アフリカ大陸の北東部に位置する国、エチオピア。コーヒー発祥の地として知られ、独自の文化と歴史が息づくこの国には、旅人の心を鷲掴みにして離さない、神秘的な場所が存在します。それが、標高約2,600メートルの高原に佇む聖なる都、ラリベラです。
ここは、巨大な一枚岩を、まるで彫刻を彫るかのように地上から掘り下げて造られた、11もの岩窟教会群が点在する場所。空から見下ろさなければ、そこに教会があることすら分からないかもしれません。「神の御業」、あるいは「天使が一夜にして造り上げた」という伝説が、あまりにも自然に信じられてしまうほどの、圧倒的な光景が広がっています。
1978年にユネスコの世界遺産に登録されて以来、世界中の旅行者や巡礼者がこの地を目指しますが、その道のりは決して平易ではありません。しかし、だからこそ、たどり着いた時の感動は計り知れないものとなるのです。
この記事では、私が世界30か国を旅した経験をもとに、ラリベラの岩窟教会群を訪れるための準備から、現地での巡り方、知っておくべき注意点まで、あなたの旅が最高に輝くための情報を余すところなくお伝えします。天空の教会への扉を、一緒に開いてみませんか。
ラリベラのような歴史と文化が詰まった地を訪れることは、単なる観光に留まらず、アフリカの観光開発と持続可能な旅について考えるきっかけにもなるでしょう。
第二のエルサレム、ラリベラの物語

ラリベラの岩窟教会群は、なぜ、どのような経緯で誕生したのでしょうか。その背景には、信仰と情熱に彩られた壮大な物語が秘められています。この地をより深く知るために、まずはその歴史の一端に触れてみましょう。
信仰が刻み込んだ奇跡の物語
この驚くべき教会群が造られたのは、12世紀後半から13世紀初頭にかけてのこととされています。当時エチオピアを治めていたザグウェ朝の熱心なキリスト教徒であったラリベラ王の命によるものだと伝えられています。
伝説によると、若き日のラリベラ王は兄に毒を盛られ、三日間も生死の境を彷徨ったといいます。その夢の中で天使に導かれ、天国へと導かれた彼は、神から岩を彫って教会を造るように啓示を受けました。のちに王位に就いた彼は、この神の御言葉に従い壮大な計画に取りかかったのです。
もう一つの有力な説は、当時イスラム教徒の支配下にあった聖地エルサレムに代わり、「第二のエルサレム」を地上に築こうとしたというものです。エチオピアのキリスト教徒にとって聖地への巡礼が非常に困難であったため、ラリベラ王は自国の民が巡礼できる新たな聖地を創造する決意を固めました。実際、教会群を流れる川は「ヨルダン川」と名付けられ、それぞれの教会の配置や名称にもエルサレムを意識した関連性が見られます。
あまりにも巨大なこの建造物は人間の力だけで成し遂げられたとは考えにくく、人々は「昼は人の手で働き、夜は天使たちが二倍の速さで仕上げた」と信じてきました。岩肌に残る鑿(のみ)の跡をじっと見つめると、その伝説が現実味を帯びて心に響いてくる不思議な感覚を覚えます。
一枚岩から生まれた建築の秘密
ラリベラの教会群が特異なのは、その建築手法にあります。通常、石造建築は石を積み上げて造られますが、ここでは全く逆の方法が採用されました。まず、巨大な一枚岩の岩盤に教会の外形を線描し、その周囲に溝を掘って大きな石塊を切り出します。次に、その切り出された石を外側と内側から丹念に削り出し、窓や扉、柱、祭壇、さらには天井の細かな装飾まで掘り進めて仕上げていったのです。
この工法は「モノリシック建築(一枚岩建築)」と呼ばれ、卓越した技術と膨大な労力、精緻な設計がなければ実現できません。屋根の部分は地面と同じ高さに位置しているため、教会はまるで大地の中に隠れて存在しているかのようです。教会同士は、くり抜かれた岩を通る薄暗い地下通路や壕(ほり)によってつながっており、その迷路のような構造は巡礼者の冒険心を刺激します。
こうした類まれな文化的価値が高く評価され、ラリベラの岩窟教会群は1978年、UNESCO(ユネスコ)の世界遺産リストに登録された最初の12件の文化遺産のひとつとなりました。まさに人類共通の宝と言える場所なのです。
