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知れば旅が10倍楽しくなる!日本の大動脈、新幹線の奥深きトリビアの世界へようこそ

日本の風景を滑るように駆け抜ける、白い流線形の車体。窓の外に広がる景色は、都市のビル群から、のどかな田園、そして雄大な山々へとめまぐるしく変わっていきます。そう、新幹線は私たちにとって、単なる移動手段以上の存在です。それは旅の始まりを告げる合図であり、心躍る非日常への扉。私自身、子育てが一段落し、主人との時間を大切にするようになってから、この国の美しい景色を再発見する旅によく出かけますが、その傍らにはいつも新幹線の姿がありました。

正確な時刻、揺れの少ない快適な乗り心地、そして何よりもその圧倒的なスピード。当たり前のように享受しているこの快適さが、実は数えきれないほどの技術と人々の情熱、そして知恵の結晶であることをご存知でしょうか。車両の色や形に込められた意味、線路に隠された秘密、そして私たち乗客がより快適に旅をするための様々な工夫。今回は、そんな新幹線の奥深く、そして魅力あふれるトリビアの世界へと皆様をご案内いたします。この記事を読み終える頃には、きっと次回の新幹線の旅が、これまでとは全く違った景色に見えるはずです。さあ、まずは旅の起点となる日本の中心、東京駅から探訪を始めましょう。

新幹線の旅の魅力を感じたら、次は海を渡って火山と温泉の絶景が楽しめる伊豆大島への旅も計画してみてはいかがでしょうか。

目次

新幹線の「すごい」はここから始まった!誕生秘話と歴史

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世界に誇る日本の高速鉄道、新幹線。その始まりは半世紀以上前にさかのぼります。ただ単に速い列車を作るだけではありませんでした。そこには、戦後の復興を経て世界に日本の技術力を示そうと奮闘した人々の熱い想いと壮大なドラマが込められていたのです。

世界初の高速鉄道誕生の背景

新幹線が初めて走り出したのは1964年10月1日であり、東京オリンピックの開会式を10日後に控えた日でした。この時期は偶然ではありません。当時日本は高度経済成長の最中で、東海道本線は増加し続ける旅客と貨物の輸送量に対応しきれず、限界に達していました。人の移動も物資の輸送も飽和状態だったのです。この課題を解決し、日本のさらなる発展を支えるために、新たな規格の鉄道として東海道新幹線が計画されました。

「夢の超特急」と呼ばれたこの計画は、決して順風満帆ではありませんでした。営業時速200km超という前例のない速度の実現には、解決すべき技術的問題が数多くありました。また、建設費用が莫大であったことから「飛行機の時代にこれほどの巨額を鉄道に投じる必要があるのか」といった反対意見も根強く存在したと言われています。それでも技術者たちはあきらめることなく、日本の未来を信じ、世界を驚かせる鉄道を自らの手で作り上げたいという強い決意を持っていました。彼らの情熱が、多くの困難を乗り越え、世界初の高速鉄道の誕生を可能にしたのです。

「団子鼻」だけではない!初代0系の隠された工夫

新幹線と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、あの親しみやすい「団子鼻」の形ではないでしょうか。初代車両である0系はまさしく新幹線の象徴的な存在です。しかし、あのデザインは見た目のかわいらしさだけでなく、高速走行を実現するための綿密な計算が施されていました。

実は0系の開発には航空機の技術が多く取り入れられていました。高速走行時、先頭車両にかかる空気抵抗は非常に大きく、その抵抗をいかに抑えるかが課題でした。開発チームは風洞実験を繰り返し、空気抵抗を抑えつつ車体の揺れも最小限にできる形状を探った結果、あの丸みを帯びた流線形にたどりついたのです。さらに車体の構造も航空機と同様に、強度を保ちながら軽量化を図る工夫がされています。

乗り心地の面でも、当時としては画期的な工夫がなされました。高速走行では線路の微細な歪みが大きな振動となるため、0系には「空気ばね台車」が採用されました。台車と車体の間に圧縮空気をクッションとして配置し、細かい振動を吸収。まるで雲の上を滑っているかのような滑らかな乗り心地を実現しました。冷暖房完備の快適な室内やビュッフェでの食事提供など、従来の鉄道の常識を覆す0系の登場は、日本の旅のスタイルを一変させる大きな転機となりました。

