悠久のナイルが育んだ古代文明の神秘、喧騒と活気に満ちたスーク(市場)、どこまでも広がる砂漠の絶景。エジプトという国は、訪れる者の心を捉えて離さない、強烈な魅力に満ちています。旅の計画を立てるだけで胸が高鳴りますが、同時にふと頭をよぎるのが「お金の管理、どうしよう?」という現実的な悩みではないでしょうか。「エジプトはまだまだ現金社会」という話を耳にする一方で、世界のキャッシュレス化の波は、この古代の国にも着実に押し寄せています。果たして、スマートフォンやクレジットカード一枚で、ピラミッドを巡る冒険は可能なのでしょうか。この記事では、2024年現在のエジプトにおけるリアルなキャッシュレス事情を徹底解説。クレジットカードの賢い使い方から、旅行者が本当に知りたい現金との最適なバランス、そして女性目線での安全な持ち歩き方まで、あなたのエジプト旅行をよりスマートで快適にするための全てをお伝えします。さあ、支払い方法の不安を解消して、心ゆくまでエジプトの魅力を堪能する準備を始めましょう。
さらに、エジプトの歴史に彩られた魅力をより味わいたいなら、文明を支えたナイルの恵みにも触れてみると良いでしょう。
まず知っておきたい!エジプトの通貨と基本的な支払い事情

旅の基本は、まずその国の通貨を理解することから始まります。エジプトの支払い文化は、この国の歴史と現代が融合した姿を映し出す鏡のようなものです。まずは基本をしっかり押さえ、旅の第一歩を踏み出しましょう。
エジプトの通貨「エジプト・ポンド(EGP)」についての基本情報
エジプトで使用されている公式通貨は「エジプト・ポンド」です。通貨コードは「EGP」と表記され、現地では通称「ギニー」や、フランス語由来の「L.E.」(Livre Égyptienneの略)という表示もよく見かけます。為替レートは常に変動しますが、大まかな感覚を掴んでおくと買い物がスムーズに行えます。出発前には最新の為替情報を確認する習慣をつけておくと安心です。
通貨の単位構成は、1ポンドが100ピアストルに分かれています。ただし、インフレーションの影響でピアストル単位の硬貨は流通量が減り、旅行者が使うことはほとんどありません。主に流通しているのは紙幣で、200、100、50、20、10、5、1ポンド札が一般的です。近年では耐久性に優れる新デザインのポリマー紙幣も導入され始めています。特に気をつけたいのは少額紙幣の重要性です。タクシー代の支払いや、地元でよく見られる「バクシーシ」と呼ばれるチップ、小規模な店舗での買い物など、日々の生活のあらゆる場面で少額紙幣が欠かせません。両替の際は、細かいお金を多めに手に入れておくことが、エジプト旅行をスムーズに楽しむ秘訣です。
「現金主義」は本当?カイロと地方都市のキャッシュレス事情
「エジプトは現金主義」というイメージは決して間違っていませんが、その度合いは場所によって大きく異なります。首都カイロやルクソール、アスワンなどの主要観光地では、キャッシュレス決済が着実に普及しつつあります。
例えば、カイロの高級ホテルや大手チェーンレストラン、大型ショッピングモールではクレジットカードでの支払いが一般的で、日本にいるかのように行えます。また、Uberや中東版のCareemなどの配車アプリもクレジットカード登録が必須で、旅行者にとっては現金での値段交渉を避けられる便利な手段となっています。
一方、ローカルなエリアに入ると状況は大きく変わります。活気あるハーン・アル=ハリーリ市場のようなスーク(市場)の小規模店舗や屋台、個人経営の飲食店、流しのタクシーなどでは、現金払いが基本です。ピラミッド周辺でのラクダの料金や、遺跡内でガイドに渡すチップも当然現金で行います。キャッシュレス決済端末はほぼ存在しません。
さらに、カイロを離れて地方都市や小さな村へ足を運ぶと、現金への依存度は一層高くなります。クレジットカードが使える場所は限られており、主に一部のホテルやレストランに限られることが多いです。したがって、エジプト旅行の支払い計画を立てる際には、「どこに行くか」「何をするか」に応じて現金とキャッシュレスの利用比率を柔軟に調整することが重要です。この使い分けこそが、賢いエジプト旅のカギとなります。
クレジットカードは最強のパートナー?エジプトでの賢い使い方
現金がいまだに根強い存在感を持つエジプトですが、高額決済や予約、そして何より安全性の面でクレジットカードは旅の強力な味方となり得ます。その利便性を最大限に活かすための知識とコツを身につけましょう。
使いやすい国際ブランドは?VISAとMastercardが主流
エジプトでクレジットカードを使うなら、まず持っておくべきは「VISA」か「Mastercard」です。これらの国際ブランドは、ほぼエジプト国内のカード利用可能な場所すべてで対応しています。ホテルのデポジット支払いやレストランでの会計、博物館のチケット購入など、多様な場面で活躍します。
