「大西洋の真珠」と称えられる、ポルトガル領マデイラ島。リスボンから飛行機で約1時間半、そこは一年を通して温暖な気候に恵まれた、常春の楽園です。切り立った崖に青い海、そして色とりどりの花が咲き誇る絶景は、訪れる人々の心を瞬時に奪います。アパレル企業で働きながら、長期休暇を見つけては世界の街角を旅する私、亜美にとっても、マデイラ島はいつか訪れたいと願っていた特別な場所でした。
この島の魅力は、その美しい自然景観だけではありません。実はマデイラ島は、食通たちを唸らせる「美食の宝庫」でもあるのです。豊かな海が育んだ新鮮な魚介、太陽の光をたっぷり浴びて育ったトロピカルフルーツ、そして世界三大酒精強化ワインの一つに数えられるマデイラワイン。島の歴史と文化が凝縮されたその食体験は、旅の記憶をより一層、鮮やかで忘れられないものにしてくれます。今回は、私が実際にマデイラ島を巡って心から感動した絶品グルメの数々を、レストランの選び方から市場での楽しみ方、ワイナリー巡りのコツまで、具体的な旅のヒントを交えながら、たっぷりとご紹介します。この記事を読み終える頃には、あなたもきっとマデイラ島への航空券を探し始めているはず。さあ、一緒に美食の旅へ出かけましょう。
このグルメの旅をさらに深めたい方は、マデイラ島の必食グルメ完全ガイドで伝統料理から魅惑のスイーツまで詳しくチェックしてみてください。
マデイラ島の食文化を彩る!絶対に外せない名物料理

マデイラ島に到着したら、まずはその土地ならではの味覚を楽しむことから旅を始めましょう。ここでは、島のレストランで必ず味わえる代表的な郷土料理をご紹介します。どれもシンプルながら、素材の良さが際立つ逸品ばかりです。
迫力満点の牛串焼き「エスぺターダ」
マデイラ島の郷土料理といえば、多くの地元の人が真っ先に挙げるのが「エスぺターダ(Espetada)」です。大きな牛肉の塊をにんにくと塩、それに月桂樹の葉でシンプルに味付けし、長い串に刺して炭火でゆっくりと焼き上げる豪快な一品です。
特に注目したいのは、串に月桂樹の枝が使われている点です。炭火の熱で月桂樹の爽やかで上品な香りが牛肉に移り、口に入れた瞬間にふわっと鼻を抜けていきます。赤身が多い肉質は噛むたびに旨みがあふれ、絶妙な塩加減とガーリックの風味が食欲をかき立てます。焼き加減はミディアムレアがおすすめで、外は香ばしく中はジューシーな食感が存分に楽しめます。
レストランでは、この長い串がテーブルに設置された専用のフックに吊るされて提供されるのが一般的。見た目のインパクトが強く、テーブルを一段と華やかに演出します。滴り落ちる肉汁は下の皿に置かれたフライドポテトやサラダにかかり、それもまた美味しいソースの一部となるのです。友人や家族と来た際は、ぜひエスぺターダを囲んで賑やかな食事の時間をお楽しみください。マデイラの食べ方はシェアが基本。ひとりで味わうのも良いですが、大勢でわいわいと食べることで美味しさが倍増します。
実際にできること:エスぺターダの注文方法
多くのレストランではエスぺターダは一人前単位で注文可能です。メニューには「Espetada à Madeirense」と表記されていることが多いです。付け合わせ(Acompanhamentos)は別料金の場合があるため、事前に確認しましょう。定番の組み合わせとしては、トウモロコシの粉を揚げたキューブ状のフリット「ミーリョ・フリット(Milho Frito)」やミックスサラダ「Salada Mista」があります。焼き加減を尋ねられたら「Mal passado(レア)」「Médio(ミディアム)」「Bem passado(ウェルダン)」の中からお好みを伝えましょう。
甘じょっぱさがクセになる「エスパーダ・コン・バナナ」
続いてご紹介するのは、マデイラ島の食文化の独自性を象徴する料理、「エスパーダ・コン・バナナ(Espada com Banana)」です。エスパーダとは、マデイラ近海の深海に生息するタチウオのこと。黒くぬるっとした体に鋭い歯があり、見た目はややグロテスクですが、その身は非常に淡白で上品な白身魚です。
