きらめく摩天楼、緑豊かなガーデン、そして多様な文化が溶け合うエネルギッシュなストリート。東南アジアの小さな都市国家、シンガポールは、訪れるたびに新しい顔を見せてくれる、まるで宝石箱のような場所です。
洗練された未来都市のイメージが強いかもしれませんが、その魅力はそれだけではありません。一歩路地裏に入れば、歴史の香りが漂うカラフルな街並みが広がり、世界中の美食が胃袋を掴んで離さないグルメ天国でもあるのです。
コンパクトな国土に、旅のすべてがぎゅっと詰まっているから、短い休暇でも存分に満喫できるのが嬉しいポイント。効率よく、それでいて深く。そんな知的で刺激的な旅を求めるあなたに、シンガポールは最高の舞台を用意してくれています。
さあ、日常を少しだけ忘れて、光と緑と文化が織りなすシンフォニーに身を委ねてみませんか?この地図を眺めながら、あなただけの特別な旅の計画を始めましょう。
なぜ今、シンガポールなのか? 旅人を惹きつけてやまない理由

世界中を旅していると、「次、どこに行く?」という会話は日常茶飯事。そんな時、私が自信をもっておすすめするデスティネーションのひとつが、このシンガポールなのです。その理由は、訪れる人の好奇心をあらゆる角度から満たしてくれる、懐の深さにあります。
旅の基本情報:知っておきたいシンガポールのこと
まずは旅の準備運動から。シンガポールは赤道直下に位置し、一年を通じて常夏。高温多湿な気候です。日本の夏をイメージしていただければ分かりやすいでしょう。乾季(3月〜10月頃)と雨季(11月〜2月頃)がありますが、雨季といっても一日中雨が降り続くわけではなく、スコールと呼ばれる短時間の激しい雨が降ることが多いのが特徴です。
公用語は英語、マレー語、中国語(北京語)、タミル語の4つ。特に英語は広く通じるため、旅行者にとっては非常に心強い環境です。街中の標識やレストランのメニューもほとんどが英語併記。言葉の壁を感じることなく、スムーズに旅を楽しめるでしょう。
通貨はシンガポール・ドル(S$)。日本円からの両替は、日本の空港よりも現地の両替所のほうがレートが良い場合が多いです。街中のショッピングモール内などにも公認の両替所がたくさんあります。クレジットカードも広く普及しており、ホテルやレストラン、ほとんどの店舗で利用可能です。ただし、ホーカーズと呼ばれる屋台街では現金が主流なので、ある程度の現金は用意しておくと安心です。
日本との時差はマイナス1時間。日本が午前10時のとき、シンガポールは午前9時。時差ボケの心配がほとんどないのも、短い日程で旅する私たちにとっては大きなメリットですね。
コンパクトシティの魔法
シンガポールの国土面積は、東京23区とほぼ同じ。この「コンパクトさ」こそが、シンガポール旅行の最大の魅力のひとつと言えるかもしれません。主要な観光スポットは中心部に集中しており、非常に効率よく見て回ることができます。
発達した公共交通機関、特にMRT(地下鉄)は、清潔で安く、旅行者の強い味方。路線図も分かりやすく、主要な観光地へはほぼMRTでアクセス可能です。数日間の滞在でも、まるでパズルのピースをはめていくように、行きたい場所を次々とクリアしていく達成感を味わえるのです。
この凝縮された都市空間は、私たちに「選択と集中」の楽しさを教えてくれます。限られた時間の中で、今日はグルメに徹する日、明日はアートに浸る日、といったようにテーマを決め、その世界にどっぷりと浸かる。そんな密度の濃い旅が、ここシンガポールでは可能なのです。
シンガポールの象徴を巡る王道コース

初めてシンガポールを訪れるなら、まずはこの国のアイコンともいえる場所へ。息をのむような絶景と、未来的な建築美が、あなたの旅の記憶に鮮烈な印象を刻み込むことでしょう。
天空の楽園、マリーナ・ベイ・サンズ
