日々、目まぐるしく移り変わる東京の景色と、分刻みのスケジュール。アパレルの仕事は刺激的で大好きだけれど、時々ふっと、すべてから解放されて、時間の流れが止まったかのような場所へ旅に出たくなります。そんな思いに駆られて今回私が選んだのは、アジアの喧騒のイメージとは少し違う、穏やかで美しい国、バングラデシュ。その中でも特に心惹かれたのが、南部に広がる「水の都」バリシャルでした。
ガンジス川(現地名:ポッダ川)がもたらす豊かな水に抱かれたこのデルタ地帯は、無数の川と運河が網の目のように走り、人々の暮らしと深く結びついています。かつては「東洋のヴェネツィア」とも称されたその風景は、きっと私たちが忘れかけていた何かを思い出させてくれるはず。首都ダッカから、伝説の蒸気船「ロケットスチーマー」に揺られて向かう、情緒あふれる旅の始まりです。この記事が、あなたの次なる冒険心をくすぐる一助となれば嬉しいです。
旅のハイライトは移動そのもの。伝説の蒸気船「ロケットスチーマー」の旅路

バリシャルへの旅は、目的地に到着する以前からすでに始まっています。むしろ、目的地に至るまでの道中こそが、この旅の最大の魅力と言っても過言ではありません。首都ダッカからバリシャルへ向かう最も風情ある交通手段は、外輪船、通称「ロケットスチーマー」です。
英国植民地時代の名残を伝える、生きる歴史遺産
勇ましい名前で知られる「ロケットスチーマー」は、正式名称を外輪船(Paddle Steamer)といいます。船体の両側に取り付けられた大きな水車(外輪)を動力にして進むこの船は、20世紀初頭の英国植民地時代に建造されました。もともとは郵便物や貨物を迅速に運ぶ目的で使用され、そのスピードの速さから「ロケット」と呼ばれるようになったそうです。
現在では数隻しか現存していませんが、そのクラシックで優美な姿はまさに「生きた遺産」と呼ぶにふさわしいものです。木製の甲板に真鍮の手すり、アンティークな調度品が並ぶ船内は、まるでアガサ・クリスティの推理小説の舞台へ迷い込んだかのような趣があります。夜のブリゴンガ川を「ゴウン、ゴウン」と重厚なエンジン音を響かせ、「パシャーン、パシャーン」と水を切る音が漂う中、船はゆったりと進み、旅情をかき立てられます。
チケットの予約から乗船まで、知っておきたいポイント
この特別な船旅を楽しむには、事前の準備が欠かせません。特に快適な個室キャビンを確保するためには、早めの予約が望ましいです。
チケットの種類と選び方
ロケットスチーマーの座席は、大きく分けていくつかのクラスに分類されます。
- ファーストクラス(1等): エアコン完備の個室キャビンで、ベッドや洗面台が備えられています。プライベートな空間で静かに過ごせるほか、キャビン前には専用のデッキもあり、椅子に座りながら川の流れをゆったり眺められます。長時間の船旅となるため、特に女性や大きな荷物がある方にはファーストクラスの利用を強くおすすめします。
- セカンドクラス(2等): 個室キャビンですがエアコンはなく、ファンのみ。ファーストクラスより若干狭くなりますが、プライバシーはしっかり守られます。
- デッキクラス: 最も安価なクラスで、座席指定はなく、広い甲板(デッキ)の好きな場所に敷物を敷いて過ごす形式です。現地の多くの人々が利用しており、バングラデシュの日常を身近に感じられますが、防犯面や夜間の冷え込みを考慮すると、特に女性の一人旅にはあまり推奨できません。
チケットの購入方法
チケットの入手方法は主に2通りあります。
- オンライン予約: バングラデシュ内陸水運公社(BIWTC)が運営する公式オンライン予約システムを利用するのが最も確実です。BIWTC公式e-ticketingサイトでは空席の確認から決済まで可能です。ただし、英語表記であることや国外発行のクレジットカードが使えない場合もあるなど、使い勝手は若干複雑です。何度か試してうまくいかない場合は、下記の方法を検討しましょう。
- 窓口・旅行代理店で購入: ダッカのショドルガット(Sadarghat)船着き場にあるBIWTCの窓口で直接購入する方法です。ただし、常に混雑しているうえ、英語が通じにくいことも多いです。よりスムーズなのは、ダッカ市内の旅行代理店に手配を依頼すること。多少の手数料はかかりますが、電話やメールでやり取りができ、確実にチケットを確保してもらえるので安心です。
