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    古都チェンマイ、祈りの迷宮へ。旧市街の寺院を巡る、心洗われる旅ガイド

    タイ北部に位置する、緑豊かな古都チェンマイ。かつてランナー王国の首都として栄えたこの街は、今もなお独自の文化と歴史の香りを色濃く残しています。特に、お堀と城壁に囲まれた旧市街に一歩足を踏み入れると、そこはまるで時間がゆっくりと流れる別世界。細い路地を歩けば、きらびやかな装飾が施された寺院の屋根が次々と現れ、どこからともなく線香の香りが漂ってきます。

    こんにちは、旅ライターの亜美です。アパレル企業で働きながら、長期休暇を見つけては世界の街角を巡っています。ファッションやアートが好きな私にとって、チェンマイの寺院はまさにインスピレーションの宝庫。バンコクの寺院とはひと味違う「ランナー様式」の優美な建築、緻密な木彫り、そして壁画に描かれた物語。その一つひとつが、長い歴史の中で育まれた美意識の結晶です。

    でも、チェンマイの寺院の魅力は、その美しさだけではありません。そこは今も、人々の祈りが捧げられる神聖な場所。静寂の中で静かに手を合わせる地元の人々の姿や、オレンジ色の衣をまとった僧侶たちの読経の声に触れると、旅の喧騒で少し疲れた心がすーっと浄化されていくのを感じます。

    この記事では、私が実際にチェンマイの旧市街を歩いて巡った経験をもとに、心に残った美しい寺院の数々をご紹介します。ただ有名な寺院をリストアップするだけでなく、それぞれの寺院が持つ物語や建築の見どころ、そして聖なる場所を訪れるためのマナーや服装、女性一人でも安心して楽しめるような安全対策まで、旅のプランニングに役立つ情報をたっぷり詰め込みました。

    さあ、一緒に古都の祈りの迷宮へ、心洗われる旅に出かけましょう。

    この旅をさらに特別なものにするため、古都チェンマイで楽しめるアクティビティもぜひチェックしてみてください。

    目次

    なぜチェンマイの寺院は人々を惹きつけるのか?

    タイと聞いて、多くの人が煌びやかな寺院を思い浮かべるでしょう。首都バンコクにはワット・アルンやワット・ポーなど、世界的に知られる寺院が数多く存在します。しかし、チェンマイの寺院にはバンコクとは異なる独特の魅力と雰囲気が漂っています。その理由は、この地が築いてきた歴史と文化に深く根差しているからです。

    ランナー様式 – 独自文化が香る建築美

    チェンマイの寺院を理解する上で重要なキーワードが「ランナー様式」です。チェンマイは13世紀末から約500年間、タイ北部を支配したランナー王国の首都でした。周囲のビルマ(現在のミャンマー)、ラオス、中国の雲南省など多彩な文化の影響を受けつつ、独自の芸術様式を育んできたのです。

    ランナー様式の寺院建築の中で特に目を引くのは、幾重にも重なる優雅な屋根です。低く広がりをもつその形状は、まるで大地にしっかりと根を張る大樹のようで、見る者に安心感と心の安らぎをもたらします。屋根の先端には「チョーファー」と呼ばれる鳥のくちばしを模した装飾が天へと向かい、破風(はふ)と呼ばれる三角部分には、ナーガ(蛇神)や神話の生き物を題材にした精緻な木彫りが施されています。

    ファッションにおけるテキスタイルの柄や刺繍が土地の文化を映し出すように、寺院の装飾の一つひとつにもランナーの人々の美的感覚や祈りの心が込められているのを感じられます。バンコクの寺院が比較的直線的でシャープ、かつカラフルなタイルで飾られた華やかな印象なのに対し、チェンマイの寺院はチーク材を豊富に用いた温もりのある質感と、曲線を基調とした柔らかなフォルムが特徴です。そうした違いを探しながら歩くのも、寺院巡りの楽しみの一つです。

    静寂と祈りに満ちた聖域

    チェンマイの寺院は世界中から観光客が訪れる名所であると同時に、今も地域社会の中心として地元の人々が日常的に祈りを捧げる場です。早朝に本堂の扉が開かれると、静かに訪れた人々が花や線香を供え、熱心に祈る姿が見られます。そのひたむきな姿勢は、訪れる私たちの心にも静かな感動をもたらします。