シンガポールと聞いて、多くの人が思い浮かべるのがこの「マリーナ・ベイ・サンズ」ではないでしょうか。3つの高層タワーの上に、船のような形をした空中庭園「サンズ・スカイパーク」が乗るその姿は、もはや単なるホテルではなく、21世紀の建築の奇跡ともいえる存在です。
サンズ・スカイパークからの眺め
宿泊者でなくとも、展望デッキへは入場券を購入すれば誰でも上がることができます。地上200mの高さから見下ろす360度のパノラマは、まさに圧巻の一言。眼下にはガーデンズ・バイ・ザ・ベイの緑が広がり、遠くにはシンガポール海峡を行き交う無数の船。そして、足元には高層ビルがひしめく金融街。この国の発展と繁栄を肌で感じられる場所です。特におすすめなのは、夕暮れ時。太陽が水平線に沈み、街がオレンジ色から深い青へとグラデーションを描く様子は、言葉を失うほどの美しさ。やがて一つ、また一つとビルの灯りがともり始め、眼下に広がる夜景はまるで宝石をちりばめたようです。
究極のインフィニティプール
そして、マリーナ・ベイ・サンズのハイライトといえば、宿泊者だけが利用できるインフィニティプール。地上57階、世界で最も高い場所にあるこのプールは、まるで空に溶け込んでしまうかのような錯覚を覚えます。プールの縁から見下ろすシンガポールの街並みは、まさに「天空の楽園」。朝、昼、夜と、時間帯によって全く異なる表情を見せてくれるので、滞在中は何度も訪れたくなります。ここで過ごす時間は、何物にも代えがたい贅沢な体験となるでしょう。
光と水のシンフォニー「スペクトラ」
夜になると、マリーナ・ベイ・サンズの前のイベントプラザでは、光と水のショー「スペクトラ」が毎晩開催されます。噴水とレーザー、そして壮大な音楽が織りなす約15分間のショーは、無料で楽しめるエンターテイメントとは思えないほどのクオリティ。対岸のマーライオン・パーク側から、ショーとマリーナ・ベイ・サンズ全体を一緒に眺めるのもまた格別です。
近未来の植物園、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
マリーナ・ベイ・サンズの背後に広がる、101ヘクタールもの広大な植物園が「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」です。ここは、ただ美しいだけの庭園ではありません。自然とテクノロジーが見事に融合した、シンガポールの環境への取り組みを象徴する場所なのです。
スーパーツリー・グローブの衝撃
園内に入ってまず目に飛び込んでくるのが、高さ25mから50mにも及ぶ巨大な人工ツリー「スーパーツリー」。垂直庭園として15万本以上の植物が植え込まれたこのツリーは、昼間はそのユニークな姿で楽しませてくれますが、真骨頂は夜にあります。
毎晩行われる光と音のショー「ガーデン・ラプソディ」が始まると、スーパーツリーは色とりどりの光を放ち、音楽に合わせて点滅を繰り返します。まるでSF映画の世界に迷い込んだかのような幻想的な光景に、誰もが心を奪われるはず。地面に寝転がって見上げるのが、おすすめの鑑賞スタイルです。
2つのドームで世界旅行
園内には「クラウド・フォレスト」と「フラワー・ドーム」という2つの巨大なガラスドームがあります。 「クラウド・フォレスト」の内部は、熱帯山地の冷涼で湿潤な気候が再現されています。ドアを開けた瞬間にひんやりとした空気に包まれ、目の前には高さ35mの人工の山と、そこから流れ落ちる滝。エレベーターで頂上まで上がり、空中通路「クラウド・ウォーク」を歩きながら、様々な高山植物を観察できます。霧に包まれた幻想的な空間は、まるで天空の森を散策しているかのようです。
一方の「フラワー・ドーム」は、地中海性気候を再現したドーム。世界中から集められた色とりどりの花々や、バオバブの木などの珍しい植物が咲き誇ります。季節ごとにテーマが変わる展示も魅力で、訪れるたびに新しい発見があります。アパレルで働く私にとって、このドーム内の色彩の組み合わせや植物のフォルムは、新しいデザインのインスピレーションの源泉にもなるのです。
