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    青の迷宮シャウエンで激辛タジンを食らう!スパイスハンターが見たモロッコの素顔

    空も、壁も、扉も、階段さえも。視界に飛び込むすべてが、様々な階調の青に染め上げられている。ここはモロッコ北部に位置するリフ山脈の麓、シャウエン。世界中の旅人を魅了してやまない、青い宝石箱のような街だ。俺、スパイスハンター・リョウの目的はただ一つ。この美しい街に隠された、最も刺激的な「辛さ」を見つけ出すこと。フォトジェニックな絶景の裏で、俺の舌と胃袋を灼くような、運命の一皿が待っているはずだ。甘美なミントティーの香りと、焼けるようなスパイスの匂いが混じり合う迷宮へ、さあ、足を踏み入れよう。

    目次

    なぜシャウエンは青いのか?その秘密と歴史に迫る

    シャウエンの旧市街(メディナ)に足を踏み入れると、誰もがその非現実的な青の世界に息をのむでしょう。足元の石畳から見上げる壁に至るまで、コバルトブルー、スカイブルー、ターコイズブルーなど、あらゆる青色が重なり合っています。では、なぜここまで街全体が青く彩られているのでしょうか。その理由には諸説あり、今なお謎に包まれています。

    最も有力な説のひとつは、15世紀末にスペインから追放されたユダヤ教徒が、この地に新たな住みかを求めて移り住んだことに由来すると言われています。ユダヤ教において青は空や天国を表す神聖な色であり、彼らは神の存在を常に感じたいと思ったため、またこの地を神聖な場所と意識して、家を青く塗り始めたと伝えられています。青い壁は、日々の祈りの象徴であり、彼らの信仰心のあらわれだったのかもしれません。路地を歩くと、「ダビデの星」のモチーフが時折目に入り、静かにその歴史を物語っています。

    また、もっと実用的な理由を挙げる説も存在します。その一つは「虫除け説」で、青い色が蚊などの害虫を遠ざけ、マラリアなどの伝染病の予防に役立ったためだとされています。特に夏の強い日差しの中で、この青が涼しい印象を与えるだけでなく、実際に快適な生活環境をもたらしていたと考えると非常に興味深いですね。先人たちの知恵によって、この美しい景観が生み出されていた可能性もあります。

    さらに、「清涼感説」もあります。モロッコの夏は非常に暑く、日差しは強烈です。青という色は視覚的に冷たさを感じさせる効果があるため、厳しい暑さを和らげる目的で使われたとも考えられています。実際、青い壁に囲まれた陰の多い路地を歩くと、体感温度が数度下がるように感じられます。

    どの説が真実であっても、この青い伝統は今もシャウエンの住民たちによって大切に受け継がれています。人々は定期的に壁を塗り直し、街の美しさを保ち続けているのです。ペンキのバケツを手に、慣れた手つきで壁を塗る姿はシャウエンの日常風景。それは単なるメンテナンスを超え、街のアイデンティティを守り、未来へとつなぐ神聖な儀式のようにも映ります。モロッコ政府観光局のウェブサイトでもこの街の独特な歴史が紹介されており、訪れる前に目を通せば、散策が一層味わい深いものとなるでしょう。

    この青は単なるペンキの色ではありません。信仰、知恵、そして故郷を愛する人々の想いが幾重にも重なってできた、歴史の色なのです。その深みを感じながら歩くことで、シャウエンの本当の魅力に触れられるはずです。

    青の迷宮を歩く。シャウエン旧市街(メディナ)完全攻略ガイド

    シャウエンの中心部に位置する旧市街(メディナ)は、まさに青の迷宮と呼ぶにふさわしい場所です。狭く入り組んだ路地が縦横無尽に広がり、どこを切り取っても絵になる光景が続きます。ただし、その美しさに見とれていると、あっという間に方向感覚を失ってしまうことも少なくありません。今回は、この迷宮を思う存分楽しむための歩き方や旅の準備について詳しくご紹介します。

    フォトジェニックだけじゃない!路地裏散策のコツ

    目的地を地図片手に目指すのもいいですが、シャウエンのメディナでは一度地図をしまい、気ままに歩いてみるのがおすすめです。この街の魅力は、計画通りには出会えない、偶然の発見の中にこそ隠されています。