一方、JCBやAmerican Express、Diners Clubは対応店がかなり限られています。高級ホテルやごく一部のハイエンドショップでのみ利用が可能ですが、基本的には「使えたらラッキー」と考えたほうが良いでしょう。決済手段を確保する意味でも、これからカードを作る方や一枚しか持っていない方は、必ずVISAかMastercardのどちらかを準備してください。理想はカード紛失や磁気不良、利用限度額超過のリスクに備えて、VISAとMastercardをそれぞれ一枚ずつ、計二枚以上持参することです。こうすることで、支払いができなくなる最悪の事態を避けられます。
こんなところで使える!クレジットカード決済対応スポット一覧
具体的にどんな場所でクレジットカードが役立つのか、イメージしてみましょう。まずは四つ星以上のホテルで、ほとんどの場合はチェックイン時にデポジットとしてクレジットカードの提示が求められます。もちろん宿泊料金の支払いもカードで可能です。
カイロ国際空港をはじめとする主要空港内の免税店や飲食店でも問題なく利用できます。カイロやアレクサンドリアなどの近代的な大型ショッピングモール内にあるブランドショップやスーパーマーケットも、基本的にクレジットカードが使えます。飲食店においても、観光客向けのレストランや高級店ではスムーズにカード決済ができるでしょう。
さらに近年では、観光施設のチケット窓口も変化しています。ギザのピラミッド地区、エジプト考古学博物館、カルナック神殿など主要スポットでは、カード対応の窓口が徐々に増加中です。これは旅行者にとって非常にありがたい進展で、高額な入場券を現金で持ち歩くリスクを軽減します。そして忘れてはならないのが、先述したUberやCareemなどの配車アプリです。これらはカード情報をアプリに登録して使うため、キャッシュレス決済の恩恵を最も実感できるサービスと言えるでしょう。
実践編!クレジットカード利用時のポイントとトラブル回避法
利便性の高いクレジットカードですが、海外で使用する際はいくつか注意点があります。これらを知っておくことで、不必要な損失やトラブルを大幅に避けられます。
手数料(サーチャージ)について
エジプトの一部店舗では、クレジットカード支払い時に数パーセントの追加手数料(サーチャージ)がかかることがあります。これは本来店舗側が負担すべきカード会社の手数料を客に転嫁するローカルな慣習です。支払い前に「Do you charge any extra fee for credit card?(クレジットカード払いだと追加料金は発生しますか?)」と一言確認する癖をつけましょう。もし手数料がかかる場合は、現金払いがお得なケースもあります。
スキミング防止策
残念ながらエジプトでもカード情報を盗むスキミング被害が報告されています。ATM利用時は、カード挿入口やキーパッドに不審な装置がないか、目視および触診で確認することが大切です。銀行併設で警備員がいるATMを選ぶとより安全です。店舗での支払いは、カードを自分の視界から離れた場所に持っていかせないよう注意してください。店員にカードを預けるのではなく、自分で端末に差し込むかテーブルまで持ってきてもらうのが望ましいです。また、PIN入力時は必ず片手でキーパッドを覆い隠し、第三者に見られないようにしましょう。
不正利用への備え
万が一の不正利用に備え、出発前に必ずやっておくべきことがあります。それはカード会社の緊急連絡先(海外からの連絡番号)をメモしておくことです。スマートフォンに登録するだけでなく、紙にも記載して別の場所に保管すれば、スマホ紛失時も安心です。また、多くのカード会社が提供する「利用通知サービス」を設定することを強くおすすめします。カード利用時にメールやアプリで通知が届くため、見覚えのない取引にすぐ気づけます。不正利用が疑われたら、速やかにカード会社へ連絡し、カード停止措置を依頼しましょう。
「DCC決済」の落とし穴
海外でカード決済をする際、端末の画面に「現地通貨(EGP)で支払いますか?それとも日本円(JPY)で支払いますか?」と尋ねられることがあります。これは「DCC(Dynamic Currency Conversion)」と呼ばれるサービスです。一見すると日本円での支払い額が即座に分かり便利に思えますが、これは避けるべき選択肢です。なぜならDCC決済では、店舗側が独自に設定した高い為替手数料が含まれているためです。必ず「現地通貨(EGP)」で決済するようにしましょう。そうすればVISAやMastercardなどの国際ブランドが定める、公正な為替レートで後日請求されます。この知識だけで数%の余分な出費を確実に防げます。
