コンクリートジャングル、100万ドルの夜景、最先端のグルメシーン。香港と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、きっとそんなエネルギッシュな都会の姿ではないでしょうか。しかし、そのイメージを心地よく裏切ってくれる場所が、香港にはまだ残されています。それが、ランタオ島の西端に位置する静かな漁村「大澳(タイオー)」です。
「香港のヴェネツィア」とも称されるこの村には、水路に沿ってびっしりと「棚屋(パンオク)」と呼ばれる高床式の水上家屋が立ち並び、まるで時間が止まったかのような、古き良き香港の原風景が広がっています。近代的な都市の喧騒からわずか1時間半ほどでたどり着けるとは思えないほどの、のどかでノスタルジックな雰囲気。ここでは、潮の香りが風に乗り、人々の穏やかな暮らしが今も息づいています。
この記事では、世界30か国を旅した私が、初めて大澳を訪れる方でも安心して楽しめるよう、アクセス方法から必見の見どころ、絶品ローカルグルメ、さらには旅の準備や注意点まで、徹底的に解説していきます。この記事を読み終える頃には、きっとあなたも大澳の魅力に引き込まれ、次の香港旅行の計画を立て始めているはずです。さあ、一緒に香港のもう一つの顔を探す旅に出かけましょう。
大澳の魅力を堪能した後は、同じランタオ島にある天空の仏陀も訪れてみてはいかがでしょうか。
大澳(タイオー)とは?時が止まったかのような水上集落の魅力

香港最大の島、「ランタオ島」は香港国際空港や香港ディズニーランドで広く知られています。その島の西端に位置する大澳は、静かに佇む漁村です。かつて珠江デルタで重要な漁港の一つとして栄えたこの地は、現在でも多くの漁師たちが伝統的な暮らしを守り続けています。村を歩けば、網の手入れをする漁師や軒先で干物を作るおばあさんの柔らかな笑顔に出会い、訪れる人の心をほっと和ませてくれます。
香港の歴史を今に伝える「棚屋(パンオク)」
大澳の象徴的な光景といえば、真っ先に思い浮かぶのが水上に建てられた「棚屋(パンオク)」でしょう。満潮時に家が浸水しないよう、石や木の杭を川底に打ち込み、その上に建てられた高床式の住宅です。この住居は、もともと陸上での居住が認められなかった水上生活者、蛋民(タンカ)が住み始めたことに由来しています。
堅固な木材で組まれた棚屋は、密接して立ち並び、家々は小さな橋や板で結ばれて村人たちの生活路となっています。一見すれば不安定にも見えますが、何世代にも渡り風雨に耐えてきた先人たちの知恵の結晶です。今も多くの人々が棚屋で生活しており、洗濯物が風になびき、家の中からテレビの音が漏れてくるなど、生きた暮らしの息吹を感じられます。この独特な景観が大澳を「香港のヴェネツィア」と称される所以であり、世界中の写真家や旅人を惹きつけています。
都会のイメージを覆す、のどかな漁村の風景
中環(セントラル)や尖沙咀(チムサーチョイ)の輝くネオンや高層ビル群が「動」の香港を象徴するならば、大澳は間違いなく「静」の香港を体現しています。ここには忙しい都会のリズムはなく、ゆったりとした島時間が流れています。水路を行き交う小舟のエンジン音、活気にあふれた市場の声、そして人々の穏やかな笑い声が、心地よいBGMのように響き渡っているのです。
村の中心には、新鮮な海産物や自家製の乾物を扱う店が連なるマーケットストリートが広がり、地元の住民や観光客で賑わいます。特に、大澳名物の蝦醬(エビペースト)が発酵する独特の香りは、この村の風物詩と言えるでしょう。路地裏に一歩入ると、昼寝を楽しむ猫や無邪気に遊ぶ子どもたちの姿が見られ、どこか懐かしい日本の田舎町の光景を思い起こさせます。この都会との鮮やかな対比こそが、大澳の最大の魅力の一つで、多くの人が癒しを求めて訪れる理由となっているのです。
