ナイル川の悠久の流れとともに、幾千年もの歴史を刻んできた国、エジプト。黄金のファラオが眠るピラミッド、荘厳な神殿の数々は、訪れる人々の心を捉えて離しません。しかし、この国の魅力は壮大な古代遺跡だけにとどまらないのです。カイロの喧騒に満ちたスーク(市場)を歩けば、スパイスの香りに混じって、ふわりと甘い香りが漂ってくることに気づくでしょう。それは、エジプトの人々の日常に深く根ざした喫煙文化、特に「シーシャ(水タバコ)」が織りなす、魅惑的な香りの風景です。
喫煙者にとって、旅先での一服は、緊張をほぐし、その土地の空気に溶け込むための大切な時間かもしれません。しかし、文化や習慣が違えば、喫煙に関するルールやマナーも大きく異なります。「どこで吸えるの?」「タバコは簡単に手に入る?」「憧れのシーシャを体験してみたいけど、作法がわからない…」そんな不安や疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、アパレル企業で働きながら世界を旅する私が、愛煙家の皆さんのために、エジプトのリアルな喫煙事情を徹底的にガイドします。路上での一服から、文化の象徴であるシーシャの楽しみ方、タバコの持ち込みルール、万が一のトラブル対策まで。女性旅行者の視点も交えながら、安心してエジプトの喫煙文化に触れ、旅を何倍も豊かにするための情報をお届けします。この記事を読めば、あなたはもうエジプトでの一服に迷うことはありません。さあ、古代と現代が交差するエキゾチックな国で、思い出に残る煙の時間を過ごす準備を始めましょう。
エジプトの喫煙文化の概観

エジプトの街を歩いていると、いたるところでタバコを吸う人々の姿が目に入ります。カフェのテラス席や道端の椅子に腰を掛け、様々な形で喫煙を楽しむ光景が広がっています。まずは、この国における喫煙文化の全体像を把握してみましょう。
喫煙大国エジプトの現状
統計データを見てみると、エジプトが世界的に見ても喫煙率の高い国であることが明らかです。特に男性の喫煙率が非常に高く、成人男性の多くが喫煙者であると言われています。この背景には、タバコが比較的安価かつ手に入りやすいこと、そして社交の手段として喫煙が広く浸透している文化的な要因があります。
カイロのような大都市では、スーツ姿のビジネスマンが路上で煙草を楽しむ様子や、ガラベーヤ(エジプトの伝統的な衣装)を身にまとった人々が水タバコを囲んで談笑する光景が日常的に見られます。タバコの煙は、良くも悪くもエジプトの街の空気の一部といえるでしょう。ただし、この喫煙文化は主に男性に根付いており、女性が喫煙することに対する見方はやや異なります。この点については後ほど詳しく述べます。
文化に深く根付いた「シーシャ(水タバコ)」
エジプトの喫煙文化を語る上で欠かせないのが「シーシャ」の存在です。水タバコはナルギレやフーカとも呼ばれ、単なる嗜好品以上の意味を持つ喫煙具です。友人や家族が集まり、お茶を楽しみながらシーシャを回し吸う時間は、エジプトの人々にとって大切なコミュニケーションの場となっています。
街中には「アフワ」と呼ばれる伝統的なシーシャカフェが数多くあり、その軒先にはさまざまなデザインのシーシャが並んでいます。夕暮れ時には仕事帰りの人々で賑わいを見せます。フレーバー付きのタバコの葉を炭で熱し、その煙を水を通して吸うシーシャは、紙巻きタバコとは異なる、まろやかで香り豊かな味わいが特徴です。旅の思い出にシーシャを体験してみたいと考える方も多いでしょう。その魅力や楽しみ方については、後ほど詳しく解説いたします。
旅行者が知るべきエジプトの喫煙ルール
エジプトでは喫煙が日常生活の一部となっていますが、旅行者がどこでも自由にタバコを吸えるわけではありません。快適な旅を楽しむためには、現地の法律やマナーを正しく把握することが欠かせません。ここでは、具体的に「どこで喫煙でき、どこでは禁止されているか」について詳しくご紹介します。