    本堂の中に足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を包み、線香の香りに加え、バターのように優しく香る蝋燭の甘い香りが漂います。薄暗い堂内に鎮座する穏やかな表情の仏像をじっと見つめていると、日々の喧騒や悩みがすっと遠ざかるような不思議な感覚に包まれます。

    オレンジ色の衣をまとった僧侶たちも、寺院の風景には欠かせない存在です。彼らは修行に励むだけでなく、地域の人々の相談に応じ、儀式を執り行うなど、人々の暮らしと深く結びついています。運が良ければ、僧侶たちが一斉に読経する荘厳な声を耳にすることができるかもしれません。その響きは、言葉の意味がわからなくとも心の奥底に届き、魂を揺り動かす力があります。

    このように、チェンマイの寺院は単なる美しい建築物ではなく、人々の祈りと暮らしが息づく生きた空間です。その静けさと神聖な空気に包まれることで、旅の思い出以上に大切な何かを心に持ち帰ることができるでしょう。

    チェンマイ旧市街 寺院巡りのための準備と心構え

    神聖な場所を訪れるにあたっては、敬意を持ち、マナーを守りながら快適に過ごしたいものです。ここでは、実際に寺院巡りを始める前に知っておきたい服装のルールや持ち物、さらにはおすすめの訪問時間帯など、具体的な準備についてご紹介します。しっかり準備して、心ゆくまで寺院巡りを満喫しましょう。

    寺院巡りに適した季節と時間帯

    チェンマイを訪れるのに最も過ごしやすい時期は、雨が少なく気候が安定している乾季(11月~2月頃)です。晴れ渡った青空が続き、昼間の日差しは強いものの朝晩は涼しく快適なため、街歩きにぴったりなシーズンと言えます。

    寺院巡りにおすすめの時間帯は、何と言っても涼しい早朝です。多くの寺院は午前6時頃から開門しており、まだ観光客の少ない静かな時間帯に、朝日に輝く仏塔を眺める特別な体験が味わえます。また、早朝には僧侶が托鉢を行う姿に出会えることもあり、これはタイの暮らしに根ざした宗教風景として、心に響く光景です。

    日中の暑い時間帯(11時~15時頃)は無理をせず、カフェで休憩したりホテルのプールで涼んだりするのが賢明でしょう。夕方になると陽が傾き始め、寺院が一層美しく映える時間帯となります。夕日に照らされた黄金の仏塔は幻想的で、一日の疲れも優しく癒してくれます。

    聖なる場所への敬意を示す服装とマナー

    タイの寺院は非常に神聖な場所であり、訪れる際には敬意を込めた服装が求められます。これは厳格なルールで、訪問者も例外ではありません。

    • 服装規定(ドレスコード)
    • 基本は「肌の露出を控える」ことです。男女ともに、肩と膝を覆う服装が必須とされています。
    • 推奨される服装例:
    • トップス: Tシャツ、襟付きシャツ、七分袖や長袖のブラウスなど。
    • ボトムス: 足首まであるロングスカートやロングパンツ、チノパンなど。通気性が良いタイパンツもおすすめです。
    • 避けるべき服装例:
    • タンクトップやキャミソール、オフショルダーの服。
    • ショートパンツやミニスカート。
    • 体のラインが強調されるレギンスやダメージジーンズも控えたほうが無難です。
    • 対策と便利なアイテム:
    • 万が一露出の多い服装で来てしまった場合でも安心です。多くの主要寺院では入口で布(パレオやサロン)を有料または無料で貸し出していることがあります。
    • 一番便利なのは、薄手のストールやカーディガンをバッグに忍ばせておくこと。ノースリーブの上からさっと羽織れば即対応可能です。冷房の効いたカフェやレストランでの体温調整にも使えるため、チェンマイ旅行の必携アイテムです。
    • 知っておきたい参拝のマナー
    • 靴を脱ぐ: 本堂(ウィハーン)や礼拝堂(ウボソット)など仏像が祀られている建物に入る際は、必ず入口で靴を脱ぎます。脱いだ靴は入口の棚に置くか自分で管理しましょう。盗難を防ぐためにも、履き慣れた歩きやすい靴で訪れるのが安心です。
    • 敷居を踏まない: 建物の入り口にある敷居は、聖なる空間と俗世を隔てる境界線とされており、踏むことは非常に失礼です。必ずまたいで入るようにしましょう。
    • 仏像への敬意: 仏像は神聖なものです。指差したり背を向けたりしないよう心がけてください。写真撮影後は出口に向かう際、仏像に背中を向けるのではなく、一歩下がって横向きに移動するのが丁寧な作法です。仏像に触れたり、よじ登ったりすることは厳禁です。
    • 僧侶への敬意: 僧侶は尊敬の対象です。特に女性は僧侶に身体を触れてはいけません。道を譲ったり物を手渡したりする際は、直接手渡しせず、男性を介するか布の上に置くなどの配慮が必要です。
    • 静かに過ごす: 寺院は祈りの場です。大声で話したり走り回ったりしないようにしましょう。スマートフォンはマナーモードに設定しておくと安心です。
    • 写真撮影のルール: ほとんどの場所で写真撮影は許可されていますが、一部建物内や特定の仏像は撮影禁止の場合があります。「No Photo」表示の有無を必ず確認してください。撮影時はフラッシュを使用せず、祈っている人の邪魔にならないように配慮しましょう。