シンガポールの守り神、マーライオン
上半身がライオン、下半身が魚という伝説の生き物「マーライオン」。シンガポールのシンボルとしてあまりにも有名ですね。がっかり名所なんて言われることもありますが、そんなことはありません。マーライオン・パークから眺める景色は、シンガポール旅行のハイライトのひとつです。
口から勢いよく水を噴き出すマーライオンの向こうには、マリーナ・ベイ・サンズがそびえ立ち、その間をリバークルーズの船が行き交う。これぞ「ザ・シンガポール」というべき完璧な構図です。誰もがやる、マーライオンの水を飲む(かのように見せる)ポーズでの記念撮影も、旅の良い思い出になるでしょう。
公園の周辺は遊歩道が整備されており、散策するだけでも気持ちが良い場所。近くにはお洒落なカフェやレストランも点在しているので、景色を眺めながら一休みするのもおすすめです。
多文化が彩るストリートを歩く

シンガポールの面白さは、その文化の多様性にあります。中国系、マレー系、インド系など、様々なルーツを持つ人々が共存するこの国では、エリアごとに全く異なる表情を見せてくれます。まるで小さな世界旅行をしているかのような、エキゾチックな街歩きに出かけましょう。
活気と色彩のチャイナタウン
MRTのチャイナタウン駅を降りると、そこは熱気と活気に満ちた別世界。赤や金を基調とした華やかな建物が並び、漢字の看板が目に飛び込んできます。通りの両脇にはお土産物屋や飲食店がずらりと軒を連ね、歩いているだけでワクワクしてきます。
チャイナタウンの中心に堂々と建つのが「佛牙寺龍華院(ブッダ・トゥース・レリック寺院)」。唐代の建築様式で建てられた比較的新しい寺院ですが、その豪華絢爛な内装は一見の価値あり。仏陀の歯が祀られているとされる4階の部屋は、厳かな空気に満ちています。
少し歩けば、今度はヒンドゥー教の「スリ・マリアマン寺院」が現れます。シンガポール最古のヒンドゥー寺院で、極彩色の神々の彫刻で埋め尽くされた塔門(ゴープラム)は圧巻です。チャイナタウンにヒンドゥー寺院があるという事実こそが、シンガポールの多文化共生を物語っていますね。
グルメもチャイナタウンの大きな魅力。「マックスウェル・フードセンター」や「チャイナタウン・コンプレックス・フードセンター」といったホーカーズでは、有名なチキンライス店をはじめ、安くて美味しいローカルフードを堪能できます。近年は、伝統的なショップハウスをリノベーションしたお洒落なカフェやバーも増えており、新旧が混在する独特の雰囲気を楽しめます。
五感を刺激するリトル・インディア
一歩足を踏み入れた瞬間、スパイスの香りとけたたましいインド音楽に包まれる。それがリトル・インディアです。女性たちがまとうサリーの鮮やかな色彩、店先に並ぶ金製品のきらめき、ジャスミンの花の甘い香り。このエリアは、まさに五感のすべてを刺激してきます。
メインストリートのセラングーン・ロードを歩けば、インド系の雑貨店やレストランがひしめき合っています。アーユルヴェーダ製品やカラフルなアクセサリーなど、見ているだけでも楽しいものばかり。女性なら、ヘナ・タトゥーに挑戦してみるのも良い経験になるでしょう。
リトル・インディアのランドマークといえば、24時間営業の巨大ショッピングセンター「ムスタファ・センター」。食料品から電化製品、衣料品、化粧品まで、ありとあらゆるものが迷路のような店内に所狭しと並べられています。お土産探しにも最適な場所ですが、あまりの品数の多さに方向感覚を失うこともしばしば。宝探し気分で探索するのがおすすめです。
もちろん、本場のインド料理も忘れずに。南インドのカレーや、タンドリーチキン、ビリヤニなど、選択肢は無限大。手で食べるスタイルのお店も多く、現地の文化に触れる良い機会になります。
エキゾチック&クールなアラブ・ストリート
