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    古都の風に吹かれて。あなたの知らないチェンマイの魅力に溺れる、完全ガイド

    タイ北部に位置する、緑豊かな古都チェンマイ。かつて「ランナー王朝」の首都として栄えたこの街は、「北方のバラ」とも称される優美な気品と、訪れる人々を温かく包み込むような穏やかな空気に満ちています。荘厳な仏教寺院が点在する旧市街のレンガ道を歩けば、まるで時がゆっくりと流れるかのよう。一歩郊外へ足を延せば、雄大な山々が連なり、象たちがのびのびと暮らす大自然が広がります。

    刺激的な大都市バンコクとはまた違う、ゆったりとした時間の流れ。そこには、歴史と文化、そして自然が見事に調和した、タイのもう一つの顔があります。洗練されたカフェでこだわりのコーヒーを味わい、活気あふれるナイトマーケットでローカルフードに舌鼓を打ち、神聖な山の頂から街を見下ろす。そんな、心と身体を解き放つような旅が、チェンマイでは待っているのです。

    この記事では、旅のプロである筆者が、定番の観光スポットから、まだあまり知られていないディープな魅力まで、チェンマイのすべてを余すところなくご紹介します。初めて訪れる方はもちろん、何度も訪れているリピーターの方でさえも、新たな発見があるはず。さあ、一緒にチェンマイの奥深い世界へ旅立ちましょう。あなたの知らない、新しいタイがきっと見つかります。

    目次

    チェンマイってどんなところ? – 北方のバラの基本情報

    旅の計画を立てる前に、まずはチェンマイという街の基本的なプロフィールを紐解いていきましょう。この街が持つ独自の歴史や文化、気候を知ることで、旅はより一層深く、意味のあるものになるはずです。

    ランナー王朝の栄華を今に伝える古都

    チェンマイの歴史は、1296年にメンラーイ王によってランナー王朝の首都として建設されたことに始まります。ランナーとは「百万の田」を意味し、その名の通り、豊かな土地に根差した独自の文化を育みました。ビルマ(現在のミャンマー)や中国との交易で栄え、建築、仏教美術、言語、食文化など、あらゆる面でタイ中央部とは異なる特色を持つに至ったのです。

    街の中心である旧市街は、今もお堀と城壁の一部に囲まれており、かつての都の面影を色濃く残しています。点在する寺院の多くはランナー様式で建てられ、精緻な木彫りの装飾や、ビルマ様式の影響を受けた多層の屋根が特徴的です。チェンマイを歩くことは、このランナー文化の壮大な歴史絵巻を一枚一枚めくっていくような、知的好奇心をくすぐる体験なのです。

    気候と訪れるべきベストシーズン

    チェンマイは熱帯モンスーン気候に属しますが、標高が約300メートルと高地に位置するため、バンコクに比べて一年を通して過ごしやすいのが魅力です。季節は大きく三つに分かれます。

    • 乾季(11月~2月): 旅のベストシーズンです。雨はほとんど降らず、空気は乾燥して爽やか。日中の気温は30℃前後まで上がりますが、朝晩は20℃を下回ることもあり、涼しく快適に過ごせます。特に12月から1月にかけては最も過ごしやすく、世界中から観光客が訪れます。山間部ではさらに冷え込むため、薄手の上着があると安心です。
    • 暑季(3月~5月): 一年で最も気温が上がる時期。日中の気温は40℃近くに達することもあります。この時期は、野焼きによる煙害(ヘイズ)が発生しやすく、空が霞んでしまうことがある点には注意が必要です。しかし、タイの旧正月「ソンクラーン(水かけ祭り)」が4月中旬にあり、街中が盛大な水かけで盛り上がる、エキサイティングな季節でもあります。
    • 雨季(6月~10月): 緑が最も美しい季節。スコールと呼ばれる短時間のにわか雨が降ることが多くなりますが、一日中雨が降り続くことは稀です。雨上がりの空気は澄み渡り、瑞々しい木々の香りに満たされます。観光客が比較的少なく、航空券やホテルの料金が下がる傾向にあるため、ゆっくりと落ち着いて過ごしたい方にはおすすめのシーズンと言えるでしょう。