絶え間ない進化!歴代新幹線車両が語る日本の技術力

0系の登場から半世紀あまり、新幹線は絶えず進化を遂げてきました。歴代車両はそれぞれの時代のニーズに応え、日本の高度な技術力を示す象徴的存在といえます。

二階建て車両を採用して輸送力と眺望の良さを両立させた100系。東京―新大阪間を2時間半に短縮した「のぞみ」用300系。航空機のような鋭いロングノーズが今も多くのファンを魅了する500系。カモノハシを思わせる独特の先頭形状で、環境性能と快適性を両立した700系。そして車体を傾ける「車体傾斜システム」を導入し、カーブでも速度を落とさず走行可能となったN700系シリーズ。

現在、東海道・山陽新幹線の主力となっているのが最新型のN700Sです。「S」は「Supreme(最高の)」を意味し、その名にふさわしく安全性、安定性、快適性、環境性能のすべてにおいて過去の車両を上回っています。地震発生時に迅速に停止可能なブレーキ性能、停電時にも自走できるバッテリーシステム、全座席へのコンセント設置など、乗客の利便性も大幅に強化されました。歴代車両の歩みは、日本のものづくりが「より速く、より安全に、より快適に」を追求し続ける終わりなき挑戦の物語を映し出しているのです。

車窓の風景が変わる?知って得する線路と駅の秘密

新幹線の快適な旅は、単に高性能な車両だけで成り立つものではありません。私たちが普段あまり意識しない線路や駅の構造にも、高速走行を支える多くの工夫が隠されています。これらの秘密を知ることで、いつも見ている車窓の景色も新たな魅力を帯びて映るかもしれません。

なぜ新幹線の線路はほぼ直線でカーブが緩やかなのか?

新幹線の窓から外を見ると、線路が驚くほど真っすぐに伸びていることに気づきます。一般的な在来線のように細かく曲がることはほとんどありません。これは高速かつ安全な走行を実現するための必須条件です。

その理由の一つは、線路の幅にあります。日本の在来線の多くは「狭軌」(1067mmの軌間)を採用しています。これは明治時代に鉄道を敷設した際、山がちな地形に対応し費用を抑える目的で選ばれた規格です。しかし、この狭い軌間は高速走行には適していません。そこで新幹線は、国際的に標準とされる「標準軌」(1435mmの軌間)を採用し、軌間を広げることで高速時の安定性を大幅に向上させています。

さらに、急なカーブでは遠心力によって車両が外側に押し出されるため、速度をかなり落とさなければなりません。そのため新幹線の線路はカーブの半径を極めて大きく、緩やかに設計しています。どうしても急なカーブを設けざるを得ない地点では、N700系シリーズに搭載された「車体傾斜システム」が活躍します。車体を内側に傾けることで遠心力を軽減し、速度を落とさずに曲線を通過可能にしています。また踏切を一切排除し、在来線や道路と完全に立体交差させることで、人や車と接触するリスクをゼロに抑えているのです。こうした徹底した安全対策と工夫が時速300km近くの高速走行を支えています。

「のぞみ」が停車しない駅、停車する駅。その基準とは?

東海道新幹線には、「のぞみ」「ひかり」「こだま」という3種類の列車があります。最速の「のぞみ」は主要駅のみに停車しますが、どのような基準で停車駅が決められているのでしょうか。単に乗降者数の多さだけが理由ではありません。

もちろん、東京、名古屋、新大阪といった大都市の主要駅に停まるのは当然です。しかし例えば、新横浜駅や新神戸駅もすべての「のぞみ」が停車します。これらの駅は横浜市や神戸市の玄関口であるうえ、JR横浜線や神戸市営地下鉄など多くの路線が接続する重要なハブ駅でもあります。つまり、新幹線が日本の交通の大動脈であるのに対し、こうした駅は各地域へと交通の血液を送る毛細血管の結節点に位置付けられているのです。主要都市間の移動だけでなく、その周辺地域全体の交通利便性も考慮して停車駅が選ばれています。

一方、「ひかり」は「のぞみ」の停車駅に加え、静岡、浜松、岡山など県庁所在地や重要都市にも停車し、中距離利用者の利便性を高めています。「こだま」は各駅に停まり、沿線の各都市をきめ細かく結びつける役割を担います。これら3種の列車が有機的に連携することで、多様な利用者のニーズに応えつつ効率的な輸送システムを築いているのです。