リトル・インディアからほど近い場所にあるのが、イスラム文化が色濃く香るアラブ・ストリートです。このエリアのシンボルは、黄金のドームが輝く「サルタン・モスク」。シンガポール最大級のモスクであり、その荘厳なたたずまいには思わず息をのみます。礼拝の時間以外は内部を見学することも可能ですが、肌の露出の多い服装はNG。入口でガウンを借りることができるので、マナーを守って見学しましょう。
モスクの周辺には、トルコ絨毯やランプ、エキゾチックな布地を売る店が並び、中東のバザールのような雰囲気が漂います。アラブ・ストリートと並行して走る「ハジ・レーン」は、今シンガポールで最もホットな通りのひとつ。
かつては倉庫街だったこの狭い路地は、今や個性的なセレクトショップやカフェ、バーがひしめき合う、若者文化の発信地となっています。壁一面に描かれたグラフィティやウォールアートは、絶好のフォトスポット。アパレル関係の仕事をしている私にとっては、ローカルのデザイナーたちが手がける一点ものの洋服やアクセサリーは、見ているだけでインスピレーションが湧いてきます。伝統的なアラブ文化と、最先端のストリートカルチャーが融合するこのエリアは、シンガポールの中でも特に刺激的な場所です。
感性を研ぎ澄ます、アートと建築の探訪

シンガポールは、経済発展だけでなく、文化芸術の振興にも力を入れている国です。歴史的建造物をリノベーションした美術館や、独創的なデザインの建築物など、街の至る所でアートに触れることができます。
過去と現代が交差する、ナショナル・ギャラリー・シンガポール
シンガポールの中心部、シティ・ホール地区に威風堂々と建つ「ナショナル・ギャラリー・シンガポール」。ここは、かつての最高裁判所と市庁舎という、シンガポールの歴史において極めて重要な2つの建物を、見事なデザインで連結・改修した美術館です。
東南アジアの近代美術に特化したコレクションとしては世界最大級を誇り、シンガポールや周辺諸国のアーティストたちの作品を数多く所蔵しています。植民地時代から独立、そして現代に至るまでの歴史的背景を、アートというフィルターを通して理解することができる貴重な場所です。
作品鑑賞はもちろんですが、この美術館は建物そのものが見どころ。重厚なコロニアル建築の美しさを残しつつ、ガラスと金属の屋根が2つの建物を繋ぎ、自然光が降り注ぐアトリウムは開放感抜群。過去と現代が見事に調和した空間デザインは、それ自体がひとつのアート作品のようです。館内には雰囲気の良いレストランやカフェ、ミュージアムショップも充実しており、アート鑑賞の合間に優雅なひとときを過ごすことができます。
アートと科学の融合、アートサイエンス・ミュージアム
マリーナ・ベイ・サンズの前に佇む、まるで蓮の花のような、あるいは未来から来た宇宙船のようなユニークな建物。それが「アートサイエンス・ミュージアム」です。その名の通り、アート、サイエンス、カルチャー、テクノロジーの境界を越えた、革新的な展示が行われています。
特に有名なのが、日本のウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」が手がける常設展『Future World: Where Art Meets Science』。デジタル技術を駆使して創り出された幻想的な世界は、まさに圧巻の一言。来場者の動きに反応して変化するインタラクティブな作品が多く、ただ「見る」だけでなく、自らが作品の一部となって「体験」することができます。
花々が咲き乱れ、蝶が舞う空間や、光のクリスタルが無限に広がる宇宙のような部屋など、どの展示もフォトジェニックで、夢のような時間を過ごせます。ここは大人も子供も、誰もが童心に返って楽しめる、魔法のようなミュージアムなのです。
カラフルな歴史遺産、プラナカン文化に触れる
シンガポールの多様な文化の中でも、特にユニークで魅力的なのが「プラナカン文化」です。15世紀後半からマレー半島に移住してきた中国系移民の男性が、現地の女性と結婚し、その子孫たちが築き上げた独自の文化を指します。