大澳へのアクセス完全ガイド! MTRとバスを乗り継いで冒険の始まり
大澳はランタオ島の西端に位置しているため、香港の中心地からはやや距離があります。しかし、香港の公共交通は非常に充実しているため、決してアクセスが困難というわけではありません。ここでは、最も一般的で分かりやすいMTR(地下鉄)とバスを使った行き方を、段階を追って詳しくご案内します。
ステップバイステップ!MTR東涌駅からバスを利用するルート
このルートは、香港市内から大澳に向かううえで最もポピュラーな方法です。初めての方でも戸惑わないよう、具体的な流れを丁寧に説明します。
ステップ1:MTRで東涌(Tung Chung)駅を目指す
まずはMTR東涌線(Tung Chung Line)に乗車し、終点の東涌駅を目指しましょう。香港駅や九龍駅から直通で乗れるため、乗り換えの手間はなく、約30〜40分で到着します。香港の交通系ICカードである「オクトパスカード(八達通)」を使えば、切符購入の手間が省け、非常にスムーズに乗車できます。車窓からは、都会の景色から緑豊かなランタオ島の自然へと変わっていく様子を楽しめます。
ステップ2:東涌駅バスターミナルへ移動
東涌駅に着いたら、改札を出てB出口へ向かいます。出口を出ると広場があり、その先に「東涌市中心巴士總站(Tung Chung Town Centre Bus Terminus)」という大きなバスターミナルが見えます。多くの路線バスが発着していますが、ここで大澳行きのバスを見つけることができます。
ステップ3:11番バスに乗る
バスターミナルで、「11」と表示されたバス乗り場を探しましょう。行き先表示に「大澳(Tai O)」と書かれているので、すぐに特定できるはずです。この路線は新大嶼山巴士(New Lantao Bus)が運行しています。週末や祝日は観光客で混雑し長い行列ができることもあるため、時間に余裕を持って行動することを推奨します。
ステップ4:バスで大澳へ向かう
バスに乗る際は、オクトパスカードを読み取り機にタッチするか、現金で支払います。現金の場合はお釣りが出ないので、小銭を用意しておくのが無難です。2024年5月時点での料金は平日がHK$11.8、休日(日曜・祝日)はHK$19.2です。料金は変更される可能性があるため、乗車前に最新情報を確認することをおすすめします。
バスに乗った後は、約50分の道のりです。最初は市街地を走り、後半は曲がりくねった山道を進みます。窓の外にはランタオ島の広大な自然や美しい海岸線が広がり、景色を満喫できます。乗り物酔いしやすい人は酔い止めの薬を持参すると安心です。終点の「大澳巴士總站(Tai O Bus Terminus)」で下車すれば、水上家屋の風情ある村に到着です。
週末や祝日は混雑に注意!効率よく楽しむポイント
大澳は香港の住民にも人気のレジャースポットであり、特に週末や祝日は東涌駅のバスターミナルで長い列ができ、バスに乗るまでに30分以上待つことも珍しくありません。また、大澳の村自体も多くの観光客で賑わいます。
可能であれば、平日に訪れるのが最もおすすめです。ゆったりとした村の雰囲気を存分に味わえます。週末にしか行けない場合は、午前中の早い時間帯、できれば午前10時前に東涌駅に到着するように計画しましょう。また、帰路のバスは夕方に最も混雑するため、少し早めに切り上げるか、夕日の時間を楽しんだ後に時間をずらして戻るなど工夫すると快適に移動できます。
昂坪360経由で大澳へ!天空からの絶景を楽しむルート
