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香港の時を刻む赤レンガの殿堂「雷生春」徹底ガイド〜歴史と現代が融合する漢方茶カフェへ〜

コンクリートジャングルとネオンの洪水。そんなエネルギッシュな香港のイメージを覆す、静かで美しい場所があるのをご存知でしょうか。九龍半島の心臓部、旺角(モンコック)の喧騒から少し歩を進めた場所に、その建物はまるで時が止まったかのように佇んでいます。赤レンガと優美な曲線が織りなすコロニアル様式の建築「雷生春(ルイセンチュン)」。ここは、古き良き香港の息吹を今に伝える、生きた歴史遺産です。

元は1930年代に建てられた漢方薬局兼一族の邸宅。その歴史的価値から香港政府によって第一級歴史建築に認定され、リノベーションを経て現在は香港浸会大学が運営する中医薬(中国伝統医学)のクリニック、そして誰でも気軽に立ち寄れる漢方茶カフェとして生まれ変わりました。大陸を車で横断する旅の途中、僕はエンジン音と排気ガスの匂いから離れ、この穏やかな空間で心と体をリセットする時間を過ごすことにしました。歴史が染み込んだ壁に触れ、体に優しい漢方茶を味わう。それは、香港の新たな一面を発見する、忘れられない体験となるはずです。この記事では、雷生春の魅力から具体的な訪問方法、そして周辺の楽しみ方まで、僕自身の体験を交えながら徹底的に解説していきます。さあ、一緒に時を遡る旅に出かけましょう。

歴史を感じる建築を訪れた後は、香港・西環泳棚の夕日絶景で、また違う香港の美しさに心を奪われてみてはいかがでしょうか。

目次

雷生春とは?〜その歴史と建築的価値

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旺角の交差点に立つと、周囲の高層ビルに囲まれつつもひときわ目を惹く4階建ての赤レンガ造りの建物が見えます。それが雷生春です。単に古いというだけでなく、その細部の一つ一つに、香港という街が歩んできた波乱の歴史と、ある一家の物語が深く刻み込まれています。まるで丁寧に修復されたクラシックカーが放つ独特の雰囲気のように、雷生春はその存在自体で静かに過去を語り掛けているのです。

創業者一族・雷亮の物語

雷生春の物語は、優れた人物である雷亮(ロイ・リョン)氏に始まります。彼は九龍バス(KMB)の創設メンバーの一人で、運輸業で成功を収めた実業家でした。成功を手にした彼は、1929年に茘枝角道と塘尾道の交差点の角地を購入し、自らの家族が住むための邸宅建設に取りかかりました。それがこの雷生春の建物です。

建築は1931年に完成しました。雷亮氏は地上階(G/F)を自身の漢方薬局「雷生春」の店舗として使いました。ここでの「雷」は家族の姓を表し、「生春」は「妙手回春」(優れた医術で病気を治す)の言葉に由来し、人々の健康を取り戻す場としての意味が込められています。彼の手掛けた漢方薬、特に打撲や筋肉痛に効く軟膏は評判を呼び、香港のみならず海外の華人社会にも広く知れ渡るようになりました。

建物の上階は、雷亮氏とその一家の住居として使われました。家族はここで生活し、薬局も運営し、この建物自体が雷家の繁栄の象徴となっていました。しかし、その穏やかな時代は長くは続きませんでした。

唐樓(トンラウ)建築の傑作

雷生春は「唐樓(トンラウ)」と呼ばれる香港独自の建築様式を代表する名作のひとつです。唐樓とは、20世紀初頭から中頃にかけて多く建てられた、店舗と住居が融合した中低層建築を指します。雷生春は中でも特に、西洋建築様式と中国伝統の要素が融合している点で高く評価されています。

特徴的なのは、建物の角を大胆に活かした丸みのあるデザインと、歩道に沿って連なるベランダです。このベランダは広東語で「騎樓(ケイラウ)」と呼ばれ、日差しの強い香港や急な雨が多い気候に合わせて、通行人を守るアーケードの役目を果たしています。これは街と建物、そして住む人々がひとつに溶け合う工夫として、当時の都市建築に広く見られる特徴でした。