喫煙が許される場所
基本的に、エジプトでは屋外での喫煙はかなり寛容に見られています。街中の路上での喫煙は多くの場合黙認されているものの、灰皿が設置されていないことも多いのが現状です。ただし、吸い殻のポイ捨ては厳禁です。これは世界共通のマナーとして心得ておきましょう。旅行者として訪れる私たちは当地の文化を尊重しつつ、より高い意識を持つべきです。携帯灰皿を一つバッグに忍ばせておくことを強くおすすめします。それだけで旅人としての品格がぐっと上がります。
喫煙者にやさしいスポットとしては、カフェやレストランの屋外テラス席があります。おいしいミントティー(シャイ・ビ・ナーナ)を手に、街の賑わいを眺めながら一息つく時間は格別のひとときです。多くのお店ではテーブルに灰皿が置かれています。
また、ホテルの中には、喫煙可能な客室(スモーキングルーム)が用意されているところもあります。予約の際にリクエストするか、チェックイン時に確認してみましょう。自室のバルコニーでナイル川の夕日を眺めながらの一服は格別です。ただし、全館禁煙のホテルが増えているため、事前に確認することが重要です。
喫煙禁止の場所についての詳細
寛容さが感じられるエジプトでも、法律で喫煙が禁止されている場所が存在します。知らずに喫煙すると罰金が科されることもあるため、しっかりと理解しておきましょう。
公共交通機関・公共施設
2002年に施行された法律(法律85号/2002年)により、屋内の公共の場での喫煙は禁止されています。具体的には以下の場所が該当します。
- 公共交通機関: カイロの地下鉄や市バス、列車内は全面禁煙です。駅のホームやバス停など屋外であっても、喫煙が禁じられている場所があるため、標識や周囲の状況をよく確認しましょう。
- 公共施設: 政府庁舎、病院、診療所、学校、大学などの教育機関内も禁煙エリアです。
- その他: 映画館、劇場、図書館、博物館、美術館などの屋内も禁煙となっています。
特に留意すべきは、ルクソール神殿やカルナック神殿、王家の谷といった貴重な古代遺跡です。これらの遺跡の敷地内、特に神殿や墓の内部での喫煙は厳しく禁止されており、人類の遺産を守るため絶対に守るべきルールです。
レストランやカフェの屋内
法律上は、レストランやカフェの屋内も禁煙と規定されていますが、実際の運用は店舗ごとに異なります。完全禁煙を徹底する店もあれば、喫煙エリアと禁煙エリアを分けていたり、黙認されている場合もあります。旅行者はまず禁煙と考えて行動するのが安全です。入店時に「May I smoke here?」と尋ねたり、灰皿の有無を確認するのもよいでしょう。喫煙したい場合は屋外テラス席を選ぶのが確実です。
もし禁煙場所で喫煙してしまい、警察官や施設の係員に注意を受けた際は、すぐに謝罪し、タバコを消してください。罰金額は50〜100エジプト・ポンドですが、トラブルになるのを避けるため、素直に従うのが賢明です。
女性の喫煙事情 – 現地の視点と旅行者としての心得
前述のとおり、エジプトの喫煙文化は伝統的に男性が中心です。特に地方や保守的な地域では、女性が公の場で喫煙することに否定的な目が向けられることがあります。
しかし、カイロやアレクサンドリアなどの大都市、欧米文化の影響が強い地域では、若い世代を中心に女性喫煙者も増え、カフェで喫煙する光景も珍しくなくなっています。筆者の経験では、カイロのファッショナブルな地区ザマレックにあるカフェでは、おしゃれな女性たちが友人と語らいながら自然にタバコやシーシャを楽しんでいます。
では、女性旅行者はどのように振る舞うべきでしょうか。基本は「場所を選ぶ」ことが肝心です。観光客が多いレストランのテラス席やホテルのラウンジ、自室のバルコニー、ザマレックのような洗練された地区のカフェであれば、周囲を気にせず一服を楽しめます。一方、ローカルな人々が集まる「アフワ」やイスラム地区の路地裏などで一人でタバコを吸うのは目立ちすぎるため、避けたほうが無難です。安全面も考慮し、少し慎重になることをおすすめします。