時間に余裕があり、ランタオ島の他の観光地もめぐりたい方には、昂坪(ゴンピン)を経由するルートが好評です。東涌からケーブルカー「昂坪360」に乗れば、約25分の空中散歩が楽しめます。
空中からは香港国際空港や南シナ海、雄大なランタオ島の山々を360度のパノラマビューで満喫できます。昂坪到着後は、世界最大級の屋外大仏「天壇大仏(ティンタンダイファッ)」や荘厳な「寶蓮禪寺(ポーリンジー)」をぜひ訪れてみてください。
昂坪観光の後は、昂坪バスターミナルから21番バスに乗って大澳へ向かいます。所要時間は約20分です。ケーブルカーと大仏観光を組み合わせれば、ランタオ島の自然と文化を一日でたっぷり楽しめる充実のプランになるでしょう。なお、昂坪360のチケットは週末に混雑するため、公式サイトで事前に予約することを強くおすすめします。
タクシーやフェリーという選択肢も
快適さや時間の短縮を重視するなら、タクシーの利用も選択肢の一つです。東涌駅からは青色の「大嶼山的士(ランタオタクシー)」が利用可能で、料金は約HK$200〜250、所要時間は約30分です。3~4人のグループなら、割り勘にすることで1人あたりの費用を抑えられます。
また、屯門(Tuen Mun)フェリーピアから大澳へ向かうフェリーも運航されており、約1時間の船旅が楽しめます。ただし便数が限られているため、事前に時刻表を確認しておくことが重要です。海上からランタオ島へ接近する景色は非常に美しく、旅の思い出を一層特別なものにしてくれるでしょう。
大澳でしたいこと5選!水上家屋の村を五感で楽しむ

さて、大澳に無事到着すると、さまざまな魅力的な体験が待ち受けています。ここでは、大澳を訪れたらぜひ体験してほしい、おすすめのアクティビティと見どころを厳選して5つご紹介します。
① ピンクイルカウォッチングツアーに参加する
大澳に訪れる観光客の多くが楽しみにしているのが、このピンクイルカウォッチングツアーです。正式には「シナウスイロイルカ」と呼ばれ、幸運を呼ぶとも言われる希少なイルカです。大澳のバス停から村の中心へ向かうと、「海豚(イルカ)」と書かれた看板を持ったツアー案内のおじさんやおばさんが声をかけてきます。
ツアーの参加方法と内容について
参加はとても簡単で、声をかけられたスタッフに料金を支払い、ボート乗り場へ案内してもらうだけです。料金はお手頃で、1人あたりHK$25〜30程度が相場となっています。予約不要で、人数が揃い次第出発します。
ツアーは約20分から30分ほど。まずは小型ボートに乗り、水路を巡りながら水上家屋の景色を間近に観賞します。地元の暮らしに触れる貴重な機会となります。その後、ボートは速度を上げて沖合のイルカ生息地へ向かいます。船長は経験を頼りにイルカの群れを探し、エンジンを止めて静かに海を見守る時間が訪れます。期待に胸が高鳴る瞬間です。
出会える確率と注意点
ピンクイルカは野生動物なので、必ずしも遭遇できるとは限りませんが、比較的高い確率で見られます。特に穏やかな晴天の日は見つけやすいと言われています。万が一出会えなくても、水上から眺める大澳の漁村風景や壮大な南シナ海の景色だけでも十分価値があります。小型ボートのため波しぶきがかかることもあるので、濡れてもよい服装や羽織るものがあると安心です。
② 水上家屋「棚屋」が立ち並ぶ路地を歩く
大澳の真髄を感じるには、棚屋が密集するエリアを実際に歩いてみるのがおすすめです。村の中心に架かる青い跳ね橋「新基大橋(Sun Ki Bridge)」は絶好の撮影ポイント。橋の上からは、水路の両岸に広がる棚屋群が一望できます。