期待の電子マネーは使える?スマホ決済のリアルな現状

日本で日常的に利用しているスマートフォン決済。その便利さをエジプトでも体験したいと考える方は多いかもしれません。しかし結論から申し上げると、旅行者がエジプトで日本の電子マネーを自由に使うのは、現時点ではまだ難しいのが実情です。
エジプト独自のモバイルウォレット「Fawry」や「Vodafone Cash」
エジプト国内では、キャッシュレス化の流れの中で「Fawry」や「Vodafone Cash」といったモバイルウォレットサービスが広く浸透しています。街角の小さな商店やキオスクの店頭でこれらのロゴを目にすることも多いでしょう。これらは公共料金の支払いや個人間送金に利用され、現地の人々にとって非常に便利なサービスです。ただし利用には原則として、エジプト国内の電話番号や銀行口座、または身分証明書が必要となります。したがって、短期滞在の旅行者がこれらのサービスに登録して利用するのは、難しいのが現状です。これらのロゴを見かけても、旅行者向けのサービスではないと理解しておくことが重要です。
日本の電子マネー(Suica、PayPayなど)は使えるのか?
結論から言えば、「使えません」。SuicaやPASMOといった交通系ICカード、さらにPayPay、楽天ペイ、LINE Payなどの日本のQRコード決済は、日本国内だけで機能するシステムです。エジプトでは決済端末もシステムもまったく異なるため、これらを利用することはできません。これらのアプリを支払い手段として期待しないようにしましょう。
Apple Pay / Google Payの利用可能性は?
では、iPhoneやAndroidスマートフォンにクレジットカードを登録して使うApple PayやGoogle Payはどうでしょうか。こちらには若干の可能性があります。これらのサービスはNFC(近距離無線通信)技術を用いた「タッチ決済(コンタクトレス決済)」の仕組みを採用しています。もしエジプトの店舗にこのタッチ決済対応のクレジットカードリーダーが設置されていれば、日本のクレジットカードを登録したApple PayやGoogle Payで支払えるケースも考えられます。
しかし重要なのは、エジプト国内でのタッチ決済対応端末の普及率がまだ非常に低い点です。カイロの最新ショッピングモールやマリオット、ヒルトンなどの国際的な高級ホテルの一部でしか見かけないのが現状です。したがって、Apple PayやGoogle Payをメインの支払い手段として頼るのは難しいでしょう。「対応端末を見つけたら試しに使ってみる」という程度に捉え、あくまで補助的な選択肢として考えるのが賢明です。過度な期待は避け、物理的なクレジットカードを必ず携帯してください。
現金はいくら必要?最適な両替方法と賢い現金管理術
キャッシュレス決済の利用シーンは増えてきていますが、エジプト旅行で現金が完全に不要になるのはまだ先の話です。では、いったいどれくらいの現金を、どのように準備すればよいのでしょうか。ここでは具体的な予算の立て方から、お得な両替方法、さらに安全な現金管理のコツまで、詳しく解説します。
旅行日数ごとの現金予算の目安
必要な現金量は、旅行スタイル(パッケージツアーか個人旅行か)、滞在期間、使いたいものによって大きく変わります。ここでは、一つのモデルケースを参考にしてみましょう。
例えば、食事や交通費、一部の観光施設入場料が含まれた5日間のパッケージツアーに参加する場合です。このケースでは、主に自由時間の食事代やお土産代、飲み物代、バクシーシ(チップ)に現金が必要になります。1日あたり3,000円から5,000円程度、つまり5日間で15,000円から25,000円相当のエジプト・ポンドがあれば、十分に余裕を持って楽しめるでしょう。
一方、7日間の個人旅行で宿泊費を除くすべてを現地で支払う場合を考えます。ローカルフード(1食約300円〜)から観光客向けのレストラン(1食約2,000円〜)まで幅広く楽しむとして、食費は1日平均3,000円。市内移動にタクシーやメトロを使いおよそ1,000円。遺跡入場料は1日平均2,000円見込みです。これに加えお土産や雑費、バクシーシを含めると、1日あたり最低7,000円から10,000円程度、7日間で50,000円から70,000円相当の現金があれば安心です。もちろん、高価なパピルスや香水瓶などを購入する予定があれば、さらに予算を増やす必要があります。この金額はあくまで目安ですので、ご自身のプランに合わせて現金の必要額を計算してください。ポイントは、全額を現金で持つのではなく、クレジットカードと併用して持ち歩く現金を最小限に抑えることです。
日本円からの両替はどの方法がベスト?