    チェンマイへのアクセス

    日本からチェンマイへの直行便は現在運航されていません(※運航状況は変動するため要確認)。そのため、バンコクやソウル、香港などの都市を経由するのが一般的です。

    • 飛行機: 最も早くて便利な方法です。バンコクのスワンナプーム国際空港(BKK)またはドンムアン空港(DMK)からチェンマイ国際空港(CNX)へは、多くの航空会社が毎日数十便を運航しています。所要時間は約1時間15分。LCC(格安航空会社)を利用すれば、手頃な価格で移動が可能です。チェンマイ空港から市内中心部まではタクシーやソンテウ(後述)で15~20分ほどと、アクセスも非常に良好です。
    • 鉄道: 時間に余裕がある旅人におすすめなのが、寝台列車での移動です。バンコクのクルンテープ・アピワット中央駅からチェンマイ駅まで、所要時間は約12~14時間。夜に出発し、翌朝にチェンマイに到着する便が人気です。移り変わるタイの車窓風景をのんびりと楽しむ時間は、それ自体が旅の素晴らしい思い出となるでしょう。特に、比較的新しい車両は清潔で快適です。
    • 長距離バス: 最も安価な移動手段です。バンコクのモーチット・バス・ターミナルから、多くのバス会社がチェンマイ行きのバスを運行しています。所要時間は約9~11時間。夜行のVIPバスは、リクライニングシートが広く、食事や飲み物のサービスもあり、快適に移動できます。

    チェンマイ旧市街 – 城壁に囲まれた歴史の宝庫を歩く

    チェンマイ観光の心臓部、それは一辺が約1.6kmのほぼ正方形をしたお堀と城壁跡に囲まれた「旧市街」です。このエリアには、ランナー王朝時代から続く由緒ある寺院が密集し、古い建物を利用したお洒落なカフェや雑貨店、ゲストハウスが軒を連ねています。赤茶色のレンガで作られたターペー門をくぐれば、そこはまるで時間が止まったかのような、穏やかでノスタルジックな空間が広がっています。

    必見!旧市街の荘厳なる寺院たち

    チェンマイには300以上もの寺院があると言われていますが、その中でも旧市街にある寺院は、歴史的にも美術的にも特に重要なものばかりです。すべてを巡るのは難しいですが、ここでは絶対に外せない3つの寺院をご紹介します。

    ワット・チェディ・ルアン – 巨大な仏塔が物語る栄枯盛衰

    旧市街のほぼ中央に位置するワット・チェディ・ルアンは、チェンマイで最も格式の高い寺院の一つです。「チェディ・ルアン」とは「大きな仏塔」を意味し、その名の通り、かつては高さ80メートル以上を誇った巨大な仏塔が圧倒的な存在感を放っています。

    15世紀に建てられたこの仏塔は、16世紀の地震とビルマ軍の侵攻によって先端部分が崩壊してしまいましたが、その風雪に耐えた姿はかえって荘厳さを増し、ランナー王朝の栄枯盛衰を静かに物語っているようです。修復された仏塔の四方には象の彫刻が施され、その力強い姿は圧巻の一言。境内には、高僧たちの蝋人形が安置されたお堂や、街の守護柱「サオ・インタキン」もあり、見どころは尽きません。夕暮れ時、ライトアップされた仏塔は幻想的な美しさで、訪れる人々の心を捉えて離しません。

    ワット・プラシン – 優美なランナー様式の傑作

    旧市街の西側、メインストリートであるラチャダムヌン通りの突き当りにあるのがワット・プラシンです。1345年に建立され、チェンマイで最も重要な寺院の一つとされています。この寺院の最大の見どころは、「ヴィハーン・ラーイカム」と呼ばれる小さな礼拝堂です。

    この礼拝堂に安置されている「プラ・プッタ・シヒン」像は、スリランカから伝わったとされる非常に神聖な仏像で、タイ正月(ソンクラーン)の際には、この仏像を乗せた山車が街を練り歩きます。また、礼拝堂の壁面には、当時の人々の生活を描いた色鮮やかな壁画が残されており、その緻密な描写は時間を忘れて見入ってしまうほど。黄金に輝くチェディ(仏塔)や、精緻な木彫りが施された本堂など、ランナー様式の建築美の粋を集めたような、優美で華やかな寺院です。

    ワット・チェンマン – チェンマイ最古の寺院

    ターペー門から北へ向かった旧市街の北東部に佇むのが、チェンマイで最も古い歴史を持つワット・チェンマンです。1296年、メンラーイ王がチェンマイの都を建設する際に、自身の宿営地とした場所に建てられました。王はこの寺院に暮らしながら、新都の建設を指揮したと言われています。