この料理では、エスパーダに衣をつけてカリッと揚げ、ソテーした甘いバナナが添えられます。一見すると不思議な組み合わせに感じるかもしれませんが、一口食べればその相性の良さに驚くことでしょう。サクサクの衣に包まれたふわふわの白身魚の塩気と、バターで香ばしくソテーされたバナナの濃厚な甘みが口の中で絶妙に調和し、独特のハーモニーを生み出します。時にはパッションフルーツソースが添えられ、南国らしいトロピカルな風味が全体をまとめ上げています。
この料理は、マデイラ島の豊かな自然が育んだ海の幸と山の幸が見事に融合した一皿といえるでしょう。さわやかな酸味が特徴のポルトガル産微発泡白ワイン「ヴィーニョ・ヴェルデ(Vinho Verde)」との相性も抜群です。見た目もインパクトがあり、旅の思い出として写真映えする一皿を求める方にもおすすめです。
海の香りが詰まった前菜「ラパス」
メインの前にぜひ味わってほしいのが「ラパス(Lapas)」です。これはカサガイ(ツタノハガイ科の貝)を鉄のフライパンに並べ、たっぷりのガーリックバターと共にグリルしたシンプルな料理。熱々の状態で運ばれてくると、ニンニクとバターの香ばしい香りが漂い、食欲をそそります。
食べ方はとても簡単。添えられたレモンをたっぷり絞り、小さなフォークで貝の身を殻から取り出していただきます。プリプリとした弾力のある食感と噛むほどに広がる磯の香り、そしてガーリックバターのコクが融合し、まさに至福の味わいです。冷やした白ワインや地元のビール「Coral」と一緒に味わえば、食事の満足感がさらに高まります。前菜として数人でシェアするのにちょうど良い量で提供されることが多いものの、その美味しさから追加注文する人も珍しくありません。
実際にできること:ラパス注文時の注意点
ラパスは通常、6個または12個単位で注文します。メニューには「Lapas Grelhadas」と記載されていることが多いです。価格が時価(Preço sob consulta)で表示される場合もあるため、注文前に料金を確認しておくと安心です。特に観光客向けのレストランでは、念のため確認することをおすすめします。
素朴で優しい味わいのパン「ボーロ・ド・カコ」
マデイラ島の食卓に欠かせないのが「ボーロ・ド・カコ(Bolo do Caco)」です。ボーロは「ケーキ」、カコは「玄武岩のプレート」を意味しますが、実際はパンの一種。サツマイモを練り込んだ生地を発酵させ、平らな円形に形成した後、鉄板や石の上で焼き上げます。
特徴は、外側はカリッと香ばしく、中は驚くほどもちもちでふんわりとした食感に仕上がっている点です。温かい状態で提供されることが多く、水平にスライスした間にたっぷりと溶かしバターとにんにくが塗られています。ガーリックバターがパン生地にじんわり染み込み、シンプルながらクセになる美味しさです。多くのレストランでは、注文しなくてもパン(Couvert)として最初に出されることもありますが、前菜として単独注文することも可能です。
また、このボーロ・ド・カコをバンズ代わりに使ったサンドイッチ「プレゴ・ノ・ボーロ・ド・カコ(Prego no Bolo do Caco)」も地元民に人気のB級グルメ。薄切りのステーキを挟んだもので、気軽なランチにぴったりです。街角のカフェや軽食スタンドで手軽に味わえるため、散策の合間に小腹が空いたときにぜひ試してみてください。
ポルトガルの家庭料理「アトゥム・デ・セボラーダ」
マデイラ島はマグロ漁も盛んで、新鮮なマグロを使った料理が豊富です。その代表的な家庭料理が「アトゥム・デ・セボラーダ(Atum de Cebolada)」です。厚めに切ったマグロの身を、たっぷりの玉ねぎ、トマト、白ワイン、ハーブとともにじっくり煮込んだ一皿です。
じっくり火を通すことで、玉ねぎは甘くとろけるような食感に変わり、その甘みがマグロの旨みを引き立てます。トマトの酸味と白ワインの香りが全体をすっきりとまとめ、どこか懐かしさを感じさせる優しい味わいに。パサつきがちなマグロもふんわり柔らかく仕上がっており、ソースはパンや茹でたジャガイモに絡めて最後の一滴まで楽しめます。華やかさはないものの、マデイラの人々の生活に根付いた心温まる料理です。シーフードレストランだけでなく、地元の人々が集う小さな食堂(タスカ)でも見つけられます。