    散策のポイントは「上へ、上へ」。メディナは山の斜面に建てられているため、迷った際はとりあえず坂を上る方向へ進みましょう。そうすれば、やがてメディナの中心であるウタ・エル・ハマム広場や、街全体を見渡せる高台にたどり着けます。一方、下へ下ると外壁や門にぶつかることが多いです。このシンプルなルールを覚えておくだけでも、不安はかなり和らぎます。

    路地を進むと、突然現れる小さな広場や、青い壁に映える鮮やかな植木鉢、日向ぼっこをする猫たち、井戸端会議で笑顔を交わす地元の人々など、心温まる光景が次々と現れます。そんな日常の一コマを写真に収めたくなる気持ちはよく理解できますが、ここで大切なマナーがあります。それは、人を撮影する際には必ず一声かけることです。特に女性や子どもは無断で写真を撮られるのを嫌がる場合があり、プライバシーの侵害やトラブルの原因ともなりかねません。「こんにちは(アッサラーム・アライクム)」と笑顔で挨拶し、ジェスチャーで「写真を撮ってもいいですか?」と尋ねれば、多くの場合快く応じてくれます。もし断られた場合は、素直に引き下がるのが礼儀です。このような尊重の心が、旅をより豊かなものにしてくれます。

    また、メディナ内には革製品や絨毯、スパイスなどを売る小さなお店(スーク)が多数軒を連ねています。店主から声をかけられることもありますが、興味がなければ「ラ・シュクラン(いいえ、ありがとう)」と笑顔で伝えれば、しつこくされることはほとんどありません。地元の人々との何気ないやり取りも、迷宮散策の醍醐味のひとつです。

    シャウエンブルーを独り占め!おすすめの撮影スポットとベストタイム

    シャウエンのどこも美しいですが、特に人気の撮影スポットがいくつかあります。例えば、色とりどりの植木鉢が飾られた青い階段や、アーチ型の門が続く路地などは、多くの観光客で賑わいます。これらの場所で人を入れずに写真を撮るなら、断然「早朝」が狙い目です。

    観光客がまだ眠っている午前7時頃、メディナは静まり返り、朝日がゆっくりと青い壁を照らし始めます。この時間帯は柔らかな光が街全体を優しく包み、昼間とは異なる幻想的な雰囲気を演出します。昼間の賑わいが嘘のように静寂に包まれた路地を一人占めし、心ゆくまでシャッターを切ることができるでしょう。昼間は行列ができる人気スポットも、早朝なら誰にも邪魔されずに撮影可能です。

    光のコンディションを考えると、午前の早い時間帯と午後3時以降の夕方が特におすすめです。正午周辺は太陽が真上にあり影が強く出過ぎるため、写真の立体感が薄れがちです。一方、斜めから差し込む光は壁の質感や建物の凹凸による陰影を美しく際立たせ、ドラマチックな写真が撮れます。中でも夕暮れ時、西日に照らされた青い壁がオレンジ色に染まる瞬間は「マジックアワー」と呼ばれ、息を呑むほどの美しさを見せます。

    メディナの東側に位置する小高い丘の上には「スパニッシュ・モスク」があり、ここからシャウエンの街並みを一望できます。ウタ・エル・ハマム広場からラス・エル・マの泉を越え、坂道を20~30分ほど登ったところです。特に夕暮れ時は、夕日に染まる青い街のパノラマを見ようと多くの人が訪れます。少し汗をかきますが、その価値が十分にある絶景スポットです。

    シャウエン滞在の準備:服装と持ち物リスト

    シャウエンで快適に過ごすには、適切な準備が欠かせません。特に服装や持ち物は、現地の文化や気候に配慮して選ぶことが大切です。

    服装のポイントとおすすめスタイル

    モロッコはイスラム教の国であり、シャウエンも例外ではありません。地元の人々は肌の露出を控えた服装をしているため、旅行者も文化への配慮として特に女性は肩や膝を隠す服装が望ましいです。厳格なドレスコードではありませんが、タンクトップやショートパンツといった露出の多い服装は避け、Tシャツや長めのスカート、ゆったりしたパンツが適しています。薄手のカーディガンやストールを一枚持つと、強い日差しや肌寒い時、モスクなどの聖地訪問時に羽織れて便利です。

    また、メディナは坂道や石畳の階段が非常に多い場所です。オシャレなヒールやサンダルは避け、必ず歩き慣れたスニーカーやウォーキングシューズを選びましょう。長時間歩いても疲れない靴が、迷宮散策を楽しむ上での重要なポイントです。