旅先で現地の文化に合わせる柔軟さも重要です。周囲の雰囲気を読み、TPOをわきまえた行動を心がけることが、快適かつ安全な旅を送るための鍵と言えるでしょう。
タバコの持ち込み・持ち出しに関する規定

旅の準備段階で気になるのが、タバコの持ち込みに関するルールです。愛用している銘柄を日本から持参したい、あるいは現地で珍しいタバコをお土産にしたいと考える方もいらっしゃるでしょう。ここでは、出入国に関する正確な情報をお伝えします。
日本からエジプトへ – 持ち込み可能なタバコの数量
エジプト入国時の免税範囲は、旅行者一人あたり次のように定められています。
- 紙巻きタバコ: 200本(1カートン)
- または 葉巻: 50本
- または 刻みタバコ: 200グラム
これらのうちいずれか一つの種類だけが該当します。一般的な旅行の場合は、1カートンまでと覚えておけば問題ありません。規定量を超えて持ち込む場合は申告が義務付けられ、関税が課されます。申告を怠ると没収や罰金の対象となることがあるため、必ず規定量を守りましょう。
電子タバコ・加熱式タバコの持ち込みについて
近年愛用者が増えている電子タバコ(VAPE)や加熱式タバコ(IQOSなど)についても気になるポイントです。エジプトでは長らく電子タバコ関連商品の販売が禁止されていましたが、2021年の法改正により、販売および使用が合法化されました。これに伴い、個人使用目的の持ち込みは基本的に問題ありません。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 本体とバッテリー: 航空会社の規定により、リチウムイオン電池を内蔵する電子タバコ本体は必ず機内持ち込み手荷物に入れなければなりません。スーツケースなどの受託手荷物に入れることは認められていません。
- リキッド: リキッドの持ち込み量は機内の液体物制限に従い、通常は100ml以下の容器に入れ、合計1リットル以内で透明なジッパー付き袋に収納する必要があります。受託手荷物に入れる場合は気圧の変化で漏れる恐れがあるため、十分に梱包してください。
- 予備の準備: エジプト国内では専門店がまだ少なく、希望するデバイスやリキッド、スティックを入手するのは難しい状況です。滞在中の必要量は日本から持参するのが確実です。
最新の情報や詳細規定については、利用する航空会社の公式サイトを確認することをおすすめします。例えば、エジプト航空の公式サイトでは持ち込み禁止品目に関する情報が掲載されているため、渡航前に目を通すと安心です。
エジプトから日本へ – お土産として持ち帰る際のルール
エジプトのタバコやシーシャ関連グッズは、個性的なお土産として人気です。エジプトから日本に持ち帰る際の免税範囲は、日本の税関の規定に準じます。
- 紙巻きタバコ: 200本(なお、日本製と外国製のタバコはそれぞれ200本ずつ、合計最大400本まで可能ですが、ここでは外国製品として200本と見なすのがシンプルです)
- 葉巻: 50本
- 加熱式タバコ: 個包装の箱で200個まで
- その他のタバコ(刻みタバコ、シーシャのフレーバーなど): 250グラムまで
シーシャのフレーバー(タバコ葉)は「その他のタバコ」に分類され、250グラム以内であれば免税で持ち込めます。また、シーシャ本体(喫煙具)はタバコ製品に該当しませんので、この免税枠とは別に持ち帰ることが可能です。ただし、大型や高額なものは他の物品と合算した際に20万円の免税枠を超える場合があるため、注意が必要です。
お土産にシーシャのフレーバーを選ぶ際は、密封されていることや品質表示が適切であることを確認しましょう。市場などで量り売りされているものは品質が不確かな場合があるため、専門店で購入することをおすすめします。