旅の計画に役立つ停車駅の知識

旅の計画を立てる際にも、停車駅の特徴を理解しておくとより柔軟で充実したプランが組めます。たとえば目的地が「こだま」しか停車しない駅の場合でも、途中の主要駅まで「のぞみ」や「ひかり」を利用してから乗り換えれば、移動時間を大幅に短縮できます。逆に時間に余裕があるなら、あえて「こだま」を選び、各駅での雰囲気を楽しみながらゆっくり旅をするのも一案です。車内販売がなかったり営業区間が限られる列車も多いため、各駅停車の旅では駅の売店で地元の名物駅弁を探す楽しみも増えます。

駅名に「新」がつく理由とは?

新幹線の駅名には、新横浜、新大阪、新神戸、新青森など「新」が付くものが多くあります。これはなぜでしょうか。

理由は新幹線の線路の敷設方法にあります。先述したように、高速走行のためにはできるだけ直線に近い線路が必要ですが、既に市街地が発展している在来線の駅の地下に真っすぐな線路を通すのは用地買収や工事の面で非常に難しいのです。そのため、多くの場合、在来線の駅からやや離れた広い用地を確保しやすい郊外に新幹線の駅が建てられました。その結果、在来線の駅と区別するために「新」を付けた駅名が生まれたのです。

新大阪駅の例がわかりやすいです。在来線の大阪駅はすでに巨大なターミナルとなっており、その近辺に新幹線の駅を作る余地がありませんでした。そこで、中心街から少し離れた淀川の北側に広大な用地を確保し、新幹線の専用駅として新大阪駅が作られました。旅の際には、「新」がつく駅と街の中心地にある在来線駅の位置関係や乗り換え時間を把握しておくと、移動がよりスムーズになるでしょう。

今すぐ使える!新幹線を120%楽しむための実践ガイド

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これまで新幹線の歴史や構造の秘密について触れてきましたが、ここからはより実用的な情報をお伝えします。チケットの賢い買い方や快適な車内での過ごし方、さらにはトラブルが発生した際の対処法までご紹介します。これらを知っておけば、次回の新幹線旅行がもっとスムーズで、心豊かなものになることでしょう。

チケット購入のコツ!お得に、かつスマートに旅をスタートしよう

新幹線での旅の最初のステップは、きっぷの購入です。以前は「みどりの窓口」に並ぶのが普通でしたが、今ではもっと便利でお得な方法が数多くあります。シニア世代の方にも分かりやすい、おすすめの購入方法を紹介します。

購入方法のポイント:自分に合った手段を見つける

みどりの窓口や券売機:駅員に直接相談しながら購入したい方には窓口がやはり安心です。特に「ジパング倶楽部」のような割引を利用する際や、複雑な乗り継ぎが必要なときに頼りになります。また、最近の指定席券売機は操作案内が非常に親切で、割引きっぷの購入や座席指定も簡単に行えます。

オンライン予約サービス:私自身、スマートフォンやパソコンから予約できるオンラインサービスを最もよく利用しています。JR東海・西日本エリアなら「スマートEX」、JR東日本エリアなら「えきねっと」が代表的です。これらのサービスの最大の魅力は、「早割」商品の存在です。例えば「スマートEX」の「EX早特28ワイド」なら、乗車日の28日前までに予約することで、通常料金よりかなり安く「のぞみ」の指定席が取れます。旅行の予定が早めに確定している場合は非常におすすめです。変更も出発前ならスマホから無料で何度でもできるので、急な予定変更にも対応可能です。さらに、交通系ICカード(SuicaやICOCAなど)を登録すれば、改札でタッチするだけで乗車可能な「チケットレス」も便利で、きっぷを紛失する心配もありません。

各種割引の活用:新幹線きっぷには多彩な割引制度が揃っています。代表例として、JRグループの鉄道を年間20回まで2割または3割引で利用できる「ジパング倶楽部」(男性65歳以上、女性60歳以上が対象)があります。また、片道601km以上の長距離区間を往復で利用する際に適用される「往復割引」も、長距離旅行には見逃せません。これらの割引は利用条件が細かいため、購入前にJR公式サイトや窓口で必ず確認しましょう。

持ち物チェックリストと車内での楽しみ方

きっぷを手に入れたら、次は旅の準備です。長時間の乗車をいかに快適に過ごすかで旅の質は大きく変わります。ここでは、私がいつも持参するアイテムや、車内でのマナーについてお伝えします。