    気候面では、山間部のため昼夜の寒暖差が大きいのが特徴です。夏でも朝晩は肌寒く感じることがあるため、フリースや軽量のダウンジャケットなどの防寒着があると安心です。冬に訪れる場合は、よりしっかりした防寒対策が必要となります。

    持ち物リスト:必需品&便利アイテム

    快適なシャウエン旅行のためにおすすめの持ち物をまとめました。パッキングの参考にしてください。

    • 日焼け対策グッズ: 紫外線が強いため、サングラス、帽子、日焼け止めは必須です。標高が高いので油断しないようにしましょう。
    • 乾燥対策グッズ: 空気が乾燥しているため、リップクリームやハンドクリーム、保湿力の高いスキンケア用品を持参すると安心です。
    • 歩きやすい靴: 先述のように、スニーカーが最適です。
    • 羽織もの: ストールやカーディガンなど、気温調節しやすいものを用意しましょう。
    • ウェットティッシュ・除菌ジェル: レストランやカフェでおしぼりが出ないことも多いため、持っていると非常に便利です。
    • 小銭(ディルハム): メディナ内の小さな店やカフェ、公衆トイレ(有料の場合あり)、チップなどでよく必要になります。大きな紙幣は細かく崩しておくことをおすすめします。
    • モバイルバッテリー: 写真を多く撮るとスマホのバッテリーがすぐ減るため、予備のバッテリーは必須です。
    • 常備薬: 胃腸薬、頭痛薬、酔い止めなど日頃使い慣れている薬を持参すると安心です。特にスパイシーな現地料理に挑戦する場合は胃腸薬が心強い味方になります。
    • 日本語会話帳または翻訳アプリ: 観光地では英語が通じることもありますが、アラビア語やフランス語で挨拶すると距離が縮まります。

    これらの準備を整えて、青の迷宮シャウエンでの旅をより安全に、快適に、そして思い出深いものにしてください。

    スパイスハンターの本領発揮!シャウエンの激辛グルメ探訪

    美しい青の街並みを堪能した後、いよいよ俺の本来の目的、この街に秘められた究極の「辛さ」を追い求める時間がやってきた。観光客向けの洗練されたレストランも魅力的だが、俺の胃袋が求めているのは、地元の人々の生活に根付いた、魂を揺さぶる本物のスパイスだ。ミントティーの甘い香りが漂う路地裏で、スパイスハンターとしての本能が、情熱の炎のように熱く燃え、一皿との運命的な出会いを渇望していた。

    運命の出会い。ハリッサを超える悪魔の調味料を探して

    モロッコ料理で辛さの代名詞といえば、唐辛子をベースにしたペースト状の調味料「ハリッサ」だ。タジンやクスクスに添えられ、そのピリッとした刺激と豊かな風味が料理の味わいを格段に引き立てる。もちろん俺もハリッサが大好きだが、世界中の激辛料理を渡り歩いてきた俺にとって、一般的なハリッサはもはや前菜のような存在。俺が追い求めているのは、その先に広がる、常識を覆すほどの激烈な辛さだ。

    そのヒントを探しに、メディナの中心にあるスーク(市場)へと足を運んだ。色とりどりのバブーシュ(革製スリッパ)や美しい幾何学模様の絨毯が並ぶ賑やかな市場の中、俺の視線はスパイスの山に釘付けになる。クミン、コリアンダー、ターメリック、サフラン……エキゾチックな香りの洪水に包まれる中、一際異様な色をした唐辛子の山が目に留まった。小粒で、濃く黒みがかった赤色。見るからに一筋縄ではいかなさそうな危険なオーラを放っている。

    店番をしていた老人に、身振り手振りを交えながら「一番辛いスパイスはどれだ?」と尋ねると、老人はニヤリと笑い、その黒みがかった唐辛子を指差した。すると奥から小さなすり鉢と油の瓶を取り出し、唐辛子にニンニク、塩、数種類のスパイスを加え、オリーブオイルを注ぎながら丁寧にすり潰し始めた。立ち上る香りは単なる香辛料のそれを超え、まるで警告のように、接近する者に容赦ない痛みを与えることを予感させる刺激的な匂いだった。

    「これがシャウエンの男たちが愛する、本物のハリッサ・ハッラ(激辛ハリッサ)だ」と老人は言った。それは観光客向けの店で並ぶマイルドなものとはまったく違い、家庭や地元の食堂だけで味わえる、いわば「裏メニュー」的な代物らしい。小瓶に詰めてもらい手にした瞬間、確信した。今夜、運命の扉が開くと。