エジプトでのタバコの購入方法
持参したタバコがなくなったり、現地の銘柄を試してみたくなることもあるでしょう。エジプトではタバコが非常に手軽に入手できます。
購入できる場所 – キオスクからスーパーマーケットまで
エジプトで最も気軽にタバコを買える場所として、「キオスク(Kiosk)」と呼ばれる小規模な売店があります。街のあちこちに点在しており、タバコのほか飲み物やお菓子、新聞なども販売しています。ショーケースに並ぶタバコの箱を指差すだけで注文できるため、言葉に自信がなくても簡単に購入可能です。
また、大型のスーパーマーケットでもタバコを取り扱っています。通常、レジ付近に置かれていることが多く、キオスクよりは定価で安心して買えますが、品ぞろえはキオスクの方が豊富な場合があります。
さらに、カイロ市内にはタバコ専門店もあり、輸入タバコや葉巻、シーシャ用品を多彩に揃えています。特定の銘柄を探したい時や高品質なシーシャフレーバーを土産にしたい際には、こうした専門店を訪れるのがおすすめです。
主なタバコ銘柄と価格帯
エジプトで最もポピュラーなブランドは、やはり国産の「クレオパトラ(Cleopatra)」です。非常に安価で多くのエジプト人に愛用されています。独特の風味があり、話のネタとして一度試してみるのも良いでしょう。
もちろん、マールボロ(Marlboro)、L&M、メリット(Merit)、ケント(Kent)などの世界的ブランドも広く流通しており、キオスクで簡単に購入可能です。価格は日本と比べてかなり手頃で、銘柄にもよりますが1箱あたり数十エジプト・ポンド(日本円で約200円から400円程度)が相場です。ただし、エジプトの物価は経済情勢により大きく変動するため、あくまで目安として考えてください。
購入時の注意点 – 偽物にご注意を
残念ながら、特に観光客が多いエリアでは偽タバコが流通していることもあります。極端に安価なものやパッケージの印刷が不鮮明なものには注意が必要です。偽物は健康に悪影響を及ぼす恐れがあるため、少しでも怪しいと感じたら購入を控えましょう。
信頼できる購入先は、やはりスーパーマーケットや地元の人でにぎわうしっかりしたキオスクが安心です。観光地の中心部で観光客にしつこく声をかける物売りからの購入は避けてください。また、支払い時にお釣りをごまかされる場合も稀にあります。支払う際は小銭や小さな紙幣を用意し、その場でお釣りをしっかり確認する習慣をつけましょう。
エジプト文化の真髄「シーシャ(水タバコ)」完全ガイド

さあ、いよいよエジプトの喫煙文化の花形であるシーシャの世界へご案内します。ただ煙を味わうだけでなく、その場の空気や流れる時間も堪能するのがシーシャの真髄です。正しい知識とマナーを心得て、忘れられない体験を作りましょう。
シーシャとは?その歴史と魅力
シーシャは、特別なフレーバーがつけられたタバコの葉を炭で加熱し、その煙を水の入ったガラス容器に通してろ過したうえで、長いホースを使って吸う喫煙具です。煙が水を通ることで冷却され、口当たりが非常に滑らかになるのが特徴です。その起源については諸説ありますが、インドで誕生し、ペルシャを経由してオスマン帝国時代にアラブ世界に広まったとされています。
エジプトにおいて、シーシャは単なる娯楽の手段ではなく、「社交の潤滑油」としての役割を担っています。人々はアフワに集い、シーシャを囲みながら政治やビジネス、日常の出来事について語り合うのです。時には一人で思索にふけり、またある時は仲間と夜遅くまで歓談を楽しみます。ゆったりと煙をくゆらせる時間は、慌ただしい毎日から解放されるための大事な儀式であり、この独特のゆるやかな空気感こそがシーシャ体験の最大の魅力と言えるでしょう。
カイロで極上のシーシャ体験!おすすめカフェ(アフワ)
