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魅力か、負担か?日本の若者の海外旅行観、鮮明になる「二極化」の背景と未来

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若者の海外旅行、もはや「当たり前」ではない?

かつて多くの若者にとって憧れの対象であった海外旅行。しかし今、その価値観は大きく変化し、「ぜひ行きたい」と考える層と、「あまり行きたくない」と考える層に二極化している実態が明らかになりました。

若者マーケティング研究機関のSHIBUYA109 lab.が2024年4月に15歳から24歳のZ世代を対象に行った調査によると、海外旅行に「行きたい」と回答した若者は74.1%にのぼる一方、「行きたくない」と回答した層も25.9%存在し、約4人に1人が海外旅行に消極的であることが示されました。

この記事では、この「二極化」の背景にある要因を深掘りし、今後の海外旅行のトレンドや旅行業界に与える影響について考察します。

調査で見る「行きたい派」と「行きたくない派」の実態

「海外旅行に行きたい」若者たちの動機

調査で「とても行きたい」(48.2%)、「行きたい」(25.9%)と回答した約7割の若者たち。彼らが海外に惹かれる最大の理由は、「その国ならではの雰囲気を味わう」「日本ではできない体験をする」といった、本物志向と非日常体験への強い欲求です。

SNSで世界の情報を手軽に入手できる時代だからこそ、画面越しでは得られない現地の空気感や文化、人々との交流に価値を見出していると言えるでしょう。また、「現実逃避」も上位の理由に挙がっており、日常から解放される手段として海外旅行が魅力的に映っています。

なぜ海外へ?「行きたくない派」の本音

一方、海外旅行に魅力を感じない、あるいはためらいを感じる若者も少なくありません。彼らが海外旅行に行きたくない理由として最も多く挙げたのは、以下の3つです。

  • お金がかかる
  • 言語の壁を感じる
  • 治安が不安

特に金銭的な負担は、最大の障壁となっています。歴史的な円安と海外の物価高が、若者の海外旅行へのハードルをかつてなく高いものにしているのです。

二極化の背景にあるもの

経済的な壁 – 円安と物価高のダブルパンチ

近年の急速な円安は、海外旅行の費用を直撃しています。例えば、数年前まで1ドル110円前後で推移していた為替レートは、現在150円を超える水準で定着しつつあります。これにより、航空券や宿泊費、現地での食費や買い物など、あらゆる費用が1.3倍から1.5倍近くに高騰している計算になります。

アルバイト代や限られた収入の中から旅行費用を捻出する若者にとって、この負担増は深刻です。同じ予算であれば、より長く滞在でき、贅沢も楽しめる国内旅行を選ぶという判断は、ごく自然なものと言えるでしょう。

情報の洪水と価値観の多様化

インターネットとSNSの普及は、若者の価値観を大きく変えました。YouTubeやInstagramを通じて、世界中の絶景や文化をリアルタイムで追体験できるようになったことで、「わざわざ行かなくても満足できる」と感じる層が生まれたと考えられます。

また、趣味や娯楽の選択肢が爆発的に増えたことも一因です。推し活、ゲーム、グルメ、ファッションなど、国内にいても夢中になれることは数多く存在します。海外旅行が「特別な経験」の代名詞ではなくなり、数ある選択肢の一つへと相対化されたことが、二極化を加速させているのかもしれません。

治安や衛生面への不安

世界各地で報じられる紛争やテロ、凶悪犯罪のニュースは、海外の治安に対する不安を増幅させます。特に、初めての海外旅行を検討する若者にとっては、言語の通じない場所でのトラブルは大きな懸念材料です。

加えて、コロナ禍を経て公衆衛生への意識が高まったことも影響しています。慣れない環境での体調不良や衛生状態への不安が、海外旅行への足かせとなっているケースも考えられます。

未来への影響と旅行業界の課題

変化する旅行スタイル

この二極化は、今後の海外旅行のスタイルに大きな影響を与えるでしょう。

「行きたい派」の若者たちは、より「意味」や「目的」を重視する旅へとシフトしていくと予測されます。単に有名な観光地を巡るだけのツアーではなく、現地の食文化を深く学んだり、特定の趣味(アート、音楽、スポーツ観戦など)を突き詰めたりするような、専門性の高い旅行の需要が高まる可能性があります。

一方で、費用を抑えたいというニーズから、「安・近・短」の旅行先である韓国、台湾、タイといったアジア圏の人気は、今後さらに高まっていくと考えられます。

旅行業界が取り組むべきこと

この状況を受け、旅行業界には新たなアプローチが求められます。

「行きたくない派」が抱える不安を解消するためには、具体的なソリューションの提示が不可欠です。例えば、燃油サーチャージ込みで価格が分かりやすいパッケージ商品の造成、現地での日本語サポートの拡充、治安情報の丁寧な提供などが挙げられます。学生向けの長期割引や、特定の体験に特化したリーズナブルなプランも有効でしょう。

「行きたい派」に対しては、彼らの知的好奇心や探求心を満たす、よりパーソナライズされた旅行体験の提案が鍵となります。SNSで話題のスポットを紹介するだけでなく、その場所が持つ歴史や文化的な背景を伝えるストーリーテリングが、付加価値を高める上で重要になるはずです。

新しい海外旅行のカタチを模索する時代へ

若者の海外旅行離れ、そして鮮明になった二極化は、単なるトレンドの変化ではありません。それは、現代日本の経済状況、情報環境、そして若者たちの多様な価値観を映し出す鏡です。

「海外旅行は誰もが楽しむべきもの」という画一的な価値観は過去のものとなり、これからは個々のニーズに寄り添った、多様な旅のスタイルが求められます。この変化を的確に捉え、新しい時代の「旅の価値」を創造できるかどうかが、今後の旅行業界の未来を左右するでしょう。

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この記事を書いたトラベルライター

SimVoyage編集部は、世界を旅しながら現地の暮らしや食文化を体感し、スマホひとつで快適に旅する術を研究する旅のプロ集団です。今が旬の情報から穴場スポットまで、読者の「次の一歩」を後押しするリアルで役立つ記事をお届けします。

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