    Do情報:スークでの買い物と値段交渉

    シャウエンのスークでスパイスや土産物を買う際は、値段交渉が必須だ。これは文化の一部でもあるので、コミュニケーションを楽しむ気持ちで臨むのが良い。

    • 手順1:まずは相場を把握する。 複数の店を回り、同じ商品の価格を聞いてみると、大まかな適正価格が見えてくる。
    • 手順2:最初の提示額に驚かない。 店主が最初に出す価格は交渉のための高め設定なので、そこから交渉が始まると心得よう。
    • 手順3:自分が妥当と考える希望額を伝える。 最初の提示価格の半分から七割程度を目安に提示してみるといい。
    • 手順4:交渉を楽しむ。 店主は「無理だ」と言いながら少しずつ値段を下げてくる。数回のやり取りの後、お互い納得のいく価格に落ち着かせるのが理想だ。
    • 注意点: 購入意思がないのにひやかしで交渉するのはマナー違反。また、交渉が決裂しても笑顔で「シュクラン(ありがとう)」と言い、その場を立ち去るのが礼儀だ。無理に買う必要はない。

    炎のタジン鍋との死闘!ローカル食堂「Chez Hicham」の実力

    スークで手に入れた悪魔の調味料を携えて、俺が向かったのはウタ・エル・ハマム広場から少し脇道に入ったところにある、地元の人々で賑わう小さな食堂だ。観光客向けの華やかなレストランではなく、生活感あふれるこうした場所こそが真の味に出会える可能性が高い。店名は「Chez Hicham」。年季の入った木製のテーブルと椅子が並び、厨房からはタジン鍋が静かに煮える心地よい音が聞こえてくる。

    メニューにあった「ビーフタジン」を頼み、店主のヒシャムさんに例の小瓶を見せた。「これを、このタジンに全て入れてくれ。この街で一番辛いタジンが食べたいんだ」と伝えると、ヒシャムさんは一瞬驚きを見せたが、俺の真剣な目を見て即座に不敵な笑みを浮かべた。「日本から来たクレイジーな男だな。よし、後悔するなよ」と。

    数分後、ジューッという音を伴って、土鍋(タジン鍋)が運ばれてきた。円錐形の蓋を開けると、暴力的なまでの唐辛子の香りが立ち上り、周囲の空気が一変した。立ち上る湯気だけで目が痛む。思わず唾を飲み込み、スプーンでまずはスープをひと口啜る。

    …来た。

    最初に感じたのは、クミンやパプリカの豊かな風味、トマトの酸味、そしてじっくり煮込まれた牛肉の深い旨味だった。しかし、その直後、時間差で灼熱の波が舌を襲う。脳天を突き抜けるような鋭く、激しい辛さだ。それは単なる痛みを超え、複雑に絡み合ったスパイスの風味と見事に融合した、奥深い辛さだ。汗が額や首筋から滝のように噴き出し、口内はまるで炎に包まれたかのように熱い。だが不思議と、スプーンを置くことはできない。辛いけれど美味い。辛さの向こう側に確かに存在する旨味の核が、俺を完全に虜にしているのだ。

    牛肉はホロホロと崩れるほど柔らかく、じゃがいもや人参はスパイスの味をしっかりと吸い込んでいる。パン(ホブス)をちぎって、この地獄のように辛くも天国のように美味しいソースに浸し、一口運ぶ。炭水化物が多少辛さを和らげるが、それも一瞬のことで、すぐに新たな辛さの波が押し寄せる。水を飲むとさらに火に油を注ぐようなものだ。ヒシャムさんは心配そうに俺を見ているが、俺は親指を立てて応えた。これこそ、俺が求めていたものだ。シャウエンの青にひそむ、真紅の情熱。この一皿に、この街の魂が凝縮されている。

    完食した時、俺は完全に燃え尽きていた。口の中の感覚は失われ、胃袋はまるで灼熱の鉄塊を飲み込んだかのように熱い。それでも、その疲労感と共に途方もない達成感が全身を包み込んでいた。これこそが、スパイスハンターとしての最高の瞬間だ。