    この寺院で特に目を引くのは、15頭の象の彫刻が土台を支える、可愛らしくも力強い仏塔です。これはスリランカ様式の影響を受けており、ランナー文化が様々な地域の文化を取り入れて発展したことを示しています。また、本堂の隣にある小さなお堂には、雨乞いの力があると信じられている水晶の仏像「プラ・セータンカマニー」と、大理石の仏像「プラ・シラー・カオ」という、二つの重要な仏像が安置されています。小ぢんまりとしていながらも、チェンマイの歴史の始まりを肌で感じることができる、趣深い寺院です。

    旧市街の歩き方と楽しみ方

    旧市街の魅力は寺院だけではありません。迷路のように入り組んだ細い路地(ソイ)を気ままに散策するのも、大きな楽しみの一つです。

    • カフェ巡り: チェンマイはタイ随一のカフェ天国。旧市街にも、古民家をリノベーションした趣のあるカフェや、緑豊かな中庭を持つ隠れ家的なカフェが点在しています。タイ北部で栽培されたこだわりのコーヒー豆を使った本格的な一杯を味わいながら、歩き疲れた足を休める時間は至福のひとときです。
    • 雑貨屋巡り: 手仕事の温かみが感じられる雑貨を探すのもおすすめです。モン族など山岳民族のカラフルな刺繍が施されたポーチやバッグ、手織りのコットン製品、セラドン焼きと呼ばれる美しい青緑色の陶器など、チェンマイならではのクラフト製品が並ぶお店がたくさんあります。お気に入りの一点物を見つける宝探しのような感覚で、路地裏のお店を覗いてみましょう。
    • 移動手段の活用: 旧市街は歩いて回るのにちょうど良い広さですが、効率よく巡りたいならレンタルサイクルが便利です。風を感じながら自由に移動でき、気になった場所にすぐに立ち寄れます。また、チェンマイ名物の乗り合いタクシー「ソンテウ」も活用しましょう。赤い車体のソンテウは市内の巡回ルートを走っており、手を挙げればどこでも乗り降りできます。料金は近距離なら30バーツ程度と非常にリーズナブルです。

    ドイ・ステープ – 聖なる山からチェンマイを一望

    チェンマイの街の西側に雄大にそびえるドイ・ステープ山。その標高1,676メートルの山頂近くに、チェンマイの人々から最も篤い信仰を集める寺院「ワット・プラタート・ドイ・ステープ」があります。チェンマイを訪れたなら、必ず足を運ぶべき聖地と言っても過言ではありません。

    黄金に輝く仏塔と絶景のパノラマ

    この寺院の歴史は1383年に遡ります。クーナー王の夢枕に仏舎利(釈迦の遺骨)を納める場所としてこの山が示され、白い象の背中に仏舎利を乗せて放ったところ、象がこの場所で三度鳴いて倒れたため、ここに寺院を建立したと伝えられています。

    寺院へは、麓から続く306段の階段を上る必要があります。階段の両脇には、緻密な装飾が施されたナーガ(蛇神)の長い胴体が手すりとなっており、参拝者を聖なる領域へと導きます。もちろん、ケーブルカーを利用することもできるので、体力に自信がない方でも安心です。

    階段を上りきると、目の前に広がるのは息をのむような光景です。境内の中央には、高さ24メートルの黄金の仏塔が眩いばかりの輝きを放っています。参拝者は靴を脱ぎ、蓮の花と線香を手に、この仏塔の周りを時計回りに三度練り歩き、祈りを捧げます。風に揺れる小さな鐘の音が心地よく響き渡り、境内は厳かで神聖な空気に満たされています。

    そして、もう一つのハイライトが、展望テラスからの眺めです。ここからは、眼下に広がるチェンマイの市街地と、チェンマイ国際空港の滑走路までを一望することができます。特に空気が澄んだ日には、そのパノラマビューは圧巻。昼間の景色もさることながら、街の灯りが宝石のようにきらめく夜景もまた格別です。

