バンコクの喧騒、ネオンの光、スパイシーなストリートフードの香り。それももちろんタイの魅力だけれど、時々ふと、心が静寂を求める瞬間が訪れませんか? アパレルの仕事に追われる毎日の中で、私の魂が渇望していたのは、人工的な光ではなく、自然が織りなす本物の光景でした。そんな想いを抱いて辿り着いたのが、タイ北部にひっそりと広がる「タートモーク国立公園」。そこは、朝霧がまるで海のように広がり、手つかずの緑がどこまでも続く、まさに地上の楽園。今回は、まだ多くの旅人の地図には載っていないこの秘境の魅力と、女性ひとりでも安心して楽しめる旅のヒントを、たっぷりとご紹介しますね。日常をリセットし、新しい自分に出会う旅へ、さあ一緒に出かけましょう。
タートモーク国立公園とは? – 霧と緑が織りなす神秘の世界

「タートモーク国立公園(Thung Salaeng Luang National Park)」と聞いても、ピンとくる方は少ないかもしれません。それもそのはず、ここはタイの旅に慣れた人々の間でさえ「知る人ぞ知る」と囁かれる、特別な場所なのです。
場所は、タイ北部のピサヌローク県とペッチャブーン県にまたがる広大なエリア。首都バンコクからは北へ約400km、車で5〜6時間ほどの距離にあります。公園の名前は、タイ語で「タート(น้ำตก)」が滝、「モーク(หมอก)」が霧を意味し、その名の通り、美しい滝と幻想的な霧の風景が最大の見どころとなっています。
この公園がなぜこれほどまでに神秘的な雰囲気を纏っているのか。その理由の一つは、その地形にあります。標高300mから1,028mの山々が連なり、豊かな森林と草原がパッチワークのように広がっているのです。特に、公園の一部は「ペッチャブーン・ジオパーク」として[ユネスコ世界ジオパーク](https://www.unesco.org/en/iggp/geoparks/phetchabun)にも認定されており、地質学的にも非常に価値のある場所。太古の地球の記憶を宿した大地が、ここにしかない独特の生態系と景観を育んできました。
そして、この公園をさらに特別なものにしているのが、隣接する「ナムナオ国立公園」や「カオコー」といった他の自然豊かなエリアとの繋がりです。これら一帯は「タイの森の回廊」とも呼ばれ、多くの野生動物たちにとって重要な生息地となっています。運が良ければ、野生の象や鹿、珍しい鳥たちの姿に出会えるかもしれません。
アクセスの容易さだけで言えば、もっと手軽な国立公園はタイにたくさんあります。けれど、だからこそタートモークは守られてきたのです。簡単に人を寄せ付けないその少しの不便さが、手つかずの自然と静寂を今に残してくれている。本当に価値のあるものとは、少しだけ手間をかけて探し出す宝物のようなもの。この公園は、まさにそんな大人の冒険心を満たしてくれる、魅惑のデスティネーションなのです。
旅のハイライト – 心に刻まれる5つの絶景と体験

タートモーク国立公園での滞在は、まるで一編の美しい詩のようでした。刻一刻と表情を変える自然の中で、五感が研ぎ澄まされていくのを感じます。ここでは、私の心を鷲掴みにした、忘れられない5つの絶景と体験をご紹介しましょう。
① 息をのむ絶景、霧の海(タレー・モーク)
この旅の目的であり、ハイライトでもあるのが「霧の海」、タイ語で「タレー・モーク」との出会いです。夜明け前、まだ暗い中をヘッドライトの明かりだけを頼りにビューポイントへと向かいます。ひんやりとした空気が肌を刺し、期待と少しの緊張で胸が高鳴る時間。
私が訪れたのは、公園内で最も有名なビューポイント「ノーン・メーパーン(Nong Mae Na)」。展望台に到着し、東の空が白み始めると、目の前に信じられない光景が広がりました。谷間を埋め尽くす、どこまでも続く真っ白な霧。それはまるで、柔らかなシルクのブランケットが大地を優しく包み込んでいるかのよう。時折、霧の中から山の頂が島のように顔を出し、その幻想的な風景は、水墨画の世界に迷い込んだかと錯覚するほどでした。
太陽が昇るにつれて、霧は金色に染まり、ゆっくりと形を変えながら天へと昇っていきます。その光と影が織りなすドラマティックなショーは、どんなアート作品よりも感動的。ただただ、無言でその光景を見つめる時間。都会の喧騒の中で忘れていた、地球の美しさと偉大さを全身で感じ、心が洗われていくようでした。