橋を渡ったら、細い路地へ進んでみましょう。そこは迷路のような空間で、家々をつなぐ板張りの通路を歩くと、ギシギシと音が響き、水の上を歩いているような不思議な感覚に包まれます。
散策時のマナーと心得
ここで最も大切なのは、大澳が観光地であると同時に、人々の生活の場でもあることを常に心に留めておくことです。散策の際は次の点に注意しましょう。
- プライバシーの尊重: 住居をのぞき込んだり、許可なく住民の写真を撮ることは禁止です。
- 静かな行動: 大声を出したり騒いだりするのは避け、静かに散策を楽しみましょう。
- 道を譲る: 地元の方が通る際は、譲る配慮を忘れずに。
こうした配慮があれば、地元の方からも温かく迎えられます。時には軒先で作業するおじいさんや、井戸端会議を楽しむおばあさんと目が合い、微笑みかけてくれることも。そうしたさりげない交流が旅の忘れがたい思い出になるでしょう。
③ 大澳の名物ストリートフードを楽しむ
散策の途中でお腹が空いたら、大澳が誇るストリートフードを味わいましょう。マーケットストリートの吉慶街(Kat Hing Street)には、食欲をそそる屋台や食堂がたくさん並び、食べ歩きにもってこいの場所です。
- 炭火焼きの巨大イカ・エビ: 潮風を浴びながら食べる香ばしい炭火焼きシーフードは格別。甘辛いタレが食欲を刺激します。
- 大魚蛋(大型の魚のつみれ団子): 香港名物の魚蛋は大澳では特に大きく、プリッとした食感が特徴。カレー味やスパイシー味が人気です。
- 沙翁(サーヨン): 香港風の揚げドーナツで、外はサクサク中はふんわり。砂糖がまぶされた素朴な甘みが後を引きます。揚げたてがおすすめです。
- 炭火焼き鶏蛋仔(ガイダンジャイ): 香港の定番スイーツであるエッグワッフルを炭火で焼く店も。外側はカリッと、中はもちもちの食感とほのかな甘さが楽しめます。
- 豆腐花(ダウフーファー): なめらかな柔らかいおぼろ豆腐に甘いシロップやショウガシロップをかけたヘルシーデザート。散策の疲れを優しく癒します。
④ 乾物屋が並ぶマーケットストリートでお土産探し
大澳は漁村らしく、豊富な海産加工品が揃っています。吉慶街や石仔埗街(Shek Tsai Po Street)には数多くの乾物屋が軒を連ね、活気に溢れています。
店先には鯖や魚の塩漬けである鹹魚(ハムユイ)、干しエビ、干し貝柱、イカの干物などが山積みになっており、見て回るだけでも楽しめます。その中でも大澳の名物として知られる「蝦醬(ハージョン)」と「蝦膏(ハーゴウ)」は、小エビを発酵させたペースト状の調味料。強い香りが特徴ですが、野菜炒めやチャーハンに加えると驚くほど深みのある味わいになります。小瓶入りで販売されているため、お土産にも最適。勇気を出して、本場の味を日本へ持ち帰ってみるのもいいでしょう。
⑤ 大澳文物酒店(タイオー・ヘリテージ・ホテル)で優雅なひとときを
村の散策の後は、少し足を伸ばして丘の上にある「大澳文物酒店(タイオー・ヘリテージ・ホテル)」を訪れてみてください。こちらは1902年に建てられた旧大澳警察署をリノベーションしたブティックホテルで、コロニアル様式の美しい白亜の建物は歴史的建造物(グレード2)に指定され、そのクラシカルな雰囲気は必見です。
宿泊せずとも、ホテル内のレストラン「Tai O Lookout」を利用できます。ガラス張りの店内からは大澳の海を一望でき、素晴らしい景観を眺めながら食事やアフタヌーンティーを楽しむことが可能です。大澳名物の蝦醬を使った特製チャーハンなど、ここならではのメニューもあり、散策の締めくくりに歴史的な空間でゆったりとした時間を過ごすのもおすすめです。
大澳観光のモデルプラン!半日でのんびり満喫コース