聖地ラリベラへの道のり
神秘に包まれたラリベラ。訪れてみたいという気持ちが高まったところで、具体的なアクセス方法について見ていきましょう。基本的には首都アディスアベバからのアクセスが中心となります。
空路:最も現実的かつ快適な選択肢
日本からエチオピアへは、アディスアベバにあるボレ国際空港(ADD)が玄関口となります。ここからラリベラへは国内線を利用するのが一般的で、時間的にも体力的にもおすすめの方法です。
- 運航航空会社: 国内線はエチオピア航空が独占的に運航しており、アディスアベバからラリベラ空港(LLI)まで毎日数便が飛んでいます。
- 所要時間: 飛行時間は約1時間。ただし、途中でゴンダールやバハルダールなど他都市を経由する便も多いため、予約時に直行便か経由便かを確認することが重要です。
- 料金: 運賃は変動しますが、エチオピア航空の国際線を利用して入国した場合、国内線区間は割引が適用される特典があります。国際線の予約時にまとめて手配するか、現地到着後に国際線のEチケットを提示して購入するとお得です。およそ1万円〜2万円ほどが目安とされています。
- 予約方法: エチオピア航空の公式サイトや一般的な航空券予約サイトから予約可能です。早めに予約すれば希望のフライト時間を確保しやすくなります。
ラリベラ空港は村の中心から約23km離れており、到着時にはホテルの送迎やミニバスの客引きなどが待っています。村までの移動時間は車で30〜40分程度です。
陸路:冒険心旺盛な方への挑戦的なルート
時間と体力に余裕があり、エチオピアの雄大な風景を間近に感じたい冒険好きの方には、陸路も選択肢としてあります。ただし、このルートは覚悟が必要です。
- バス: アディスアベバからラリベラへは長距離バスが運行されていますが、直行便はなく、デセなどの町で乗り換えが必要です。所要時間は最低でも2日間かかります。道路の多くが未舗装で状態が良くないため、乗り心地は決して快適とは言えません。しかし、車窓から見える素朴な村々や現地の人々と触れ合う体験は、かけがえのない思い出になるでしょう。
- チャーターカー: 複数人のグループであれば、四輪駆動車をチャーターする方法もあります。バスより快適で、途中で風光明媚な場所に立ち寄るなど自由度の高い旅が可能です。ただし、費用はかなり高額になる点に注意してください。
陸路を選ぶ際は、現地の治安状況を十分に確認し、信頼できるドライバーや業者を選ぶことが重要です。特に雨季は道路状況が悪化しやすいため、避けるのが賢明です。
神の御業を巡る、11の教会群

さあ、いよいよラリベラの核心にあたる教会群を巡る旅のスタートです。11の教会はヨルダン川を隔てて大きく3つのエリアに分かれており、チケットは5日間有効なので、慌てずに自分のペースでゆっくりと訪れることをおすすめします。
孤高の名作:聖ギオルギス教会 (Bete Giyorgis)
ラリベラと言えば、多くの人がまず思い浮かべるのが、完璧な十字架の形をしたこの教会でしょう。ほかの教会群からやや離れた場所に位置し、大地に刻まれたように静かに佇むその姿は、まさに圧倒的な存在感を放っています。
伝説によれば、ラリベラ王が10の教会を完成させた後、馬に乗った聖人ギオルギスが現れ、「なぜ私の教会を建ててくれなかったのか」と嘆いたといいます。そこで王は最後に、最も美しく完璧なこの教会を建造したと伝えられています。教会の壁には、聖人が乗ってきた馬の蹄跡が残っているとも言われています。
高さ約15メートルで、上空から見下ろすと美しいギリシャ十字の形が鮮明に浮かび上がります。周囲の岩盤を深く掘って作られた壕を抜け、細い通路を進んで入口にたどり着くまでのアプローチは、まるで聖域へ踏み込むかのような神聖な気持ちにさせられます。内部は比較的シンプルですが、差し込む光によって生まれる光と影の演出は非常に荘厳です。特に朝夕の光に照らされて岩肌が赤く染まる時間帯は圧巻で、息を呑むほどの美しさを見せてくれます。写真スポットとしても人気ですが、その素晴らしさはぜひご自身の目で直接味わってください。
北西グループ:ザグウェ朝の栄華を伝える教会群
