中国旅行では、AlipayとWeChat Payが必須のキャッシュレス決済手段です。国際クレジットカードをアプリに直接紐付け、パスポートで実名認証を済ませましょう。2026年からは外国人ユーザーの取引上限が大幅に緩和され、現金受け取りも義務化されましたが、少額の現金も持参すると安心です。スムーズな決済と通信のために、eSIMの準備も推奨されます。
かつて世界一の現金大国だった中国が、わずか10年で世界最先端のキャッシュレス社会に変貌した。北京の屋台、上海の地下鉄、深センのタクシー、成都の朝粥屋――どこへ行ってもQRコードが先に提示される国で、現金しか持っていない日本人旅行者は静かに行列を止めてしまうことがある。逆にスマホ1台でAlipay(支付宝)かWeChat Pay(微信支付)が動けば、両替所の長蛇の列も、釣銭の偽札リスクも、英語の通じないやり取りも、すべて回避できる。
本ガイドは2026年5月時点の最新情報をもとに、日本人旅行者が中国でキャッシュレス決済を使いこなすための実務をまとめたものだ。観光客向けに2023年まで提供されていた「Alipay Tour Pass(旅行通)」がすでに廃止されている点、2026年から外国人ユーザーの取引上限が大幅に緩和された点、2026年2月1日から中国国内の店舗に現金受け取り義務が課された点など、ここ1年で前提が変わった重要トピックを織り込んでいる。
結論を先に置いておくと、現状ベストの組み合わせは「Alipay+WeChat Payの両方をパスポートで実名登録し、国際カード(Visa/Mastercard/JCB)を直接バインディング、念のため200〜500元程度の現金を保険で持つ」という形になる。さらに、中長期で滞在する人や決済上限を頻繁に超えそうな人は、第三の選択肢としてBank of ShanghaiのTour Cardをチャージしておくと安心感が増す。各サービスの使い方と落とし穴を順に整理していく。
中国キャッシュレス決済 2026年版 早見表
| 項目 | Alipay(支付宝) | WeChat Pay(微信支付) | Tour Card |
|---|---|---|---|
| 運営 | アント・グループ | テンセント | 上海銀行 |
| 必要書類 | パスポート+電話番号 | パスポート+電話番号+紹介者推奨 | パスポート(18歳以上) |
| 連携可能カード | Visa/MC/JCB/AMEX/Diners/Discover | Visa/MC/JCB/AMEX/Diners/Discover | Visa/MC/JCB/Diners |
| 1回あたり上限 | 5,000USD(実名認証後) | 6,000元相当 | 残高分(最大5万元) |
| 200元未満の手数料 | 無料 | 無料 | 無料 |
| 200元超の手数料 | 3%(カード会社請求) | 3%(カード会社請求) | 無料 |
| 月間累計上限 | 5万元相当 | 5万元相当 | 有効期間内で5万元 |
| 年間累計上限 | 6万元相当 | 6万元相当 | 1年間で5万元 |
| 地下鉄乗車 | 対応(乗車コード) | 対応(乗車コード) | 非対応 |
| タクシー(DiDi) | 対応 | 対応 | 非対応 |
| SMS認証用電話 | 日本番号で可 | 日本番号で可 | 日本番号で可 |
| 2026年2月以降の現金 | 全店舗で現金受け取りが義務化(補助手段として有効) | ||
2026年に押さえるべき3つの大変化
Alipay Tour Pass(旅行通)の廃止と直接バインディング方式の浸透
2019年から外国人旅行者向けに提供されてきたAlipay Tour Passは、2023年9月にサービスを終了した。これは中国国内のキャッシュレス決済に外国人を取り込むための「事前チャージ式プリペイド」で、Bank of Shanghaiが発行・運用していた。代替策として現在広がっているのが、Alipayアプリ本体に国際クレジットカード(Visa/Mastercard/JCBなど)を直接バインディングする方式である。事前チャージ不要で、決済のたびに紐付いたカードから自動的に引き落とされる仕組みだ。古いブログ記事を見ると今もTour Pass前提で書かれているものが多いが、2026年時点ではこの方式は使えない。
外国人ユーザーの取引上限が5,000USDに緩和
2026年に入ってから、Alipay側で外国人ユーザーの実名認証フロー強化と引き換えに、1取引あたりの上限が5,000米ドル相当(約75万円)に大幅引き上げされた。それまでの2,000米ドル制限が解除されたことで、ホテルのデポジット、家電量販店での大型買い物、医療機関での会計など、これまで国際カード直接決済に頼らざるを得なかった高額場面でもAlipayが機能する。実名認証はパスポート画像のアップロードと、顔認証(リアルタイム動画)の2段階で行われる。