私の場合は、出発の約1週間前にダッカの旅行代理店へメールを送り、ファーストクラスのキャビンを予約しました。パスポートのコピーを送付し、指定された口座へ料金を振り込むか、ホテルで現金払いをするという流れでした。
船上で過ごす一夜。心に残る川の眺め
夕暮れどき、ダッカのショドルガットは人々や船、リキシャで大変な賑わいを見せていました。その中で真っ白に輝くロケットスチーマーの姿を見つけた時の高揚感はいまも鮮明に覚えています。
キャビンに荷物を置き、出航の合図を待ちます。汽笛が響き、船がゆっくりと岸を離れると、ダッカの街の灯りが次第に遠ざかっていきました。ファーストクラスのデッキに出ると、心地よい夜風が頬をなでていきます。
船内には食堂があり、温かい食事を楽しめます。メニューは主にベンガル料理で、魚のカレー(マチェル・ジョル)や豆のスープ(ダル)、ご飯などを注文しました。揺れる船内で味わう素朴な料理は、一層格別に感じられました。
夜が深まるにつれて、川は静寂に包まれます。デッキの椅子に腰掛け、満天の星空や時折すれ違う小さな漁船の灯りを見つめていると、日常の悩みがどこか遠くへ消えてしまうかのようです。キャビンのベッドはやや硬めですが、優しい揺れに身を任せるうちに自然と眠りにつきました。
旅のクライマックスは夜明けです。東の空がうっすらと明るくなり、川面はオレンジ色に染まっていきます。その景色は、言葉を失うほどの美しさでした。川辺の村では、人々が水浴びしたり洗濯をしたりと新たな一日を迎えており、その生命力あふれる光景を眺めながら熱いチャ(ミルクティー)をすする時間は、何物にも代え難い贅沢なひとときでした。
約12〜15時間の船旅の後、船は早朝にバリシャル港へ到着します。ただの移動手段にとどまらず、それ自体が忘れがたい体験となるロケットスチーマーの旅。バリシャルを訪れる際は、ぜひこのクラシカルで魅力的な船旅を選んでみてください。
水と共に生きる人々。バリシャルの見どころを巡る
長い船旅を終えてたどり着いたバリシャルは、ダッカの賑やかさがまるで嘘のように、静かで緑豊かな街でした。ここでの観光は、有名な観光スポットを次々と訪れるよりも、リキシャや小舟に揺られながら水辺の生活や風景に溶け込むような過ごし方が似合います。
今回は日本でガイドもしているシーシさんにバリシャルを紹介してもらいました。シーシさんは日本語もペラペラ、やり手のガイドです。Mr.Shish↓

活気に満ちた水上の市場「フローティングマーケット」
バリシャルを訪れるなら、近郊の村で開催される水上マーケットは欠かせません。中でも有名なのが、バンナルパラ(Banaripara)周辺のグアバマーケットです。モンスーンシーズン(6月〜8月頃)がピークで、収穫されたばかりの大量のグアバを積んだ小舟が運河を埋め尽くす光景は圧巻の一言です。
私が訪れたのは乾季でしたが、グアバ以外にも野菜や米、日用品などを売る水上マーケットが開催されていました。バリシャル市内からはリキシャとボートを乗り継いで向かいます。
水上マーケットへの行き方と楽しみ方
- アクセス方法: 市の中心からCNG(三輪タクシー)やリキシャで船着き場へ向かい、そこからエンジン付きボートをチャーターするのが一般的です。料金は交渉制なので、出発前にドライバーとマーケットの場所、所要時間、運賃をしっかり確認しましょう。相場は数時間のチャーターで1500〜2500タカ(約2,000〜3,500円)ほどですが、時期や交渉によって変わります。多少高くても、安全面を考慮して信頼できるドライバーを選ぶのが安心です。
- 訪れるのに最適な時間帯: マーケットは早朝から午前中にかけて最も活気があります。新鮮な商品を手に入れたいなら、朝早く出かけるのがおすすめです。
- 服装と持ち物: ボートに乗る際は水しぶきがかかることもあるため、濡れてもよい服装と滑りにくいサンダルがおすすめです。強い日差しを避けるため、帽子やサングラス、日焼け止めも忘れずに。マーケットでは現金取引が主なので、小額紙幣を多めに用意すると支払いがスムーズです。