    ドイ・ステープへのアクセス

    ワット・プラタート・ドイ・ステープは市内から約15km離れているため、ソンテウを利用するのが一般的です。

    • チャーター: グループで移動する場合や、時間を気にせずゆっくりと観光したい場合は、赤いソンテウをチャーターするのが便利です。料金は交渉制ですが、往復で500~600バーツが相場です。運転手さんは寺院で待っていてくれます。
    • 乗り合いソンテウ: チェンマイ大学の正門前や、旧市街の北門であるチャーンプアック門の近くには、ドイ・ステープ行きの乗り合いソンテウ乗り場があります。人が集まり次第出発するシステムで、片道50~60バーツとリーズナブルです。ただし、帰りの便も人が集まるまで待つ必要があります。

    ドイ・ステープへ向かう道は、カーブの多い山道です。乗り物酔いが心配な方は、酔い止め薬を準備しておくと良いでしょう。

    チェンマイの自然を満喫するアクティビティ

    古都のイメージが強いチェンマイですが、その魅力は歴史的な街並みだけにとどまりません。一歩郊外へ出れば、そこには緑豊かな山々、清らかな滝、そして雄大な自然の中で暮らす動物たちとの出会いが待っています。ここでは、チェンマイの大自然を全身で感じられるアクティビティをご紹介します。

    象との共生を学ぶ – エレファント・サンクチュアリ

    タイと言えば象を思い浮かべる人も多いでしょう。かつてチェンマイでは、象に乗って山道を歩く「エレファント・トレッキング」が人気の観光アクティビティでした。しかし近年、象の背中に重い椅子を乗せて人を運ばせることは、象にとって大きな負担となり、虐待につながるという認識が世界的に広まっています。

    そこで注目されているのが、「エレファント・サンクチュアリ(象の保護施設)」です。ここでは、過酷な労働やショーから救出された象たちが、本来の姿でのびのびと暮らせる環境を提供しています。サンクチュアリでの体験は、象に乗ることではなく、象と共に時間を過ごすことに重きを置いています。

    訪問者は、象にバナナやサトウキビの餌をあげたり、泥遊びをしたり、川で一緒に水浴びをしながら体を洗ってあげたりします。象使い(マホート)から象の生態や一頭一頭の背景にあるストーリーを聞きながら、彼らの賢さや優しさに直接触れる体験は、忘れられない感動を与えてくれます。これは単なる観光ではなく、動物福祉について学び、象との真の共生を考える貴重な機会となるでしょう。「Elephant Nature Park」や「Elephant Jungle Sanctuary」などが特に有名で、半日や一日のツアーが催行されています。倫理的な観光を選択することが、動物たちの未来を守る一歩になるのです。

    緑豊かな山々へ – トレッキングと少数民族の村

    チェンマイは山々に囲まれた地形のため、トレッキングの拠点としても非常に人気があります。初心者向けの簡単なハイキングコースから、数日かけて山中を歩き、村に宿泊する本格的なコースまで、レベルや希望に応じた様々なトレッキングツアーが用意されています。

    トレッキングの魅力は、何と言ってもタイ北部の豊かな自然を肌で感じられること。うっそうとしたジャングルを抜け、美しい滝で涼み、見晴らしの良い尾根から絶景を眺める。都会の喧騒から離れ、鳥のさえずりや風の音に耳を澄ませば、心身ともにリフレッシュできるはずです。

    • ドイ・インタノン国立公園: チェンマイ市内から車で約2時間。ここには、標高2,565メートルのタイ最高峰ドイ・インタノン山があります。山頂付近は年間を通して涼しく、苔むした原生林が広がる神秘的な雰囲気です。山頂にある記念碑や、国王と王妃の長寿を記念して建てられた二つの美しい仏塔(ナパメタニドンとナパポンブミシリ)は必見。特に雨季には、仏塔の周りの庭園に色とりどりの花が咲き乱れ、雲海と相まって幻想的な風景を生み出します。
    • 少数民族の村訪問: チェンマイ周辺の山岳地帯には、カレン族、モン族、アカ族、ラフ族など、独自の文化や言語、衣装を持つ少数民族の人々が暮らしています。トレッキングツアーの中には、彼らの村を訪れるプログラムが含まれているものも多くあります。村の生活に少しだけ触れさせてもらい、手作りの工芸品を購入したり、素朴な家庭料理をいただいたりする体験は、文化的な理解を深める貴重な機会です。訪問する際は、彼らの生活や文化に敬意を払い、ガイドの指示に従うことが大切です。