カイロには数多くのアフワがありますが、旅行者でも安心して楽しめる、雰囲気抜群のお店をいくつかご紹介します。
- El Fishawy Cafe(エル・フィシャウイ・カフェ): カイロ最大級の市場、ハーン・エル・ハリーリの奥まった場所にある、1797年創業の老舗カフェです。迷路のような路地の中に佇み、華やかな装飾と大きな鏡が壁一面を覆う内装は、まるで時代を遡ったかのような感覚を味わえます。ノーベル文学賞受賞者ナギーブ・マフフーズも通ったと伝えられるこの場所で、市場の喧騒をBGMにシーシャを楽しむ体験は格別です。観光客で常に賑わっているものの、一度は訪れてみる価値があります。
- Naguib Mahfouz Cafe(ナギーブ・マフフーズ・カフェ): こちらもハーン・エル・ハリーリ内に位置しますが、エル・フィシャウイよりもやや落ち着いた雰囲気で、食事も提供されるレストランカフェです。冷房の効いた快適な空間で、高品質のシーシャと美味しいエジプト料理を楽しめます。伝統音楽の生演奏が行われることもあり、ゆったり過ごしたい方におすすめです。
- ザマレック地区のおしゃれなカフェ: ナイル川の中洲に位置するザマレックは、大使館や高級マンションが立ち並ぶ洗練されたエリアです。ここにはモダンでスタイリッシュなカフェが多く、若者や外国人駐在員に人気があります。伝統的なアフワとは一線を画す現代的な雰囲気の中でシーシャを味わえます。インテリアにもこだわりを見せる店舗が多く、私のようにファッションやデザインに興味がある人には魅力的な空間です。
シーシャの注文から楽しみ方までの流れ
初めてアフワに行くと緊張するかもしれませんが、手順は非常にシンプルです。以下のステップを覚えておけば、スマートにシーシャを楽しめます。
- ステップ1: 店内へ入り、席を選ぶ
気に入ったアフワに入ったら、空いている席に座りましょう。店員がメニューを持ってきてくれます。屋外席は、通りを行き交う人々を眺められるのでおすすめです。
- ステップ2: フレーバーを選択する
シーシャには様々なフレーバーがあります。最もポピュラーで間違いがないのは「トゥッファーハ(リンゴ)」と「ナーナ(ミント)」です。ダブルアップル(リンゴ2種のミックス)も定番です。その他、レモン、グレープ、ストロベリー、メロンなどフルーツ系が充実しています。迷ったら店員に「Which is popular?(どれが人気ですか?)」と尋ねると良いでしょう。フレーバーによって料金が少し異なります。
- ステップ3: ドリンクも一緒に注文する
シーシャを楽しむ際は、ドリンクも欠かせません。エジプトの定番は、熱々のグラスにたっぷりのミントを入れた「シャイ・ビ・ナーナ(ミントティー)」です。甘いシーシャの煙とさっぱりとしたミントティーの組み合わせは絶妙です。その他、トルココーヒー(アハマ)やフレッシュジュースもおすすめです。
- ステップ4: シーシャが運ばれてきたら体験開始
しばらくすると炭がセットされたシーシャが届きます。ホースの先端には通常、個包装された使い捨てマウスピースが付いています。自分で開封し、ホースの先に装着しましょう。衛生面が気になる場合は、日本から自分専用のマウスピースを持参するのも良いアイデアです。準備ができたらゆっくりと深く吸い込みます。紙巻きタバコのように肺に溜めるのではなく、口の中で煙を味わい、ゆっくり吐き出すイメージです。焦らず、自分のペースで楽しんでください。
- ステップ5: 炭の交換時期を見極める
30分から1時間ほど吸っていると、炭が小さくなり煙の味が薄くなったり、焦げ臭さが出たりします。そうなったら炭を管理している店員(通常は炭の入ったカゴを持っています)に合図を送り、炭の交換をお願いしましょう。新しい炭で、またフレッシュな味わいが戻ります。
- ステップ6: お会計
