英国政府は、ビザなしで渡英する旅行者に対してオンラインでの事前申請を義務付ける新しい「電子渡航認証(ETA)」制度の対象国を拡大しています。この動きは、英国への旅行を計画している多くの人々にとって重要な変更点となります。今回は、このETA制度の概要と背景、そして今後の国際旅行に与える影響について詳しく解説します。
新しい英国の入国制度「ETA」とは?
電子渡航認証(ETA)は、ビザを取得せずに英国へ短期滞在(観光、ビジネス、短期留学など)する旅行者が、渡航前にオンラインで申請し、渡航許可を得るためのデジタルシステムです。
この制度は、米国のESTAやカナダのeTAなど、すでに多くの国で導入されている電子渡航認証システムと同様のもので、主な目的は国境警備の強化と、入国審査プロセスの効率化です。
ETAのポイント
- 申請方法: 専用のアプリまたは公式サイトからオンラインで申請します。
- 申請費用: 1人あたり10ポンド(約1,900円 ※為替レートにより変動)。
- 有効期間: 承認から2年間、またはパスポートの有効期限が切れるまで有効です。期間内は何度でも渡英できます。
これまで一部の国からの旅行者は、渡航ごとに30ポンドが必要な「電子ビザ免除(EVW)」を申請する必要がありましたが、ETAの導入により、より安価で利便性の高い制度に移行します。
なぜ今、対象国を拡大するのか?その背景
英国政府がETA制度を導入し、対象国を拡大している背景には、いくつかの戦略的な狙いがあります。
国境管理のデジタル化とセキュリティ強化
ETA制度は、英国政府が推進する「2025年英国国境戦略」の中核をなすものです。EU離脱(ブレグジット)後、英国は独自の出入国管理システムの構築を進めており、ETAによって旅行者の情報を事前に把握することで、セキュリティリスクを未然に防ぎ、国境管理を強化する狙いがあります。
中東諸国からの旅行者誘致
今回、新たに対象となったのはカタール、サウジアラビア、UAE、バーレーン、クウェート、オマーンといった湾岸協力会議(GCC)諸国とヨルダンです。
英国にとって、これら中東諸国からの訪問者は経済的に非常に重要です。英国政府観光庁(VisitBritain)のデータによると、2022年にはGCC諸国から160万人が英国を訪れ、その消費額は20億ポンド(約3,800億円)に達しました。
従来のEVW制度よりも安価で複数回の渡航に利用できるETAを導入することで、観光やビジネス目的の訪問者をさらに積極的に誘致し、経済的な利益を拡大させたいという思惑があります。
今後の予測と旅行者への影響
ETA制度の拡大は、今後の国際旅行にどのような影響を与えるのでしょうか。
旅行者にとってのメリットとデメリット
対象国となった中東諸国の旅行者にとっては、申請手続きが簡素化され、費用も大幅に削減されるため、英国への渡航がより身近になります。事前承認により、空港での入国審査がスムーズになることも期待されています。
一方で、これまで渡航前の手続きが一切不要だった国々の旅行者にとっては、新たに申請の手間と費用が発生することになります。
対象国は全世界へ拡大予定
英国政府は、2024年中に、日本や韓国、米国、EU加盟国など、現在ビザなしで渡英できるすべての国籍の旅行者をETAの対象に含める計画を発表しています。
つまり、将来的には日本人が英国へ旅行する際にも、ETAの事前申請が必須となる見込みです。具体的な導入時期はまだ発表されていませんが、英国への旅行を計画する際は、最新の情報を常に確認する必要があります。
旅行・航空業界へのインパクト
この制度変更は、航空会社や旅行代理店にも影響を及ぼします。航空会社は、乗客が有効なETAを保持しているか搭乗前に確認する義務を負うことになり、システム対応が求められます。旅行代理店にとっては、顧客へのETA申請案内や代行サービスが新たなビジネスチャンスとなる可能性もあります。
英国のETA制度は、国境管理の新しいスタンダードとして、世界の旅行のあり方を変えていく一歩と言えるでしょう。私たち旅行者も、こうしたデジタル化の流れを理解し、準備しておくことが求められます。simvoyageでは、今後も日本のETA導入時期など、最新情報が発表され次第、速やかにお伝えしていきます。