この霧の海に出会えるベストシーズンは、空気が澄んで気温が下がる乾季の11月から2月にかけて。特に冷え込んだ朝は、より濃密で美しい霧が発生しやすいと言われています。この絶景のためだけにでも、タートモークを訪れる価値は十分にあります。
② 公園の名の由来、タートモークの滝
公園の名前にもなっている「タートモークの滝」は、もうひとつの必見スポットです。駐車場から緑豊かな小道を15分ほど歩くと、突如として現れる壮大な滝。高さは約15mとそれほど高くはありませんが、幅広の岩盤を滑るように水が流れ落ちる姿は、まるで白いレースのカーテンのよう。
私が訪れたのは乾季だったので水量は穏やかでしたが、その分、滝壺はエメラルドグリーンに澄み渡り、神秘的な美しさでした。滝の周りはひんやりとした空気に包まれ、天然のクーラーのよう。岩に腰掛けて、ただ水の音を聞いているだけで、心がスーッと落ち着いていきます。滝壺では水遊びも可能で、欧米からの観光客が気持ちよさそうに泳いでいました。勇気のある方は、水着持参でぜひ挑戦してみてください。
雨季(5月〜10月)には水量が増し、茶色く濁った水が轟音とともに流れ落ちる、まったく違う迫力ある姿を見せるそうです。どちらの季節に訪れても、その時々の自然の表情を楽しめるのがこの滝の魅力。マイナスイオンを全身に浴びて、旅の疲れをリフレッシュするのに最適な場所です。
③ 緑深き森を歩く、癒しのトレッキング
タートモークの魅力は、遠くから眺める絶景だけではありません。その森の奥深くに足を踏み入れることで、初めて感じられるものがあります。公園内には、初心者でも気軽に楽しめる短い散策路から、ガイドが必要な本格的なトレッキングコースまで、様々なルートが整備されています。
私は、ビジターセンターでおすすめされた約2時間のコースを歩いてみました。一歩森に入ると、そこはもう別世界。シダ植物が生い茂り、巨大な木々が天を覆う緑のトンネルが続きます。聞こえてくるのは、風が木々を揺らす音、名前も知らない鳥たちのさえずり、そして自分の足音だけ。
トレッキングで大切なのは、何と言ってもファッション。アパレル勤務の私としては、機能性とおしゃれを両立させたいところ。今回は、汗をかいてもすぐ乾く速乾性のTシャツに、動きやすさを重視したカーゴパンツを合わせました。足元は、滑りにくく防水性のあるトレッキングシューズが必須です。そして、虫除けと日焼け対策を兼ねて、薄手でUVカット機能のあるリネン素材のシャツを一枚羽織るのが私流。アースカラーでまとめれば、自然にも溶け込み、写真映えもしますよ。
途中、色鮮やかな蝶の群れに出会ったり、木の枝を飛び移るサルの家族を見かけたり。五感をフルに使って自然と対話する時間は、最高に贅沢なメディテーション(瞑想)でした。
④ 満点の星空の下で眠る、究極のキャンプ体験
タートモークでの夜は、ぜひキャンプに挑戦してほしいです。公園内には広々としたキャンプサイトが整備されており、テントや寝袋などのレンタルも可能。都会の光が一切届かないこの場所で見る星空は、まさに「降ってきそう」という言葉がぴったりの絶景です。
テントの設営を終え、温かいタイティーを飲みながら空を見上げると、そこには無数の星がダイヤモンドのように輝いていました。天の川がくっきりと見え、時折流れる星に思わず願い事をしてしまうほど。静寂の中、虫の声だけがBGM。これほどまでに地球と宇宙の繋がりを感じられる体験は、高級ホテルでは決して味わえません。
もちろん、テント泊に慣れていない方や、もっと快適に過ごしたいという方には、公園が運営するバンガローという選択肢もあります。シンプルな造りですが、清潔で必要な設備は整っているので安心です。どちらを選ぶにしても、自然の音を子守唄に眠りにつき、鳥の声で目覚める朝は、最高の思い出になることでしょう。
⑤ 野生の息吹を感じる、サファリの興奮
タートモーク国立公園は、野生動物の宝庫でもあります。特に有名なのが、野生の象の群れ。公園内の道路を車で走っていると、突如として森の中から象の親子が現れる…なんていう、スリリングな体験ができるかもしれません。
私が滞在中、残念ながら象の群れに遭遇することはありませんでしたが、道路脇で草を食む鹿の群れや、木の上で毛づくろいをするテナガザルを見ることができました。彼らのテリトリーにお邪魔しているという謙虚な気持ちで、静かにその姿を観察します。双眼鏡があると、バードウォッチングもさらに楽しめますよ。色鮮やかなサイチョウなど、日本では見られない珍しい鳥に出会えるチャンスも。