建築スタイルとしては、当時流行した西洋のネオクラシシズム(新古典主義)の影響が色濃く現れています。左右対称の配置、角張った柱、そしてファサードに施された彫刻的装飾がその証拠です。同時に、バルコニーの手すりなどには中国伝統のデザインが取り入れられており、東西文化が交錯する香港ならではの独特な美しさを醸し出しています。主要な建材である赤レンガとコンクリートの組み合わせも、当時の先進的な建築技術を物語っています。

特に私が心惹かれたのは、そのバルコニーの連続感です。滑らかな曲線を描きつつ次々に繋がるベランダは、まるで建築物の躍動感や生命力を表現しているかのようです。元整備士の目線から見ると、機能美とデザイン性が見事に調和した無駄のない造形美と感じられます。これは単なる建物ではなく、一つの芸術作品と言って間違いないでしょう。

時代を超えた変遷

第二次世界大戦後、雷家の多くのメンバーは海外へ移住し、1960年代には漢方薬局「雷生春」もその幕を閉じました。その後、建物は住宅として貸し出されていましたが、住人は徐々に減少し、2000年ごろには完全に空き家となってしまいました。かつて人々の健康を守り、家族の生活の中心であった建物は、静かに荒廃への道を辿っていったのです。

それでもその歴史的・建築的価値は決して忘れられませんでした。2000年、香港政府の古物古蹟弁事処は雷生春を「第一級歴史建築」に指定。さらに所有者だった雷家は、この貴重な文化財を社会に活かしてほしいと願い、2003年に建物を香港政府へ寄贈するという大きな決断を下しました。この寛大な提案が、雷生春の新たな物語の幕開けとなりました。

政府は歴史建築物の保存と、新たな活用を目指す「活化歷史建築夥伴計劃(Revitalising Historic Buildings Through Partnership Scheme)」という画期的なプログラムを開始。雷生春はその第一弾の対象のひとつに選ばれ、公開募集の結果、香港浸会大学が管理運営を担うこととなりました。同大学は、建物を中医薬の臨床・研究・教育拠点として再生させる計画を打ち出し、これが承認されたのです。

約2年にわたる大規模な修復と改装工事を経て、2012年に雷生春は「香港浸会大学中医薬学院-雷生春堂」として新たな命を授かりました。修復の際には、オリジナルの姿を最大限尊重し、歴史的な特色を損なわないよう細心の配慮がなされました。昔日の魂を保ちながら、現代の医療施設としての機能がしっかりと加えられたのです。

現在の雷生春〜香港浸会大学中医薬学院

改めて生まれ変わった雷生春は、単なる観光スポットにとどまりません。ここは今も現役の医療施設として市民の健康を支え、未来の医療従事者を育成する教育機関でもあります。同時に、かつての歴史を伝え、市民や観光客に安らぎの時間を提供するオープンスペースとしての役割も果たしています。ここでは、雷生春の現在の二つの顔、クリニックとしての機能と、一般に開放されているエリアの見どころについて詳しくお伝えします。

クリニックとしての役割

建物の1階から3階(日本の2階から4階に相当)は、香港浸会大学中医薬学院のクリニックとして利用されています。ここでは内科、鍼灸、骨傷科(推拿)などの幅広い専門分野の診療を受けられます。伝統的な中医学に基づく治療が提供され、多くの地域住民が健康相談や治療に訪れています。

この部分は現役の医療施設のため、一般の観光客が見学目的で入ることはできません。来訪時は患者さんやスタッフの迷惑にならないよう、静かに過ごす配慮が必要です。私たちが利用できるのは主に地上階(G/F)のエリアですが、この建物が今もなお「人々を癒す」という使命を継続していることが、雷生春の歴史に深みを与えています。

一般開放エリアの見どころ

観光客が自由に楽しめるのは主に地上階(G/F)です。ここには漢方茶カフェ、展示スペース、受付があり、雷生春の歴史と文化に触れられるスポットとなっています。

地上階(G/F): 漢方茶カフェ「涼茶舖」

建物の扉を開けると、まず目に飛び込むのがリノベーションされたモダンな漢方茶カフェ「涼茶舖」です。高い天井、往時のままの床タイル、そして壁に飾られた昔の写真が、懐かしさと洗練が融合した空間を作り出しています。漢方特有のわずかに甘く懐かしい香りが漂い、旅の疲れをやわらげる効果を感じられます。