2026年2月1日から店舗の現金受け取りが義務化
意外に知られていないが、2026年2月1日から中国人民銀行の規定によって、国内のすべての実店舗に対し人民元現金の受け取りが義務付けられた。背景にはキャッシュレス化が極端に進みすぎたことで、高齢者や外国人観光客が「現金しか持っていないと買い物できない」という状況が社会問題化していた経緯がある。これにより、2025年までは「現金不可」を堂々と掲げていた屋台やローカル食堂でも、現金支払いを断れなくなった。とはいえ釣銭が用意されていないケースは依然多いため、補助手段としての位置付けが現実的である。
Alipay(支付宝)の準備手順
日本出発前にApp StoreまたはGoogle PlayからAlipayアプリ(提供元:Alipay Singapore E-commerce Pte. Ltd.)をダウンロードする。新規登録時に「+81」を選択して日本の携帯電話番号を入力すれば、SMS認証で日本のSIMでも問題なく進む。アカウント作成後、トップ画面の「Add Bank Card」でVisa/Mastercard/JCB/AMEX/Diners/Discoverのいずれかを登録する。カード番号、有効期限、CVV、3Dセキュア認証の流れは日本のECサイトとほぼ同じだ。
続いて「Tour Mode」または「ホーム画面」から実名認証(Real-Name Verification)に進む。パスポート顔写真ページの撮影、現住所の入力、リアルタイム顔認証の3点で完結する。完了するまで最大24時間かかる場合があるため、出発の2〜3日前には済ませておきたい。実名認証が完了すると、1回あたり5,000USDの上限と、月5万元・年6万元の累計上限が適用される。
支払い時の操作は2パターンある。1つは店舗のレジに表示されたQRコードを自分のアプリで読み取る「スキャン支払い」。もう1つは自分のアプリ内に表示されるバーコードを店員に読み取ってもらう「提示支払い」だ。前者は屋台やコンビニなど少額取引で多用され、後者はチェーン系レストランやスーパーで使われる傾向がある。どちらの方式でも、200元未満の取引なら手数料はかからない。200元以上の取引には3%の処理手数料が紐付いたカード側に上乗せ請求される。
WeChat Pay(微信支付)の準備手順
WeChat(微信)は中国国内の生活アプリで、決済機能(WeChat Pay)はその一部として提供される。アプリのダウンロードと電話番号登録までは日本でも問題なく進むが、新規アカウントは「中国国内に既にアカウントを持つ友人による知人認証」を求められる場合がある点が、Alipayとの大きな違いだ。中国に知人がいない場合は、出発前に日本国内の華人コミュニティや旅行代理店経由で認証協力を得るか、現地で初日にツアーガイドにお願いするのが現実的なルートになる。
アカウントが有効化されたら、ウォレットメニューから国際クレジットカードをバインドする。手続きはAlipayとほぼ同じで、Visa/Mastercard/JCB/AMEX/Diners/Discoverに対応する。決済画面の操作も「スキャン」「提示」の2方式があり、200元未満は手数料無料、200元超は3%手数料という条件もAlipayと共通だ。WeChat Payの強みは、中小規模の屋台や個人経営の店舗で「Alipayよりも普及率がやや高い」点で、特に四川省や雲南省など内陸部の地方都市ではWeChat Payのみ受け付ける店舗が一定数残っている。両アプリを併用しておくと、地方でも現金が必要になる場面が大きく減る。
WeChat自体はメッセージ・通話・モーメンツ(SNS)・ミニプログラム(簡易アプリ)が統合されたスーパーアプリで、中国の現地友人との連絡や、レストラン予約、配車(DiDi)連携にも欠かせない。決済機能だけ使う前提でも、滞在中はLINEより圧倒的にWeChatを開く時間が長くなることを想定しておきたい。
第3の選択肢:Bank of Shanghai Tour Card
Alipay Tour Passの廃止後、上海銀行(Bank of Shanghai)が新たに展開しているのがTour Cardという名のプリペイド型サービスである。香港・マカオ・台湾を含む海外居住者で18歳以上が対象で、Visa/Mastercard/JCB/Diners International対応。アプリ経由でチャージし、有効期間1年以内の累計上限は5万元(約100万円)まで。最大の特徴は、200元超の取引でも3%手数料がかからない点で、ホテルや家電など高額決済を多用する旅行者には実質的な節約効果が大きい。