日本円をエジプト・ポンドに両替する方法は複数あり、それぞれ為替レートや利便性が異なります。
日本の空港: 出発前に両替できる安心感がありますが、為替レートは最も悪い傾向にあります。ここで両替するのは、エジプト到着直後に必要となる最小限の金額(例えば、空港からホテルまでのタクシー代や初期のチップ代として5,000円程度)にとどめるのが賢明です。
エジプトの空港: カイロ国際空港などの到着ロビーには24時間営業の両替所や銀行窓口が複数あります。市街地の両替所よりは若干レートが悪いことが多いですが、その差はわずかです。日本で両替するよりもかなりお得なので、現地着後の当面の資金を両替するのに便利な場所です。
市内の両替所: 公認の両替所は通常、最もレートが良いとされています。多くの場合、パスポートの提示を求められるので必ず携帯しましょう。「Exchange」や「Money Change」といった看板が目印です。レートの表示があるか、必ずレシートを発行してくれるかを確認し、悪質な取引を避けるため信頼できる店を選ぶようにしましょう。
銀行: 銀行でも両替は可能で、比較的公正なレートが適用されます。ただし、営業時間が限られていたり、手続きに時間がかかったり、人が多く混雑することがあります。利便性では両替所に劣る場合があります。
ホテル: 宿泊先のホテルで両替するのは最も手軽かつ安全ですが、為替レートはすべての選択肢の中で最も低いことが一般的です。夜遅くに現金が急に必要になった場合の緊急手段として利用するのが望ましいでしょう。
【実践編】両替時の注意点と詐欺防止のポイント
両替トラブルは少しの注意で避けられます。以下のポイントは必ず実践してください。
受け取った金額をその場で必ず確認: 両替が終わったらカウンターを離れる前に、受け取った紙幣が間違いなく合っているか丁寧に数えましょう。観光客を狙って少なく渡す悪質な例もあります。
小額紙幣をお願いする: 高額の200ポンド札ばかり渡されると、小さな商店やタクシーでお釣りが出ず断られることがあります。両替する際は「Could I have some small change, please?(細かいお札を混ぜていただけますか?)」と伝え、5、10、20、50ポンド札を多めに混ぜてもらいましょう。これがエジプト滞在を快適にする重要なテクニックです。
札の状態をチェック: 破損やテープ補修、汚れが目立つ紙幣は受け取りを拒否しましょう。そういった紙幣は後で店で使えないことがあります。
レシートは必ず受け取る: 万が一、金額の不一致や偽札が発覚した時の証拠になるため、必ずレシートをもらい大切に保管してください。
海外キャッシングは頼りになる!ATMの使い方と注意点
大量の現金を持ち歩きたくないが、急に現金が必要になった場合に便利なのが、日本のクレジットカードやデビットカードによる「海外キャッシング」です。エジプトの主要都市には多数のATMが設置されており、必要な時に必要な分だけ現地通貨を引き出せます。
PLUS(Visa系)やCIRRUS(Mastercard系)のマークがあるATMなら、日本発行のカードで引き出せます。キャッシングは借り入れのイメージがありますが、繰り上げ返済を活用すれば利息を抑えられ、結果的に両替より有利なレートで現金を手に入れられることも多いです。
ATMの場所の見つけ方と操作方法
セキュリティ面を考えると、銀行支店内に設置されているATMが最も安全です。路上の単独設置ATMはスキミング被害のリスクがやや高いため、できるだけ避けることをおすすめします。操作は難しくなく、多くのATMは言語選択に「English」があります。基本的な操作手順は以下の通りです。
- カードを挿入する。
- 暗証番号(PIN)を入力し、Enterキーを押す。
- 取引内容から「Withdrawal(引き出し)」を選ぶ。
- 口座種類を尋ねられたら「Credit(クレジット)」を選択。(デビットカードの場合は「Saving(普通預金)」を選びます。)