    これらのマナーは決して難しく考える必要はありません。「神聖な場所にお邪魔させていただく」という謙虚な心を持てば、自然と正しい振る舞いができるはずです。

    旅の必需品リスト

    快適に寺院巡りを楽しむために、私がいつも持ち歩いているアイテムをご紹介します。

    • 必携アイテム
    • パスポートのコピー: 本物はホテルのセーフティボックスに預け、コピーを持ち歩くと安心です。
    • 現金(タイバーツ): 小さな寺院の入場料やお布施、露店の飲み物代などは現金のみの場合が多いため、特に20バーツや50バーツといった小額紙幣を多めに用意しておくと便利です。トイレのチップとしても役立ちます(一部有料の場所があります)。
    • スマートフォン: 地図アプリや配車アプリ「Grab」の利用、写真撮影に必須です。モバイルバッテリーも持っておくと安心です。
    • あると便利なアイテム
    • 日焼け止めグッズ: 強い日差しから肌を守るため、日焼け止め、帽子、サングラスはぜひ持参しましょう。
    • 虫除けスプレー: 寺院の周辺は緑が豊かで蚊がいることも。特に夕方の時間帯は注意が必要です。
    • 羽織もの・ストール: 服装規定の対策や冷房対策としても重宝します。
    • 歩きやすい靴: 旧市街には石畳やでこぼこ道が多いため、スニーカーやかかとの低いサンダルで、歩きやすく脱ぎ履きしやすい靴がおすすめです。
    • ウェットティッシュ・除菌ジェル: 屋台での食事前や手洗い場がない時に重宝します。
    • 飲み水: こまめな水分補給は熱中症予防の基本。コンビニや露店で手軽に購入可能です。
    • 小さなエコバッグ: 参拝後にお守りやお土産を購入する際に役立ちます。

    準備が整ったら、いよいよチェンマイの美しい寺院を巡る旅が始まります。

    旧市街の珠玉 – 必ず訪れたい5つの寺院

    チェンマイ旧市街には、大小さまざまな寺院が30以上も点在しています。すべてを巡るのはなかなか難しいですが、ここでは歴史的価値や建築的な見どころから、ぜひ訪れてほしい5つの寺院を厳選してご案内します。それぞれの寺院が紡ぐ個性的な物語と美しさを、じっくりと味わってみてください。

    ワット・チェディ・ルアン — 巨大な仏塔が語る古都の栄華

    旧市街のほぼ中心に位置するワット・チェディ・ルアンは、チェンマイの象徴とも言える寺院です。名前の「チェディ・ルアン」とは「大きな仏塔」を意味し、天高くそびえ立つその壮大な仏塔がひときわ目を引きます。

    14世紀末に建設が始まり、15世紀中頃には高さ80メートルを超える巨大な仏塔が完成しました。当時はタイで最も重要な仏像とされた「エメラルド仏」(現在はバンコクのワット・プラケオに安置)が祀られていたほど、ランナー王国の中心的な寺でした。しかし16世紀の大地震で仏塔上部が崩壊。修復は行われたものの、未だ痛々しい姿をとどめ、この街が歩んできた長い歴史を物語っています。