ただし、忘れてはならないのは、彼らは「野生」であるということ。特に象は、刺激すると非常に危険です。もし遭遇した場合は、決して車から降りたり、クラクションを鳴らしたりせず、静かに距離を保つことが鉄則。安全に楽しむためには、現地の事情に詳しいガイドを雇うのが最も賢明な選択です。自然の力強さと、そこに生きる命の尊さを肌で感じる、貴重な体験が待っています。
タートモークへの旅を計画する – アクセス、ベストシーズン、宿泊ガイド

さて、タートモークの魅力に心が躍ってきたところで、ここからは具体的な旅のプランニングについてお話ししましょう。秘境への旅は、事前の準備が成功の鍵を握ります。
アクセス方法 – 秘境への扉を開く
タートモーク国立公園への道のりは、正直に言うと少しだけ手ごわいです。公共交通機関だけでのアクセスは難しく、自由度の高い旅を望むなら、レンタカーが最もおすすめの選択肢となります。
一般的なルートは、まずバンコクから国内線でピサヌローク(Phitsanulok)まで飛ぶ方法です。ドンムアン空港からピサヌロークまでは約1時間のフライト。LCC(格安航空会社)も多数就航しているので、手軽に利用できます。
ピサヌローク空港に着いたら、予約しておいたレンタカーをピックアップ。国際運転免許証を忘れずに持参してくださいね。空港からタートモーク国立公園のメインゲートまでは、国道12号線(Phitsanulok-Lom Sak Road)を東へ約100km、車で1時間半から2時間ほどのドライブです。道は比較的よく整備されていますが、山道なので運転には注意が必要です。
運転に自信がない、あるいはもっとリラックスして旅をしたいという方は、ピサヌロークの街から車をチャーター(運転手付きでレンタル)するのも良いでしょう。料金は交渉次第ですが、1日あたり2,500〜3,500バーツ(約10,000円〜14,000円)が相場です。現地のドライバーなら、安全なだけでなく、地元の人しか知らないような穴場スポットに連れて行ってくれるかもしれません。
いずれにせよ、この「少しの手間」が、ありきたりな観光地では味わえない特別な体験へと繋がっているのです。
旅のベストタイミングはいつ? – 気候とシーズンの見極め方
タートモーク国立公園は、訪れる季節によってまったく異なる顔を見せてくれます。あなたの旅の目的に合わせて、ベストなタイミングを選びましょう。
- 乾季(11月〜2月)
これが、いわゆるベストシーズン。空気が乾燥して晴天率が高く、気温も日中25度前後、朝晩は15度以下まで下がることもあり、非常に過ごしやすいです。何より、旅のハイライトである「霧の海」が最も美しく見られる確率が高いのがこの時期。キャンプやトレッキングにも最適な気候です。ただし、人気のシーズンなので、宿泊施設の予約は早めに行うことをおすすめします。
- 暑季(3月〜5月)
名前の通り、一年で最も暑い季節。日中の気温は35度を超えることもあり、日差しも強烈です。トレッキングなど日中のアクティビティは少し厳しいかもしれませんが、観光客が少なく、静かに過ごしたい方には狙い目の時期かもしれません。滝での水遊びが最高に気持ち良い季節でもあります。
- 雨季(6月〜10月)
毎日雨が降るわけではありませんが、スコールが多くなり、湿度も高くなります。しかし、この季節ならではの魅力もたくさん。雨によって森の緑は一層深みを増し、生命力に満ち溢れます。滝は水量が増して迫力満点に。ただし、トレッキングコースがぬかるんだり、ヒル(血を吸う虫)が出やすくなったりするので、それなりの準備と覚悟が必要です。防水性の高い服装やヒル除けスプレーは必須アイテムとなります。
どこに泊まる? – 自然と一体になる宿泊施設
タートモークでの滞在を最大限に楽しむなら、宿泊はぜひ公園内で。選択肢は主に「バンガロー」と「キャンプサイト」の2つです。
- 公園のバンガロー
国立公園が運営する宿泊施設で、複数のベッドルームやキッチンが付いたファミリータイプから、シンプルな2人用の部屋まで様々。豪華さはありませんが、清潔に保たれており、自然の中で安心して眠ることができます。料金も非常にリーズナブル。ただし、人気が高く、特に乾季の週末はすぐに埋まってしまうので、早めの予約が肝心です。予約は、[タイ国立公園局(DNP)の公式サイト](https://nps.dnp.go.th/reservation.php)からオンラインで行えます(タイ語または英語)。
