英国政府が、自国民の送還に非協力的な国々に対し、ビザ発給の制限や手数料の引き上げといった対抗措置を検討していることが明らかになりました。この措置は、英国の移民政策の一環であり、インド、パキスタン、ネパールなどの国々が影響を受ける可能性があります。このニュースは、英国への旅行や留学、就労を計画している多くの人々にとって、大きな関心事となるでしょう。
背景:なぜこの措置が検討されているのか?
この動きの背景には、英国の移民管理を強化するという政府の強い意志があります。英国内務省は以前から、不法滞在者やビザのオーバーステイ、あるいは英国で有罪判決を受けた外国籍の人物を出身国へ送還する手続きを進めています。しかし、一部の国が自国民の受け入れや身元確認に必要な書類の発行に非協力的であるため、送還が滞るケースが問題視されていました。
今回のビザ制限検討は、2022年に制定された「国籍・国境法(Nationality and Borders Act 2022)」に基づいて行われるものです。この法律は、送還手続きに協力しない国に対して、ビザ申請の処理を遅らせたり、追加料金を課したり、あるいは発給を停止したりする権限を内務大臣に与えています。
英国政府は、この措置を「最後の手段」と位置づけており、まずは対象国との外交的な対話を通じて協力を促す方針です。しかし、交渉が不調に終わった場合、具体的なビザ制限措置に踏み切る可能性が示唆されています。
対象国と予測される影響
報道では、対象となる可能性のある国として、インド、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、ナイジェリア、ガーナなどが挙げられています。特にインドは、英国との経済的・人的な結びつきが非常に強く、仮にビザ制限が実施された場合の影響は甚大です。
旅行・観光業界への打撃
英国政府の統計によると、2023年だけでもインド国籍者に対して約33万7,000件の観光ビザが発給されており、国別で見ても非常に大きな割合を占めています。ビザ発給が制限されれば、英国を訪れる観光客が激減し、航空業界やホテル、小売業など、観光に依存する多くのセクターが深刻な打撃を受ける可能性があります。
留学生と大学への影響
英国の高等教育機関にとって、インドからの留学生は極めて重要です。2023年12月までの1年間で、インド国籍者に発給された学生ビザは約13万件にのぼり、国別でトップクラスです。留学生が支払う高額な学費は多くの大学の重要な収入源となっており、留学生の減少は大学の財政を圧迫しかねません。また、多様な人材が集まる学術環境にも影響が及ぶでしょう。
労働市場と経済への影響
英国は、特に医療(NHS)やIT分野で多くの外国人材に頼っています。2023年には、インド国籍者に対して約6万8,000件の就労ビザ(Skilled Worker visa)が発給されており、これは全発給数の約22%を占める最多の数字です。パキスタンやナイジェリアからの医療従事者も少なくありません。これらの国からの人材流入が滞れば、深刻な労働力不足を引き起こし、英国経済全体に悪影響を与える懸念があります。
外交関係の悪化
インドと英国は現在、自由貿易協定(FTA)の締結交渉を進めており、経済的な連携を強化しようとしています。このような状況下でビザ制限という強硬な措置をとれば、二国間の外交関係が緊張し、FTA交渉を含む協力関係全体に水を差すことになりかねません。
今後の見通しと旅行者へのアドバイス
現時点では、このビザ制限はあくまで「検討段階」であり、まだ何も決定されていません。英国政府も、外交努力を優先する姿勢を見せているため、直ちにビザ申請に影響が出る可能性は低いと考えられます。
しかし、英国への渡航を計画している方は、今後の動向を注意深く見守る必要があります。特に、インド、パキスタン、ネパールなど、今回名前が挙がった国々の国籍を持つ方は、英国政府の公式サイト(GOV.UK)や各国に駐在する英国大使館・高等弁務官事務所が発表する最新情報を定期的に確認することをお勧めします。
simvoyageでは、引き続きこの問題に関する最新情報をお届けし、旅行者の皆様の安全でスムーズな渡航をサポートしてまいります。