- 引き出したい金額を選択または入力する。
- 現金とカード、レシートを受け取る。
不安がある場合は、銀行の営業時間内に行員がいる窓口横のATMを利用すると安心です。
ATM利用時の注意点と対策
ATM利用時はスキミング被害に気をつけましょう。カード挿入口や暗証番号を入力するキーパッドに不自然な箇所がないかよく確認し、番号の入力時は手で覆うなど工夫してください。また、手数料にも注意が必要です。ATM利用には現地銀行が課す「ATM利用手数料」と、日本のカード会社の「海外キャッシング手数料」が加算される場合があります。手数料節約のためには少額を何度も引き出すのではなく、ある程度まとまった金額を一度に引き出す方が効果的です。
シーン別・支払い方法の最適解!エジプト旅行をスマートに乗り切る

理論を理解したら、次は実際の行動に移しましょう。エジプト旅行で遭遇しそうな様々な場面を想定し、それぞれに最適な支払い方法をシミュレーションしてみてください。この支払い方法の使い分けを身につければ、旅のストレスが大幅に軽減され、より快適な旅行が楽しめるでしょう。
観光施設のチケット購入
ギザの三大ピラミッドやルクソールの王家の谷、エジプト考古学博物館といった主要観光地では、近年クレジットカードの対応が進んでいます。特に外国人観光客が多く訪れる場所では、カード専用の窓口が設けられていることも増えています。高額になりがちな入場料を現金で持ち歩かずに済むのは非常に便利です。ただし油断は禁物です。観光シーズンにはカード決済窓口が混雑し、現金専用窓口のほうが空いている場合もあります。また、カード決済端末の故障やネットワーク障害により、カードが使えないケースもエジプトでは十分にあり得ます。「カードが使えるはず」と思い込まず、チケット代相当の現金も用意しておくという二重の備えが賢明です。一部遺跡では公式サイトでのオンライン事前購入も可能になっているため、訪問予定地の情報を事前にチェックすることをおすすめします。
スーク(市場)での買い物
迷路のような路地にスパイスの香りが漂い、カラフルな雑貨が並ぶスークでのショッピングはエジプト旅行の醍醐味のひとつです。ここは完全に現金が支配する世界であり、支払いは「現金のみ」と心得ましょう。商品の多くに値札がなく、価格は店主との交渉(ネゴシエーション)で決まります。この交渉こそがスークの文化であり、その楽しみでもあります。交渉を有利にすすめ、スムーズに支払うために欠かせないのが前述の「少額紙幣」です。「お釣りがない」という言葉は、店主が交渉を優位に進めるための常套句です。例えば55ポンドで話がついたのに100ポンド札しかなければ、「お釣りがないから60ポンドでどうだ?」と言われることもあります。50ポンド札と5ポンド札をさっと出せれば、スマートに取引が完了します。スークへ行く前に、財布に十分な種類の小額紙幣があるか必ず確認しましょう。絨毯や宝飾品を扱う一部の高級店ではカードが使える場合もありますが、その際は手数料が加算されることが多いので注意しながら交渉してください。
レストランでの食事
食事の支払い方法は、店のランクによってはっきり分かれます。ホテルのメインダイニングや外国人観光客が多い高級レストランでは、クレジットカード決済が一般的です。サービスも洗練されており、テーブルでの会計が基本。伝票を受け取ったら内容を確認し、カードを渡せば席で決済が完了します。このクラスの店では、伝票に10〜14%程度のサービス料(Service Charge)が含まれていることが多く、基本的には追加のチップは不要です。ただし、特に素晴らしいサービスを受けた場合は、小銭のお釣りを少し置くか、端数を切り上げて支払うと気持ちが伝わります。
一方、コシャリ専門店やフール(そら豆ペースト)のサンドイッチスタンドなど、地元の人たちで賑わうローカルな食堂や屋台では、現金払いが原則です。これらの店は手頃な価格でおいしいエジプトの味を楽しめる宝庫ですので、少額の現金を準備して気軽に試してみてください。