ここで提供される「涼茶(リョンチャ)」は、健康増進のためのお茶で、冷たくはなく体内の余分な熱を取り除き、バランスを整える伝統的な飲み物です。メニューには様々な種類があり、それぞれ異なる効能を持っています。

  • 五花茶(ンーファーチャー): 最も人気のある涼茶の一つ。菊の花など5種類の花がブレンドされており、デトックス効果や喉の痛みの緩和に適しています。甘みがあって飲みやすく、漢方茶初心者におすすめです。
  • 廿四味(ヤッセイメイ): 24種類の生薬を配合した強力な涼茶。名前通り苦味が強いですが、「良薬は口に苦し」の通り、解熱や体内湿気除去に高い効果があります。健康効果を実感したい方はぜひ試してみてください。
  • 酸梅湯(サンムイトン): 梅のスモーキーで甘酸っぱい風味のドリンク。食欲増進や夏バテ防止に効果的で、ジュース感覚で楽しめます。

注文はカウンターで行い、英語表記のあるメニューが用意されているため安心です。指差し注文もでき、スタッフも親切に対応してくれます。支払いには現金のほか、香港の交通系ICカード「オクトパスカード」も利用でき、大変便利です。お茶はホットかコールドのどちらかを選べる場合もあります。

私が訪れた際は、大陸横断のドライブで多少疲れていたため、デトックス効果のある五花茶を注文しました。ほんのり甘く花の香りが広がり、じんわりと体に染み渡る感覚は格別で、この一杯を味わうためだけに再訪したいと思わせるものでした。

また、ここでは「龜苓膏(クヮイリンゴウ)」と呼ばれる亀のゼリーも名物です。亀の甲羅の粉末と生薬を煮込んで作る真っ黒なゼリーは、見た目とは裏腹に美容や健康に良いとされています。シロップをかけて食べると、ほろ苦さと甘さが絶妙に調和し、香港らしいヘルシースイーツとしてぜひ体験してみてください。

展示スペース

カフェの奥や壁沿いには雷生春の歴史を伝える小さな展示コーナーが設けられています。ここには建物建設当時の写真、雷一族に関する資料、修復工事の記録パネルなどが展示されているほか、昔使われていた薬棚や薬をすり潰す道具、古い薬のパッケージなどが見られます。

これらの展示からは、かつての人々の生活や漢方薬がどれほど日常に根付いていたかがうかがえます。精巧な木製薬棚はまるで工芸品のようで見応えがあります。説明パネルは広東語と英語で書かれており、写真や図を見るだけでも建物の歴史の重みを感じ取ることができるでしょう。

見学の際は、カフェの他のお客さんへ迷惑をかけないよう静かにし、展示物には触れないよう注意してください。この小さなミュージアム的空間は、漢方茶を待つ時間や飲み終えた後の余韻を楽しむのに最適です。

屋上庭園について

一部のガイドブックやウェブサイトでは屋上庭園に触れていることもありますが、通常はクリニックの利用者や大学関係者専用のエリアであり、一般の観光客は立ち入れません。特別なイベント時には開放される可能性もありますが、基本的には立入禁止と考えてください。美しい屋上の景観は、建物の外側、特に交差点の向かい側から眺めるのが最もおすすめです。

雷生春を訪れるための完全ガイド

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雷生春の魅力を理解したところで、次は実際に訪れるための具体的な情報をご案内します。アクセス方法から営業時間、訪問時のマナーに至るまで、これを読めば誰でも安心して雷生春を訪れることができるよう、詳細な情報と私のアドバイスをまとめました。旅の計画作りの参考としてぜひご活用ください。