    モロッコ料理の深遠さ。辛さだけにとどまらない名物たち

    激辛タジンとの死闘を終えた俺だが、モロッコの食文化は辛さだけが魅力ではないこともぜひ伝えておきたい。シャウエンには、他にも試す価値のある素晴らしい料理が数多く存在する。

    代表的な一品は「クスクス」だ。モロッコでは金曜日、安息日のご馳走として家族で楽しむことが多い。細かく蒸したパスタに、野菜と肉(羊肉や鶏肉)をじっくり煮込んだスープがかけられている。スパイスは比較的穏やかで、素材の旨味が生きた心温まる料理だ。

    また、鶏肉や鳩肉をアーモンドやスパイスとともにパイ生地で包み焼きにした「パスティラ」も絶品のひとつ。甘みと塩味、そしてシナモンの香りが絶妙に調和し、一度食べたら忘れられない味わいだ。

    さらに、モロッコの人々のソウルフードともいえる「ハリラ」というスープもおすすめする。トマト、レンズ豆、ひよこ豆、肉などを使った栄養満点の一杯で、特に日没後の食事(イフタール)には欠かせない。優しく染み入る味わいは、激辛で疲れた胃を癒してくれる。

    そして食事のお供に欠かせないのが「モロッカン・ミントティー」だ。緑茶に大量のミントと砂糖を加えて煮出す、この地域独特の「モロッカン・ウイスキー」とも呼ばれる飲み物だ。高い位置から注ぎ泡立てるのが伝統的なスタイルで、その強烈な甘さがスパイス料理と驚くほど相性が良い。甘さ控えめを希望する場合は、注文時に「シュワイヤ・スッカル(砂糖少なめで)」と伝えれば調整可能なので、ぜひトライしてみてほしい。

    シャウエンの食は激しい情熱と優しい癒し、両方を内包している。ぜひ多様な料理に挑戦し、その深みを存分に味わってみてほしい。

    シャウエンへのアクセスと滞在のヒント

    青の迷宮シャウエンへの旅を計画する際には、アクセス手段や宿泊施設、現地での注意点といった実用的な情報が欠かせません。ここでは、私の経験を交えながら、あなたの旅行をより快適かつ安全にするための具体的なアドバイスをお伝えします。

    主要都市からのアクセス方法:バスかタクシーか

    シャウエンには空港も鉄道の駅もないため、周辺の主要都市からバスやタクシーを利用して向かうのが一般的です。主な出発地としては、フェズ、タンジェ、テトゥアンなどが挙げられます。

    推奨情報:CTMバスでの移動が安定的

    旅行者に人気で信頼性が高いのが、国営の「CTMバス」を利用する方法です。

    • 特徴: CTMバスは比較的新しい車両で清潔感があり、エアコンも完備されています。座席は指定制で、出発時刻も比較的正確なので、計画的に移動したい方にぴったりです。大きな荷物は有料で荷物室に預けることが可能です。
    • 予約方法: チケットは各都市のCTMバスターミナルの窓口で購入できます。ハイシーズンには満席になることもあるため、できるだけ前日までに購入しておくことをおすすめします。さらに、CTM公式サイトからオンラインでの予約も可能です。サイトはフランス語かアラビア語表記ですが、ブラウザの翻訳機能を利用すれば問題なく理解できます。クレジットカード決済も対応しています。
    • 所要時間と料金の目安:
    • フェズ発:約4時間、料金は100ディルハム前後。
    • タンジェ発:約3時間、料金は70ディルハム前後。
    • テトゥアン発:約1時間半、料金は30ディルハム前後。

    (※料金や所要時間は変動する可能性があるため、公式サイトで最新情報を確認してください。)

    • 注意点: シャウエンのCTMバスターミナルはメディナ(旧市街)からやや離れた場所にあります。ターミナルからはプチタクシー(小型タクシー)を使い、メディナの入口まで移動するのが一般的です。料金は15〜20ディルハム程度。乗車前に料金を確認するか、メーターを使ってもらうと安心です。

    推奨情報:グランタクシーも選択肢の一つ

    より短時間で、または自由な時間に出発したい方には、「グランタクシー」(大型乗り合いタクシー)を使う方法もあります。

    • 特徴: ベンツなどのセダンタイプの車両で、運転手を含めて6〜7人が乗車できます。定員が揃い次第出発する仕組みなので、バスのような決まった時刻表はありません。
    • 利用方法: 各都市にはグランタクシー乗り場があり、シャウエン行きの車を探して空いている席に乗り込みます。バスより料金はやや高めですが、所要時間は短縮されることが多いです。
    • 料金交渉と留意点: 乗り合いでは通常一人あたりの料金が定められていますが、タクシー1台を貸切ることも可能です。その際は出発前に必ず運転手と料金の交渉を済ませましょう。安全面を考慮すると、特に一人旅の場合は、信頼性の高いCTMバスの利用がおすすめです。

