刺激から静寂へ、旅行トレンドの大きな転換点
英国のPRエージェンシー、レモングラス社が発表した最新のトレンドレポートは、2026年にかけて世界の旅行スタイルが大きな転換点を迎えることを示唆しています。これまでの「見栄えの良い写真」や「刺激的な体験」を追い求める旅から、より静かで人間的な「内なる豊かさ」を重視する旅へと、旅行者の価値観がシフトしているのです。
このレポートでは、新たな旅の形を象徴する16のキーワードが提示されました。その中には、「決断疲れからの解放」や「流行を追わない価値」といった、現代社会の喧騒から距離を置きたいという人々の深層心理を反映した言葉が並びます。これは、単なる流行の変化ではなく、私たちが旅に求める本質が変わりつつあることの表れと言えるでしょう。
なぜ今、「穏やかな旅」が求められるのか
不安定な世界と心の平穏
このトレンドシフトの背景には、世界的な政治・経済の不安定さがあります。先行き不透明な時代において、人々は旅行という非日常の体験の中に、スリルや興奮よりも「心の平穏」や「安心感」を求めるようになっています。また、パンデミック後の爆発的なリベンジ旅行が一巡し、旅行者は量から質へ、そして外的なアピールから内面的な充足へと関心を移しているのです。
SNS映えからの脱却
「インスタ映え」という言葉に象徴されるように、SNSでの評価を意識した旅は多くの人々を魅了してきましたが、同時に「見せるための旅」に疲弊する人も生み出しました。新しいトレンドは、他人からの評価を気にせず、自分自身の心と向き合い、本当に価値があると感じる体験をじっくりと味わうことの重要性を問いかけています。
日本に集まる熱い視線:安全と文化が新たな価値に
米国富裕層が日本を選ぶ理由
この「穏やかな旅」を求めるトレンドの中で、特に注目を集めているのが日本です。レポートによると、アメリカの富裕層は、安全で文化的な価値の高い海外旅行先として日本への関心を高めています。
実際に、日本政府観光局(JNTO)の発表では、2023年の訪日アメリカ人数は過去最高の204万5,900人を記録し、コロナ禍以前の2019年比で17.8%増となりました。また、観光庁の調査によれば、2023年の訪日外国人旅行消費額約5.3兆円のうち、アメリカからの旅行者による消費額は6,062億円(全体の11.5%)に達しており、その影響力の大きさがうかがえます。
彼らが日本に惹かれる理由は、世界トップクラスの治安の良さ、きめ細やかなホスピタリティ、そして伝統とモダンが融合した独自の文化体験にあります。派手な観光地を巡るだけでなく、地方の静かな旅館で過ごしたり、禅や茶道といった精神文化に触れたりすることが、まさに「内なる豊かさ」を求める彼らのニーズと完全に合致しているのです。
ライフステージに寄り添う旅の可能性
レポートでは、更年期や離婚といった人生の転機(ライフステージの変化)に寄り添う、よりパーソナルで特化型の旅も新たな潮流として紹介されています。心身の変化に向き合うためのウェルネスリトリートや、新たな人生の一歩を踏み出すための自己発見の旅などがこれにあたります。
日本には、温泉療法(湯治)や精進料理、森林浴など、古くから心身を癒す文化が根付いています。これらの伝統的な知恵を現代的なウェルネスツーリズムとして再構築することで、世界中の人々の多様なニーズに応える新たな市場を開拓できる可能性を秘めています。
また、「美食としてのヴィーガン」の高級化というトレンドも、日本の精進料理や伝統的な野菜料理にとって大きな追い風となるでしょう。
これからの旅のゆくえ
2026年に向けて、私たちの旅はより思慮深く、パーソナルなものへと進化していくでしょう。それは、どこへ行ったか、何をしたかという「記録」よりも、そこで何を感じ、どう変わったかという「記憶」を大切にする旅です。
simvoyageは、これからも世界の旅行トレンドを追いながら、皆さま一人ひとりが自分だけの「内なる豊かさ」を見つけるための旅をご提案していきます。次の休暇は、流行の観光地リストを脇に置き、ご自身の心に静かに耳を傾ける旅を計画してみてはいかがでしょうか。