アクセス方法を詳しくご紹介

雷生春は九龍半島の中心地に位置し、公共交通機関を使ってのアクセスが非常に便利です。以下に代表的なアクセス方法をいくつか解説します。

MTRを利用する場合

香港の地下鉄であるMTRを使うのが最も分かりやすく簡単な手段です。最寄り駅は2駅あります。

  • 太子駅(Prince Edward Station): 荃湾線(Tsuen Wan Line)と觀塘線(Kwun Tong Line)が乗り入れており、雷生春へは C2出口 から出ると最短ルートです。出口を出たら目の前の大通り「太子道西(Prince Edward Road West)」を西側(左手)に進んでください。そこから約5分ほど直進し、大きな交差点「茘枝角道(Lai Chi Kok Road)」に差し掛かった際、角に雷生春の建物が見えてきます。道順はシンプルなので迷いにくいでしょう。
  • 旺角駅(Mong Kok Station): 荃湾線と觀塘線の交差駅で、ここからは多少歩きますが活気ある街並みを楽しみながら向かえます。A2出口から出て「彌敦道(Nathan Road)」を北方向(太子駅方面)に歩きます。3つ目の大きな通り「太子道西」を左折し、そのあとはまっすぐ進むのみです。徒歩でおよそ10〜15分かかりますが、途中の金魚街など面白いスポットを経由できるので散歩も楽しめます。

バスを利用する場合

香港のバス路線は非常に充実しており、雷生春のすぐ前にもバス停があります。バス停名は「雷生春(Lui Seng Chun)」または「塘尾道(Tong Mi Road)」です。多くの路線がこの停留所を通りますが、観光客の方には乗り換えが簡単なMTR利用をおすすめします。バスに慣れている方は、Googleマップ等のアプリで目的地を「雷生春」と設定すると最適な路線案内を受けられます。

タクシー利用の場合

最も気軽な手段はタクシーですが、交通渋滞に巻き込まれる可能性もあるため時間には余裕を持ちましょう。運転手には目的地名「雷生春(広東語でロイサンチョン)」を伝えるか、住所を書いた紙を見せるのが確実です。住所は「九龍旺角茘枝角道119號(119 Lai Chi Kok Road, Mong Kok, Kowloon)」です。書面を見せれば間違いを防げます。

営業時間と定休日について

雷生春はクリニックとカフェで営業日時が異なります。訪問前にしっかり確認することを推奨します。

  • 漢方茶カフェ・展示エリア:
  • 月曜日〜土曜日:午前10時〜午後8時
  • 日曜・祝日:午前10時〜午後7時
  • クリニック(参考情報):
  • 月曜日〜土曜日:午前9時〜午後1時、午後2時〜午後8時
  • 日曜・祝日:午前9時〜午後1時、午後2時〜午後7時

営業時間は予告なく変更する場合があります。特に旧正月などの長期休暇中は短縮や休業になることがあるため、来訪前に香港浸会大学中医薬学院 雷生春堂公式サイトで最新情報をチェックすることをおすすめします。

入場料と予約の有無

雷生春の地上階エリアは入場無料で、予約なしで自由に見学可能です。ただしカフェの席数は限られているため、週末やランチタイムは混み合います。ゆったり過ごしたい方は、平日の午前中か夕方以降の訪問を狙うのが良いでしょう。

時おり大学主催のガイドツアーが開催されることがあり、参加すれば通常は立ち入れない場所を見学できる場合もあります。ただし基本的に案内は広東語で行われます。興味があれば公式サイトでツアー情報を確認してください。

訪問時のマナーとルール

雷生春は貴重な歴史的建築物であるとともに、現役の医療施設でもあります。訪れる全ての人がマナーを守ることで、この貴重な場を未来に伝えていくことが大切です。以下の点に気をつけましょう。

  • 服装について: 特に厳しい規定はありませんが、クリニックとしての機能もあるため、水着や極端に露出の多い服は避け、節度ある服装を推奨します。建物内は冷房が効いていることが多いので、夏場でも一枚羽織るものがあると安心です。
  • 飲食物の持ち込み: カフェで購入した以外の飲食物や酒類の持ち込みは禁止されています。
  • 写真撮影: 地上階のカフェや展示スペースでの撮影は許可されていますが、他の来訪者や患者さんが写らないよう配慮しましょう。上階のクリニックエリアでは写真撮影を厳禁とし、フラッシュや三脚を使用した長時間の撮影も避けてください。外観を撮影する際は交通に十分注意を。
  • 静粛にすること: 大声で話すことは控え、静かに見学を行いましょう。ここは多くの人が癒しを求めて訪れる場所です。
  • 展示物に触れない: 史跡展示品や建物の装飾は決して触れないでください。