    • 見どころ
    • 巨大な仏塔: 崩れた部分がありながらも圧倒的な迫力を誇ります。四方に設けられた階段の中腹には象の彫刻がずらりと並び、東側階段脇に残るナーガの彫刻は見事で、力強い造形美を堪能できます。夕方にライトアップされる姿は幻想的で格別です。
    • 本堂(ウィハーン): 仏塔の前に建つ本堂は、ランナー様式の美を極めた壮麗な建築。内部には金色に輝く立像「プラ・アッタロット」が安置され、その穏やかな表情に思わず手を合わせたくなります。
    • インタキンの柱: 境内にある小さな祠には、チェンマイの守護柱とされる「インタキン」が祀られています。地元の人々も熱心に祈りを捧げる存在ですが、残念ながら女性は祠の中に入れません。
    • 訪問のポイント
    • 入場料: 外国人は入場時にチケット(2023年現在、大人50バーツ)を購入してください。入口のチケット売り場で支払いが必要です。
    • 参拝の流れ: 特に決まった順路はありませんが、初めに本堂で仏像に参拝し、その後、仏塔をゆっくり時計回りに一周するのが一般的です。
    • モンクチャット: 敷地内の木陰では、時折若い僧侶と英語で対話できる「モンクチャット」が開催されています。仏教やタイ文化について気軽に話せる貴重な機会なので、見かけたらぜひ声をかけてみてください。

    ワット・プラ・シン — チェンマイ最高格式の「獅子の仏」

    ワット・チェディ・ルアンに並ぶ、チェンマイで最も重要な寺院の一つが旧市街西側にあるワット・プラ・シンです。「プラ・シン」は「獅子の仏」の意味で、由緒ある仏像「プラ・プッタ・シヒン」が祀られていることに由来します。

    1345年に建立されたこの寺院はランナー様式建築の傑作と言われ、その豪華な装飾と荘厳さで訪れる人を魅了します。特に4月の旧正月ソンクラーンの期間中は、仏像が山車に乗せられて街を巡行し、多くの人が水をかけて新年の幸福を祈ります。

    • 見どころ
    • ウィハーン・ラーイカム: プラ・プッタ・シヒン像が安置される礼拝堂で、黄金のレリーフや壁一面の壁画が見どころです。壁画は当時の暮らしや物語を生き生きと描写しており、時間を忘れて鑑賞できます。
    • 本堂(ウィハーン・ルアン): 境内中央の大きな本堂は赤を基調とした内装が印象的。奥には大きな金色の仏像が鎮座し、厳かな雰囲気が漂います。
    • 黄金の仏塔(チェディ): 本堂裏には太陽に輝く黄金の仏塔がそびえ、小さな仏塔も並び絶妙なコントラストを描いています。
    • 訪問のポイント
    • 入場料: 礼拝堂など一部の建物は拝観料(2023年現在20バーツ)が必要です。
    • お守り販売: 交通安全や健康祈願のさまざまな御守りが買えます。旅の記念や大切な人のために選ぶのもおすすめです。
    • 周辺散策: 周辺にはおしゃれなカフェや雑貨店、マッサージ店が集まっているので、参拝後にゆったり散策すると良いでしょう。

    ワット・チェン・マン — 旧市街最古の寺院で静謐なひとときを

    旧市街の北東の角にひっそりと佇むワット・チェン・マンは、チェンマイ最古の寺院であり、その歴史を語る上で欠かせません。1296年に建てられたとされ、初代ランナー王メンラーイがこの地に都を築いた際、自身の居住跡に建立したと伝えられています。つまりこの寺は、チェンマイ誕生の歴史そのものを刻む場所です。

    派手な装飾は少ないものの、境内は静寂に包まれ、古都の原点に触れるかのような穏やかな空気が漂っています。

    • 見どころ
    • 象の仏塔: 奥にあるレンガ造りの仏塔は、基壇を15頭の象が囲む独特のデザイン。スリランカ様式の影響が見られ、長年の風化により丸みを帯びた象たちが可愛らしくもあります。
    • 二つの神聖な仏像: 新しい本堂には、水晶製の小さな仏像「プラ・セータン・カマニー」と、雨乞いの儀式用の石のレリーフ「プラ・シラー・カオ」が祀られています。どちらもチェンマイの人々から篤く信仰されています。
    • 訪問のポイント
    • 入場無料: こちらは入場料が不要で、気軽に訪れることができます。
    • 静粛に訪れる: 地元の人も静かに祈願する場所なので、騒がず穏やかに見学しましょう。
    • 新旧の本堂を見比べる: 境内には古い本堂と新しい本堂の2つがあり、象の仏塔近くの古い本堂と、新本堂に収められた水晶仏像が特徴です。両方訪れて、それぞれの建築様式の違いを楽しむのがおすすめです。

