2024年の幕開けとなった元旦連休(2023年12月30日〜2024年1月1日)、中国の海外旅行市場が力強い回復を見せました。特に、これまで回復が緩やかだった欧米などへの長距離旅行が人気を集め、その消費を牽引しているのが「Z世代」と呼ばれる若者たちです。この新しいトレンドの背景と今後の展望を探ります。
データが示す海外旅行への強い意欲
中国の大手オンライン旅行会社Trip.com Groupが発表したデータによると、2024年の元旦連休における海外旅行の予約件数は、前年同期比で約388%(約4倍)という驚異的な伸びを記録しました。国内旅行も好調で同168%増となっており、旅行市場全体の熱気がうかがえます。
特に注目すべきは、長距離路線の回復です。人気の海外旅行先ランキングでは、日本、タイ、韓国、シンガポールといった近隣諸国が依然として上位を占める一方、オーストラリア、英国、そしてオーロラ観光を目的とした北欧諸国への旅行予約が大幅に増加しました。これは、旅行に対する制約が完全になくなったことで、これまで抑えられていた長距離旅行への欲求が一気に解放されたことを示しています。
なぜ今、長距離旅行なのか?背景にある複数の要因
この長距離旅行ブームの背景には、いくつかの要因が考えられます。
ビザ緩和措置の効果
中国政府は2023年12月から、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6カ国に対し、一方的なビザ免除措置を開始しました。これにより、これらの国々への旅行のハードルが大幅に下がり、旅行者の関心を強く惹きつけています。旅行サイトでは、これらの国々に関する検索数が急増しており、政策が旅行需要を直接的に刺激していることがわかります。
Z世代の価値観と消費行動
今回の旅行市場で主役となっているのは、1995年以降に生まれた「95後」や2000年以降生まれの「00後」といったZ世代です。彼らは旅行者全体の半数以上を占め、その消費スタイルが市場全体を動かしています。
Z世代は、単なる観光地巡りよりも、ユニークな「体験」を重視する傾向があります。オーロラ観測や、ヨーロッパのクリスマスマーケット、年越しのカウントダウンイベントなど、SNSで共有したくなるような特別な体験にお金を払うことを惜しみません。団体旅行よりも個人旅行を好み、SNSや旅行アプリを駆使して自ら情報を集め、オリジナルの旅程を組むのが彼らのスタイルです。
予測される未来と世界への影響
今回の元旦連休の動向は、中国の海外旅行市場が新たなステージに入ったことを示唆しています。
世界の観光産業にとっての朗報
中国人観光客の本格的な回帰は、パンデミックで大きな打撃を受けた世界の観光産業にとって大きな追い風となります。特に、これまで中国人観光客の誘致に苦戦していた欧米諸国にとって、今回の長距離旅行への関心の高まりは大きなビジネスチャンスとなるでしょう。
Z世代をターゲットにした戦略の重要性
今後、各国の観光業界は、中国のZ世代のニーズを的確に捉える必要があります。モバイル決済(AlipayやWeChat Pay)の導入はもちろんのこと、SNS映えするスポットの整備、現地の文化に深く触れられる体験型ツアーの提供、そして彼らが情報源とするSNSプラットフォーム(小紅書/REDなど)での効果的な情報発信が不可欠となります。
日本市場への示唆
日本は引き続き人気の旅行先ですが、競争は激化しています。円安は大きな魅力である一方、Z世代を惹きつけるためには、伝統的な観光資源に加え、アニメやゲームといったポップカルチャー、ユニークなグルメ体験、地方の隠れた魅力など、彼らの好奇心を刺激する新たなコンテンツ開発が求められるでしょう。
中国の若者たちが牽引する新しい海外旅行の波は、始まったばかりです。彼らの動向を注視することが、今後の世界の観光トレンドを読み解く鍵となることは間違いありません。