満足したら店員を呼び「ヒサーブ、ミンファドラック(お会計お願いします)」と言って支払いをしましょう。多くの場合サービス料は含まれていないため、合計金額の10%ほどのチップ(バクシーシ)をテーブルに置くのがスマートなマナーです。
シーシャを楽しむ際のマナーと注意点
リラックスして楽しむために、知っておきたいマナーをご紹介します。
- ホースの扱い: ホースの先端を人に向けるのは失礼にあたります。人に渡す際は、先端ではなくホースの途中を折り曲げて手渡しましょう。
- タバコの火付けは自分のライターで: シーシャの炭で自分の紙巻きタバコに火をつける行為はマナー違反です。必ず自分のライターを使ってください。
- 健康への注意: シーシャは煙を水に通すため害が少ないと思われがちですが、それは誤解です。燃焼したタバコの葉から発生するニコチンやタール、一酸化炭素などの有害物質は吸い込まれます。日本の厚生労働省も水タバコの健康リスクを警告しています。1回のセッションが長時間になることから、紙巻きタバコよりも多くの煙を吸引する可能性も指摘されています。あくまで嗜好品として、節度を守って楽しむことが大切です。
電子タバコ・加熱式タバコの最新事情
紙巻きタバコやシーシャに加えて、VAPEや加熱式タバコを愛用する方に向けて、エジプトにおけるこれらの最新動向についてもご紹介します。
エジプトにおけるVAPE・加熱式タバコの法的状況
先述の通り、2021年の法改正により、エジプト国内での電子タバコおよび加熱式タバコの販売、流通、使用が正式に合法となりました。これはユーザーにとって喜ばしいニュースです。ただし、法施行から日が浅いこともあり、社会的認知度や普及率は日本や欧米諸国と比べてまだ低いのが現状です。
街中でVAPEを使用している人をほとんど見かけないため、公共の場での使用は珍しがられたり、奇異の目で見られる可能性があります。利用する際は、周囲の状況を把握したうえで判断することが大切です。
旅行者向け:使用と充電に関する実用的な情報
- デバイスや消耗品の入手: カイロなどの大都市には徐々にVAPE専門店が増えつつありますが、その数は非常に限られています。品揃えも限られており、日本で使用している特定ブランドのリキッドや加熱式タバコのスティックが手に入る保証はありません。繰り返しになりますが、滞在期間中に必要なデバイスやリキッド、スティック、交換用コイルなどはすべて日本から持参するのが最善です。
- 充電環境について: エジプトの電圧は220Vで周波数は50Hzです。これは日本の100Vとは異なるため、日本の電化製品をそのまま使用できません。ただし、近年の電子タバコ用充電器やUSBアダプターの多くは、100V〜240Vまで対応した海外兼用タイプが主流です。アダプターに「INPUT: 100-240V」などの表記があるかどうかを確認してください。この表記があれば変圧器は不要ですが、コンセントのプラグ形状は日本のAタイプとは異なり、丸ピンが2本並ぶCタイプかFタイプが主流です。したがって、変換プラグは必ず用意しましょう。旅行用品店や家電量販店で数百円で入手可能です。
VAPE使用時のマナーと周囲への配慮
VAPEのマナーは基本的に紙巻きタバコと同様です。公共交通機関や公共施設、飲食店の屋内など禁煙場所では絶対に使用しないでください。屋外の喫煙が認められている場所での利用にとどめましょう。
特にVAPEは製品によっては大量の蒸気が発生するものがあります。この大量の蒸気はエジプトの人々にとって馴染みが薄く、不快感や驚きを与えてしまうこともあります。人混みやカフェのテラス席など人が密集している場所では、蒸気の量を控えるか使用を控えるといった気配りが必要です。現地の慣習にならい、「郷に入っては郷に従え」の心で周囲に迷惑をかけないよう努めることが、異文化交流の第一歩と言えるでしょう。
喫煙に関するトラブルと対処法

