高揚感は徐々に和らぎ、代わって別の感情が顔を覗かせます。それは、より深くて純粋な「孤独」と向き合う瞬間です。しかし、それは決してネガティブなものではありませんでした。
言葉の壁という無言の対話
ベトナム語は声調が複雑で、日本人にとって習得が難しい言語です。観光地では英語が通じることもありますが、地元のエリアに入ると途端に言葉の壁にぶつかります。
市場で果物の値段を聞きたいときや、バスの行き先を確認したいとき。翻訳アプリは役に立ちますが完璧ではありません。そんな時に頼りになるのはジェスチャーや表情です。身振り手振りを交えて、知っている単語を並べて何とか気持ちを伝えようとします。相手も熱心に耳を傾け、私の意図を汲み取ろうとしてくれます。言葉が通じないからこそ生まれる、不思議な連帯感。それは言葉に頼る日常では味わえない、新鮮なコミュニケーション体験でした。
言語がわからない分、私は周囲の様子をより注意深く観察するようになりました。人々の表情や声のトーン、街のざわめき、食べ物の香り。五感がいつも以上に研ぎ澄まされ、世界が今まで以上に鮮やかに映ります。言葉の壁は私から何かを奪うどころか、新たな感覚の扉を開いてくれたのです。
予想外のトラブルにどう向き合うか – 孤独な旅人の生き残り術
ひとり旅にはトラブルがつきものです。しかし、それを乗り越えることで旅人は少しずつ強くなっていきます。肝心なのはパニックにならず、冷静に対応できる知識と準備を持つことです。
道に迷った場合:まずは落ち着きましょう。Google Mapsのオフライン機能を活用すれば現在地を確認できます。スマホの充電が切れてしまったときに備え、ホテルの名前と住所を書いたカードを携帯すると安心です。地元の人に尋ねるときは、地図を見せて指差すのが確実です。
体調を崩した場合:無理は禁物です。軽い下痢や腹痛なら現地の薬局で薬を買えますが、症状が重い、あるいは高熱がある場合は迷わず病院へ。ここで役立つのが海外旅行保険です。保険会社のサポートに連絡すれば日本語対応可能な病院を紹介してもらえたり、キャッシュレス受診の手配をしてくれます。ハノイやホーチミンにはMed247のような日系クリニックもあるため、事前に場所を調べておくと心強いです。
スリや置き引きに遭った場合:残念ながら観光地では軽犯罪のリスクがあります。基本は貴重品から目を離さないこと。バッグは体の前に抱え、現金やカードは複数の場所に分散して保管しましょう。被害に遭ったらまず身の安全を確保し、近くの警察署で盗難証明書(ポリスレポート)を発行してもらいます。これは海外旅行保険申請に必要です。パスポートを盗まれた場合は在ベトナム日本国大使館に連絡し、再発行手続きの指示を仰いでください。
トラブルは確かに恐ろしいものですが、「自力で解決できた」という体験は何にも代え難い自信へと繋がります。旅は私たちに生き抜く知恵と強さを授けてくれる、最高の学校なのです。
ひとり旅だからこそ見える風景 – 偶然の出会いと静かな内省
誰かと一緒の旅では、会話やお互いへの配慮に気を取られがちですが、ひとり旅では自分の意識を100%目の前の景色や出来事に注げます。
観光客向けのツアーに参加せず、あえて地元バスに乗って終点まで行く。地図にも載らない細い路地を気ままに探検する。そうすると、ガイドブックには載っていないハノイの日常の風景に出会えます。近所で井戸端会議を楽しむおばあさんたち。路上で将棋を指すおじさんたち。アオザイ姿で自転車に乗る女子学生。そんな何気ない一瞬が、なぜか心に響き深く刻まれます。
ある日の午後、ハノイ大教会付近を歩いていると、小さな画廊が目に入りました。自然と足を踏み入れると、ベトナムの風景を描いた美しい絵が並んでいます。しばらく眺めていると、奥から年配の画家が現れ、片言の英語で絵の説明をしてくれました。故郷への愛情を込めた彼の絵。そして静かで情熱的な語りに、私は心を打たれました。もし誰かと一緒だったら、この画廊に入る勇気はなかったかもしれません。ひとりだったからこそ出会えた、偶然で大切な時間でした。
夜、ホテルに戻ってベッドに横たわり、今日一日の出来事を静かに振り返る。楽しかったこと、驚いたこと、少し怖かったこと。そのすべてがフィルターを通さず、直接私の心に蓄積されていきます。この深い内省のひとときこそ、孤独な旅がもたらすかけがえのない贈り物なのかもしれません。
世界遺産の海で、孤独を静かに抱きしめる – ハロン湾への小旅行
ハノイの喧騒を満喫した私は、次に世界遺産ハロン湾を訪れることにしました。大小2,000を超える奇岩がエメラルドグリーンの海面から突き出す、その幻想的な景色。静けさと雄大さに包まれたこの地なら、私の孤独は一層研ぎ澄まされるに違いないと直感しました。