    ワット・スアン・ドーク — 白亜の仏塔群が織りなす神聖な空間

    旧市街の西門から約1キロ離れた場所にあるワット・スアン・ドークは、他の寺院とは趣が異なり、広大な敷地に無数の真っ白な仏塔が立ち並ぶ壮観な景色が魅力です。

    「スアン・ドーク」とは「花の庭」を意味し、かつては王家の庭園でした。14世紀にその庭園が寄進され寺院となり、ランナー王族の遺骨を納める霊廟としても機能しています。ひとつひとつの白い仏塔がお墓であることを思うと、この風景はより厳かで尊いものに感じられます。

    • 見どころ
    • 白い仏塔群: 青空に映える無数の白い仏塔の景色は圧巻で、散策するとまるで別世界に迷い込んだような感覚に浸れます。特に夕暮れ時、オレンジ色に染まる仏塔は息を呑む美しさで、写真撮影の絶好ポイントです。
    • 巨大な黄金の仏塔: 白い仏塔群の奥には高さ48メートルの黄金の仏塔がそびえます。内部にはスリランカから運ばれた仏舎利(お釈迦様の遺骨)が納められていると伝えられています。
    • 大規模な本堂: 境内の本堂は非常に大きく、中には複数の金色の仏像が並んでいます。外観以上に広い内部には壮大なスケール感があります。
    • 訪問のポイント
    • 瞑想リトリートやモンクチャット: この寺院は外国人向けに瞑想リトリートや僧侶との対話プログラム(モンクチャット)を積極的に行っています。仏教文化に触れたい方は公式サイトやMonk Chatのサイトでスケジュールを確認のうえ、参加してみると貴重な体験になるでしょう。
    • アクセス: 旧市街からは少し離れていますが、ソンテウやGrabで約10分。ドイ・ステープへ向かう途中に寄るのも効率的です。

    ワット・ローク・モーリー — 知る人ぞ知る細密彫刻の美

    旧市街北側、チャン・プアック門のすぐ外にあるワット・ローク・モーリーは、多くの観光客が訪れる寺院とは異なり、静かで落ち着いた雰囲気を持つ穴場的な寺院です。創建年代ははっきりしませんが、14世紀にはすでに存在していたとされています。

    この寺院の最大の魅力は、チーク材の本堂(ウィハーン)に施された精緻な木彫り装飾です。派手な金箔や色彩はなくとも、木の温もりと職人の技が感じられ、その美しさは訪れる者の心に深く残ります。

    • 見どころ
    • 本堂の木彫り: 破風に施されたナーガや草花の彫刻は生命力に溢れ、扉や窓枠など細部の装飾も丁寧に彫られています。その職人技には感嘆せずにはいられません。アートや工芸ファンには特におすすめで、時間を忘れて見入ってしまうことでしょう。
    • 苔むしたレンガ仏塔: 本堂裏手に佇む大きなレンガ造りの仏塔は、建立当初のまま風雪に耐えてきた歴史の証。派手さはないものの、その風格は堂々としています。
    • 銀色に輝くナーガの階段: 本堂へ続く階段は銀色の美しいナーガが飾られており、旧市街の他寺院にはあまり見られないモダンなデザインが伝統建築と対照的で興味深いです。
    • 訪問のポイント
    • アクセス: チャン・プアック門を出てお堀沿いの道を渡ったすぐの場所にあり、旧市街散策のついでに気軽に立ち寄れます。
    • 静寂を楽しむ: 観光客は少なめでゆったり鑑賞や瞑想に適しています。旧市街の喧騒から離れ、心を落ち着けたい時に訪れるとよいでしょう。

    寺院巡りをさらに深く楽しむためのヒント

    美しい寺院をただ訪れるだけでなく、少しの工夫を加えることで、チェンマイの旅はより充実し、さらに楽しくなります。ここでは、移動手段の選び方から現地の人々との交流、さらには美味しい休憩スポットまで、寺院巡りを何倍も豊かにするコツを紹介します。

    移動手段を上手に活用しよう

    チェンマイ旧市街は一辺がおよそ1.6kmの正方形で、比較的コンパクトにまとまっています。しかし、炎天下の中を長時間歩くのは疲れます。上手に交通手段を使い分けることが、快適な寺院巡りのポイントです。

    • 徒歩

    旧市街内の多くの寺院は徒歩圏内です。地図を片手に、気になる細い路地に迷い込んでみるのも魅力のひとつ。思いがけず素敵なカフェや小さなショップ、名前も知らない美しい寺院に出会うこともあります。歩くことでこそ感じられる街の空気や人々の暮らしに触れることができます。