    涼を求めて – 滝やキャニオンで水遊び

    暑い日には、水辺のアクティビティが最高です。チェンマイ近郊には、地元の人々にも人気の水遊びスポットが点在しています。

    • メーサーの滝: 市内から北へ約30kmのメーリム地区にある、大小8つの滝が連なる美しい滝です。それぞれの滝は遊歩道で結ばれており、ハイキングを楽しみながら滝巡りができます。滝壺で泳いだり、岩の上でピクニックをしたりと、思い思いの時間を過ごすことができます。
    • チェンマイ・グランドキャニオン: もともとは採石場だった場所に水が溜まってできた、巨大な湖です。切り立った崖に囲まれた独特の景観がアメリカのグランドキャニオンを彷彿とさせることから、この名で呼ばれるようになりました。現在はウォーターパークとして整備されており、巨大なスライダーやジップライン、カヤック、崖からの飛び込みなど、スリリングなアクティビティが楽しめます。アドレナリン全開で楽しみたい若者たちに大人気のスポットです。

    チェンマイの夜はもっと楽しい!マーケットとナイトライフ

    太陽が西の山に沈み、涼しい風が吹き始めると、チェンマイは昼間とはまた違った顔を見せ始めます。活気あふれるナイトマーケット、美味しい匂いを漂わせる屋台、そしてローカルな雰囲気を楽しめる酒場。チェンマイの夜は、旅の疲れを癒し、新たな興奮を与えてくれる魅力に満ちています。

    週末の夜のお祭り – サタデー/サンデー・ウォーキングストリート

    チェンマイの夜を語る上で欠かせないのが、週末に開催される巨大なナイトマーケットです。これは単なる市場ではなく、街を挙げてのお祭りのような一大イベントです。

    • サンデー・ウォーキングストリート: 毎週日曜日の夕方から、旧市街の中心を東西に貫くラチャダムヌン通りとその周辺の路地が歩行者天国となり、巨大なマーケットが出現します。その規模は圧巻で、端から端まで歩くだけでも1時間以上かかるほど。山岳民族の工芸品、手作りのアクセサリー、お洒落なTシャツ、アロマグッズなど、お土産にぴったりの品々が所狭しと並びます。途中にはフードゾーンもあり、カオソーイやパッタイ、焼き鳥、フルーツシェイクなど、ありとあらゆるタイ料理の屋台が集結。道端ではストリートミュージシャンが演奏し、伝統舞踊が披露されるなど、歩いているだけで五感が刺激される、最高にエキサイティングな夜を体験できます。
    • サタデー・ウォーキングストリート: 土曜の夜には、旧市街の南門(チェンマイ門)の外、ウアライ通りで開催されます。サンデーマーケットに比べると規模は少し小さいですが、その分、地元の人々の割合が多く、よりローカルな雰囲気が漂います。ウアライ通りはもともと銀細工の職人が多く住むエリアだったため、美しい銀製品の露店が多いのが特徴です。人混みが苦手な方や、落ち着いて買い物を楽しみたい方には、こちらがおすすめです。

    毎晩開催!ナイトバザール

    週末まで待てない!という方もご安心ください。旧市街の東側、チャーンクラン通りでは、毎晩「ナイトバザール」が開催されています。ここはチェンマイのナイトマーケットの草分け的な存在で、1km以上にわたって露店がずらりと並びます。

    衣料品や雑貨、お土産物などが中心で、価格は交渉制が基本。お店の人とのやり取りも楽しみの一つです。強引な客引きは少ないので、気軽に品定めができます。「これ、いくら?」「もう少し安くならない?」といった簡単なタイ語や英語でコミュニケーションを取りながら、掘り出し物を見つけるのも旅の醍醐味です。周辺にはシーフードレストランやバー、ムエタイのスタジアムなどもあり、夜遅くまで多くの観光客で賑わっています。

    ローカルな夜市と屋台村

    観光客向けのマーケットも楽しいですが、地元の人の生活を垣間見るなら、ローカルな夜市や屋台街に足を運んでみましょう。

    • チャーンプアック門の屋台街: 旧市街の北門、チャーンプアック門を出てすぐの場所には、夕方から多くの屋台が並びます。ここの名物は、なんと言ってもカウボーイハットを被った名物おばさんが作る豚足煮込みご飯「カオカームー」。トロトロに煮込まれた豚肉がご飯の上に乗った一皿は、絶品の美味しさです。他にも、タイ風お粥のジョークや、あんかけ麺のラートナーなど、安くて美味しいB級グルメの宝庫です。
    • ワロロット市場周辺: 昼間は生鮮食品や日用品で賑わうワロロット市場ですが、夜になるとその周辺に屋台がぽつぽつと現れ始めます。ここでは、惣菜やスイーツを買い求める地元の人の姿が多く見られます。観光地化されていない、ありのままのチェンマイの夜の空気を味わいたい方におすすめです。