狭い運河をボートで進むと、色鮮やかな野菜を山積みにした小舟が行き交う活気あるエリアに到着しました。売り手と買い手の交渉や、子どもたちのはしゃぐ声が響き渡ります。水上では、野菜だけでなくお茶や軽食を売る小舟も巡っており、水上のカフェテリアのような雰囲気です。
私も熱いチャイを注文し、ボートの上でゆっくりすすりながら活気に満ちた様子を眺めました。言葉が通じなくても、カメラを向けると満面の笑みを返してくれるおじさんや、恥ずかしそうに手を振る子どもたち。人々の素朴な笑顔に触れて、心がじんわり温かくなりました。ここには私たちの日常とはまったく異なるけれど、力強くて豊かな時間が流れていたのです。
歴史を感じる美しい建築物
穏やかな水辺の風景だけでなく、バリシャルには訪れる価値のある歴史的な建築物も多く点在しています。
グティア・モスク(Guthia Mosque)
バリシャル郊外に位置する、比較的新しいながらも壮麗なモスクです。世界各地の著名なモスクのデザインを取り入れて造られたとされ、その白亜の美しい姿はタージ・マハルを彷彿とさせます。広大な敷地内には池や庭園も整備されており、地元の人々の憩いの場にもなっています。特に、夜間にライトアップされた姿は幻想的で、ぜひ一見の価値があります。
- 訪問時の注意: モスクは神聖な祈りの場所です。訪問の際は服装に充分配慮しましょう。女性は髪をスカーフやショールで覆い、手首と足首まで隠れる長袖・長ズボン、またはロングスカートを着用してください。身体のラインが強調されるタイトな服装は避けるべきです。男性も半ズボンは控えましょう。入口で靴を脱ぐため、着脱しやすい靴が便利です。
オックスフォード・ミッション教会(Oxford Mission Church)
1903年創建の美しい赤レンガ造りの教会で、アジアで2番目に大きな教会とも言われています。英国国教会の宣教師たちが設立し、ゴシック様式の建築は非常に見応えがあります。静かで厳かな礼拝堂には、ステンドグラスから差し込む光が美しく、心が洗われるような空間を作り出しています。イスラム教徒が多数を占めるバングラデシュにおいて、こうしたキリスト教の歴史的建造物が大切に保存されていることは非常に興味深いです。
キルトンコラ川沿いで過ごす夕暮れ時
バリシャル市内を流れるキルトンコラ川は、市民生活に欠かせない場所です。夕方になると涼を求めて多くの人々が川岸に集まります。
私もリキシャに乗り、ゆったりと川沿いを走ってもらいました。リキシャのゆっくりとした速度は、街の空気を肌で感じるのにぴったりです。荷物を運ぶ船や対岸へ渡る渡し舟、水遊びに興じる子供たち…そんな日常の光景を眺めているだけで心が和みます。
川岸のベンチに腰掛け、対岸に沈みゆく夕日を眺める時間は、バリシャル滞在中の忘れがたい思い出となりました。空と川面が茜色に染まり、遠くのモスクからアザーン(礼拝の呼びかけ)が響き渡る神聖かつ美しいひととき。この街が持つ穏やかで優しい魅力を、全身で感じ取ることができるでしょう。
南の恵みを味わう。バリシャルの食文化

旅の醍醐味のひとつと言えば、やはりグルメを楽しむことです。川と海の恵みが豊かなバリシャルは、まさに食の宝庫として知られています。中でも特に名高いのが、バングラデシュの国民魚と称される「イリシュ(Ilish)」です。
国民魚イリシュを堪能する
イリシュ(英語名: Hilsa)はニシン科の魚で、その脂ののった濃厚な味わいはベンガル料理の至高のご馳走とされています。特にバリシャル周辺で獲れるイリシュは、その美味しさから国内で高い評価を受けています。塩焼きやカレー、さらにはマスタードペーストで蒸し煮にした「ショルシェ・イリシュ」など、多彩な調理法で味わうことができます。
私が訪れたレストランでいただいたのは、定番のイリシュカレー「イリシュ・マチェル・ジョル」でした。スパイスが効いたさらりとしたグレイビーソースと、ふっくらとしたイリシュの身が絶妙に絡み合っていました。小骨が多いため食べる際に少しコツが必要ですが、その手間をかける価値が十分にある美味しさです。口いっぱいに広がる濃厚な旨味と香りは、まさに格別。バングラデシュの人々がこの魚に深い愛情を持つ理由が、一口で理解できました。