旅の準備・持ち物リスト

  • 基本必携品:きっぷ(チケットレスの場合は予約画面と交通系ICカード)、割引利用時は年齢確認ができる身分証明書、現金・クレジットカード・スマートフォンは必須です。
  • 快適グッズ:首への負担を軽減するネックピローや、冷房対策のストールやカーディガンなどの羽織りもの。周囲の音や光を遮る耳栓やアイマスクも重宝します。お気に入りの本やタブレットで車窓を楽しみながら読書するのもおすすめです。最近の新幹線は各席にコンセントを備えているため、スマホ充電器とケーブルの持参も忘れずに。乾燥対策にはのど飴やマスク、手指を清潔にするウェットティッシュもあると安心です。
  • 飲食物:車内販売もありますが、サービス縮小の路線が増えています。駅の売店やデパ地下でお気に入りの駅弁やサンドイッチ、好みの飲み物を買って乗車するのも旅の楽しみの一つです。

禁止事項やルール、快適なマナーの心得

  • 持ち込み禁止物:新幹線への持ち込みが禁止されているのは、ガソリンや火薬などの危険物です。刃物類の持ち込みも厳しく制限されています。ペットと一緒に乗車する際は、指定サイズのケースに入れて手回り品きっぷ(有料)が必要です。事前にルールを必ず確認しましょう。
  • 大きな荷物の取り扱い:特に注意が必要なのが大きな荷物です。東海道・山陽・九州・西九州新幹線において、三辺の合計が160cmを超え250cm以内の「特大荷物」を持ち込む場合は、事前に「特大荷物スペースつき座席」の予約が必須です。予約なしで持ち込むと1,000円の手数料がかかり、乗務員が指定した場所に置くことになります。海外旅行用の大型スーツケースなどは該当することが多いので、必ずサイズを測り、必要に応じて予約しましょう。
  • 車内マナー:快適な車内環境は全ての乗客の協力で成り立ちます。リクライニングを倒す際は後ろの方に一声かけると良いでしょう。携帯電話での通話はデッキで行い、車内ではマナーモードに設定してください。音楽を楽しむときはイヤホンを使い、音漏れに配慮しましょう。飲食時は匂いや音が周囲に迷惑をかけないよう心掛けたいものです。

万が一に備えて。トラブル時の対処法

旅には思わぬトラブルがつきものです。どんなに注意していても予期せぬ事態が起こることもありますが、新幹線にはそういった場合に備えたルールや制度が整っています。落ち着いて対応方法を知っていれば、安心して旅を続けられます。

トラブルが起きた場合の対処法

  • 指定席の列車に乗り遅れたとき:最も多いトラブルの一つですが、ご安心ください。指定席特急券をお持ちであれば、乗り遅れた当日限り、後続の列車の自由席に乗車可能です。きっぷを買い直す必要はありません。ただし、「早特」などの一部割安商品はこの適用外で、乗り遅れると無効になる場合があるため、券面をよくご確認ください。
  • きっぷを紛失した場合:駅での待ち時間や移動中にきっぷをなくしてしまったら、駅の係員に事情を説明し、同じ区間のきっぷを再購入してください。この際、「紛失再」印がつきます。降車時に改札できっぷを見せ、その後は大切に保管しましょう。万が一、1年以内に紛失前のきっぷが見つかれば、みどりの窓口で再購入きっぷと提示すれば、手数料を差し引いた金額が返金されます。
  • 大雨や地震などで列車が遅延・運休した場合:自然災害で2時間以上の遅延が発生した場合、特急料金は全額払い戻しされます。運休時は運賃・料金共に全額返金されるか、希望に応じて後続列車や別経路への変更が可能です。旅行自体を中止する場合も、未使用のきっぷであれば全額払い戻しを受けられます。

問題発生時の公式情報の活用

トラブル発生時に大切なのは、自己判断に走らず、正確な情報を入手することです。まずは駅のスタッフや乗務員に相談しましょう。また、台風など悪天候時には乗車前に必ずJR各社の公式サイトで最新運行情報を確認することが習慣づけられると安心です。リアルタイムの情報は旅を滞りなく進めるための重要な指針となります。JR東日本JR東海のウェブサイトはぜひブックマークしておきましょう。