    食の都チェンマイ – 北タイ料理の深淵に触れる

    チェンマイが多くの旅人を惹きつけてやまない理由の一つ、それは間違いなくその豊かな食文化にあります。ミャンマーやラオスと国境を接するタイ北部は、バンコクなどで食べられるタイ中央部の料理とは一線を画す、独自の「北タイ料理」が発展しました。ココナッツミルクをあまり使わず、ハーブやスパイスを多用した、マイルドで奥深い味わいが特徴です。ここでは、美食の街チェンマイで絶対に味わうべき料理と、その楽しみ方をご紹介します。

    これだけは食べたい!チェンマイ名物料理

    チェンマイを訪れたら、まずはこれらの代表的な北タイ料理を試してみてください。きっとその魅力の虜になるはずです。

    • カオソーイ: チェンマイ料理の王様とも言える一品。ココナッツミルクベースのスパイシーなカレースープに、卵麺を入れ、その上に揚げた卵麺をトッピングしたカレーラーメンです。鶏肉(ガイ)や牛肉(ヌア)が一般的。クリーミーで濃厚なスープに、茹で麺と揚げ麺の異なる食感が絶妙なアクセントを加えます。付け合わせの高菜の漬物、赤玉ねぎ、ライムを少しずつ加えながら味の変化を楽しむのが通の食べ方。一度食べたら忘れられない、中毒性のある美味しさです。
    • サイウア: 豚ひき肉にレモングラスやコブミカンの葉、唐辛子などのハーブとスパイスをたっぷりと練り込んで作られる、チェンマイ風ソーセージ。炭火でじっくりと焼き上げられ、屋台や市場で渦巻き状になって売られているのをよく見かけます。口に入れた瞬間に広がるハーブの爽やかな香りと、ジューシーな肉の旨味がたまりません。ビールのお供に最高の一品です。
    • ゲーン・ハンレー: ミャンマーの影響を受けた、豚バラ肉のカレーです。ココナッツミルクを使わず、タマリンドの酸味と生姜の風味が効いた、甘酸っぱくスパイシーな味わいが特徴。長時間煮込まれた豚肉はホロホロと柔らかく、濃厚なタレがご飯によく合います。辛さは控えめなので、辛いものが苦手な方でも楽しめます。
    • ナムプリック・ヌム / ナムプリック・オーン: 「ナムプリック」とは、ディップソースのこと。北タイ料理では、もち米や野菜、豚皮の唐揚げ(ケープムー)などをナムプリックにつけて食べるのが定番です。
    • ナムプリック・ヌム: 焼き青唐辛子をペースト状にした、緑色のディップ。ピリッとした辛さと爽やかな香りが特徴です。
    • ナムプリック・オーン: 豚ひき肉とトマトを煮込んだ、ミートソースのような赤いディップ。マイルドで子供でも食べやすい味わいです。

    この二つのナムプリックと、野菜やケープムーがセットになった盛り合わせは、前菜としてぜひ注文したい一皿です。

    おすすめレストラン&食堂

    チェンマイには、高級レストランから路上の屋台まで、無数の飲食店があります。どこで食べようか迷ってしまう方のために、いくつかのお店をタイプ別にご紹介します。

    • カオソーイの名店: カオソーイは店によって味が全く異なります。自分好みの一杯を見つけるのも旅の楽しみ。「Khao Soi Khun Yai(おばあちゃんのカオソーイ)」は、路地裏にあるにもかかわらず常に行列ができる人気店。濃厚でクリーミーなスープが絶品です。「Khao Soi Mae Sai」も、地元の人で賑わう名店として知られています。
    • 北タイ料理の老舗: 旧市街にある「Huen Phen」は、雰囲気の良い店内で本格的な北タイ料理が楽しめる有名店。昼は手頃な定食、夜はアラカルトで様々な料理を味わえます。先に紹介したナムプリックやゲーン・ハンレーなど、代表的な北タイ料理が一通り揃っています。
    • ローカルに愛される食堂: 観光客向けではない、地元の人が通う店にも挑戦してみましょう。言葉が通じなくても、指差しや写真で注文できることがほとんどです。市場の近くや、大学の周辺には安くて美味しい食堂がたくさん隠れています。勇気を出して一歩踏み込めば、最高の食体験が待っているかもしれません。