使い方はAlipay/WeChat Payとほぼ同じで、QRコード方式で支払う。地下鉄やDiDiタクシーのように「アプリ内ミニプログラム」を経由する場面では未対応のシーンが残るため、メイン決済はAlipayかWeChat Pay、Tour Cardは高額決済時のサブ決済として運用するハイブリッド構成が落としどころになる。空港到着時のホテル送迎、初日のホテルチェックイン時のデポジット、観光地の入場券一括購入など、200元を一度に超えそうな場面で切り替える運用が分かりやすい。
シーン別決済シミュレーション
空港到着〜市内移動
到着空港のSIMカウンターやWi-Fiレンタル、配車サービスの清算は、すべてAlipayかWeChat Payで完結する。空港鉄道の券売機もQRコードに対応しているケースが多い。上海浦東や北京大興のような大型ハブ空港は、ターミナル構造とトランジット手続きが複雑なので、出発前に上海浦東国際空港(PVG)の喫煙所完全ガイドや北京大興国際空港(PKX)の喫煙所完全ガイドで全体像を押さえておくと、到着初日の動線が一気にクリアになる。
地下鉄・タクシー・DiDi
北京・上海・広州・深セン・成都など主要都市の地下鉄は、改札にAlipay/WeChat Payの「乗車コード(Transport Code)」をかざすだけで自動精算される。事前のチャージや切符購入が一切不要で、降車時に運賃が確定する仕組みだ。タクシーはDiDi(滴滴出行)アプリを介して呼ぶケースが大半で、決済はAlipay/WeChat Pay経由で完結する。流しのタクシーを拾った場合も、運転席背面のQRコードをスキャンする支払い方式が標準化している。
レストラン・コンビニ・屋台
中華レストランでの会計は、テーブルのQRコードを読み取って自分のスマホで注文・決済まで完結する「セルフオーダー」が増えている。スタッフを呼んで注文する従来型の店でも、会計時はQRコード決済が標準だ。コンビニ(ファミリーマート、セブンイレブンなど)はAlipay/WeChat Pay/銀聯/VISA/Mastercardのいずれも受け付ける場合が多いが、屋台や小規模食堂はQR決済のみのケースが目立つ。2026年2月以降は現金受け取り義務があるため、最終手段として現金は通用するが、釣銭の用意がないため細かい紙幣を準備しておくと安心だ。
観光地のチケット購入
万里の長城、故宮、外灘、西湖、九寨溝など主要観光地は、入場券のオンライン事前予約が一般化している。WeChatのミニプログラムやTrip.comからチケットを購入し、QRコードを当日提示する流れだ。ピーク時は当日券が売り切れることも多く、早朝6時の予約開放と同時にスマホで取得する運用に切り替わっている。観光ビザの最新動向は中国、ビザなし渡航で観光客は増加も完全回復には道半ばに整理してあるので、入国準備と合わせて確認したい。
手数料・上限・為替の最新ルール
手数料の構造は2026年5月時点で「200元(約4,000円)未満は無料、200元以上は決済額の3%」が原則だ。手数料はAlipay/WeChat Pay側でなく、紐付けたクレジットカードの利用明細に上乗せされる。Visa/Mastercardの3%は「海外利用の事務手数料」と紛らわしいため、明細を見るとどちらの料金か判別しづらい。月末の請求でまとめて確認すると、想定より2〜5%高い印象を受けることがある。これは仕様であり、不正利用ではない点を覚えておきたい。
累計上限は1回6,000元(約12万円)、月5万元(約100万円)、年6万元(約120万円)相当が外国人ユーザーの目安だ。実名認証完了済みのAlipayは1回5,000USD(約75万円)まで引き上がるが、月・年の累計枠は変わらない。1週間で2万元を超える買い物予定がある旅行者は、Tour Cardを併用するか、現金・国際カード直接決済を組み合わせて分散する設計を考えたい。
為替レートはAlipay/WeChat Pay側がリアルタイムレートを表示する。日本円のクレジットカードを紐付けた場合、決済時にAlipay表示の人民元レート→カード会社のドル換算レート→日本円への二段階変換が発生するケースもあり、最終的に日本円で確定する金額は決済後に明細で確認するのが確実である。為替差を最小化したい人は、JCB1枚ではなくVisa/Mastercardを並行登録し、レートが安い方で決済するという運用も成り立つ。同じトピックの別アプローチとして海外旅行でのPayPay活用術もチェックしておくと、各国の決済選択肢を相対化できる。
トラブル対応:決済できない時の3つの手段
1つ目は通信問題。AlipayもWeChat Payも、決済時のQR読み取り・サーバー認証にインターネット接続を必須とする。地下鉄構内、地下街のフードコート、地方都市のレストランなど電波が弱いエリアではアプリが固まる場面がある。出発前に高速・低遅延のeSIMを準備し、現地SIMの差し替えなしですぐ通信できる状態にしておくと、決済タイミングでの通信切れを防げる。