タクシーや配車アプリでの移動
エジプトの都市部での移動手段には、支払い方法の選択が旅の快適さに大きく影響します。街中で手を挙げて捕まえる流しのタクシーは、100%現金払いで、かつ「料金交渉」という難関がつきまといます。メーターがあっても使いたがらないドライバーも多く、乗る前に目的地と料金を決める必要があります。相場を知らないと不当に高い料金を請求されることもあります。この交渉の煩わしさを考えると、筆者は旅行者に配車アプリの利用を強くおすすめします。
「Uber(ウーバー)」や中東で普及している「Careem(カリーム)」は、エジプトの主要都市で広く使われています。渡航前に日本でアプリをダウンロードし、クレジットカードの登録を済ませておくと良いでしょう。現地でアプリを開き、目的地を入力すれば周辺の車が検索され、料金も事前に確定します。ドライバーの名前や車両情報も表示されるため安心です。支払いは登録カードから自動で行われるので、現金のやり取りは不要。交渉もなく、ぼったくりの心配もありません。エジプトでの移動環境を飛躍的に改善する、まさに画期的なサービスです。
チップ(バクシーシ)の渡し方
エジプト文化を支える重要な慣習のひとつが「バクシーシ」です。これは単なるチップではなく、感謝やサービスへの対価、さらには施しの意味合いも含む多様な意味を持ちます。バクシーシはキャッシュレス決済では代替できない、現金ならではの文化です。ホテルのポーターに荷物を運んでもらった際は5〜10EGP、レストランで特に良いサービスを受けた時は料金の約10%、公衆トイレを利用した際は清掃員に1〜5EGP、遺跡で親切に写真スポットを教えてもらった時など、あらゆる場面で少額紙幣が活躍します。ポケットに1、5、10ポンド紙幣を数枚常備しておき、ささっと渡せるようにしておくと、現地の人とのコミュニケーションが格段にスムーズになります。
女性トラベラー必見!安全にお金を持ち歩くための防犯対策
旅の楽しさは、安全という基盤があって初めて満喫できます。特に慣れない土地での資金管理では、女性ならではのきめ細やかな工夫が欠かせません。ここでは、私が普段から実践している、お金やカードを安全に持ち歩くための具体的な防犯対策をご紹介します。
現金とカードを分散して管理するコツ
最も基本かつ重要なルールは、「貴重品を一ヶ所にまとめない」ことです。もしスリや置き引きに遭った場合、全財産を一気に失うという最悪の事態だけは避けなければなりません。私はいつも、お金とカードを最低でも3〜4か所に分散して管理しています。
メインの財布: その日に必要な最低限の現金(主に少額紙幣)と、念のためのクレジットカードを1枚だけ入れます。取り出しやすいバッグに入れて持ち歩きます。
サブの貴重品入れ(セキュリティポーチなど): 残りの現金(高額紙幣)、予備のクレジットカード、パスポートのコピーなどを収納。服の下に隠せる腹巻型セキュリティポーチや、バッグの深い内ポケットなど、簡単にアクセスできない場所にしまいます。
ホテルのセーフティボックス: 使わない日本円やカード類は、ホテルの部屋にある金庫に保管します。セーフティボックスがない場合は、鍵をかけたスーツケースの中に入れます。
スーツケースの中: 緊急用の現金(1万円札など)を、あまり使わないスーツケースのポケットに隠す方法もあります。
このように分散しておくことで、メインの財布を盗まれてしまっても旅を続けるための資金やカードが手元に残り、精神的な安心感が大きく違ってきます。また、ダミーとして少額の現地通貨を入れた古い財布を表のポケットに入れておくのも、スリ対策として効果的です。
ファッションに馴染む、洗練された貴重品収納アイテム
「貴重品を持っている」と主張しがちなウエストポーチや首から下げるタイプのパスポートケースは、スリの標的になりやすいのでおすすめしません。アパレル業界で働く私の経験から言うと、安全性とファッション性は両立可能です。例えば、ジッパー付きでポケットの多いジャケットやコートを選ぶ。体にフィットする薄手の斜め掛けボディバッグをコートの内側に身に着ける。ワンピースやスカートの下に巻く「ガーターポーチ」も有効な手段です。これらは外からは目立たず、肌身離さず貴重品を持ち歩けます。デザイン性の高いサコッシュや、ジッパーでしっかり閉じられるトートバッグも、防犯を意識した選択肢として優秀です。