楽園の恵みが集う!フンシャルの市場「メルカド・ドス・ラヴラドーレス」を歩く
マデイラ島の食文化を実感したいなら、州都フンシャルの旧市街に位置する「メルカド・ドス・ラヴラドーレス(Mercado dos Lavradores)」、つまり「農民市場」への訪問が最適です。アール・デコ様式の美しい建築の内部には、まるで世界の縮図のように多種多様な食材が所狭しと並んでいます。
市場の入口をくぐると、まず目に飛び込んでくるのはカラフルな花の数々。極楽鳥花(ストレリチア)や蘭などの南国らしい鮮烈な花々が並び、その甘い香りで訪れる人々を迎えてくれます。さらに奥へ進むと、まさにフルーツの楽園が広がります。マンゴーやパパイヤ、アボカドはもちろん、日本ではなかなか見かけない珍しいトロピカルフルーツが山積みにされています。
見逃せない!珍しいトロピカルフルーツの世界
市場の2階には特にフルーツ売り場が充実しています。ぜひ味わいたいのが、マデイラ島ならではのユニークな果物たちです。
- モンスターフルーツ(Monstera Deliciosa)
名前の通り、観葉植物のモンステラが実らせる果実です。見た目は緑色のトウモロコシに似ています。熟すと、鱗状の皮が自然に剥がれ、中から白くて甘い果肉が姿を現します。その味わいは、バナナとパイナップルを掛け合わせたような、甘くてトロピカルな風味。ただし未熟な部分にはシュウ酸カルシウムが含まれ、食べると口の中がピリピリするため注意が必要です。市場の店主は食べ頃を熟知しているので、選ぶ際は彼らに任せるのが安心です。
- マラクジャ・バナナ(Maracujá Banana)
小さな黄色いバナナのような見た目ですが、中身はパッションフルーツです。皮を割ると、ゼリー状の果肉と小さな種が現れ、甘酸っぱく爽やかな香りが漂います。スプーンで果肉をすくって味わいます。他にもトマトの形をした「マラクジャ・トマテ」など、さまざまな種類のパッションフルーツがあり、その奥深さに驚かされます。
実際にできること:市場でのフルーツ購入ポイント
- 準備と持ち物
市場を歩く際は歩きやすい靴が基本です。フルーツ購入を考えているならエコバッグの持参がおすすめ。試食で手が汚れる場合もあるため、ウェットティッシュもあると便利です。
- 試食と購入時の注意点
多くの店でフルーツの試食が提供されますが、中には観光客とわかると強引に試食を勧め、高値で売ろうとする店員もいます。断る勇気も大切です。「Não, obrigado/obrigada(ナオン、オブリガード/オブリガーダ)」(いいえ、結構です)とはっきり伝えましょう。購入時には必ず価格を確認し、「Quanto custa?(クアント・クシュタ?)」(いくらですか?)と尋ねてください。値段交渉は基本的に行わず、表示価格での購入がマナーです。
- 日本への持ち込みについて
残念ながら生果物の多くは日本の植物防疫法によって持ち込みが禁止または制限されています。せっかくの思い出ですが、持ち帰りは控えましょう。旬の味は現地で存分に楽しみ、ジャムやジュースなどの加工品をお土産にするのが賢明です。最新情報は農林水産省植物防疫所の公式サイトでご確認ください。
新鮮そのもの!魚市場の迫力と魅力
市場の地下には活気あふれる魚市場が広がっています。早朝に訪れると、水揚げされたばかりの新鮮な魚介類がずらりと並び、マグロの解体作業や威勢の良い掛け声が飛び交う活気ある風景を目にすることができます。
ここで主役となるのは「エスパーダ」。先述の黒く長いタチウオです。水槽や氷の上に並ぶその姿は迫力満点。地元の人が真剣に魚を選び、手際よく捌く光景は、島の食文化の根幹に触れる貴重な体験となるでしょう。その他にも、大型のマグロ、タコ、色鮮やかな小魚など、多彩な海の恵みが感じられます。
実際にできること:魚市場見学の心得
- 服装と準備
床が濡れて滑りやすいため、滑りにくいスニーカーなどの靴で訪れるのが安全です。魚の生臭さが服につくこともあるため、汚れても差し支えない服装を選ぶと安心です。活気のある見学に適した時間帯は、午前8時から10時頃です。