食事の際の注意点
バングラデシュでの食事にあたっては、衛生面に少し気を付けることが大切です。旅を元気に楽しむために、以下のポイントを意識すると安心です。
- 水: 生水の摂取は厳禁です。飲み水は必ず密封されたペットボトルのミネラルウォーターを購入してください。レストランで提供される水にも注意が必要で、氷もできるだけ避けるほうが無難です。
- 食べ物: 基本的に、十分に火が通った料理を選びましょう。路上で売られているカットフルーツやサラダは、洗う際の水が清潔でない可能性があるため、避けるのが賢明です。
- 手洗い: 食事の前は、石鹸でしっかり手を洗うか、アルコール消毒ジェルを使う習慣をつけましょう。
地元の人で賑わい、清潔感のあるレストランを選ぶことが、美味しい食事に出会う秘訣です。ローカルな食堂は最初は少し勇気がいるかもしれませんが、指差しで注文できることも多いので、ぜひ挑戦してみてください。地元の人々と同じ料理を味わう体験は、旅の楽しみのひとつとして格別です。
旅の準備と安全対策。女性目線で考えるバングラデシュの旅
未知の国への旅は、胸が高鳴ると同時に、わずかな不安を感じるものです。特に女性が一人で旅をする場合、その気持ちは一層強くなるでしょう。しかし、適切な準備と少しの心構えがあれば、バングラデシュは安全で魅力的な旅先となります。ここでは、私の体験をもとに、特に女性旅行者に役立つ情報をお伝えします。
ベストシーズンと服装
バングラデシュの気候は大きく分けて、乾季(10月〜3月)と雨季(4月〜9月)に分かれます。旅の最適な時期は、安定した気候で過ごしやすい乾季です。特に11月から2月にかけては気温も快適で、観光に最適なシーズンといえます。
服装は、旅の快適さと安全性を左右する重要ポイントです。イスラム教徒が国民の約9割を占めるこの国では、現地の文化や習慣を尊重し、肌の露出を控えた服装を心掛けることが大切です。
女性のための服装のポイント
- 基本スタイル: 長袖と長ズボン、またはくるぶしまで覆うロングスカートやワンピースが基本です。体のラインを強調するようなタイトな服装は避け、ゆったりとしたシルエットを選びましょう。
- 素材のおすすめ: 暑さに対応するために、通気性が良く吸湿速乾性に優れるコットン、リネン、レーヨンなどの素材が最適です。私が持って行ったのは、薄手のコットンブラウス、リネンのワイドパンツ、そしてマキシ丈ワンピースで、どれも快適に過ごせました。
- 必携品「ストール(オルナ)」: 大判のストールはバングラデシュ旅行のマストアイテムといっても過言ではありません。現地では「オルナ」と呼ばれ、多くの女性が使っています。
- 日除け・ホコリよけ: 強い日差しやリキシャ乗車時の土埃から肌や髪を守ります。
- 冷房対策: 冷房が効きすぎている乗り物やホテル内で、羽織ものとして重宝します。
- モスク訪問時に: 宗教施設へ入る際には、頭をさっと覆うのに役立ちます。
- ファッションアクセントとして: カラフルな刺繍が施された美しいストールが現地のマーケットに多数あるため、お土産として現地調達も楽しめます。
- 足元について: 未舗装の道も多いため、歩きやすいスニーカーや、水に濡れてもすぐ乾くスポーツサンダルがおすすめです。
おしゃれも楽しみつつ現地の文化に自然になじむことが、トラブル回避と深い旅の体験へとつながります。
持ち物リスト
基本的な旅行用品に加え、バングラデシュの特性を考慮して以下のアイテムを持参すると安心です。
- 衛生用品:
- ウェットティッシュや除菌ジェル:食事前や手が洗えない場合に便利です。
- トイレットペーパー:公衆トイレやローカルなレストランには備え付けが少ないため持参しましょう。芯を抜いて圧縮するとコンパクトになります。
- 携帯用ウォシュレット:衛生面が気になる方におすすめです。
- 医薬品:
- 常備薬(胃腸薬、下痢止め、頭痛薬、酔い止めなど):現地の薬が体に合わないこともあるので、普段使い慣れた薬は日本から持っていくのが安心です。