ヨルダン川の北西側にあるこのグループには、6つの教会が地下の通路で複雑に繋がっており、探検気分を楽しみながら見て回ることができます。
- 救世主の教会 (Bete Medhane Alem): 全長約33メートル、幅約23メートル、高さ約11メートルの世界最大の一枚岩教会です。古代ギリシャ神殿を思わせる太い柱が並ぶ外観は迫力満点で、内部も広々としており、多くの巡礼者が祈りを捧げる場所です。ラリベラ信仰の中心としてまず訪れるべき教会と言えるでしょう。
- 聖マリア教会 (Bete Maryam): 救世主の教会から地下トンネルを抜けた先にあり、ラリベラで最も美しく装飾が豊かな教会として知られています。外壁の窓の彫刻や内部に残る鮮やかなフレスコ画は必見です。特に天井に描かれた星々や壁に描かれた聖母マリアとイエスの物語は、長い年月を超えて訪れる人々の心に深く響きます。
- ゴルゴタ教会・ミカエル教会 (Bete Golgotha Mikael): この双子の教会は、残念ながら女性の立ち入りが禁止されています。内部にはラリベラ王の墓とされる場所や、使徒たちの美しい浮彫りがあると言われています。
- その他: 聖十字架教会 (Bete Meskel) や乙女の教会 (Bete Denagel) など、個性豊かな小さな教会が隣接しており、迷路のように絡み合う通路を進むごとに、それぞれの空間が持つ独自の雰囲気を感じ取ることができます。
南東グループ:王家の祈りの場
ヨルダン川の南東側には4つの教会が集まっており、北西グループよりも洗練されていて優美な印象を与える教会が多いのが特徴です。
- エマニュエル教会 (Bete Amanuel): ラリベラで特に美しい教会の一つと称される、緻密で繊細な造りが見事な教会です。外壁に施された横縞模様は、古代エチオピアのアクスム様式を模したものとされ、その均整のとれた姿が訪れる者を魅了します。かつては王家専用の礼拝堂だったと考えられており、その気品漂うたたずまいが納得させられます。
- アッバ・リバノス教会 (Bete Abba Libanos): こちらにはロマンティックな伝説があります。ラリベラ王の妃、メスケル・ケブラを偲んで天使が一晩で建てたと語り継がれているのです。三面が岩盤と一体化し、天井と岩の隙間にわずかな空間があるため、まるで洞窟の中に浮かんでいるかのような不思議な感覚が味わえます。
- 聖メルクリオス教会 (Bete Merkorios) / ガブリエル・ラファエル教会 (Bete Gabriel-Rafael): 現状では一部が崩壊しているなど保存状態が完璧とは言えませんが、かつては牢獄や宮殿として使われていたという説もあり、謎めいた魅力を放っています。特にガブリエル・ラファエル教会へと続く細い石橋はスリル満点の体験を提供してくれます。
ラリベラ観光を120%楽しむための実践ガイド
それでは、ラリベラでの滞在を円滑かつ充実させるための具体的な情報をお届けします。これを読めば、現地で迷うことはほとんどありません。
チケットの購入と観光の始め方
ラリベラ観光のスタートは入場チケットの取得からです。
- チケットオフィスの場所: チケットオフィスは北西グループ教会の玄関付近にあり、村の中心から徒歩圏内です。もし場所が分からなければ、現地の方に「Ticket Office?」と尋ねるとすぐに教えてもらえます。
- 料金と支払い方法: 料金は 50USドル(2024年現在)で、支払いは現金のみ受け付けています。エチオピア通貨のブルではなく、主に米ドルでの支払いが求められますので、綺麗なドル紙幣を用意してください。クレジットカードは利用できません。
- 有効期限: チケットは 購入から5日間有効 です。購入時にはパスポートの提示が必要で、チケットには日付と名前が記載されます。各教会の入口で係員に見せる必要があるため、紛失しないよう大切に保管しましょう。首から下げるパスケースに入れておくと便利です。
- 学生割引: 国際学生証(ISIC)を提示すれば割引が受けられる場合があります。持参している方は忘れずに用意してください。
公認ガイドの利用は必要?