万が一盗難に遭ったら?緊急時の行動手順
どれだけ注意していても、トラブル発生の可能性はゼロにはなりません。盗難に遭ってしまった際に冷静に対応できるよう、以下の手順を頭に入れておきましょう。
身の安全を最優先に: まずは自分の安全を確保します。犯人を追いかけたり抵抗するのは危険です。安全な場所へ避難しましょう。
カード会社に連絡: 事前に控えておいたカード会社の緊急連絡先へすぐ電話し、カードの利用停止手続きを行います。多くが24時間対応しており、迅速な初動が不正利用被害を最小限に抑えます。
警察に届け出: 最寄りの警察署(または観光警察など)で盗難の届け出を行います。ここで「盗難証明書(ポリスレポート)」を発行してもらいましょう。この証明書は海外旅行保険の請求時に必要です。言語が通じにくい場合はホテルスタッフに協力を求めるのも良いでしょう。
日本大使館・領事館へ連絡: パスポートを盗まれた場合は、在エジプト日本国大使館または総領事館に直ちに連絡し、再発行や帰国のための渡航書発行などの手続きについて指示を受けます。
カード会社、保険会社、大使館などの緊急連絡先は、スマホだけでなく紙にも記載し、スーツケースなど別の場所にも保管することが大切です。
旅の準備を万全に!出発前に日本でやるべきことリスト

エジプトでの支払いをスムーズかつ安全に行うための準備は、日本にいるうちから始めることが重要です。以下のチェックリストを活用して、出発前に万全の体制を整えましょう。
- クレジットカードの準備:
- VISAとMastercardを最低1枚ずつ用意しておく。
- 旅行期間中にカードの有効期限が切れないかを必ず確認する。
- 利用可能限度額をチェックし、必要があれば一時的に増額申請を行う。
- 海外での利用制限がかかっていないか、カード会社のウェブサイトやアプリで設定を確認しておく。
- 海外キャッシングの準備:
- 保有しているカードに海外キャッシング機能がついているか確認する。
- キャッシング用の利用枠が設定されているかチェックする。
- ATM利用時に必要な4桁の暗証番号を再度確認。忘れている場合は早めに再発行手続きを進めることが必要。
- 緊急連絡先をリストアップ:
- クレジットカード会社の紛失・盗難受付窓口(海外から連絡可能な番号)を控えておく。
- 加入している海外旅行保険のサポートデスクの連絡先をメモする。
- 在エジプト日本国大使館や総領事館の連絡先も必ず控えておく。
- これらの情報はスマートフォンと紙の両方で保存しておくことが望ましい。
- 海外旅行保険への加入:
- クレジットカード付帯の保険だけに頼らず、別途海外旅行保険に加入することを強くおすすめします。
- 携行品損害(盗難保障)の補償内容が十分かどうかを確認する。
- 現地で病気やケガをした場合、自己負担なしで治療が受けられる「キャッシュレス診療」に対応しているかどうかもチェックする。
- 現金の用意:
- 日本の空港でエジプト到着直後に使用する最低限の現金を両替しておく(目安は5,000円から10,000円程度)。
- 帰国時に空港から自宅までの移動に使う日本円は、別の財布に入れてスーツケースの中に保管しておく。
- スマートフォンの準備:
- 配車アプリ「Uber」や「Careem」を事前にダウンロードし、アカウント作成とクレジットカード情報の登録を済ませておく。
- Google Mapsなどで訪問予定の場所をオフラインでも利用できるようにダウンロードしておく。
これらの準備リストを一つずつ確実にクリアすれば、現地での不安は大幅に軽減されるでしょう。準備をしっかり整えることで、安心して素晴らしい旅を楽しむことができます。