マニアック編!知的好奇心をくすぐる新幹線のディープな世界

それでは、視点を少し変えて、知る人ぞ知る新幹線の奥深い世界へご案内しましょう。普段何気なく利用しているだけでは気づかない、マニアックなトリビアが満載です。これらを知れば、あなたも立派な「新幹線通」と言えるでしょう。

「ドクターイエロー」だけではない!珍しい新幹線の特別車両たち

新幹線の線路を走るのは、私たちが乗る白い営業車両だけではありません。安全な運行を陰で支える、特別な役割を担う車両も存在しています。もっとも有名なのが、「見ると幸運が訪れる」と言われる都市伝説で知られる「ドクターイエロー」です。

正式名称は「新幹線電気軌道総合試験車」。その名の通り、高速で走行しつつ、線路の歪みや架線の状態、信号電流の異常などをチェックする「新幹線の医者」のような存在です。黄色い車体の理由についてはいくつか説がありますが、事業用車両は乗客が誤乗しないように目立つ色を採用する慣例により、黄色が選ばれたと言われています。運行スケジュールは非公開で、およそ10日に一度、主要区間を走るため、偶然出会えたら非常に幸運です。

とはいえ、レアな事業用車両はドクターイエローだけではありません。JR東日本エリアには「East i(イーストアイ)」という、白い車体に赤いラインが入った検測車両があります。こちらもドクターイエロー同様、線路や設備の点検を担当しており、目撃することは稀です。このような「縁の下の力持ち」が、新幹線の世界トップクラスの安全性を支えています。

あのチャイムの秘密。駅や車両ごとに異なるメロディー

新幹線の旅情を演出する要素の一つに「音」があります。駅ホームで発車を知らせるメロディーや、車内で流れるチャイムにも、さまざまな工夫が隠されています。

東海道新幹線の車内チャイムとして長年親しまれてきたのは、TOKIOの「AMBITIOUS JAPAN!」のメロディーでした。2003年の品川駅開業に合わせてキャンペーンソングとして採用され、その後約20年間にわたり乗客の旅の始まりと終わりを彩ってきました。そして2023年夏、そのチャイムがUAさんの歌う「会いにいこう」へと引き継がれました。時代とともに、新幹線の音風景も変化しているのです。

車内チャイムはJR各社で異なります。JR西日本では、山陽新幹線の「いい日旅立ち・西へ」、北陸新幹線の「北陸ロマン」が特に有名です。また、駅の発車メロディーにも地域色豊かな曲が多く採用されています。たとえば、北陸新幹線の上越妙高駅では、地元にゆかりのある唱歌「夏は来ぬ」が使用されています。旅先で流れるメロディーから、その土地の歴史や文化を感じ取るのも、鉄道旅行ならではの楽しみ方と言えるでしょう。

なぜ座席は2列と3列?シートに込められた人間工学

新幹線の普通車の座席は、片側が3列、もう片側が2列という不均等な配置が基本です。この左右非対称のレイアウトは、なぜそうなっているのでしょうか。これは、限られた車内空間で、できる限り多くの乗客を収容しつつ、快適さも両立させるための絶妙なバランスから生まれています。

日本の鉄道では、通路幅が法律によって最低限の広さで定められています。その制約のなかで座席を配置すると、左右対称の2列+2列では定員が減る一方、3列+3列にすると座席幅が狭くなりすぎてしまいます。そこで、定員数と快適性の最適解として選ばれたのが、3列+2列の組み合わせです。ちなみに、グリーン車が2列+2列なのは、よりゆったりとした座席幅を確保し、快適な空間を提供するためです。

この座席配置を知ると、座席選びも戦略的にできるようになります。窓側、通路側、そして3列シートの中央席――それぞれにメリットとデメリットがあります。

  • A席・E席(窓側):車窓の景色をじっくり楽しめ、壁にもたれて休めます。特に東海道新幹線の場合、下り(東京→新大阪)ならE席、上りならA席から、晴れていれば壮大な富士山を望めます。ただし、トイレや席を立つ際は隣の人に声をかける必要があります。
  • C席・D席(通路側):自由に気軽に立ち上がることができ、足元も若干広く感じられます。荷物の出し入れも楽で、降車時にすぐに動きやすいのがメリットです。
  • B席(中央席):両隣に挟まれることから敬遠されがちですが、実はA席やC席よりもわずかに座席幅が広めに設計されている車両も多いのです。これは中央席の窮屈さを少しでも和らげるため、設計者の細やかな配慮と言えます。