チケットオフィス付近や村内では、多くのガイドが声をかけてきます。ガイドを利用するかは個人の判断ですが、それぞれのメリット・デメリットを把握しておくと良いでしょう。
- メリット:
- 教会それぞれの歴史や見どころを詳しく説明してくれるため、理解が飛躍的に深まります。
- 複雑な地下通路や見落としやすい装飾箇所を効率的に案内してくれます。
- 地元住民との交流のサポート役になってくれることもあります。
- 写真撮影の手助けをしてくれるガイドも多いです。
- デメリット:
- 費用がかかります。相場は交渉次第ですが、1日あたり25〜40ドル程度です。
- ガイドの知識や語学力には差があることがあります。
- 静かに一人で教会の雰囲気を味わいたい方には向かないかもしれません。
私の個人的な見解としては、初めての訪問であれば最低初日はガイドを雇うことを強くおすすめします。 見落としがちな細かなレリーフや伝説の意味などを教わることで、ラリベラの魅力が格段に増します。ガイドは公式ライセンス保持者を選び、料金や案内範囲については事前に十分に確認・交渉しておくとトラブルを避けられます。
最適なシーズンと服装のルール
ラリベラの旅行を快適にするには、訪れる時期と服装の選択がとても大切です。
- 最適な時期: エチオピアの気候は大きく乾季と雨季に分かれ、観光の適期は雨の少ない 乾季(10月〜3月) です。特にエチオピアのクリスマス「ゲンナ」(1月7日前後)やキリストの洗礼を祝う「ティムカット」(1月19日前後)の時期は、白装束の巡礼者が全国から集まり、町全体が神聖かつ活気に満ちた特別な雰囲気になります。この時期に訪れるのも素晴らしい体験です。雨季(6月〜9月)は道がぬかるみやすく、観光には不向きな場合があります。
- 服装規定(非常に重要!):
- ラリベラの教会群は今も深い信仰が息づく神聖な聖地です。観光客も敬意ある服装が求められます。
- 男女ともに肩と膝が隠れる服装が必須 です。Tシャツは問題ありませんが、タンクトップやショートパンツ、ミニスカートの着用は禁止です。
- 女性は頭を覆うスカーフやショールを必ず持参しましょう。 教会入場時に髪を覆うことがマナーとされています。入口で貸し出しがある場合もありますが、衛生面やデザインの好みを考えると、自分のものを用意するのがベターです。薄手で大判のショールは日除けや防寒にもなり、一枚あると重宝します。
- 靴は脱ぎ履きしやすいものを選ぶと良いです。 教会内は必ず靴を脱ぐため、サンダルやスリッポンなどが便利です。石畳や土の地面を歩くため、歩きやすさも重要です。
- 教会の床は石で冷たく、衛生面を気にする方もいるでしょう。靴下を履くか持参することをおすすめします。
快適な旅のための持ち物リスト
ラリベラ観光をより充実させるために役立つ持ち物を紹介します。
- 必携品:
- パスポート: チケット購入時に必須です。コピーも携帯すると安心です。
- 現金(USドル): チケット代やガイド料用に、綺麗な紙幣で50〜100ドル程度用意してください。
- 歩きやすい靴: 長時間歩くことが多いため、履き慣れた靴を選びましょう。
- 日焼け対策用品: 高地で日差しが強いため、帽子、サングラス、日焼け止めは必須です。
- 羽織るもの: 朝晩は冷えることが多いため、調整しやすいフリースや薄手ダウンがあると快適です。
- スカーフ/ショール(女性用): 服装規定に対応するため必ず準備してください。
- あると便利なもの:
- ヘッドライトや懐中電灯: 教会内や地下通路は暗いため、両手が自由になるヘッドライトが特に便利です。スマホのライトでも代用可能です。
- ウェットティッシュや除菌ジェル: 靴を脱ぐ機会が多く埃っぽい場所もあるため、清潔維持に役立ちます。
- 予備の靴下: 脱いだ靴下を替えたい場合に便利です。
- モバイルバッテリー: 写真撮影やスマホ利用が多いので、充電切れ対策に持参しましょう。
- カメラの予備バッテリーとメモリーカード: 撮りたい瞬間にバッテリー切れや容量不足にならないための必需品です。
- 常備薬: 胃腸薬や鎮痛剤など、日常的に使い慣れた薬を忘れずに持ちましょう。
教会巡りだけじゃない!ラリベラの魅力

ラリベラの魅力は、11の岩窟教会だけにとどまりません。少し足を伸ばしてみたり、村の暮らしに目を向けたりすることで、この地ならではの深い魅力を一層感じることができるでしょう。
ラリベラの村を歩いてみる
教会群の周囲に広がるラリベラの村を散策すれば、エチオピアの素朴な生活に触れることができます。伝統的な二階建ての石造り住宅「トゥクル」が立ち並ぶ風景は、どこか懐かしい気分にさせてくれます。ロバが荷物を運び、子どもたちが無邪気に走り回り、女性たちが井戸端で賑やかに語り合う。そんな何気ない日常の光景こそ、旅の心に残るひとコマとなるでしょう。もし市場が開かれていたら、ぜひ訪れてみてください。地元の野菜やスパイス、手工芸品が並ぶ活気ある雰囲気を楽しめます。
絶景を求めて!アシェトン・マリアム修道院へのハイキング
体力と時間の余裕があれば、ラリベラの町を見下ろす標高約4,000メートルの山頂にあるアシェトン・マリアム修道院へのハイキングに挑戦してみてはいかがでしょうか。
村のふもとから往復で4〜5時間かかる道のりは、急な坂が続くため決して楽ではありません。しかし、道中に広がるラリベラの絶景パノラマは格別です。苦労して登りきった先には、岩に半ば埋め込まれるように造られた質素でありながら神聖な雰囲気の修道院が待ち受けています。そして360度見渡せる息をのむような景色が広がります。体力に自信がない方は、現地で「ミュール」と呼ばれるロバを借りて登ることも可能です。忘れられない達成感を味わえるおすすめのアクティビティです。
コーヒーセレモニーで贅沢なひとときを
エチオピアはコーヒー発祥の地。せっかく訪れたのなら、伝統的なコーヒーセレモニー(カリオモン)を体験してみましょう。ラリベラの村にも、この儀式を楽しめるカフェや一般家庭があります。
まだ緑色のコーヒー豆を焙煎し、臼で挽いてからジャバナという伝統的なポットで煮出す。一連の儀式的なプロセスを、芳ばしい香りに包まれながら眺める時間は、ゆったりとしていてとても贅沢です。乳香が焚かれた空間で味わう、濃く香り高い一杯目の「アボル」。続く二杯目の「トナ」、三杯目の「バラカ」と、徐々に薄くなる味わいの違いを楽しむのもまた一興です。旅の疲れを癒す、最高の一杯がここにあります。エチオピアの観光情報については、Ethiopian Tourism Organizationの公式サイトもぜひご参照ください。
安全に旅するための注意点とトラブル対策
ラリベラを安心して、そして心から楽しむために知っておくべき注意点やマナー、万が一のトラブル時の対処法をお伝えします。
写真撮影のマナーとルール
美しい景色を写真に収めたい気持ちは理解できますが、守るべきルールがあります。