2つ目は本人認証エラー。リアルタイム顔認証は照明条件と角度に敏感で、夜のホテルの薄暗い照明下では失敗が連発することがある。明るい場所で前髪を上げ、メガネを外して再試行するのが基本対応。それでも通らない場合は、アプリ右上のサポートチャットから人手対応を依頼すると、24時間以内に応答が返ってくることが多い。
3つ目はカード側のロック。普段使わない海外取引が連続で発生すると、日本のカード会社側で「不正利用の疑い」として一時的に取引停止がかかる場合がある。出発前にカード会社のアプリで「中国旅行予定」を申告するか、海外利用通知メールが届いたタイミングで「自分の取引である」と返信できる準備をしておきたい。最終手段として人民元現金が役立つので、空港到着時に1〜2万円相当を両替しておくと心理的余裕が生まれる。
通信環境の重要性:eSIMで滞在中ずっと安定接続
中国は世界最大のグレートファイアウォールを敷く国で、Google/LINE/Instagram/Twitter/Facebookは中国本土のネットワークから直接アクセスできない。AlipayとWeChat Pay自体は問題なく使えるが、地図検索(Google Maps)、翻訳(Google Translate)、SNSの利用には日本やシンガポール経由のローミング接続が必要になる。日本のeSIM(または国際ローミングプラン)を使うと、グレートファイアウォールを回避してこれらの主要サービスに接続できる仕組みだ。
SIM物理カードの差し替えは、空港到着後に現地通信会社と契約する手間とパスポート登録が必要で、初日の30〜60分を消費しがちだ。eSIMなら出発前にプロファイルをスマホに入れておけるので、着陸後すぐに通信が立ち上がり、入国審査の列でWeChatの認証メッセージや家族へのチャットが即座に処理できる。Alipay/WeChat Payの実名認証フローもネット接続が前提なので、ここで詰まらないようにする意味でも、eSIMの事前準備は決済設定とセットで考えたい。
FAQ:中国キャッシュレス決済でよくある質問
Q1. クレジットカード(Visa/Mastercard)だけで旅行できる?
5つ星ホテル、空港免税店、観光客向け大型レストランなど一部では国際カード直接決済が通用する。ただしローカル食堂、屋台、地下鉄、タクシー、コンビニの大半はカード決済に対応していない。実用上、Alipay/WeChat Payの併用なしでは旅行体験が大きく損なわれる。
Q2. PayPayは中国で使える?
2026年5月時点でPayPayは中国本土に未対応。香港やシンガポールなど一部地域では現地パートナーとの提携で利用できるが、上海・北京などでは加盟店が存在しない。中国向けにはAlipayもしくはWeChat Payを直接使う必要がある。
Q3. デジタル人民元(e-CNY)は観光客も使える?
2025年から海外パスポートでの登録が一部都市で開放された。北京・上海・成都など指定エリアの加盟店であれば、Alipayと同様のQRコード方式で決済できる。ただし加盟店数はまだ限定的で、観光客が積極的に使うメリットはAlipay/WeChat Payが使える状況下では限定的である。
Q4. 子連れ旅行で子どものスマホがない場合は?
未成年は本人名義のAlipay/WeChat Payを開設できないため、保護者のアプリで決済する運用になる。家族全員分のホテルチェックイン、レストラン会計、観光地チケットを代表者1人がまとめて支払い、家族間で立て替え精算する形が現実的だ。
Q5. 中国でのタバコ購入もキャッシュレスで完結する?
コンビニやスーパーでの紙巻きタバコ購入はQRコード決済で問題なく完結する。ただしIQOSなど加熱式タバコは中国では正規流通していない。喫煙ルール全般の最新事情は激変する中国の煙事情!愛煙家が知るべき最新喫煙ルール完全ガイドを参照してほしい。
参考・公式情報リンク
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中国旅行はスマホが財布・地図・通訳・予約端末をすべて兼ねる。Alipay/WeChat Payの実名認証も、地下鉄の乗車コードも、Google Mapsで万里の長城までのルートを引くのも、すべてが安定した通信回線の上で初めて成立する。物理SIMの差し替えは到着初日の60分を奪い、空港Wi-Fiの混雑は決済認証中にタイムアウトを呼ぶ。日本出発前にプロファイルだけ入れておける Coral eSIM を使えば、PVG/PEK/CAN着陸の瞬間からモバイル通信が立ち上がり、地下鉄のQR、ホテルのチェックイン、家族とのWeChat連絡まで一気通貫で動く。Alipay手数料3%と同じ感覚で備える、安心感の保険として持っておきたい1枚だ。