    • ソンテウ(赤い乗り合いバス)

    チェンマイの街中を走る赤いピックアップトラックが「ソンテウ」です。地元の人の足として親しまれており、旅行者にとってもとても便利な乗り物です。

    • 乗り方: 道端で手を挙げれば止まってくれます。行き先を運転手に伝え、了承を得たら荷台に乗り込みます。
    • 料金: 旧市街内なら、一人あたり約30バーツが目安です。乗車前に「○○まで30バーツですか?」と確認しておくと安心です。料金は降車時に運転席の窓から支払います。
    • チャーター: グループでの移動や少し遠くに行く際はチャーターも可能で、その場合は行き先や時間に応じて料金交渉が必要となります。
    • トゥクトゥク

    タイ名物の三輪タクシーで、ソンテウよりも小回りが効き、風を感じながら走る爽快感が魅力です。ただし、料金はソンテウより高めで、完全な交渉制。乗る前に必ず料金を確定させましょう。ぼったくりを避けるため、あらかじめ相場を把握しておくのが賢明です。観光客向けの乗り物ですが、一度は乗ってみると旅の良い思い出になります。

    • Grab(配車アプリ)

    東南アジアで広く利用されている配車アプリです。日本で事前にアプリをダウンロードし、クレジットカードを登録しておくと、現地でスムーズに使えます。

    • メリット: 料金は乗車前に決まるので、面倒な交渉が不要。GPS機能で現在地と目的地を指定できるため、言葉の壁も気になりません。一般車(GrabCar)やソンテウ、バイクタクシーなど、車種も選べます。特に女性の一人旅や夜間の移動には安心感があります。
    • 使い方: アプリを開いて目的地を入力し配車をリクエストすると、近くのドライバーとマッチング。車のナンバーやドライバー情報、到着予定時刻も表示されます。

    私の場合は、基本的に徒歩で探索し、距離がある場所への移動や疲れた時にソンテウやGrabを利用することが多かったです。それぞれの特徴を理解し、状況に合わせて使い分けるのが賢い方法と言えます。

    僧侶と話してみよう — モンクチャット体験

    「モンクチャット(Monk Chat)」は、その名の通り、僧侶と会話ができるプログラムです。僧侶たちが実践的に英会話を学ぶ場であると同時に、私たち旅行者がタイの文化や仏教の教えを直接学べる、貴重な異文化交流の機会でもあります。

    • どこで体験できる?

    ワット・チェディ・ルアンやワット・スアン・ドークなど、いくつかの寺院で定期的に開催されています。境内の木陰にテーブルと椅子が用意され、「Monk Chat」と書かれた看板が掲げられています。

    • どんな話をする?

    会話内容は自由です。僧侶になった理由や一日の過ごし方、仏教の教えにまつわる素朴な疑問、タイ文化についてなど、興味のあることを気軽に尋ねてみましょう。僧侶から日本の文化や私たちの暮らしについて質問されることもあります。

    • 心構え

    相手は修行中の僧侶ですので、敬意を忘れないことが大切です。恋愛などプライベートに踏み込む質問は避け、あくまでもお互いの文化を学び合う貴重な時間としてリラックスしつつオープンに会話を楽しんでください。最初は緊張するかもしれませんが、若い僧侶たちはとても親しみやすく、熱心に話を聞いてくれます。この体験は、ただ寺院を眺めるだけでは味わえない、深い学びと感動をもたらしてくれます。

    寺院近くでほっと一息 — おすすめカフェ&グルメ

    寺院巡りを一日中続けていると、足が疲れたり暑さで体力が奪われたりします。そんなときは、寺院のそばにある魅力的なカフェや地元の食堂で、ひと休みしましょう。

    • 寺院巡りの合間に寄りたいカフェ

    チェンマイ旧市街には、古民家をリノベーションした洗練されたカフェが多く点在しています。緑豊かな中庭があるカフェでいただく冷たいタイティーは格別です。Wi-Fi完備の店も多いので、旅の計画を練ったり、撮影した写真を整理するのにも最適です。ワット・チェディ・ルアンのすぐ近くには、そんな心地良いカフェが数多くあります。