    おしゃれカフェ文化の中心地

    チェンマイは、タイにおけるスペシャルティコーヒーの中心地でもあります。北部の山々では良質なアラビカ種のコーヒー豆が栽培されており、その豆を使ったこだわりのカフェが市内に溢れています。

    • ニマンヘミン通り: 「チェンマイの代官山」とも呼ばれるこのエリアは、お洒落なブティックやギャラリー、そして数多くのカフェが集まる流行の発信地です。世界レベルのバリスタが淹れる本格的なドリップコーヒーが味わえる「Ristr8to」や、ユニークなラテアートで知られるカフェなど、個性的なお店がひしめき合っています。カフェホッピングをするだけでも一日中楽しめてしまうエリアです。
    • 旧市街の隠れ家カフェ: 旧市街の静かな路地裏にも、魅力的なカフェが点在しています。緑豊かな庭を眺めながらゆったりと過ごせるカフェや、古い木造家屋の趣を活かしたカフェなど、それぞれに独自の雰囲気があります。散策の途中で偶然見つけたお気に入りの一軒で、読書をしたり、旅の計画を練ったりする時間は、チェンマイならではの贅沢な過ごし方です。

    チェンマイから足を延ばす – 近郊の魅力的な街へ

    チェンマイでの滞在に余裕があれば、ぜひ近郊の街まで足を延ばしてみてください。チェンマイを拠点に日帰りや1泊2日で訪れることができる、個性豊かな二つの街をご紹介します。

    芸術家の街 – チェンライ

    チェンマイから北へ約180km、バスで3時間ほどの場所にあるチェンライは、近年アートの街として世界中から注目を集めています。タイを代表する二人の芸術家が創造した、常識を覆すような独創的な寺院は必見です。

    • 白い寺(ワット・ロンクン): 全身が純白に塗られ、鏡のガラスが埋め込まれた、この世のものとは思えないほど幻想的で緻密な寺院です。タイの著名なアーティスト、チャルムチャイ・コーシッピパット氏が私財を投じて建設を続けています。地獄から天国へと続く橋や、細部にまで込められた仏教的なメッセージなど、その圧倒的な世界観に引き込まれます。
    • 青い寺(ワット・ロンスアテン): 白い寺の建立に携わった弟子が手掛けた寺院で、その名の通り、鮮やかな青を基調とした美しい装飾が特徴です。本堂内部の壁画から本尊の仏像まで青で統一されており、神秘的で吸い込まれるような空間が広がっています。
    • 黒い家(バーン・ダム): こちらもタイの芸術家、タワン・ドゥチャニー氏が作り上げた広大なアートスペース。黒を基調とした大小様々な建物が点在し、その中には水牛の角や動物の骨、皮などを使った、死と生をテーマにした力強い作品が展示されています。

    これらのスポットはそれぞれ少し離れているため、チェンマイから出発する日帰りツアーに参加するのが最も効率的です。

    静かなる田園リゾート – パーイ

    チェンマイから北西へ約130km、ミニバンで3時間半ほどの山道を越えた先にあるのが、山間の小さな町パーイです。かつてはヒッピーやバックパッカーの聖地でしたが、現在はのどかな田園風景と可愛らしいカフェ、おしゃれなリゾートが点在する、癒やしのデスティネーションとして人気を集めています。

    762ものカーブがあると言われる道程は少し大変ですが、その先に広がるのは、時間がゆっくりと流れる別世界。レンタルバイクで風を感じながら田んぼの中の一本道を走り、雄大な渓谷「パーイ・キャニオン」で夕日を眺め、夜はこぢんまりとしたウォーキングストリートで食事や買い物 を楽しむ。そんな何気ない時間が、パーイでは最高の贅沢になります。

    都会の喧騒から完全に離れて、心からリラックスしたい。そんな願いを叶えてくれるのがパーイという街です。チェンマイの旅に、数日間の「何もしない時間」を加えてみるのはいかがでしょうか。

    チェンマイ滞在を快適にするヒント

    最後に、あなたのチェンマイ旅行がよりスムーズで快適なものになるよう、滞在に役立つ実践的な情報をお届けします。宿泊エリアの選び方から、市内の移動手段、そしてお土産選びのポイントまで、知っておくと便利な豆知識です。