このプラナカン文化を色濃く感じられるのが、東部に位置するカトン地区。ここに並ぶ「ショップハウス」と呼ばれる建物は、パステルカラーで彩られ、繊細で美しい装飾タイルやレリーフが施されています。中国とマレー、そしてヨーロッパの様式が融合した建築美は、歩いているだけで心が華やぎます。アパレルやデザインに興味がある人なら、その色使いやパターンの組み合わせに、きっと心を奪われるでしょう。
カトンは、プラナカン料理(ニョニャ料理)の中心地でもあります。ココナッツミルクベースのスパイシーな麺料理「ラクサ」は、このエリアが発祥の地。有名店がいくつもあり、店ごとに少しずつ味が違うので、食べ比べてみるのも楽しいものです。プラナカンの美しいビーズ刺繍や陶器なども、このエリアならではのお土産として人気です。
食いしん坊万歳!シンガポール・グルメ完全ガイド

シンガポールを旅する目的は?と聞かれれば、「食」と答える人が大多数を占めるでしょう。それほどまでに、この国の食文化は豊かで、奥が深いのです。高級レストランから庶民の台所まで、美食の旅に出かけましょう。
ホーカーズを制する者はシンガポールを制す
シンガポールグルメの神髄は「ホーカーズ」にあり。ホーカーズとは、いわゆる屋台村のことで、国が管理する衛生的な施設に、様々なジャンルのストール(お店)が集まっています。安くて、美味しくて、活気がある。まさにシンガポール人の胃袋を支える食の殿堂です。
ホーカーズにはいくつか暗黙のルールがあります。まず席の確保。ティッシュペーパーや傘など、私物をテーブルに置いて席取りをする「チョップ(Chope)」という文化があります。これはシンガポールでは公認の習慣なので、安心して席を確保しましょう。
注文は各ストールで行い、その場で支払い、料理を受け取るのが基本。人気店には行列ができていますが、それも美味しさの証。並んででも食べる価値は十分にあります。代表的なホーカーズには、観光客にも人気の「マックスウェル・フードセンター」や、オフィス街のど真ん中にある「ラオパサ」、夜に賑わう「ニュートン・フードセンター」などがあります。それぞれに特色や名物店があるので、事前にリサーチしていくとより楽しめるでしょう。
これだけは食べたい!必食ローカルフード
数あるシンガポール料理の中から、絶対に外せない代表格をいくつかご紹介します。
- チキンライス(海南鶏飯)
シンガポールのソウルフード。鶏の茹で汁で炊いた香り高いジャスミンライスの上に、しっとりと茹でられた(あるいはローストされた)鶏肉が乗ったシンプルな料理。チリ、ジンジャー、ダークソイソースの3種のソースをお好みでつけていただきます。シンプルだからこそ、店ごとのこだわりが光る奥深い一品です。
- チリクラブ
殻付きのカニを、トマトとチリをベースにした甘辛いソースで炒め煮にした豪快な料理。手づかみで、ソースを飛ばしながら食べるのが醍醐味です。残ったソースは、「マントウ」と呼ばれる揚げパンや蒸しパンにつけて、一滴残らず味わい尽くすのがお約束。
- ラクサ
ココナッツミルクベースのスパイシーなスープに、米粉の麺が入った麺料理。エビや油揚げ、もやしなどの具材がたっぷり入っています。特にカトン地区のラクサは有名で、スープが濃厚で、麺が短く切られているためレンゲで食べるのが特徴です。
- バクテー(肉骨茶)
豚のスペアリブを、ニンニクや様々なスパイス、ハーブと共に煮込んだスープ料理。胡椒が効いたクリアなスープの「潮州風」と、漢方の風味が強い醤油ベースの「福建風」の2つのタイプがあります。ご飯と一緒に食べれば、旅の疲れも吹き飛ぶ滋味深い味わいです。
- カヤトースト
シンガポールの定番朝食。炭火でカリッと焼いた薄切りのトーストに、「カヤジャム」というココナッツミルクと卵、砂糖、パンダンの葉で作る緑色のジャムと、スライスバターを挟んだもの。温泉卵と、「コピ」と呼ばれる甘いローカルコーヒーと一緒にいただくのがシンガポール流です。