- キャンプサイト
より自然との一体感を求めるなら、キャンプが断然おすすめです。広大な芝生のキャンプサイトがいくつかあり、好きな場所にテントを張ることができます。前述の通り、テントや寝袋、マットなどのレンタルもビジターセンターで可能です。シャワーやトイレも整備されているので、キャンプ初心者でも比較的快適に過ごせますよ。夜は満点の星空、朝は鳥のさえずりで目覚める。これ以上の贅沢はありません。
もし、もう少し快適な宿泊施設を望むなら、公園のゲートから車で30分〜1時間ほどの距離にある「カオコー(Khao Kho)」エリアに宿をとるのも良い選択です。カオコーは「タイのスイス」とも呼ばれる高原リゾート地で、おしゃれなブティックホテルや眺めの良いリゾートが数多く点在しています。タートモークを日帰りで訪れ、夜はカオコーの快適なホテルで過ごすというプランも、大人の旅としては魅力的ですね。
女性トラベラー必見!亜美流・安心安全に楽しむためのヒント

旅は何よりも、心から安心して楽しめなければ意味がありません。特に自然が相手の旅では、都会とは違う種類の注意が必要です。ここでは、女性トラベラーの視点から、タートモークの旅を120%楽しむための、ちょっとしたコツと安全対策をお伝えします。
旅のファッションと持ち物リスト
秘境の旅だからといって、おしゃれを諦める必要はありません。機能性とデザイン性を兼ね備えたアイテム選びが、旅の気分を上げてくれます。
- 服装のポイント
- レイヤリング(重ね着)が基本: 朝晩と日中の寒暖差が大きいので、Tシャツの上に、薄手のフリースやウインドブレーカーなどを重ね着できるスタイルが便利です。着脱しやすい前開きのものがおすすめ。
- 虫と日差しから肌を守る: 長袖・長ズボンが基本です。虫除け効果のある素材や、UVカット機能のあるウェアを選ぶとさらに快適。白っぽい服は蜂を寄せ付けやすいので、カーキやベージュなどのアースカラーがおすすめです。
- 足元はトレッキングシューズ一択: 滝周辺やトレイルは滑りやすい場所もあります。足首をしっかりホールドしてくれる、防水性のあるトレッキングシューズを用意しましょう。
- おしゃれな小物で気分をUP: お気に入りの柄のバンダナや帽子、サングラスなどをプラスするだけで、ぐっとこなれたアウトドアスタイルになります。バンダナは汗を拭いたり、首に巻いて日焼け対策にしたりと、実用性も抜群です。
- 必須持ち物リスト
- 日焼け止め(SPF50+推奨)
- 虫除けスプレー(特にディート成分の濃いものが効果的)
- かゆみ止め、絆創膏などの常備薬
- ヘッドライト(夜間のキャンプサイトや早朝の移動に必須)
- モバイルバッテリー(公園内では充電できる場所が限られます)
- 防水バッグやジップロック(カメラやスマホを突然の雨から守るため)
- ウェットティッシュ、アルコール消毒ジェル
- マイボトル(水分補給はこまめに)
治安と安全対策 – 自分の身は自分で守る
タートモーク国立公園内は、強盗などの人的な犯罪リスクは非常に低いですが、自然の中でのリスク管理が重要です。
- 野生動物との距離感: 前述の通り、野生動物、特に象には絶対に近づかないこと。見かけたら、静かにその場を離れるか、車の中でやり過ごしましょう。餌やりは厳禁です。
- 単独行動は避ける: トレッキングなど、森の奥深くへ入る際は、必ず誰かと一緒に行動するか、公園のレンジャー(ガイド)を雇いましょう。道に迷ったり、万が一怪我をしたりした際のリスクを減らせます。
- 天候の急変に備える: 山の天気は変わりやすいです。晴れていても、念のためレインウェアを携帯しましょう。雷が鳴り始めたら、すぐに安全な場所へ避難してください。
- 都市部での注意: ピサヌロークなどの街中では、基本的なスリや置き引きへの注意は怠らないように。バッグは前に抱える、貴重品は分散して持つなどの対策を。
- 緊急連絡先を控えておく: 万が一に備え、観光警察(Tourist Police)の電話番号「1155」や、在タイ日本国大使館の連絡先をスマホに登録しておくと安心です。
心と体をいたわる、旅のウェルネス
旅を最後まで楽しむには、体調管理が何よりも大切です。