    宿泊選びのポイント:リアドで味わう特別な体験

    シャウエンでの滞在をより印象深いものにしたいなら、宿はぜひ「リアド」を選んでみてください。リアドとは、中庭を持つモロッコ伝統の邸宅を改装した宿泊施設のこと。美しいタイルや彫刻で飾られた空間は、まるでアラビアンナイトの物語に入り込んだかのような気分に浸れます。

    推奨情報:リアド選びのポイント

    • 場所: リアドの多くはメディナ内に位置しています。中心部に近いと散策に便利ですが、少し離れた静かな場所にある宿は落ち着いた時間を過ごせるのが魅力です。ご自身の旅のスタイルに合わせて選ぶとよいでしょう。
    • 屋上テラスの有無: 多くのリアドには屋上にテラスがあり、そこから青く染まった街並みを眺めながら朝食やミントティーを楽しむのは格別の体験です。予約サイトの写真でテラスからの眺めを事前に確認することもおすすめです。
    • 口コミのチェック: 予約サイトのレビューは重要な参考資料です。オーナーの対応、朝食の質、清潔さやお湯の出具合など、実際に宿泊した人の声を見て判断しましょう。
    • 予約: 人気のリアドはすぐに満室になりやすいため、とくに旅行シーズンは早めの予約が必要です。Booking.comやAgodaなどの大手予約サイトで簡単に検索・予約できます。

    ホテルとは異なる、家庭的で温かみのあるもてなしがリアドの醍醐味。オーナーからおすすめの食事処や観光スポットを教えてもらうなど、現地の人との交流も旅の楽しみの一つです。

    トラブル回避のポイント:シャウエンで気をつけるべきこと

    シャウエンは比較的治安が良いと言われていますが、海外旅行である以上、最低限の注意は怠らないようにしましょう。トラブルを避け、安全に旅を満喫するためのポイントをいくつかご紹介します。

    • しつこい客引きや非公式ガイド: メディナ内を歩いていると、「案内しましょう」「良い店を紹介します」などと声をかけてくる人がいます。多くは後で高額請求をしてきたり、特定の土産物屋に連れて行こうとする場合があるため、興味がなければ、はっきりと「ノー、サンキュー(ラ・シュクラン)」と伝え、毅然とした態度で離れましょう。目を合わせず無視するのも効果的です。
    • 貴重品の管理: どこでも共通ですが、スリや置き引きには十分注意しましょう。バッグは前に抱えるなど持ち方に気をつけ、貴重品は分散して管理することが大切です。人混みでは特に慎重に行動してください。
    • 飲料水: 水道水は飲まず、必ずミネラルウォーターを購入して飲みましょう。レストランで供される水も、ボトル入りのもの以外は避けたほうが無難です。氷にも注意してください。
    • 緊急時の連絡先: 万が一に備えて、現地の警察(190)、救急(150)、および在モロッコ日本国大使館の連絡先を控えておくと安心です。海外旅行保険への加入も忘れずに行いましょう。

    これらのポイントを押さえておけば、きっとシャウエンでの滞在は素晴らしいものになるでしょう。しっかり準備をして、青の迷宮への冒険に出かけてください。

    青い街の向こう側へ。シャウエン近郊の魅力

    シャウエンの青く染まったメディナは、それ自体が訪れる価値のある唯一無二のスポットですが、もし滞在に余裕があるなら、ぜひ足を伸ばして周囲の豊かな自然にも触れてみてください。リフ山脈の壮大な自然は、メディナの賑わいとは対照的に、静かで厳かな美しさをたたえています。

    シャウエンの街のすぐ東側には「ラス・エル・マ」と呼ばれる湧水があります。ここは昔から地元の人々の洗濯場であり、生活用水の大切な源として街の暮らしを支えてきました。今でも川沿いでは、女性たちが楽しそうにおしゃべりをしながら洗濯をする光景に出会え、シャウエンの日常を垣間見ることができる貴重なスポットとなっています。せせらぐ川の音を聞きながら、少し腰を下ろして休憩するのも心地よい時間です。