夜景と共に味わう、とっておきの時間
ローカルフードも良いけれど、特別な夜には少しお洒落をして出かけたいもの。シンガポールには、息をのむような夜景を楽しめるルーフトップバーが数多く存在します。マリーナ・ベイ・サンズの最上階にある「セラヴィ」や、ナショナル・ギャラリー・シンガポールの上にある「スモーク&ミラーズ」など、それぞれに違った角度からの絶景が楽しめます。きらめく夜景を眺めながらカクテルを傾ける時間は、旅の中でも忘れられない思い出になるはずです。
都会のオアシスで深呼吸
高層ビルが林立する都会的なイメージの強いシンガポールですが、実は「ガーデンシティ(庭園都市)」という別名を持つほど、緑豊かな国でもあります。喧騒から少し離れて、自然の中でリフレッシュする時間も大切にしたいですね。
世界遺産の森、シンガポール植物園
2015年にシンガポール初の世界文化遺産に登録されたのが、この「シンガポール植物園」です。160年以上の歴史を持つこの植物園は、まさに都会の真ん中にある広大なオアシス。早朝からジョギングや太極拳を楽しむ地元の人々に混じって、のんびりと散策するだけでも心が洗われます。
園内最大の見どころは「ナショナル・オーキッド・ガーデン」。6万本以上のランが栽培されており、その規模と美しさは世界屈指です。シンガポールの国花である「バンダ・ミス・ジョアキム」をはじめ、色とりどりのランが咲き誇る様子は、まるで天国のよう。英国のエリザベス女王やダイアナ妃など、著名人の名前がつけられた新種のランを探してみるのも楽しいでしょう。広大な芝生に座って読書をしたり、カフェで一息ついたりと、思い思いの時間を過ごせる癒やしの空間です。
南の島のリゾート、セントーサ島
シンガポール本島の南に位置する「セントーサ島」は、島全体が巨大なリゾート施設になっています。ケーブルカーやモノレールで気軽にアクセスでき、一日中遊べるエンターテイメントが満載です。
「ユニバーサル・スタジオ・シンガポール」はもちろん大人気ですが、セントーサの魅力はそれだけではありません。シロソ・ビーチ、パラワン・ビーチ、タンジョン・ビーチという3つの個性的なビーチが連なっており、白い砂浜でのんびりと過ごすことができます。ビーチ沿いにはお洒落なバーやレストランも多く、リゾート気分を満喫できます。
アクティブに過ごしたいなら、東南アジア最長級のジップライン「メガ・アドベンチャー」や、自分で操縦するゴーカートのような「スカイライン・リュージュ」など、スリリングなアトラクションもおすすめです。一日では遊び尽くせないほど、多彩な魅力が詰まった島なのです。
女性が安心して旅するためのヒント

シンガポールは、世界的に見ても治安が良いことで知られています。法律が厳しく、街は清潔に保たれており、女性の一人旅や女子旅でも安心して楽しむことができます。それでも、海外であることに変わりはありません。基本的な注意を怠らず、快適で安全な旅を心がけましょう。
治安と安全対策
治安は良好ですが、観光客を狙ったスリや置き引きが全くないわけではありません。特に人混みの中では、バッグは前に抱えるように持ち、貴重品からは目を離さないようにしましょう。夜の一人歩きも比較的安全ですが、リトル・インディアやゲイラン地区など、一部注意が必要なエリアもあります。危険な場所には近づかない、夜遅くに一人で出歩かない、といった基本的な危機管理は大切です。シンガポールは法律が厳しい国です。ポイ捨てや公共交通機関内での飲食、喫煙ルール違反などには高額な罰金が科せられることがあるので、ルールはしっかり守りましょう。
賢い移動手段の選び方
前述の通り、MRTは非常に便利で安全な移動手段です。主要な観光地はほとんど網羅しているので、まずはMRTを使いこなすことを目標にしましょう。「EZ-Linkカード」という交通系ICカードを購入すれば、乗降がスムーズになります。
