欧州連合(EU)は、ヨーロッパ旅行のあり方を大きく変える画期的な改革の最終段階に入ったことを発表しました。シェンゲン協定加盟国への渡航ビザ申請手続きを完全にオンライン化する「デジタルシェンゲンビザ」が、2026年後半の運用開始を目指して準備が進められています。これにより、煩雑だったビザ申請が過去のものとなり、旅行者にとってよりスムーズで便利な渡航が実現します。
デジタルシェンゲンビザとは?
この新しいシステムは、ビザ申請に関するすべてのプロセスを単一のオンラインプラットフォームに集約するものです。具体的には、以下のような変化が訪れます。
すべてがオンラインで完結する申請プロセス
これまでのビザ申請では、申請書類を準備し、居住国の大使館や領事館、ビザ申請センターへ直接出向いて手続きを行う必要がありました。しかし、新制度では、申請者は自宅やオフィスから専用のオンラインプラットフォームにアクセスし、申請書の提出、必要書類のアップロード、申請料金の支払いをすべてオンラインで行うことができます。
ビザは「貼る」から「持つ」時代へ
発給されるビザも、パスポートに貼られるステッカー形式から、暗号化された署名付きの2Dバーコード(QRコード)へと変わります。このデジタルビザはスマートフォンなどに保存でき、紛失や盗難のリスクを大幅に軽減します。これにより、国境での審査もより迅速かつ安全に行われるようになります。
導入の背景にあるもの
この歴史的な改革の背景には、いくつかの重要な要因があります。
効率化とセキュリティ強化の必要性
シェンゲン協定は現在29カ国が加盟する広大な共通圏を形成しており、渡航者の数は年々増加傾向にあります。コロナ禍前の2019年には、シェンゲンビザの申請件数は約1,700万件に達しました。増え続ける申請を従来の紙ベースで処理することは、各国領事館の大きな負担となっていました。
また、紙のビザステッカーは偽造のリスクも抱えていました。デジタル化により、すべての申請データが一元管理され、加盟国間でリアルタイムに情報共有が可能になります。これにより、セキュリティチェックが強化され、国境管理の安全性が向上します。
世界的なデジタル化の潮流
新型コロナウイルスのパンデミックは、世界中の行政手続きにおけるデジタル化の重要性を浮き彫りにしました。非対面での手続きを可能にすることは、公衆衛生の観点からも不可欠となり、EUはこの流れを加速させる形でビザ制度の近代化に踏み切ったのです。
旅行者と観光業界への影響
デジタルシェンゲンビザの導入は、旅行者個人だけでなく、観光業界全体に大きなインパクトを与えることが予測されます。
旅行者にとってのメリット
- 時間と費用の削減: 大使館への移動時間や交通費、仕事を休む必要がなくなり、申請にかかる全体的なコストと手間が大幅に削減されます。
- 手続きの迅速化: オンラインでの一元処理により、申請から発給までの期間が短縮されることが期待されます。
- 利便性の向上: 24時間いつでもどこからでも申請が可能になり、利便性が飛躍的に向上します。
観光業界へのポジティブな影響
ビザ申請のハードルが下がることで、これまで手続きの煩雑さからヨーロッパ旅行をためらっていた層の需要を掘り起こす可能性があります。特に、ビザ取得が必要な国からの観光客が増加し、EU圏内の観光業や航空業界、宿泊施設などに大きな経済効果をもたらすことが期待されています。
今後の展望と注意点
もちろん、新しいシステムへの移行には課題も伴います。全加盟国がスムーズに新システムへ移行するための調整や、サイバーセキュリティ対策の徹底が不可欠です。また、インターネット環境が整っていない地域や、デジタル機器の操作に不慣れな申請者へのサポート体制も今後の重要な課題となるでしょう。
2026年後半の運用開始までまだ時間はありますが、このデジタルシェンゲンビザは、間違いなく今後の国際的な人の移動におけるスタンダードとなっていくでしょう。simvoyageでは、引き続きこの新しいビザ制度に関する最新情報をお届けしていきます。未来のヨーロッパ旅行が、より身近で快適なものになることに期待が高まります。