    より本格的に自然を楽しみたいアクティブな旅行者には、リフ山脈でのトレッキングがおすすめです。シャウエン周辺には、初心者向けの短いコースから上級者向けの本格的な登山コースまで、多彩なトレッキングルートが用意されています。緑豊かな山道を歩き、新鮮な空気を深く吸い込むと、心身ともにリフレッシュできること間違いありません。途中で小さな村を訪れたり、羊飼いに出会ったりすることで、モロッコの田舎の原風景にも触れられるのが魅力です。

    Do情報:トレッキングの注意点

    安全にトレッキングを楽しむためには、現地のガイドを雇うことを強くおすすめします。地理に詳しいガイドと一緒なら道に迷う心配がなく、その土地の植物や文化についても深い知識が得られます。ガイドはリアドや地元のツアー会社を通じて手配可能です。服装は歩きやすい靴と動きやすい服装に加え、標高が上がると気温が下がるため、防寒着も忘れずに用意してください。水分と軽食も必携です。

    シャウエンから日帰りで訪れることができる絶景スポットに、「神の橋(Bridge of God)」として知られる天然の石橋があるアガディールがあります。渓谷に架かる巨大な赤い岩のアーチは、まさに自然が作り上げた芸術作品です。川で遊んだりピクニックを楽しむ地元の人々で賑わい、シャウエンとはまた異なる、ダイナミックな自然美を満喫できます。シャウエンからはグランタクシーをチャーターして訪れるのが一般的です。

    青い街並みだけでなく、その周辺に広がる雄大な自然にも目を向けることで、シャウエンという土地が持つ多彩な魅力をより深く味わうことができるでしょう。都会の喧騒を離れて、ただ自然と向き合うひとときが、旅の思い出に新たな彩りを添えてくれます。

    スパイスの旅は続く、胃袋と共に

    シャウエンの旅を終えようとしている今、心と体には二つの異なる感覚が深く刻まれている。一つは、目の前に広がり続けた非現実的な「青」の世界だ。あの青の迷路を彷徨った日々は、まるで美しい夢の中にいるかのようだった。壁の質感や扉の装飾、路地裏から聞こえてくる子供たちの笑い声、そしてすれ違う人々の穏やかな表情。すべてが青のフィルターを通して、記憶に深く刻まれている。

    もう一つは、いまだに胃袋が鮮明に覚えている、焼けつくような「赤」だ。あの激辛タジンが放つ強烈な辛さと、その奥に秘められた凝縮された旨味。それは、シャウエンという街が持つ穏やかな表情の裏側に潜む情熱そのもののように感じられた。観光客としてただ美しい風景を眺めるだけでは決して知り得ない、この土地の魂が宿る味。それを体験できたことが、スパイスハンターとしての最大の喜びだった。

    この街は、単なるフォトジェニックな場所にとどまらない。そこには歴史があり、信仰が息づき、日々の暮らしが営まれている。そして旅人の胃袋を掴んで離さない奥深い食文化も根付いている。青と赤、静と動、癒しと刺激。その相反する魅力が共存するからこそ、シャウエンは多くの人々を惹きつけてやまないのだろう。

    俺のスパイス探しの旅は、まだ終わりを迎えていない。次なる挑戦地はどこだろうか。新たな激辛料理との出会いを求め、胃袋はすでに次の冒険を切望している。しかし、その前に…。

    シャウエンでの激闘は、確実に俺の胃腸に爪痕を残した。異国の強烈なスパイスと連日戦う自分にとって、信頼できるパートナーの存在は欠かせない。そう、最後の頼みはいつもの相棒、「太田胃散A〈錠剤〉」だ。生薬の力で胃の働きを整え、消化酵素が脂っこい料理の消化を助けてくれる。あの灼熱のタジンで痛めつけた胃粘膜を修復する成分も含まれており、まさに俺のための胃腸薬といえる。持ち運びに便利なポケットサイズの分包タイプは、どこへ行くにも連れていける頼れる味方だ。これを飲んで胃袋をリセットし、次なる激辛の戦いに備える。スパイスの道は、健やかな胃腸の上に成り立っているのだから。

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    この記事を書いたトラベルライター

    激辛料理を求めて世界中へ。時には胃腸と命を賭けた戦いになりますが、それもまた旅のスパイス!刺激を求める方、ぜひ読んでみてください。

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