どこから巡ればよいか迷っている方に向けて、大澳の魅力を効率よく満喫できる半日モデルコースをご提案します。ご自身の好みに合わせてアレンジの参考にしてみてください。
- 11:00 MTR東涌駅到着
B出口からバスターミナルへ向かい、11番バスに乗車しましょう。早めに到着してバス待ち列の前の方に並んでおくと、座席を確保しやすくなります。
- 12:00 大澳バスターミナル着
まずは腹ごしらえ。村の中心にある食堂で、新鮮な海産物を使った海鮮チャーハンや麺類を召し上がれ。ここでしか味わえない絶品のランチをお楽しみください。
- 13:00 ピンクドルフィンウォッチングツアーに参加
食後は小型ボートに乗り込み、水上から棚屋の景色を眺めつつ、幸運を呼ぶピンクドルフィンとの出会いを期待しましょう。
- 13:30 棚屋地区を散策&食べ歩き
ツアー終了後は大澳の象徴である棚屋が立ち並ぶ路地を散策。青い跳ね橋からの眺めを写真に収め、迷路のような小道を探検します。途中、炭火焼きの鶏蛋仔や大ぶりの魚蛋など、地元の人気ストリートフードをつまみながら歩きましょう。
- 15:00 マーケット通りでお土産探し
吉慶街へ戻り、活気ある乾物屋を覗きます。名産の蝦醤や美味しい海産物の干物など、個性的なお土産探しにぴったりのスポットです。
- 16:00 バスで東涌へ戻る
楽しい大澳散策はそろそろ終了。帰りのバスが混み始める前にバスターミナルへ向かい、夕暮れのランタオ島の風景を楽しみながら東涌駅へ戻ります。
このプランであれば、香港の中心部に夕方ごろには戻れます。時間に余裕がある場合は、大澳文物酒店でゆったりお茶をしたり、近くのビーチで夕日を眺めたりするのもおすすめです。
大澳旅行の前に知っておきたい!準備と注意点

快適かつ安全に大澳を訪れるために、事前に押さえておきたい準備事項や注意点をまとめました。しっかり準備を整えて、心ゆくまで旅を満喫しましょう。
持ち物と準備のポイント
大澳の散策を存分に楽しむためにおすすめの持ち物リストです。
- 歩きやすい靴: 町中は石畳や階段、木の板敷きの道が多いため、スニーカーやフラットシューズのような歩きやすい靴が必須です。
- 日焼け対策グッズ: 大澳は日陰があまり多くないため、特に晴れの日は帽子やサングラス、日焼け止めクリームの用意が欠かせません。
- 虫よけスプレー: 水辺や緑豊かな場所なので、特に夏場は蚊に刺されやすいです。虫よけスプレーを持参すると安心です。
- 現金: 小規模な屋台や乾物屋ではカード決済が利用できない場合が多いので、食事やお土産のためにある程度の香港ドル現金を用意しておきましょう。
- オクトパスカード: MTRやバスの支払いに非常に便利です。事前にチャージ残高を確認しておくとスムーズです。
- 飲料水: 散策中は喉が渇きやすいので、ペットボトルの水やお茶を持参すると良いでしょう。もちろん現地でも購入可能です。
- カメラとモバイルバッテリー: 絵になる風景が多いので写真をたくさん撮りたくなります。スマホの電池切れに備えてモバイルバッテリーを持っておくと安心です。
- ウェットティッシュ: ストリートフードを食べ歩く際に手が汚れることがあるので、携帯しておくと便利です。
服装について
特に決まった服装ルールはありませんが、動きやすく体温調節しやすいカジュアルな服装をおすすめします。夏は非常に蒸し暑くなるため通気性の良い服が適しています。冬は海風が冷たく感じることもあるため、薄手のジャケットや羽織るものを用意すると良いでしょう。寺院を訪れる場合には、露出の多い服は避けるのが無難です。
禁止事項と守るべきマナー
大澳は地元の人々の暮らしの場です。観光客として訪れる際は、以下の点を心がけましょう。