旅のスタイルや好みに合わせて、最適な席を選んでみてください。

新幹線の未来はどこへ向かう?リニアと今後の展望

誕生から半世紀以上にわたり、日本の大動脈として社会の基盤を支え続けてきた新幹線。その歩みは今後も止まることなく進化し続けます。次に挑むのは、時速500kmという未知の領域です。日本の鉄道技術は新たなステージへと歩みを進めています。

時速500kmの世界へ。リニア中央新幹線の現状

新幹線の次世代を担う「リニア中央新幹線」は、現在建設が着々と進められています。この新線は、従来の車輪とレールによる走行方式ではなく、「超電導」技術を用いて車体を磁力で浮上させ、推進する「磁気浮上式鉄道」です。車体がレールに触れないため摩擦が生じず、時速500kmという驚異的な速度での走行が実現されます。

現在、開業を2027年に目指して品川と名古屋間で工事が進行中です。開業すれば、この区間の所要時間は現行の新幹線の半分以下となり、最速でわずか40分に短縮されます。これにより、東京と名古屋間が実質的な通勤圏となるのです。ビジネスや観光の形態を大きく変革する、極めてインパクトのあるプロジェクトです。将来的には大阪までの延伸も予定されており、実現すれば日本の三大都市圏が一体となる巨大な都市圏を形成することになります。

もちろん、この夢の実現には、トンネル工事の困難さや環境負荷といった多くの課題があります。しかし、かつて東海道新幹線が「夢の超特急」と呼ばれながらも具現化したように、日本の技術者たちは今、この未来の交通機関を実現するため全力を傾けています。

さらなる高速化・快適性・環境配慮の追求

リニアの開発と並行して、在来の新幹線もさらに進化を遂げています。N700Sの後継となる次世代車両の開発は既に始まっており、目標は高速性能の向上、快適性の強化、そして環境負荷軽減です。

技術面では、AIを用いた自動運転技術の導入も視野に入れられています。これにより、より精緻な運行管理が可能となり、定時運行の確保や安全性の向上が期待されます。また、省エネルギー技術の開発や騒音低減対策も重要なテーマとなっています。高速鉄道は航空機に比べてCO2排出量が少ない環境負荷の低い交通機関ですが、さらにその優位性を高めて持続可能な社会の実現に貢献することが求められています。

加えて、誰もが利用しやすいユニバーサルデザインの徹底も欠かせません。車いすスペースの拡充や多言語対応の案内表示の充実など、高齢者や海外からの訪問者を含め、すべての人々が快適でストレスなく旅を楽しめる環境づくりが進められています。新幹線はこれからも日本の先端技術を結集し、時代の変化とともに進化を続けていくのです。

旅の締めくくりに。新幹線から始まる、新しい日本の見つけ方

これまで、新幹線に関するさまざまなトリビアをご一緒に巡る旅にお付き合いいただき、ありがとうございました。誕生の背景から、線路や駅に隠された秘密、そして未来へのビジョンまで。私たちの身近な存在である新幹線が、多くの知恵と情熱によって支えられていることを感じ取っていただけたのではないでしょうか。

次に新幹線のホームに立つ機会があれば、どうぞ思い出してみてください。すべり込んでくる車両の洗練されたフォルムに込められた技術者たちの努力と試行錯誤の歴史を。規則正しく敷かれたレールには、安全への徹底した追求の姿勢が宿っています。そして、快適なシートに身をゆだねながら、窓外を流れる風景のひとつひとつに、この国を繋いできた人々の想いを巡らせてみてはいかがでしょうか。

新幹線は単に人々をA地点からB地点へ運ぶ乗り物ではありません。それは、日本の技術や文化、さらに歴史そのものを乗せて走る「動く博物館」のような存在とも言えるでしょう。今回ご紹介したトリビアが、あなたの次の旅をより深く、味わい豊かなものにする手助けとなれば、とても嬉しく思います。さあ、きっぷを手に、日本の新たな発見に満ちた旅へと出かけましょう。

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この記事を書いたトラベルライター

子育てひと段落。今は夫と2人で「暮らすように旅する」を実践中。ヨーロッパでのんびり滞在しながら、シニアにも優しい旅情報を綴ってます。

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