訪問準備と持ち物リスト

雷生春とその周辺散策を快適に楽しむための持ち物例です。参考にしてください。

  • 必携アイテム:
  • 歩きやすい靴: 駅から徒歩やマーケット散策を考慮し、スニーカーなど歩き慣れた靴が安心です。
  • カメラ: 建築の細部や漢方茶の写真撮影に。撮影マナー厳守を忘れずに。
  • オクトパスカード: MTRやバスの乗車、カフェでの支払いに便利な香港の必須アイテムです。
  • 現金(香港ドル): 小規模店などでカードが使えない場面もあるため、ある程度の現金を携帯してください。
  • あると便利なもの:
  • モバイルバッテリー: 写真や地図アプリ使用でスマホのバッテリー消耗が早いので予備充電器は役立ちます。
  • エコバッグ: 周辺マーケットでの買い物に便利です。
  • 汗拭きシート・扇子: 香港の夏は高温多湿。熱中症予防に有効です。
  • 薄手の上着: 屋内の冷房が強いことが多いため重宝します。

トラブル対策

旅には予期せぬ事態もつきもの。前もって対処法を知っておくことで落ち着いて対応できます。

  • 迷った場合: Googleマップなど地図アプリが頼りです。オフライン不安があるなら事前に地図をDLしておきましょう。道を聞くときは「雷生春(ロイサンチョン)?」と写真を見せると多くの人が教えてくれるでしょう。
  • 営業時間変更や急な閉館: 訪問前に公式サイトで確認するのが最善ですが、現地で閉まっていた場合はあきらめて周辺の観光に切り替えましょう。徒歩圏内に魅力スポットの金魚街やフラワーマーケットがありますので、代わりのプランに困ることはありません。
  • 体調不良時: 雷生春はクリニックですが、基本的に予約制かつ広東語が中心のため緊急対応には向きません。症状が悪化した際は宿泊先のフロントに最寄病院を尋ねるか、海外旅行保険のサポートに連絡しましょう。香港の医療は質が高い反面、費用も高額になりがちなので、保険加入は必須です。

雷生春周辺のおすすめ散策スポット

雷生春の見学には、おおよそ30分から1時間程度の時間が必要です。このエリアに来たなら、ぜひ周辺のディープな香港を感じられるスポットにも足を延ばしてみてください。雷生春を拠点に、活気あふれる地元のマーケットを散策すれば、香港旅行の大きな魅力のひとつになること間違いありません。

金魚街(Goldfish Market)

雷生春から太子道西を東側へ少し歩くと、通りの両側にビニール袋に入ったカラフルな金魚や熱帯魚がぎっしりと並ぶ、独特の光景が広がります。これが俗に「金魚街(タントンガイストリート)」と呼ばれる場所です。風水では金魚は金運を呼ぶ縁起の良い存在とされ、多くの香港の人々が自宅で飼育しています。袋に入れられた魚が壁いっぱいに吊るされている様子は、まるで生きたアートのような印象を与えます。また、魚類だけでなく亀や爬虫類、昆虫を扱う店もあり、見るだけでも十分楽しめるスポットです。

女人街(Ladies’ Market)

旺角を代表する名所の一つが「女人街(ノイヤンガイ)」です。通菜街(Tung Choi Street)に広がる約1キロの露天市場には、衣料品、バッグ、アクセサリー、土産物、ガジェットなど、多種多様な商品が所狭しと並んでいます。値段交渉はごく普通のことで、店主とのやり取りもこの市場の醍醐味の一つです。エネルギッシュな香港のナイトマーケットの雰囲気を満喫したいなら、夕方以降の訪問がおすすめです。

花園街(Fa Yuen Street / Sneaker Street)

女人街と平行して走る「花園街(ファユエンストリート)」の特に南側は、「スニーカー・ストリート」として知られています。有名ブランドの最新モデルから珍しい限定品まで、多くのスニーカーショップが軒を連ねており、スニーカー愛好家にはたまらない聖地です。一方、北側は地元住民が利用する生鮮食品や日用品の市場となっていて、よりローカルな雰囲気を感じられます。

フラワーマーケット(Flower Market)

太子駅近くの太子道西沿いには「フラワーマーケット(花墟道)」が広がり、数十軒の花屋が立ち並んでいます。色とりどりの切り花や観葉植物、蘭などが店先にぎっしりと飾られ、花の甘い香りに包まれて歩くだけで気分が明るくなります。香港旅遊発展局のサイトにも掲載されている通り、特に旧正月前には縁起の良い花や植物を求める人々で非常に賑わいます。