- 住民のプライバシーを尊重する。
- ゴミは指定されたゴミ箱に捨てるか、持ち帰る。
- 静かな環境を保つよう心掛ける。
これらの基本的なマナーを守ることで、この美しい村の風景や文化を未来へと引き継ぐことができます。
トラブル発生時の対処法
万が一のトラブルに備えて、対応方法を把握しておくと安心です。
- 迷子になった場合: 大澳の路地は複雑ですが、村自体はそれほど広くありません。メインストリートである吉慶街やバス停方向を目指せば迷いにくいです。わからなくなった際は躊躇せず地元の人に尋ねてみましょう。「巴士站(バスターミナル)?」と言いながら地図を見せると親切に教えてくれます。
- 帰りのバスを逃した場合: バスは頻繁に運行していますが、最終バスの時刻は新大嶼山巴士の公式サイトなどで事前に確認しましょう。乗り遅れた場合はタクシー利用が必要ですが、夜間はタクシーがつかまりにくいこともあるため、早めの行動を心掛けてください。
- 体調が悪くなった場合: 夏は熱中症のリスクがあるため、めまいや吐き気を感じたときは無理せず、日陰や冷房の効いた場所で休み、水分補給をしてください。症状が改善しない場合は、周りの人に助けを求めましょう。
もっと深く知る大澳!歴史と文化に触れる
大澳の魅力は、その美しい風景だけに留まりません。豊かな歴史や文化の背景を知ることで、旅の深みが一層増していきます。
塩田から漁業へと移り変わる大澳の歴史
意外かもしれませんが、大澳の歴史は塩の生産からスタートしました。宋代には、この地に広大な塩田が広がり、生み出された塩は中国各地へと運ばれていました。大澳の入り江は、塩を運搬する船の停泊地として栄えたほか、密輸の重要な拠点でもありました。しかし時代の流れとともに塩田は次第に衰退し、人々は漁業へと生業を変えていきました。そして、水上生活者である蛋民がこの地に根を下ろし、現在の棚屋が並ぶ漁村の原型が形作られたのです。村内にある古い寺院などを訪ねると、塩業で繁栄した時代の名残を見つけられるかもしれません。
端午節に開催される「龍舟競渡(ドラゴンボートレース)」
大澳で最も賑わいを見せるのが、毎年旧暦の5月5日に行われる「端午節(ドラゴンボートフェスティバル)」です。この日は「龍舟競渡」と呼ばれる伝統的なドラゴンボートレースが大澳の地で繰り広げられます。この祭りの特徴は、ただの競争ではないという点にあります。漁業組合のメンバーたちが、自分たちの守護神の像をボートに乗せ、棚屋が立ち並ぶ水路を巡りながら家々の安全を祈願する神聖な儀式が執り行われるのです。この伝統は百年以上の歴史を誇り、国の重要無形文化財にも指定されています。もしこの時期に訪れることができれば、鮮やかなドラゴンボートが水路を激しく駆け抜ける迫力満点の光景を目にすることができるでしょう。祭りの詳細については、香港政府観光局の公式サイトでも紹介されています。
大澳の魅力を未来へ繋ぐために

高層ビルが次々と建ち並び、激しく変貌を遂げる香港の中で、大澳のような場所は非常に貴重な存在と言えます。伝統的な生活様式を守りつつも、観光客を温かく迎えるこの村の姿は、私たちに本当の豊かさとは何かを改めて考えさせてくれます。
水上に浮かぶ家屋や潮の香り、そして人々の笑顔。大澳で過ごすひとときは、きっと香港旅行の中でも特に印象深い思い出になるでしょう。都会の喧騒を離れ、心が洗われるような穏やかな時間を味わうために、ぜひ一度この「香港の原風景」を訪れてみてください。そして訪れる際には、この素晴らしい文化と環境に敬意を払い、責任ある旅行者としての行動を心がけることが、大澳の魅力を未来へと受け継いでいく大切な一歩となるのです。