日帰りツアーか宿泊クルーズか – 孤独な旅人が選ぶ道
ハノイからハロン湾へ行くには、ツアー参加が一般的です。選択肢は大きく2つに分かれます。
- 日帰りツアー:早朝にハノイを出発し、夜には戻る弾丸ツアー。時間が限られていたり費用を抑えたい人に適しています。気軽に参加できる反面、移動時間が長いため、ハロン湾で過ごせる時間が短いのが難点です。
- 宿泊クルーズ:1泊または2泊のクルーズ船で、ハロン湾の奥深くまで巡るツアー。夕日や朝日、星空など、時間とともに変わる絶景を存分に楽しめます。料金は高めですが、その価値は十分にあります。ひとり参加でも多くのツアーでシングルルームの用意がされています。
私は迷わず宿泊クルーズを選びました。せっかく訪れるならば、この絶景を心ゆくまで感じたい。孤独な旅のハイライトにふさわしい舞台だと思ったのです。ツアーは現地の旅行代理店でも申し込めますが、私は事前にオンライン予約サイトで口コミをじっくり比較し、環境に配慮したエコなクルーズを提供している船会社を選びました。美しい自然を持続可能な形で楽しむことも、現代の旅人に課された大切な責任のひとつです。
奇岩が織りなす水墨画の世界で、自分自身と対話する
ハノイからバスに揺られて港へ到着。乗り込んだクルーズ船はまるで水上のホテルのようでした。出航すると、窓外に次々と水墨画のような奇岩が現れます。その圧倒的な規模の前に立つと、日々の悩みや不安は途端に小さく感じられました。
クルーズにはカヤックや鍾乳洞探検といったアクティビティも含まれていました。ほとんどの乗客はカップルや家族連れで、最初は少し心細さもありましたが、アクティビティが始まるとその不安は消えてしまいました。ひとりカヤックを漕ぎながら波の音や鳥のさえずりに耳を傾ける。圧倒的な迫力の鍾乳洞の神秘的な造形にただ息を呑む。誰かと感想を分かち合う必要もありません。この感動はすべて自分だけのものであると思うと、胸に込み上げる贅沢さを感じずにはいられませんでした。
夜、船のデッキに出て空を見上げると、満天の星々が煌めいていました。街の光が届かない湾の上では、星の輝きは驚くほど鮮明です。静かな波音を聞きながら、冷えたビールを片手に流れ星を探す。隣には誰もいないけれど、寂しさはありません。むしろ、この広大な宇宙と自分だけで向き合っているという実感に、心が震えるほどの満たされた気持ちを感じていました。
ハロン湾は私に静かに教えてくれました。孤独とは欠けていることではなく、世界と、自分自身と深く結びつくための大切な静寂の時間なのだと。
あなたの「孤独」も、きっと旅の翼になる

ベトナムでのひとり旅を終えて日本に帰国した私は、以前とは少し違う自分に気づきました。かつては大きなコンプレックスだった「友達がいない」という状況が、今ではまるで問題でないかのように感じられるのです。
この旅を経て、私は「孤独」が決して寂しいものではないことに気づきました。それは、自分自身とじっくり向き合うための、何にも代えがたい贅沢な時間でした。他人の評価にとらわれることなく、心のままに好きなものを好きだと言い、自分の行きたい場所へ行く。そうした経験の積み重ねが、揺るぎない自己肯定感を育んでくれました。
もし、かつての私のように「ひとり」であることに引け目を感じている人がいるなら、伝えたいのです。あなたのその「孤独」は決して弱さではなく、むしろあなたをどこへでも連れていく自由な翼となるのだと。
ひとり旅を始める一歩が踏み出せずにいるあなたへ。最初から海外に行く必要はありません。まずは近所のカフェにひとりで入ってみる。休日にひとりで映画を観に行く。国内の温泉へ、一泊二日で旅に出てみる。そんな小さな「ひとり体験」を積み重ねていけば、あなたの翼は少しずつ強く、しなやかになっていくはずです。
そして、いつか海外へ旅立つと決めたら、準備を怠らないでください。旅先の情報を収集し、安全対策を学び、万が一に備えること。その孤独な準備の時間が、あなたの旅をより豊かで安全なものにしてくれます。渡航前には必ず、外務省の海外渡航登録「たびレジ」に登録することを忘れないでください。これは現地の最新安全情報を受け取ったり、万が一の事件や災害時に日本大使館からの支援を受けやすくしたりするための重要な手続きです。
ベトナムの喧騒の中で私は孤独を極め、その先に本当の自由を見つけました。ひとりだからこそ味わえる感動がそこにはありました。ひとりだからこそ出会える景色がそこにはありました。今、私のカレンダーは誰かとの予定ではなく、次の「私だけの旅」の計画で静かに埋まってきています。