- タイ料理を楽しむ: 公園の食堂や道端のレストランで、美味しいローカルフードをぜひ味わってください。ただし、辛いものが苦手な方は「マイ・ペット(辛くしないで)」、少しだけ辛くしてほしい場合は「ペット・ノイ(少しだけ辛く)」と伝えましょう。衛生面が気になる方は、しっかりと火が通った料理を選ぶと安心です。
- 水分補給を忘れずに: 暑い気候の中でのアクティビティは、知らず知らずのうちに水分を失います。喉が渇く前に、こまめに水を飲む習慣をつけましょう。
- タイマッサージでリフレッシュ: トレッキングやドライブで疲れた体は、旅の終わりにタイマッサージで癒してあげるのがおすすめです。ピサヌロークの街には、安くて腕の良いマッサージ店がたくさんあります。1時間のフットマッサージで、驚くほど足が軽くなりますよ。
タートモークから足を延ばして – 周辺のおすすめスポット

せっかくタイ北部まで来たのなら、タートモークだけでなく、周辺の魅力的なスポットにも足を延ばしてみませんか? ここでは、私が実際に訪れて心惹かれた場所を2つご紹介します。
タイのスイス「カオコー」
タートモーク国立公園から車で1時間ほどの場所にあるカオコーは、緑豊かな山々と涼しい気候から「タイのスイス」と称される高原リゾート地です。タートモークのワイルドな自然とは対照的に、洗練された雰囲気で、多くのタイ人観光客で賑わっています。
ここでの必見スポットは、何と言っても「ワット・プラタート・パーソーンケーオ(Wat Prathat Phasornkaew)」。丘の上にそびえるこの寺院は、5体の白い仏像が階段状に並ぶ姿が圧巻。そして、寺院全体が数百万個もの色とりどりのタイルや陶器の破片で装飾されており、その姿はまるでガウディ建築のよう。青空の下、キラキラと輝く寺院は息をのむ美しさで、アート好きにはたまらない場所です。
カオコーには他にも、絶景を望むおしゃれなカフェや、風力発電の風車が立ち並ぶ丘、美しい花畑など、フォトジェニックなスポットが満載。タートモークでの滞在と組み合わせて、1〜2泊するのもおすすめです。
歴史と文化の街「ピサヌローク」
タートモークへの玄関口となるピサヌロークも、ただ通り過ぎるだけではもったいない、魅力あふれる街です。かつてはスコータイ王朝やアユタヤ王朝の重要な都市として栄え、豊かな歴史と文化が今も息づいています。
街の中心部にある「ワット・プラ・シー・ラッタナー・マハータート(Wat Phra Si Rattana Mahathat)」は、地元の人々から「ワット・ヤイ」の愛称で親しまれる最も重要な寺院。ここには、「タイで最も美しい仏像」と称えられる国宝「プラ・プッタ・チンナラート」が安置されています。黄金に輝くその優美な姿を前にすると、自然と敬虔な気持ちになります。
夕暮れ時になったら、ナーン川沿いのナイトマーケットへ。美味しいストリートフードを片手に、川沿いを散策するのは最高に気持ちが良いです。ピサヌロークは、タイの地方都市の穏やかな日常と、深い歴史を感じられる、心地よい街でした。
旅の終わりに想うこと – 自然が教えてくれた、本当の豊かさ

バンコクへ戻る飛行機の窓から、遠ざかっていく緑の大地を眺めながら、今回の旅を振り返っていました。タートモーク国立公園で過ごした数日間は、私の価値観を少しだけ変えてくれたような気がします。
霧の海が太陽の光を浴びて輝く瞬間、森の中で聞こえる鳥たちの歌声、満点の星空の下で感じた宇宙の広がり。そこにあったのは、お金では決して買うことのできない、本質的な豊かさでした。私たちは普段、あまりにも多くの情報とモノに囲まれて生きているけれど、本当に心を満たしてくれるものは、案外もっとシンプルで、すぐそばにあるのかもしれない。
自然は、何も語りかけてはきません。ただ、そこに在るだけ。けれど、その雄大で静かな存在感は、私たちに多くのことを教えてくれます。自分がいかにちっぽけな存在であるかということ、そして、そんなちっぽけな自分もまた、この美しい地球の一部なのだということ。
この旅は、単なる観光ではありませんでした。それは、自分自身と向き合い、心をととのえるための「リトリート」。もしあなたが、日々の生活に少し疲れていたり、何か新しいインスピレーションを探していたりするのなら。次の休暇は、地図を片手に、この霧の楽園を目指してみてはいかがでしょうか。きっとそこには、あなたの心を震わせる、忘れられない光景が待っているはずです。