タクシーも比較的安価で、安心して利用できます。ただ、近年は「Grab(グラブ)」という配車アプリが主流になっています。アプリで行き先を指定し、事前に料金が確定するので、言葉の心配や料金トラブルの心配がなく非常に便利です。日本でアプリをダウンロードし、クレジットカードを登録しておくと、現地ですぐに使えて重宝します。
服装と持ち物で快適に
一年中常夏のシンガポールでは、基本的に日本の夏の服装でOK。通気性の良いコットンやリネンのワンピース、Tシャツにスカートやパンツといったスタイルが快適です。ただし、屋内は冷房がかなり強く効いている場所が多いので、寒暖差で体調を崩さないように、カーディガンやストールなど薄手の羽織ものは必ず持参しましょう。これはマストアイテムです。
日差しも非常に強いので、帽子、サングラス、日焼け止めは必須。突然のスコールに備えて、折りたたみ傘や、撥水性のあるバッグがあると安心です。たくさん歩くことを想定して、履き慣れた歩きやすい靴を選びましょう。お洒落なレストランやバーへ行く予定があるなら、少しドレッシーなワンピースやサンダルを1セット持っていくと、旅の気分がさらに盛り上がります。
旅のフィナーレを飾るショッピング

旅の楽しみのひとつといえば、やはりショッピング。シンガポールは、ハイブランドからローカルデザイン、ばらまき用のお土産まで、あらゆるニーズに応えてくれるショッピング天国でもあります。
ショッピングの聖地、オーチャード・ロード
約2.2kmにわたって、巨大なショッピングモールやデパートが立ち並ぶ「オーチャード・ロード」。ここは、シンガポール随一のショッピングストリートです。未来的なデザインが目を引く「IONオーチャード」、日系の安心感がある「高島屋」、高級ブランドが揃う「パラゴン」など、個性豊かなモールが軒を連ね、一日中いても飽きることがありません。世界のラグジュアリーブランドから、ZARAやH&Mといったファストファッション、シンガポール発のローカルブランドまで、ありとあらゆるものがここで手に入ります。
心ときめくローカル土産を探して
ばらまき用のお土産を探すなら、スーパーマーケットがおすすめです。高級紅茶ブランド「TWG Tea」のティーバッグや、定番のカヤジャム、人気料理の素「プリマ・テイスト」のインスタント麺などは、手頃で喜ばれるアイテム。
少し特別なものを探すなら、ハジ・レーンのセレクトショップや、ナショナル・デザイン・センターのショップを覗いてみましょう。シンガポールの若手デザイナーが手がけた、ユニークなアクセサリーや雑貨に出会えるかもしれません。カトン地区で見つける、プラナカン様式の美しい陶器やビーズサンダルも、旅の思い出を彩る素敵な記念品になるでしょう。
シンガポール、次なる発見へのプロローグ

光と緑、そして多様な文化が交差するシンガポールの旅、いかがでしたでしょうか。
この小さな都市国家は、訪れるたびに新しい魅力を発見させてくれる、尽きることのない泉のような場所です。未来的なスカイラインに感動したかと思えば、次の角を曲がると、歴史の息づかいが聞こえるノスタルジックな路地裏が待っている。ホーカーズで地元の人々に混じって舌鼓を打ち、洗練されたルーフトップバーで夜景に酔いしれる。その振れ幅の大きさが、旅人の心を掴んで離さないのかもしれません。
一度訪れただけでは、シンガポールのすべてを知ることはできません。今回ご紹介した場所は、その魅力のほんの入り口に過ぎないのです。次に訪れるときは、今回とは違うエリアに宿をとり、まだ見ぬカフェを探し、気になったギャラリーにふらりと立ち寄ってみる。そんな風に、自分だけのシンガポールの地図を描いていく楽しみが、ここにはあります。
この旅が、あなたの日常に新たな彩りをもたらし、次なる冒険への扉を開くきっかけとなりますように。シンガポールはいつでも、その輝きであなたを温かく迎え入れてくれるはずです。