- 行動の流れとマナー
魚市場は観光地であると同時に地元の生活の場です。通路の妨げになったり、大声を出したりするのは控えましょう。写真を撮る際は、働く人の邪魔にならないよう配慮し、一言「Posso tirar uma foto?(ポッソ・ティラール・ウマ・フォト?)」(写真を撮ってもよろしいですか?)と問いかけるのが望ましいです。ほとんどの人が快く承諾してくれますが、相手への敬意を忘れないように心がけましょう。
食の締めくくりはこれで決まり!マデイラワインの奥深い世界

マデイラの食文化を語る際に、欠かせない存在がマデイラワインです。シェリーやポートワインと並び称される世界三大酒精強化ワインの一つであり、その誕生は大航海時代の偶然によるものという興味深い背景を持っています。
かつて、船でワインを運ぶ際、赤道付近の高温が原因でワインが劣化する問題がありました。しかし、マデイラ産のワインはアルコール添加による酒精強化が施されていたため、むしろ加熱によって独特の風味や香りが形成され、味が良くなることが発見されました。この偶発的な出来事を基に、現在では「エストゥファジェン(エスツファsgem)」という人工的な加熱熟成プロセスが導入され、カラメルやナッツのような芳ばしい香りが特徴的な風味が引き出されています。
マデイラワインは主に使用されるブドウ品種により、4つのタイプに分類されます。食前酒にぴったりな辛口の「セルシアル」、やや辛口の「ヴェルデーリョ」、豊かな甘みを持つ「ボアル」、そしてデザートワインに最適な極甘口の「マルヴァジア」。それぞれの味わいや個性を味わい分けることも、マデイラを訪れる楽しみの一つと言えるでしょう。
ワインセラー(ワイナリー)見学のすすめ
マデイラワインの魅力をより深く理解するには、フンシャル市内のワインセラーを訪れるのが最適です。その中でも「Blandy’s Wine Lodge」は特に有名でアクセスも良好です。19世紀に建てられた修道院を改装した歴史的な建物内で、マデイラワインの製造過程を学び、多様なワインの試飲ができるツアーが開催されています。
ガイド付きツアーでは、大きな樽が並ぶ貯蔵室を案内されながら、マデイラワインの歴史や醸造方法について詳しい解説を受けられます。100年以上前のヴィンテージワインも保管されており、その場にいるだけで歴史の重みを実感できます。ツアーの最後には、辛口から甘口まで様々なタイプのワインを飲み比べるテイスティングの時間があり、その多様な味わいに驚くこと間違いなしです。スタッフは、各ワインに合う食事のペアリングについても丁寧に教えてくれます。
実際に体験できること:ワイナリーツアーの予約と参加方法
- 予約手順
人気のワイナリーツアーは事前予約がおすすめです。Blandy’s Wine Lodge公式サイトからオンラインで簡単に予約可能です。クラシックツアーやプレミアムツアーなど複数のプランがあるため、内容と料金を比較して選びましょう。空きがある場合は当日参加(ウォークイン)も可能です。
- 準備と持ち物
試飲が含まれるため、年齢確認が行われることがあります。パスポートなど年齢証明書を忘れずに持参してください。もし遅れそうな場合は、予約確認メールに記載されている連絡先へ事前連絡をするのがマナーです。
- 注意点と対処法
テイスティングはつい飲み過ぎがちですが、アルコール度数は約20度と高めです。自分のペースで楽しむことを心掛けましょう。試飲グラスには少量ずつ注がれますが、全て飲み干す必要はありません。気に入ったワインだけをゆっくり味わうスタイルでも問題ありません。
お土産にぴったり!ワインの選び方と購入のポイント
ワイナリーのほか、フンシャルの酒店(ガハフェイラ)やスーパーマーケットでもマデイラワインは購入可能です。自分用や大切な人への贈り物として、特別な一本を選んでみてはいかがでしょうか。
- 選ぶ際の目安
- 5年もの・10年もの: ブレンドされた比較的手ごろな価格帯で、安定した味わいが楽しめます。初めての方や普段使いに最適です。
- コリエイタ(Colheita): 1年の収穫から造られ、最低5年熟成されたものです。その年の特性を味わえるヴィンテージワインです。