    • 北タイ名物「カオソーイ」を味わおう

    チェンマイに訪れたらぜひ食べたいのが、名物の「カオソーイ」。ココナッツミルクを使ったカレースープに卵麺、さらにその上に揚げた麺がトッピングされた、食感も楽しい一品です。ワット・プラ・シン周辺には、地元の人々にも観光客にも人気の名店が並びます。スパイシーでコクのあるスープは、汗をかいた後の体に染みわたる美味しさです。

    • 夜はナイトマーケットへ

    寺院巡りの後の夜は、ナイトマーケットが楽しみです。旧市街のターペー門周辺や土曜・日曜に開催される大規模なウィークエンドマーケットでは、多彩なお土産や屋台グルメが揃います。寺院での静かな時間と賑やかな市場の雰囲気、両方を味わえるのがチェンマイの魅力的なコントラストです。

    女性目線の安全対策 – 安心して旅するために

    チェンマイは比較的治安が良好な都市ですが、それでも海外であることに変わりはありません。特に女性が一人旅をする際は、基本的な安全対策を心掛けることで、余計なトラブルを避け、安心して旅行を満喫できます。私の経験をもとに、いくつかのポイントをご紹介します。

    スリ・置き引きへの対策

    観光客が多く集まる寺院や市場は、スリや置き引きのリスクが高まるエリアでもあります。

    • バッグは前に持つ: リュックサックは背中ではなく、前に抱えるように持ちましょう。ショルダーバッグやトートバッグも常に体の前に置くことを意識してください。ファスナーや蓋がきちんと閉まるタイプのバッグを選ぶのが基本です。
    • 貴重品の管理: パスポートや多額の現金、クレジットカードはホテルのセーフティボックスに預けるのが最も安全です。持ち歩く現金はその日の使用分だけとし、財布やポケット、バッグの内ポケットなど複数の場所に分散して携帯すると、万一の被害を最小限に抑えやすくなります。
    • 寺院での注意事項: 寺院では靴を脱いで本堂に入りますが、貴重品が入ったバッグを靴と一緒に放置するのは避けましょう。必ず手に持って中に入ってください。祈りに集中している間も、バッグは膝の上や体の近くに置き、常に意識を向けておくことが重要です。

    夜間の行動と移動について

    • 暗い狭い道は避ける: 日中は賑わっている通りも、夜になると人通りがほとんどなくなり雰囲気が変わることがあります。慣れない土地で街灯が少ない暗い路地に入るのは控え、目的地へはできるだけ明るく人通りの多い道を選んで歩くことをおすすめします。
    • 夜遅くの一人歩きは控える: 深夜に一人で歩くのは、近距離であっても避けた方が無難です。食事やマッサージの後、帰りが遅くなる場合はGrabなど信頼できる交通手段を利用しましょう。
    • ソンテウの利用時の注意: 夜間にソンテウを使う際は、貸し切り状態の車両は避けた方が安全です。他の乗客がいるソンテウか、もしくはGrabの利用を選ぶと安心です。

    トラブル時の連絡先

    パスポート紛失や盗難、急な体調不良など予期せぬトラブルに備えて、緊急連絡先を控えておくと安心です。

    • 警察:
    • ツーリストポリスは旅行者専門の警察で、英語が通じやすいです。トラブル発生時はまずこちらへ連絡を。電話番号は「1155」です。
    • 日本国総領事館:
    • パスポートを紛失・盗難された場合は、速やかに在チェンマイ日本国総領事館へ連絡し、再発行や「帰国のための渡航書」発行の手続きについて指示を受けましょう。
    • 病院:
    • 急な病気やケガに備え、海外旅行保険への加入を必ず行いましょう。チェンマイには日本語通訳サービスのある、または外国人対応が充実した私立病院があり、「チェンマイ・ラム病院」や「バンコクホスピタル・チェンマイ」などが有名です。保険会社の提携病院をあらかじめ確認しておくと、キャッシュレスで治療を受けられる場合もあります。

    「備えあれば憂いなし」という言葉通り、少し工夫をするだけでトラブルのリスクは大幅に減らせます。安全対策をしっかり心掛けて、チェンマイでの旅を思いきり楽しんでくださいね。

    旧市街から少し足を延ばして

    チェンマイの魅力は旧市街に限ったものではありません。時間に余裕があれば、少し足を伸ばして異なる魅力を持つ寺院を訪れてみてください。旧市街からのアクセスも良好で、半日ほどあれば十分に楽しむことができます。

