JTB総合研究所が最近発表した調査により、日本人の旅行に対する意識が大きな転換期を迎えていることが明らかになりました。かつての海外旅行ブームは影を潜め、多くの人々が国内に目を向け、「心の平穏」を求める新しい旅のスタイルに関心を寄せています。
本記事では、この調査結果を深掘りし、その背景にある要因と、今後の海外旅行の未来について考察します。
海外旅行意欲は低下、国内志向が鮮明に
調査によると、日本人の旅行意欲は依然として高いものの、その矛先は大きく国内に向けられています。
(公財)日本交通公社が発表した「JTBF旅行意識調査」の最新データ(2023年度第4回)では、今後1年間に旅行したいと回答した人のうち、行き先として国内を挙げた人は61.3%に達しました。一方で、海外旅行を希望する人は20.1%にとどまり、コロナ禍以前の水準には及ばない状況が続いています。
人々が国内旅行を選ぶ理由として多く挙げられたのは、「手軽に行けるから」という利便性や、「言葉や文化の壁がなく安心できるから」といった安心感でした。不安定な世界情勢やパンデミックの経験を経て、多くの人が予測可能で心穏やかに過ごせる旅を求めていることがうかがえます。
旅の目的は「観光」から「心身の回復」へ
今回の調査で特に注目すべきは、旅行に求めるものの変化です。多くの観光地を巡るアクティブな旅よりも、静かな環境で心と体をリフレッシュさせることに価値を見出す人が増えています。
ウェルネスツーリズムへの高まる関心
旅行の目的として「リラックス」や「精神的な充足」を重視する傾向が強まっており、温泉、自然散策、瞑想、ヨガなどを通じて心身の健康を増進させる「ウェルネスツーリズム」への関心が急速に高まっています。これは、日々の喧騒から離れ、自分自身と向き合う時間を大切にしたいという現代人のニーズの表れと言えるでしょう。
この価値観の変化は、コロナ禍を経て人々が自身の健康やライフバランスについて深く考えるようになったことが大きな要因と考えられています。
海外旅行を阻む3つの大きな壁
では、なぜ海外旅行への足取りは重くなっているのでしょうか。そこには、経済的、心理的、物理的な3つの障壁が存在します。
経済的な壁:記録的な円安と燃油サーチャージ
最も大きな要因は、記録的な円安です。1ドル150円台が常態化する中、海外での宿泊費、食費、交通費など、あらゆる費用が数年前に比べて大幅に割高になっています。JTBが発表した2024年ゴールデンウィークの旅行動向調査では、海外旅行の一人当たりの平均費用は209,700円に達しており、家計への負担感は無視できません。さらに、高止まりする燃油サーチャージも追い打ちをかけています。
心理的な壁:不安定な国際情勢
世界各地で続く紛争や緊張の高まりも、海外旅行への意欲を減退させる一因です。ニュースで伝えられる不安定な情勢は、旅行先の選択に慎重さをもたらし、「安全・安心」を最優先する傾向を強めています。その結果、地理的にも心理的にも近い国内が、より魅力的な選択肢として浮上しているのです。
物理的な壁:航空便の回復遅れ
コロナ禍で大幅に減便された国際線の便数は、完全には回復していません。特に地方空港からの直行便はまだ少なく、選択肢の限定や乗り継ぎの不便さが、海外旅行へのハードルを上げています。
今後の海外旅行はどうなる?予測される未来
短期的に見れば、円安や国際情勢が劇的に改善しない限り、国内志向のトレンドは続くと予測されます。しかし、日本人の海外への探求心が完全になくなったわけではありません。
将来的には、海外旅行は二極化していく可能性があります。一つは、費用を抑えた近隣アジア諸国への旅行。もう一つは、費用が高くても、そこでしか得られない特別な体験や学びを求める「高付加価値型」の旅行です。単なる観光ではなく、明確な目的を持った旅の需要が高まるでしょう。
旅行業界もこの変化に対応し、円安の影響を受けにくいプランや、個人の興味関心に深く寄り添ったテーマ性のあるツアーの開発がさらに進むと考えられます。
私たち旅行者は、今まさに旅の価値を再定義する時代に生きています。海外への扉が少し重く感じられる今だからこそ、国内の知られざる魅力に目を向けたり、次の海外旅行に向けてじっくりと計画を練ったりする良い機会なのかもしれません。simvoyageは、変化するニーズに寄り添い、皆さま一人ひとりにとって最高の旅の形を見つけるお手伝いを続けていきます。