    宿泊エリアの選び方

    チェンマイには多種多様な宿泊施設がありますが、どのエリアに泊まるかによって旅のスタイルも変わってきます。主な滞在エリアは三つです。

    • 旧市街エリア: 寺院巡りや週末のウォーキングストリートを楽しみたい、初めてチェンマイを訪れる方に最適なエリアです。歴史的な雰囲気に浸りながら、徒歩で主要な観光スポットへアクセスできます。安価なゲストハウスからブティックホテルまで、選択肢も豊富です。
    • ニマンヘミンエリア: おしゃれなカフェやレストラン、ショップが集まる流行のエリア。長期滞在者やリピーターに人気があります。モダンで快適なホテルやサービスアパートメントが多く、夜遅くまで楽しめるお店もたくさんあります。旧市街からはソンテウやGrabで10分ほどの距離です。
    • リバーサイドエリア: ピン川のほとりに位置するこのエリアには、高級なリゾートホテルが点在しています。静かで落ち着いた環境で、優雅なリゾートライフを満喫したい方におすすめ。美しい川の景色を眺めながら、プールサイドでのんびりと過ごす時間は格別です。

    市内の移動手段

    チェンマイ市内の移動は、いくつかの交通手段を使い分けるのが賢い方法です。

    • ソンテウ: 赤い車体が目印の乗り合いタクシー。市内の至る所を走っており、最も安価でポピュラーな移動手段です。行きたい方向へ走っているソンテウを見つけたら、手を挙げて止め、運転手に行き先を告げます。OKであれば乗り込み、降りる時にブザーを押して支払います。旧市街周辺なら一律30バーツが相場です。
    • トゥクトゥク: 三輪タクシーのトゥクトゥクは、ソンテウよりも小回りが利き、近距離の移動に便利です。料金は乗車前の交渉制。ソンテウよりは割高になりますが、プライベートな空間で素早く移動したい時に重宝します。
    • 配車アプリ(Grab): 東南アジアで広く使われている配車アプリ「Grab」は、チェンマイでも非常に便利です。アプリで行き先を指定すれば、料金が事前に確定し、ドライバーとの面倒な交渉も不要。カードを登録しておけばキャッシュレスで決済できます。安心して利用できるので、特に夜間の移動や空港へのアクセスにおすすめです。
    • レンタルバイク/自転車: 自由気ままに街を探索したいなら、レンタルバイクや自転車が最適です。特に旧市街やニマンヘミン周辺は、自転車があれば快適に回れます。バイクを借りれば、郊外の滝やカフェなどへも足を延たせます。ただし、タイの交通ルールは日本と異なり、交通量も多いので、運転には十分な注意が必要です。国際運転免許証の携行も忘れずに。

    チェンマイのお土産

    旅の思い出に、そして大切な人への贈り物に。チェンマイには魅力的なお土産がたくさんあります。

    • 布製品: タイシルクや、手織りのコットンを使ったスカーフ、バッグ、クッションカバーなどは定番の人気商品。特に、山岳民族の鮮やかな刺繍が施された小物は、温かみがあって喜ばれます。ワロロット市場やナイトマーケットで探してみましょう。
    • セラドン焼き: チェンマイ特産の青磁器。翡翠のような美しい緑色と、表面の細かいひび割れが特徴です。上品で落ち着いた風合いの食器は、食卓を素敵に彩ってくれるでしょう。工房を訪れて、製作過程を見学するのも楽しい体験です。
    • ハーブ製品: レモングラスやマンゴスチンなど、タイならではのハーブを使った石鹸やアロマオイル、スパプロダクトも人気です。ナチュラルで優しい香りは、心と体を癒してくれます。パッケージもお洒落なものが多いので、女性へのお土産にぴったりです。
    • 食品: 北タイ産のコーヒー豆や紅茶、ドライフルーツ、そして屋台で食べたサイウア(ソーセージ)やケープムー(豚皮の唐揚げ)なども、現地の味を日本に持ち帰れる良いお土産になります。スーパーマーケットや市場を覗いて、お気に入りの味を探してみてください。
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    この記事を書いたトラベルライター

    SimVoyage編集部は、世界を旅しながら現地の暮らしや食文化を体感し、スマホひとつで快適に旅する術を研究する旅のプロ集団です。今が旬の情報から穴場スポットまで、読者の「次の一歩」を後押しするリアルで役立つ記事をお届けします。

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