どれだけ注意を払っていても、海外旅行では予期せぬトラブルに遭遇することがあります。特に喫煙に関しては、ほんの些細な誤解が問題へと発展する場合もあるため、万が一の際に冷静に対応できる方法を知っておくことが重要です。
禁煙エリアで喫煙してしまった場合
もし誤って禁煙エリアでタバコを吸い、警察官や係員から注意を受けた際は、何よりも「素直かつ迅速に謝罪する」ことが大切です。反抗的な態度をとったり、言い訳をすることは避けましょう。すぐに「I’m sorry, I didn’t know.(すみません、知りませんでした)」と伝え、タバコの火を消してその場を離れてください。多くの場合、悪意がないと判断されれば厳重注意で済むことがほとんどです。もし罰金を請求された際は、慌てずに相手の身分証明書の提示を求め、正式な警察官や職員かどうかを確認する冷静さが必要です。
タバコの押し売りや高額請求に遭った場合
ピラミッド周辺やハーン・エル・ハリーリなどの人気観光地では、しつこい物売りに声をかけられることがあります。中には法外な価格でタバコを売りつけようとする人もいるため、興味がなければ、目を合わせずに「ラー、シュクラン(No, thank you)」とはっきり伝えましょう。曖昧な態度を取るのは控えてください。しつこくつきまとわれた場合は無視してその場を速やかに離れるのが一番です。万が一、腕を掴まれるなど身の危険を感じた場合は、大声で助けを求めたり「ツーリストポリス!」と叫んだりするのが効果的です。
体調不良時の対応 – 医療機関について
慣れない場所での喫煙やシーシャの過剰な吸引により体調を崩すことも考えられます。また、旅先では予測できない事態が起こることもあります。いざ病院へ行く必要が出た場合に備えて、以下の点を準備し把握しておくと安心です。
- 海外旅行保険への加入: これは必須事項です。エジプトの医療費は高額になることがあり得ます。必ず出発前に、十分な補償内容の海外旅行保険に加入してください。キャッシュレス診療が可能な医療機関と提携している保険会社を選ぶと、さらに安心です。
- 日本語対応可能な医療機関: カイロには、日本人や外国人が多く利用する設備の整った私立病院が複数あります。事前に調べておくことで、緊急時にあわてずに対応できます。
- 大使館への連絡: 重篤な病気や事故に遭った場合は、在エジプト日本国大使館へ連絡することが可能です。医療機関の案内や家族への連絡支援などを受けることができます。連絡先や住所はパスポートのコピーと一緒に、いつでも確認できるように保管しておきましょう。
エジプトの風を感じる、あなただけの喫煙スタイルを
古代文明の息吹と現代の人々の活気が交錯する国、エジプト。この地の喫煙文化は、単なるタバコの消費行為にとどまらず、人々の暮らしのリズムやコミュニケーションと密接に結びついています。
路上での喫煙は寛容に受け入れられている一方で、守るべき禁煙規則も厳格に存在しています。男性中心の社会においても、徐々に変化の兆候が見え隠れしています。そして何より、時間を楽しむための素晴らしい文化であるシーシャが根付いていることが特徴です。この多様性と奥深さこそが、エジプトの喫煙事情の大きな魅力ではないでしょうか。
旅人である私たちは、この文化の訪問者にすぎません。ルールを守り、マナーを大切にし、周囲への配慮を忘れないことが肝要です。そのうえで、自分自身のスタイルでエジプトの煙文化に触れてみてください。ハーン・エル・ハリーリの喧噪のなかで味わうシーシャの甘い煙や、ナイル川沿いで夕陽を見ながらの一服は、ピラミッドや神殿を訪れた感動と同じくらい、あなたの心に深く刻まれる忘れがたい旅の思い出となるでしょう。
携帯灰皿を手に、変換プラグをバッグに忍ばせ、ほんの少しの知識とマナーを胸に。さあ、あなただけのエジプトの旅へと踏み出しましょう。そこには、日常を忘れさせてくれる、エキゾチックで豊かな時間が待っています。