- フラスケイラ(Frasqueira)またはヴィンテージ(Vintage): 優れた年に作られ、最低20年の樽熟成を経た最高品質。記念日や贈答用に最適です。
実際にできること:ワインの購入と持ち帰りについて
- 持ち帰りのルール
日本へのお酒の持ち込みには免税範囲があります。1人あたり760mlのボトルを3本まで免税です。これを超える場合は、空港の税関で関税を支払う必要があるため、詳細は税関のウェブサイトで確認してください。
- 購入場所の特徴
ワイナリーでは専門的なアドバイスを受けつつ、多彩なラインナップから選べます。スーパーは手頃な価格帯中心ですが種類は限られます。フンシャル市内にはワイン専門店も複数あり、時間があれば覗いてみると新たな発見があるかもしれません。
- 梱包方法
ワインボトルは割れやすいため、梱包には十分注意しましょう。衣類やタオルで何重にも包み、スーツケースの中央に入れるのが基本です。心配な場合は、プチプチなどの緩衝材や、専用の保護ケース(エアパッキン製など)を持参すると安心です。
地元民に愛される隠れ家グルメスポット&カフェ
有名なレストランも魅力的ですが、旅の醍醐味はやはり地元の人たちが集うローカルな場所に足を踏み入れることにあります。ここでは、より深くマデイラの食文化を感じられるスポットをご紹介します。
漁師の酒「ポンシャ」を楽しむタベルナ
マデイラ島を訪れたら、地元の魂とも言えるお酒「ポンシャ(Poncha)」はぜひ味わいたい一杯です。これは、サトウキビから作られる蒸留酒「アグアルデンテ・デ・カナ」に、ハチミツとレモンあるいはオレンジジュースを加えたシンプルなカクテルで、もともとは漁師たちが風邪予防のために飲んでいたと伝えられています。
このポンシャを飲むなら、フンシャルの旧市街や漁師町カマラ・デ・ロボスに点在する小さな居酒屋「タベルナ」がぴったりです。多くの店では「メシェドール」と呼ばれる専用の道具を使って注文ごとに一杯ずつ手作りしており、その作り方を目にするのも楽しみの一つです。出来たてのポンシャは飲みやすく、まるでジュースのようですが、アルコール度数は25度以上とかなり強いので注意が必要です。伝統的な「ポンシャ・トラディショナル」のほか、パッションフルーツやタンジェリンなど様々なフレーバーも用意されています。床に落花生の殻が散らばっているのは、本物のタベルナの証と言われています。地元の人々と肩を並べグラスを傾ければ、マデイラの夜が一層忘れがたい思い出になるでしょう。
絶景を楽しみながら味わうカフェのひととき
マデイラ島は起伏に富んだ地形が特徴で、少し高台に上がるだけで息をのむような絶景が眼下に広がります。そんな景観を眺めつつ、ゆったりとくつろげるカフェも数多くあります。
フンシャルのモンテ地区へはロープウェイで登ることができ、そこからは街並みや港を一望できるカフェが見つかります。また、島の西端に位置するポンタ・ド・パルゴ灯台の近くにあるカフェでは、雄大な大西洋に沈む夕日を眺めながらコーヒーを楽しむロマンチックな時間を過ごせます。ポルトガルの名物エッグタルト「パステル・デ・ナタ」や、地元産ハチミツを使ったケーキ「ボーロ・デ・メル」とともに、旅の合間の贅沢な休憩にぴったりです。
カフェでの注文方法は、カウンターで自分で注文するセルフサービス式と、テーブルでスタッフに頼むフルサービス式の二通りがあります。チップは必須ではありませんが、サービスに満足した場合は会計額の5〜10%をテーブルに置いて行くとスマートです。
マデイラ島グルメ旅・実践ガイド

最後に、マデイラ島でのグルメ旅をより快適かつ安全に楽しむための、実用的な情報をお届けします。
レストランの選び方と予約のポイント
フンシャルの旧市街(Zona Velha)には、数多くのレストランがひしめいており、店選びに困ることはほとんどありません。特にルア・デ・サンタ・マリア通りは、多くの店舗がテラス席を設置していて賑やかな雰囲気が魅力です。ただし、観光客向けの店舗も多いため、少し小道に入ったり地元の人で賑わっている店を選ぶと、より本場の味に出会える可能性が高まります。