    ドイ・ステープ – 聖なる山から見るチェンマイの絶景

    「チェンマイに来てドイ・ステープに登らなければ、チェンマイを訪れたとは言えない」と言われるほど、この街を象徴する存在が標高1,080メートルのステープ山頂に建つ「ワット・プラタート・ドイ・ステープ」です。

    伝説によると、14世紀に白い象が仏舎利(お釈迦様の遺骨)を背負い、この山を登りきり、頂上で3度鳴いて息絶えた場所に寺院が築かれたと伝えられています。以来、タイ北部で最も神聖視される寺院の一つとして、多くの人々の信仰を集めてきました。

    麓からは306段の階段を登るか、ケーブルカーで境内までアクセスできます。階段の両側には色鮮やかなモザイクで装飾された長いナーガが延び、その迫力に圧倒されます。階段を登りきれば、眩いばかりの黄金の世界が広がります。中央にそびえる黄金の仏塔は、太陽の光を浴びてキラキラと輝き、周囲では人々が静かに祈りを捧げながら歩んでいます。

    さらにこの寺院のもう一つの魅力は、展望台からチェンマイの街並みを一望できることです。眼下に広がる街とその先に広がる壮大な景色を眺めると、心が洗われるような清々しい気持ちになります。

    • 訪問のポイント
    • アクセス: 旧市街からは、チャーターしたソンテウか、チェンマイ大学付近から出る乗り合いソンテウを利用するのが一般的です。山道のため、トゥクトゥクでの移動は難しいです。
    • 服装の規定: ドイ・ステープは非常に格式の高い寺院で、旧市街の寺院よりも服装チェックが厳格です。肩と膝を隠す服装で訪れましょう。万が一忘れた場合でも、入口で布をレンタルできます。
    • 階段かケーブルカーか: 体力に自信がある方は、ぜひナーガの階段を登ってみてください。一歩一歩踏みしめながら聖域へ向かうその道のりは、きっと忘れがたい思い出になるでしょう。体力に自信がない方や時間が限られている場合は、有料のケーブルカーを利用するのがおすすめです。

    銀の寺 – ワット・シースパンの荘厳な輝き

    旧市街の南側、銀細工の工房が立ち並ぶウアライ通りに位置するのが、世界的にも珍しいユニークな寺院「ワット・シースパン」です。通称「シルバー・テンプル(銀の寺)」として知られ、その名の通り、本堂(ウボソット)は屋根から壁、内部にいたるまで銀(およびアルミニウム・ニッケル合金)のレリーフで鮮やかに装飾されています。

    職人たちが一つひとつ手作業で打ち出した銀のパネルには、仏教の物語や神話の生き物が細やかに描かれており、その技術と情熱にただただ感嘆するばかりです。太陽光を受けて鈍く輝くその姿は、黄金の寺院とは異なる荘厳で神秘的な美しさを放っています。夜になるとライトアップされ、昼間とは違った幻想的な雰囲気を楽しめます。

    • 留意点
    • 女性立ち入り禁止: この美しい銀の本堂は、古くからの慣習により内部は女性の立ち入りが禁止されています。これは地下に神聖なものが埋められており、女性が入ることでその力が損なわれると考えられているランナー地方の信仰によるものです。
    • しかし、これに失望する必要はありません。外観だけでも、その細部まで施された装飾と美しさは十分に堪能できます。また敷地内には銀細工の工房もあり、職人たちが実際に制作する様子を見学したり、美しいシルバーアクセサリーを購入することも可能です。

    チェンマイの旅はまるで宝探しのようです。寺院を一つ訪れるごとに、新たな物語や心を奪う美しい風景に出会えます。それは煌びやかな装飾だけでなく、そこに流れる静かな時間や人々の祈りの姿、歴史が刻み込まれた深い味わいが織りなすものです。

    この街の寺院巡りは単なる観光ではありません。自分自身の心と向き合い、日々の慌ただしさの中で忘れかけていた穏やかな時間を取り戻すための、ささやかでありながら心豊かな旅とも言えます。

    この記事が、あなたのチェンマイ旅行をより深く、心に残るものにするきっかけとなれば幸いです。さあ、あなただけの祈りと発見の旅に出かけてみてはいかがでしょうか。

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    この記事を書いたトラベルライター

    アパレル企業で培ったセンスを活かして、ヨーロッパの街角を歩き回っています。初めての海外旅行でも安心できるよう、ちょっとお洒落で実用的な旅のヒントをお届け。アートとファッション好きな方、一緒に旅しましょう!

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