- フラッシュ撮影は禁止: 教会内部の壁画や装飾を損なう恐れがあるため、フラッシュの使用は固く禁じられています。必ずフラッシュをオフにして撮影してください。
- ビデオ撮影について: 一部の場所ではビデオ撮影に追加料金が発生することがあります。撮影前に係員やガイドに必ず確認しましょう。
- 人物の撮影: 聖職者や祈りを捧げる巡礼者は魅力的な被写体ですが、相手への敬意を忘れてはいけません。撮影前には必ず「写真を撮ってもいいですか?」と声をかけ、了承を得るようにしましょう。無断でカメラを向けるのは失礼にあたります。許可が得られたら、撮影後には「アムセグナッロ(ありがとう)」と伝えて感謝の気持ちを表しましょう。
しつこい客引きへの対応法
ラリベラは比較的安全な観光地ですが、旅行者に対して客引きや物売りが声をかけてくることがあります。特に「学生」を名乗り学費の支援を理由にガイドを申し出たり、高額な土産品を売りつけようとするケースが見られます。
興味がない場合は、あいまいな態度を取らず、はっきりと「ノー、サンキュー」「イェレム(いりません)」と、笑顔を忘れずに断ることが大切です。しつこくされても感情的にならず、冷静に対応しましょう。
高山病のリスクと対策
ラリベラは標高約2,600メートルの高地に位置しており、高山病の症状として頭痛や吐き気、倦怠感を感じる方がいます。
- 予防策:
- 到着初日は無理な予定を立てず、高地に体を慣らすことを優先してください。
- 水分をこまめに多めに摂ることが効果的です。
- アルコールは控えめにし、食べ過ぎも避けましょう。
- 十分な睡眠を取り、ゆったりとしたペースで行動することを心がけてください。
症状が出た際は無理をせず休息をとり、水分補給をしっかりと行いましょう。症状が改善しない場合には我慢せず、ホテルスタッフや現地のクリニックに相談することをおすすめします。
最新の安全情報を必ず確認する
エチオピア国内の情勢は時に変動が激しく、特にラリベラのあるアムハラ州の治安状況は流動的です。渡航前には必ず最新の情報をチェックすることが重要です。
旅行計画を立てる際は、外務省 海外安全ホームページで危険情報や感染症情報を確認し、安全を第一に行動しましょう。現地滞在中も急な状況変化に備え、信頼できる情報源から常に最新の情報を入手することを心がけてください。
岩に刻まれた祈りの声に耳を澄ませて

ラリベラへの旅は、単なる珍しい教会を巡る観光とは異なります。それは、巨大な岩盤に込められた人々の熱い信仰心や、膨大な時間と労力を費やした人間の偉大な業績、そして何世紀にもわたり受け継がれてきた祈りの歴史に触れる、心の深まりゆく旅なのです。
薄暗い地下の通路を懐中電灯の灯りに導かれて進むときに感じるひんやりとした空気。教会内部にこだまする聖職者の厳かな祈りの声。壁画に描かれた聖人たちのまなざし。この全てが一体となり、訪れる者の五感と心に深く刻み込まれていきます。
なぜこれほど壮大なものを築き上げたのか。その問いに対する答えは、おそらく一つだけではありません。しかし、この地に実際に立ち、自分の足で歩き、空気を感じ取ったとき、言葉では表現しきれない圧倒的な感動と共に、あなた自身の答えが見つかることでしょう。
天空の教会と称されるラリベラ。そこには、現代社会が忘れがちな揺るぎない信仰の力と、人間の無限の可能性が静かに、しかし力強く息づいています。ぜひあなたも、この神の業とも呼ばれる奇跡を自らの目で確かめに訪れてみてください。きっと、一生忘れられない光景と感動が待ち受けています。