バードガーデン(Yuen Po Street Bird Garden)

フラワーマーケットのさらに先には、「バードガーデン(園圃街雀鳥花園)」があります。中国風の庭園内に鳥かごや餌の店が軒を連ね、鳥愛好家たちが自慢の鳥をかごに入れて集い、鳥のさえずりを楽しんでいます。鳥たちの美しい声が響き渡るこの場所は、都会の喧騒を忘れさせるまさにオアシスです。鳥かごを持ったおじさんたちが語り合う様子は、香港の日常を象徴するかのような光景です。

ライター翔太の体験談とワンポイントアドバイス

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大陸横断という絶えず動き続ける旅の合間に立ち寄った雷生春は、僕にとって特別な場所となりました。車の整備と同様に、旅にも時折メンテナンスが欠かせません。この場所は、僕の心と身体をリフレッシュさせてくれる、まさに最高のピットストップのような空間でした。

訪れたのは平日の午後。旺角の喧騒を抜け、角を曲がった瞬間に見えた赤レンガの建物には思わず息をのんでしまいました。周囲の近代的な高層ビル群の中で、そこだけがまるで異なる時間軸に属しているかのように感じられました。交差点の反対側から、行き交う二階建てバスやミニバスを背景に建物全体を収めるのが、僕のお勧めの撮影アングルです。香港らしい活気と歴史の静寂が共存する写真がきっと撮れるでしょう。

カフェで頼んだ五花茶は、想像以上に飲みやすく、優しい甘みがドライブの疲れをじんわりと和らげてくれました。窓際の席に腰掛け、ガラス越しに香港の街並みを眺めながらお茶を味わう時間は、何物にも代えがたい贅沢なひとときでした。旅のBGMには、ウォン・カーウァイ監督の映画『花様年華』のサウンドトラックがおすすめです。レトロで美しい建物の雰囲気に、きっとぴったりマッチするはずです。

かつて整備士だった性分が顔を出し、修復された建物の細部にもつい目が向いてしまいます。オリジナルの素材を活かしつつ、現代の技術で補強された跡を見つけるたびに、この建物を未来へ繋げようとする人々の熱意がひしひしと伝わってきました。それは、一台のクラシックカーを愛し、次の世代へ受け継ぐ心意気と通じるものがあるように感じられました。歴史はただ保存するだけでは化石のようになってしまいます。こうして現代に生きる人々が利用し、大切にすることで、はじめて「生きた歴史」になるのだと、雷生春は教えてくれました。

雷生春の未来と、私たちができること

都市開発の進展が著しい香港において、雷生春のような歴史的建築が保存され、なおかつ新たな役割を与えられて息づいていることは、まさに奇跡とも言えるでしょう。これは、建物を寄贈した雷一族の決断力、香港政府の先見の明、そして香港浸会大学の熱意ある取り組みがあって初めて実現したものです。

雷生春の物語は、過去から現在、さらに未来へと続いています。かつて一族の健康を支えた漢方薬局は、いまや最新の知識と技術を備えた中医薬の拠点となり、より多くの人々の癒しを担い続けています。この場所は単なる観光地にとどまらず、香港の文化遺産を未来に継承していくうえでの優れた模範と言えるでしょう。

私たち観光客がここを訪れる際にできることは、ごくシンプルです。この建物が持つ歴史や現在の役割に敬意を払い、静かにその空間を味わうこと。そして、もし気に入ったなら、カフェで一杯の漢方茶を楽しむことです。その一杯の料金が、この美しい建物を維持するためのささやかで確かな支えにつながります。

歴史の重みと現代の息遣いが交わる場所、それが雷生春です。次に香港を訪れる際は、ぜひ旅のプランに組み込んでみてください。そこで過ごす穏やかな時間は、きっとあなたの心に深く刻まれ、旅をより豊かに彩ることでしょう。私もまた、この大陸横断の旅を終えたら、必ずここに戻ってこようと胸に誓いました。そのとき、この赤レンガの建物は変わらぬ優雅さで私を迎えてくれるに違いありません。

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この記事を書いたトラベルライター

元自動車整備士、今はロードトリップ愛好家!レンタカーでアメリカ横断しながら、絶景とBGMとキャンプ飯を楽しんでます。車と旅、どっちも好きな方はぜひチェックしてください!

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