- 予約の流れ
夕食のピークタイムである20時以降は、人気店が非常に混雑します。特に金曜や土曜の夜に特定のレストランに行きたい場合は、事前予約が安心です。予約は電話が一般的ですが、最近はウェブサイトや予約アプリ(TheForkなど)を利用してオンラインで予約できる店も増えています。言葉に不安がある場合は、ホテルのコンシェルジュに予約をお願いする方法も確実です。
- ドレスコードについて
マデイラのレストランでは、基本的にカジュアルな服装で問題ありません。ただし、一部の高級店やホテルのメインダイニングでは、スマートカジュアルが求められることがあります。男性は襟付きシャツと長ズボン、女性はワンピースやブラウスにスカートやパンツが無難です。ビーチサンダルやショートパンツ、タンクトップは避けるのが適切です。
知っておきたい食事マナーとチップ事情
- カバーチャージ(Couvert)
席につくと、自動的にパンやオリーブ、バターなどが提供される場合があります。これは「Couvert(クヴェール)」と呼ばれ、無料ではありません。不要な場合は、手を付けずに「Não, obrigado/obrigada」と伝えて下げてもらいましょう。もちろん、気に入った場合はそのまま食べても問題ありません。料金はメニューに明示されているか、会計時に加算されます。
- チップについて
ポルトガルではチップは義務ではなく、サービス料が含まれているケースもよくあります。ただし、特に良いサービスを受けたと感じた時や特別な要望に応えてもらった時は、感謝の気持ちとしてチップを渡すことが一般的です。相場は会計金額の5%~10%ほどで、現金をテーブルに置くか、カード支払い時に上乗せする旨を伝えます。
トラブルに備えた心得と対処法
楽しい旅を続けるためには、健康と安全を最優先に考えましょう。万が一に備えて準備をしておくことが大切です。
- 準備と持ち物
食べ慣れない料理を楽しむ場面が多くなるため、胃腸薬や整腸剤などの常備薬を持参しておくと安心です。食物アレルギーがある場合は、アレルギーのある食材をポルトガル語で記載した「アレルギーカード」を用意し、注文時にスタッフに見せると効果的です。翻訳アプリの利用も便利です。
- トラブル時の対応策
もし食あたりなどで体調を崩したら、無理をせずにホテルで休養しましょう。症状が重い場合はホテルのフロントに相談して、近隣の病院(Hospital)やクリニック(Clínica)を案内してもらいます。海外旅行保険に入っていれば、キャッシュレスで対応可能な医療機関を紹介してもらえることもあります。また、クレジットカードが使えない小規模な店舗や緊急時に備えて、ある程度のユーロ現金を持っておくと安心です。
- 公式機関への連絡について
パスポートの紛失や盗難などの重大トラブルにあった場合は、在ポルトガル日本国大使館へ連絡しましょう。出発前に連絡先を控えておくと、緊急時に慌てずに対応できます。安全で楽しい旅にするためにも、海外旅行保険の加入は忘れずに行いましょう。
マデイラの食は、旅の記憶を鮮やかにするスパイス
マデイラ島での食体験は、単なる空腹を満たすためのものではありませんでした。豪快なエスぺターダを囲む人々の笑顔、市場でフルーツを売る女性との何気ない会話、ワイナリーで耳にしたワイン造りへの熱い思い、そしてタベルナで隣に座った地元のおじさんが教えてくれたポンシャの美味しい飲み方。それぞれの料理には、この島の豊かな自然と、そこで暮らす人々の温かい心が溶け込んでいると感じられます。
太陽の光を浴び、潮風に吹かれながら味わう料理は、どんな高級レストランでも真似できない、最高の調味料によって彩られていました。フンシャルの石畳の道を歩きつつ、次に訪れるときは、あの丘の上のレストランで夕日を眺めながら食事をしようか、それともまだ試していないポンシャの味を探しに行こうかと、自然に次の旅の計画を思い描いている自分に気づきます。
マデイラ島の美食は、旅の思い出をより深く鮮やかに彩る魔法のスパイス。この島ならではの特別な魅力を、ぜひあなたの五感で存分に味わってみてください。きっと、忘れがたい食の記憶があなたを待っていることでしょう。