- 虫除けスプレー、かゆみ止め薬:特にデング熱を媒介する蚊対策は重要です。肌の露出を控える服装と組み合わせて対策しましょう。
- 電子機器:
- モバイルバッテリー:停電が起こることもあるため、スマートフォンの充電を確保する上で必須です。
- 変換プラグ:バングラデシュではB、C、BF、B3タイプなど複数のプラグが使われています。マルチタイプの変換プラグを持っておくと安心です。
- その他:
- 南京錠やワイヤーロック:安宿滞在時や荷物の防犯に役立ちます。
- 速乾タオル:薄手で乾きやすいものは便利です。
- 懐中電灯(ヘッドライト):停電時や夜間の移動時に活躍します。
外務省の海外安全ホームページでは感染症情報が随時更新されているため、渡航前に一度確認することをおすすめします。
安全対策とトラブルへの対応
バングラデシュの人々は基本的に親日的で親切ですが、どの国でも最低限の注意が必要です。特に旅行者を狙ったスリや置き引きには注意しましょう。
- 貴重品管理: パスポートや多額の現金はホテルのセーフティーボックスなど安全な場所に保管し、持ち歩くのはその日に使う分だけにします。バッグは斜めがけで体の前に持ち、リュックは人混みの中では前に抱えるように工夫しましょう。
- 夜間の外出: 夜間の一人歩きは特に女性の場合、避けるべきです。移動が必要な場合は、ホテルのフロントに信頼できるタクシーやCNGの手配を依頼するのが安全です。
- 親切な申し出への対応: 親切に話しかけてくる人は多いですが、中には下心のある人もいます。「日本語を勉強したい」「案内するよ」と言われても安易に応じず、距離を保って冷静に対応してください。毅然とした態度が重要です。
- リキシャやCNGの料金交渉: 乗車前に必ず料金を確認・交渉しましょう。相場が分からない場合は、ホテルスタッフや近くの店員に相談すると安心です。料金が決まってから乗車することが鉄則です。
- 緊急連絡先: 万が一に備え、在バングラデシュ日本国大使館の連絡先や海外旅行保険の緊急連絡先を控えておきましょう。パスポートのコピーや顔写真の予備を携帯すると、紛失や盗難時に手続きがスムーズになります。
少しの注意と準備でリスクは大幅に軽減できます。現地の温かな人々と触れ合いながら、安全で心に残る旅をお楽しみください。
水の都が教えてくれた、本当の豊かさ

2泊3日のバリシャル滞在は、あっという間に過ぎ去りました。帰路には、2022年に開通した壮大なパドマ大橋を渡るバス旅を選びました。かつてはフェリーで何時間もかかっていたダッカへの移動が、現在では3〜4時間程度に短縮されたと言われています。これもまた、急速に発展を遂げるバングラデシュの象徴的な風景の一つでした。
騒がしいダッカの街に戻ると、バリシャルで過ごした時間がまるで夢のように思えます。しかし、目を閉じると今なお鮮明に蘇るのです。ロケットスチーマーのデッキで感じた涼やかな夜風、水上マーケットで交わした言葉にできない笑顔、運河沿いの家々から聞こえる生活の音、そしてキルトンコラ川に沈む夕日の圧倒的な美しさを。
バリシャルの旅は、壮麗な景色や世界遺産を巡るような華やかさはありません。そこに広がるのは、水と共に暮らす人たちの素朴で穏やか、しかし力強い日常です。ゆっくりと進む船のように、ここでは時間もゆったりと流れていました。効率や速さが価値とされる私たちの世界とは対極にある、その豊かさに触れた時、私は心の底から深い安らぎを感じました。
バングラデシュと聞くと、貧困や自然災害といったネガティブなイメージを抱く人もいるかもしれません。しかし、世界銀行のレポートが示す通り、この国は著しい経済成長を遂げるアジアの模範的な国の一面を持っています。そして何よりも、困難な状況の中でも笑顔を絶やさず、たくましく生きる人々の姿がありました。
もし、日常の忙しさに少し疲れを感じているなら。もし、ガイドブックには載らない、その土地の本当の姿に触れる旅を望んでいるなら、次の休暇はこの水の都、バリシャルを訪れてみてはいかがでしょうか。きっと、川の流れのように穏やかで、心に残る時間があなたを待っているはずです。

